【完結】先人紅葉は一般人である   作:兼六園

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これはゆゆゆ二次創作だ…………誰がなんと言おうとゆゆゆ二次創作なんだ……。




拾弐・死灰復然

 

 

 

「マタギの彼が死にました。」

「だろうな。」

「よろしかったのですか?」

「何故? あの男は()()()()()()だったのだから、派手に死なせてやっただけマシだろう。」

 

 

心底不思議そうに、ブルーライトカットの伊達眼鏡を掛けた男は、パソコンから目を話さないまま後ろに立つ女性と会話を交わす。

 

「……末期ガン? 彼はここに来てから今まで、わりと普通に動いていましたが。」

「エンドルフィンやドーパミンを分泌させる薬を服用させていたからな。」

「なるほど。」

 

 

痛みや苦しみを誤魔化して活動していたのか、と女性は理解する。

 

同時に、マタギの男はそうしてまで(くだん)の男――――我々が差し向けた従軍経験のある二人を倒した先人(なにがし)と三好某を殺そうとしたのかと思い、哀れにも思った。

 

「あの化物(ほしくず)に娘と妻を食われたとは聞いていましたが、まさかガン患者だったとは。

本当なら、今頃病院でひっそりと生涯を終えていたのでしょうね。」

 

「知るか。」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。 なんて言って、民衆の一部の不安と敵意の矛先を変えさせた原因が他人事とは。」

 

 

女性の淡々とした言葉に、ふっと鼻で笑うと男は返すように女性へと言う。

 

「騙される方が悪い。」

「さいですか。」

「――――あと数日もすれば、動けるようになった先人某が私たちの元に辿り着く。 動ける奴を集めてここで迎え撃て。」

 

 

施設内の監視カメラのチェックをしつつ、女性に指示を飛ばした男は退屈そうに体を伸ばす。

 

「それで、『通り魔』の彼はどうしますか。」

「あいつか……アレは三好某を行動不能にさせるための布石に過ぎん。 どうせ先人某に殺されるだろうし、放っておけ。」

「随分と人材を使い潰しますね。」

「私の目的は『調査』であって『崩壊』ではない。 人間なんてのは調査対象であって、殺戮対象じゃあないんだ。」

 

「―――と、言いますと。」

 

 

椅子を反転させて、女性と向き合うと男は続けた。

 

「私は最後には負けることになる。 故に私が集めた人間には、例外なく死んでもらう。」

「それは、私もですか。」

「ああそうだ。」

「……かしこまりました。」

 

「――――ところで。」

「はい?」

 

 

眼鏡の奥でまぶたを細めて、女性の服装を見てから話した。

 

「その給仕服、いつまで着てるんだ。」

「これはメイド服です。 それと、この服は貴方が渡したものでしょう。」

 

「この体と精神を交換したあとにお前を拾ったはいいが、この体の持ち主の家にある女物の服がそれしか無かったんだ。 仕方ないだろう。」

 

 

呆れた様子でため息をつき、見せつけるようにその場でくるりと回転する女性に言われる。

 

「肉体年齢40代男性の部屋にメイド服とはまた、業が深いですね。」

「3年前に外国から日本に来て早々こんなことに巻き込まれて、身ぐるみ剥がされて路地裏で犯されかけてた奴が言う台詞がそれか。」

「そんなこともありましたね。」

 

 

からからと乾いた笑みを浮かべ、ショートの黒髪を揺らし、女性は男性の前で膝を突く。

 

「――――必ずや、華々しく死んで見せましょう。 イースの偉大なる種族よ。」

 

「期待しているぞ。

―――柏崎・E・(イレーサー)ヴァレンタイン。」

 

 

片や、助けられた恩を返すために。

 

片や、帰れないと分かっていながらも尚、衰えぬ知的探求心のために。

 

 

『正義に負ける悪』としての戦いの、最後の幕が密かに上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――咄嗟に防弾シールド型のコンシールドバッグを盾にしたことまでは、覚えている。

 

直後に熱、光、音が眼前で炸裂した辺りで、紅葉の意識は途切れた。

 

 

「がっ、げ……ごほっ」

 

 

キーーーーーンという耳鳴りが聴覚を使い物にならなくし、身動ぎしたせいか頭の上にスナック菓子が落ちてきた。

 

真横にあったコンビニの窓から陳列棚目掛けて突っ込んだらしく、大量の破片が突き刺さったシールドを持っている右手の小指と薬指が、明後日の方向にひしゃげている。

 

「…………携帯、は、ど、こだ」

 

 

たかが喋る振動程度で全身の骨が軋む。

 

息を吸えば肺が痛み、体を起こそうとしては手足が鈍痛を訴える。

 

 

まさかこちらの命を狙う相手が自爆をするとは想定できない。 出来るわけがない。 そんな考えが片隅にあり、完全に油断していたが故の判断ミスだった。

 

そして自分を行動不能にできたのなら、次にやることなど決まっている。

 

「ひ、なた。 ゆう、な」

 

 

二人の安否を確かめないといけない。 そんな思考に反して、だんだんと意識が遠退く。

 

身体が冷たくなって行くのを感じ取りながら、紅葉の意識は再度暗闇に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンビニのガス漏れによる爆発事故として片付けられた一件から一週間が経過した。 それを『たかが』とするか『されど』と扱うかは人によって違うだろうが、紅葉は病院に一週間拘束されているもどかしさに襲われている。

 

度重なる心身への負担に最初の二日は眠りこけていた紅葉は、残りの五日をベッドの上で過ごしていたのだ。

 

 

松葉杖を使っている今の紅葉は、時間を掛けて別の病室に訪れる。 たどり着いた部屋の中で、ベッドに横たわり眠っていたのは――――頭に包帯が巻かれ、昏睡している三好の姿だった。

 

「……まだ起きないのか。」

「君の回復力が異常なんだよ、もっさん。」

「来てたのか、真鈴。」

「ついさっき、ね。」

 

 

巫女としての仕事を終えてすぐ向かってきたのか、巫女装束のままベッドの脇に座る安芸真鈴を見つけ、その隣に紅葉が座る。

 

「俺たちを狙っただけかと思ったが……三好もか。 この間の銃撃戦で目を付けられたな。」

 

「犯人は顔が見られなかったんだ。 フルフェイスのヘルメットで顔を隠してて、バイクですれ違う時にバットで殴ってきて…………。」

 

 

紅葉が自爆に巻き込まれた時間と同時刻、真鈴と三好が別方向に買い物に出ていた際、まるで遠くから聞こえた爆発を合図にしたかのように、現れた通り魔に三好もまた巻き込まれたのだ。

 

金属バットで頭部を、しかもバイクで加速した状態で殴られていながら生きているのはやや不思議だが、紅葉が頑丈なのも相まって誰も疑問に思わない。

 

「……実はね、私のスマホにバイクとナンバープレートの写真入ってるの。」

「咄嗟に撮ったのか。」

「うん。」

「なんで警察に渡さない。」

「君に渡す方が確実だな、と思ったんだ。」

 

 

真鈴が懐から取り出したスマホには、ブレがあるが、それでも番号とバイクの形が分かる写真が写っている。 そのスマホを取ろうとした紅葉は、真鈴が力強く握っていることに気付いた。

 

「……なにもしないで。 これは、やっぱり警察の大社と繋がりがある部署に渡す。」

「俺の知り合いに探させる方が早い。」

「それ、君が戦うってことでしょ?」

()()()()()()だからな。」

「……そう言うと思った。」

 

 

子供のワガママを聞き入れる親のような、諦めた顔をして、真鈴は手から力を抜いて紅葉にスマホを渡す。

 

「もっさんが寝てる間に遠征に出てったあの子達に、私、どんな顔をすれば良いの? 君が死んだら、ひなたや友奈達がどれだけ悲しい思いをするかわかってる?」

 

 

それが責めている言葉ではなく、警告であることだけはわかった。

 

「――――……一週間は、長すぎた。 こっちが怪我を治す前に、向こうが俺たちを殺しきる準備を終わらせてしまう。 これしかないんだ。」

 

 

吐き捨てるような言葉に、真鈴は顔を俯かせる。 そして、消え入りそうな声で言う。

 

「ねえ、もっさん。」

「なんだ。」

「ちゃんと生きて帰るって約束できる?」

「…………。」

 

 

紅葉は答えない。

 

しかしポケットにスマホを捩じ込んで松葉杖を突き、病室から出る寸前で一言だけ呟く。

 

「――――ごめん。」

 

 

感情を圧し殺し冷静に振る舞っている紅葉の、子供らしいシンプルな謝罪。 真鈴はただ、涙腺から溢れる雫を押さえないまま啜り泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前のやることを手伝うのは、チンピラに絡まれてた娘を助けてくれた恩があるからだって分かってるのか?」

「だからこうしてあんた個人を頼ってるんだろうが。 今日中にこのバイクが誰の物か探してくれ、データのやり取りは俺たちだけで行う。」

 

 

病院の廊下の隅で、紅葉は厳つい顔付きの男と会話をしていた。 ため息をついてスマホを受け取った男は、松葉杖を離せない紅葉に呟く。

 

「敵討ちのつもりか。」

「――――――違う。」

 

 

男の問いに、心底どうでも良さそうに紅葉は淡々と返した。

 

「これは単なる害虫駆除だ。 害虫が死んで、誰が悲しむと思ってる。」

「……その言葉に自分を含めるなよ。」

「含めないさ、俺は虫じゃない。 だがあいつらは四国には居なくても良い――――益虫になる可能性すら自ら踏みにじったクズだ。」

 

 

濁りながらも、確かに殺意のある瞳で男を見上げながら続ける。

 

警察(あんたら)じゃ捕まえることも殺すことも出来ない奴等を俺が片づける。 その為にそっちは俺に協力する。 利害の一致というやつだ。」

「――――悔しい事にな。」

「……それじゃあ頼んだぞ――――――捜査一課長、()()警視。」

 

 

警視とは、ドラマに登場するような若い警察官よりも遥かに立場が上の階級なのだが、男――――結城正義(まさのり)はしみじみと息を吐く。

 

「二回り歳が離れたガキと、法律ガン無視の裏取引とは…………俺も落ちぶれたな。」

「なら、あの時あんたの娘を放っておけば良かったというのか。 薄情だな。」

「…………クソが。」

 

 

正義は紅葉に逆らえない。

娘を助けられた大恩があるのだ。

 

「コンビニで死にかけてたお前を助けたのを今になって後悔してるよ……ったく。」

 

 

問題が全部片付いたら絶対逮捕してやる。 結城正義は、そう固く決意した。

 

 






祖先を匂わせる人物を出すのは過去編の特権

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