紅葉はどうせ死なないので幾らでもボコボコにしていいとジュネーブ条約にも書かれている。
アーメン・ハレルヤ・ピーナッツバター。
丸々戦闘回だと書くのも読むのも疲れるのでちょっと短いです。
AR-15を投げつけ、怯んだ相手に
チャンバーを塞ぐレバーが下がりきり、弾切れを知らせるそれのストックを掴んで、後ろから迫る別の男の顎を掬い上げるように振り抜く。
ゴン、と鈍い音と共に男は頭をぐわんと上げて背中から倒れた。 AR-15を床に投げ捨て、紅葉は背中のギターケースからベネリM4と
横1列に2つ並んだシェルを縦6列に並べて固定した、見方によってはマガジンにも見えるだろうホルダーをスーツのベルトに取り付け、ギターケースをその場に置いてベネリM4を構え歩く。
先人紅葉が地下施設に侵入してから五分、まるで巣を刺激したら飛び出してきたハチのように湧いてくる武装した男女を適宜撃ちながら移動して数分か経過した。 T字路の曲がり角から駆け寄る音が聞こえ、身を屈めて過ぎ去るのを待つ。
セミオートが特徴のベネリM4を、T字の右から左へと走り抜けようとする二人の男のうち、後ろを追従している方の背中に向ける。
二回戦目の狼煙を上げるが如く、紅葉は男の背中に発砲する。 ボンッとくぐもった音が鳴り、男が前のめりに倒れ、振り返りながら軍用の長銃を構えようとした前を走っていた男の顔面に鉛の粒が叩き込まれた。
立ち上がり、男たちが来た方向に向かおうとした紅葉が、背中を壁に預けた。 片手でベネリM4を持ち、片手でコートを捲ると、裏地に数発の先端が潰れた弾丸がめり込んでいる。
「……遺書でも用意しておくべきだったか。」
『友奈へ、刺身が食えないからってシャリだけ食うな』とでも書いておけば良いか、と独り
――――白い壁や天井、床を赤に染めながら紅葉は走る。 スライディングした頭上を舐めるように銃弾が通過し、
――ここで銃器の扱いを受けてきた者は、男女問わず協力して戦う訓練を同時に受けてきている。 故に、なんの躊躇いもなく盾にされると、仲間意識から相方ごと
それを知ってか知らずか、そもそもの数的不利からか、紅葉は相手の弱点を容赦なく突いてくる。 女を撃ち、続々と湧いてくる敵を撃ち――――やがて、ガチン、とチャンバーから空の薬莢を弾き飛ばしたレバーが下りたままになった。
これ幸いと同じように突撃銃の弾薬が無くなった男は懐の拳銃を引き抜き、紅葉はコートを盾に頭を守るように背中を向ける。
バンッと火薬が爆発する音の直後に、背中に弾丸が突き刺さる。 断続的に行われる発砲の裏で、紅葉の左手がベネリM4を支え、右手がベルトに固定したシェルホルダーに伸びていた。
――――男は散弾銃の装填には時間が掛かると知っている。 シェルを一発ずつ装填するせいで、破壊力に反してそれがデメリットになっている事を知っている。 その事から、このまま押し切れると判断して発砲を続けていたのだが。
唯一の誤算だったのは、紅葉が4発のシェルをものの数秒で装填し終える方法を取っていた事と、男がそれを知らなかった事だろう。
そして、弾切れになるまで撃ったことで、拳銃からマガジンを落とした音を聞かれたことにより、振り返った紅葉の手に握られるベネリM4の散弾が男の腹を撃ち抜き、男はその身を床に引っ張られるように倒した。
数年前まで単なる銃器好きな社会人だった男は、紅葉の装填方法が外国で模索された散弾銃の装填の遅さを改善した動きだった事を知らないまま、意識を浮上させる事なく闇に沈ませた。
「…………そろそろ、奥まで行ってもおかしくないと思うんだがな。」
「いえ、厳密にはあと280メートルほど歩く必要があります。」
突然背後から聞こえてきた声。
振り返ろうとした紅葉の背中に手のひらが添えられたかと思えば、ズンと地下施設が揺れ、体の内側に衝撃が走り内臓がシェイクされたような感覚と共に足が床から剥がされ前に転がる。
「ご、ぉえ……」
「おや、驚きました、まさか意識を保つとは。」
ベネリM4を杖に立ち上がる紅葉が視界に納めたのは、
黒い革手袋をキツく引っ張り、指先でスカートをつまむと、メイドは優雅に頭を垂れる。
「お初お目にかかります、先人様。
わたくしは柏崎
「…………勇者と巫女を敵視している人間を殺し屋に仕立て上げて人類を滅ぼす結末を迎えさせかねない状況を招いている者に仕えているとは、殊勝な心がけじゃないか。」
わかりやすい皮肉に、柏崎は微笑を浮かべ、カンペを読むかのように淡々と紅葉に返した。
「
「嫌な信頼だな。」
「ええ。 貴方が勝つと。 我々が負けると。」
――――信頼していますので。
ズン、と振動。 先ほどの揺れの原因が
洗練された震脚を移動と攻撃の溜めに使った柏崎は、滑らかな動きで、反射的にベネリM4を盾に構えた紅葉のそれへと手のひらを突き出した。
おおよそ人体が奏でるものとは思えない金属と金属がぶつかったような音が鳴り、ベネリM4はあっけなく『く』の字にひしゃげて使い物にならなくなる。
突き出した右手のひらを握りこぶしに変えた柏崎は、手の甲で紅葉の手から折れたベネリM4を弾き飛ばし、肉薄しながら左足を紅葉の両足の間にねじ込む。
そして、再度、ズンと施設が揺れる。
「では、参ります。」
「――――冗談だろ。」
地下施設に侵入して十分、紅葉の疲弊が見え始めたにも関わらず――――柏崎の情け容赦の無い猛攻が始まった。
柏崎・E・ヴァレンタインさんは『強くてニューゲーム+レベルカンストで挑む前提の難易度の裏ボス』をイメージしています。