【完結】先人紅葉は一般人である   作:兼六園

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わっしーの誕生日回です

以前のうたみと番外の話も絡みます



祝福 東郷美森は鷲尾須美である

 

 

 

4月某日、銀の部屋に呼ばれた俺はホイホイと誘い込まれてしまったのだった。

 

「なーんでこうする必要があるんですかねぇ」

 

そして部屋に入った俺は、瞬く間に後ろ手にオモチャの手錠を嵌められ座らされていた。

わざわざ変身までされちゃったら例え相手が小学生だろうと俺が勝てるわけないだろこの野郎。

 

 

「ふっふっふ……引っ掛かったねもーみん~」

「すいません紅葉さん、こうでもしないと逃げられると思って……」

 

したり顔と言うかドヤ顔を披露して仁王立ちするリトル園子と、申し訳なさオーラを全身から醸し出す銀が目の前に居る。これ第三者から見たらどっちが悪いのかね。

 

まあ女が泣いたら男が悪いの文化は300年変わらないし、俺が悪いんだろうね。オモチャの手錠ごときは腕力でどうにかなるし、本物でも針金があればどうにかなるけどさ。

 

 

「用件すら話さず問答無用でこれとか誰でも逃げると思うんだけどその辺はどうお考えで。」

「うっ、ほんとすいません……終わったらちゃんと外しますから……」

「もーみんには~ちょっとアドバイスが欲しいんだ~」

 

「ほら、あの……須美とおっきい須美って同一人物で、誕生日も一緒じゃないっすか?」

「……あー、あいつらの誕生日もうすぐか。プレゼントで悩んでた訳ね。」

「察しが良い人は好きだよもーみん~」

 

俺は嫌いになりそうだよそのっち~

 

「だから一緒に考えて欲しいんです。」

「そうか、じゃあこれ外せ。」

「……園子」

「しょうがないにゃあ~」

 

あんまり似てない雪花の声真似を披露しながら、園子は後ろに回ると手錠を外した。

 

「……よーし帰るかー。」

「ちょっ紅葉さん!?」

「冗談だ。」

 

 

手首の状態を確かめ、銀達に座るよう促す。上から見られるの落ち着かないんだよね。

 

「―――で、誕生日のプレゼントだっけ。」

「そうなんよ~」

「実はここに来る前含めて今回が初めてなんですよね……どうしたらいいかさっぱりで。」

 

そういやそうだったな。

小学生組の交流は一年にも満たないんだっけ、じゃあこうもなるか。

 

 

「んー、美森は友奈をラッピングして部屋に放り込んどけば翌日ツヤツヤになってるだろうけど、問題は須美だよなぁ。」

「今なんか凄い台詞が聞こえたんですけど気のせいっすよね?」

「……じゃあ須美には銀をラッピングしてプレゼントするか。」

「ヴェッ!?」

「ビュオオオオオオオオオ!!!」

 

「冗談だ。」

 

 

爆発したように真っ赤な顔で睨まれるが、怖くないし可愛いだけである。

 

横で発生してる突風で髪の毛がバサバサ揺れるのを鬱陶しく思いながら、俺は二人へのプレゼント案が全く無い事に若干の危機感を抱いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さーてなに買ってやろうかなぁ」

 

街に駆り出したは良いが、正直見切り発車なのは自覚してる。いくら同一人物だからって二年も違えば趣味嗜好も違うだろう。

 

 

でも美森が友奈にゾッコンな辺り須美にもそういう事の片鱗はあるとは思う、ちょっと見てみたいしほんとに銀にラッピングして部屋放り込んでみようかな。

 

……いややめるか、元の時代に帰ったときの悪影響になりそうだ。

そこまでの責任は取れないし、タイムパラドックスで美森の友奈ラブ具合が悪化したらあの一件がより凄惨なことになりかねない。

 

 

プレゼントでの問題点は金でも何でもなく、まず友達である友奈や銀、園子辺りが良い感じのプレゼントを贈る事だ。俺の雑なセンスで喜ばれるかはまた別の話になるのだよ。色々考えてはいるけどね。

 

花屋とかオモチャ屋を巡って色々と買い物を済ませていると、見覚えのある後ろ姿を見つけた。

 

 

あれは……

 

「……歌野と水都か。」

 

 

視線の先では、水都が歌野と腕を組んで歩いていた。前に俺と歌野で精神が入れ替わる珍事件が発生したとき、あれやこれやと話が進んだようで、何故か二人はめでたく付き合うことになったらしい。

 

 

いやほんとなんで?と困惑したし、正直にぶっちゃけると正気を疑った。

 

最初は話の流れでついOKしてしまったと言っていたが、今じゃ立派に彼氏(彼女?)として頑張っている。

付き合い始めた当初は水都の一挙一動に童貞の高校生みたいな反応してた癖に。

 

 

……女の子同士で付き合ってデートしてるって、冷静に考えたら字面がヤバイし絵面も凄いな。

 

 

あとは、まあ、あれだ。水都が歌野宅に泊まりに来るときは寝るときに耳栓するようになった。理由は察しろ……察して。

逆に寄宿舎の水都の部屋に歌野が行くときは気が楽でいいぞ。

 

 

「……そっとしとこ」

 

一瞬水都がこっち見た気がしたが気のせいだろう。うん、気のせい気のせい。触らぬ神になんちゃらかんちゃら、忠犬ミト公には噛まれたくないんです。

 

 

わりと気配に敏感な歌野から隠れるように、買った荷物を抱えて帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お誕生日、おめでとう!』

 

 

数日後に無事東郷美森と鷲尾須美の誕生日会が開催され、二人は勇者部メンバーにもみくちゃにされていた。風がどさくさ紛れに美森の胸を揉んで容赦ない肘打ちを食らっていたのはご愛嬌である。

 

 

「いやぁ、楽しそうで何よりだにゃあ」

「雪花は混ざらないのか?」

「あれに混ざったらメガネ割れちゃう」

「ああ……」

 

部室の隅っこに避難していると、ジュースの入った紙コップ片手に雪花が近付いてきた。

俺の緑茶入りの紙コップと乾杯すると、隣に座ってコップを置いてメガネを拭く。

 

 

「そういえば、紅葉くんも大変だよねぇ」

「なんだ急に」

「いや、ほら……」

 

雪花が見た方向に視線を沿わせると、そこには歌野と水都が。

 

「あー、うーん、慣れた。西暦の事情も知ってるからねぇ、こっちの世界でぐらい好きにさせてやれば良いじゃん?」

「そう言うものなの?」

「そーなの。」

 

別に歌野は俺のモノじゃないし。

視線に気付いた歌野が小さく手を振り、それに返しておく。あ、水都にぼた餅突っ込まれた。喉につまらせるなよ。

 

その様子を見ていたら、雪花に肩を叩かれた。

 

「……紅葉くん、キミが寂しいんだとしたら、別に好きにしても()()けど?」

 

手を下ろした俺にそう言うと、俺の顎をつい……と撫でる。ぞわぞわするからやめろ。

 

「お前の好感度の高さは裏が怖いからやだ。」

「ふぅーん?まあ、雪花さんは何時でもウェルカムだから考えといてね。」

 

雪花は撫でていた顎を爪でカリッ、と軽く引っ掻く。俺から離れてひらひら手を振ると、お祭り騒ぎが落ち着いた美森達の周りに混ざりに行った。

 

出会った当初からやたら雪花になつかれていた節はあるが、なんででしょうかねぇ……別になんかした訳じゃないんだけど。

ただアレは結構危険だと俺の危険信号が発している。千景みたいに選択肢間違えたら俺が死にかねない、手出しはやめておいた方がいいだろう。

 

そもそも出さないけど。逆に出されたら抵抗できない辺り俺ってほんとヒロイン。

 

 

 

その後も暫くボケーっとしていたら、俺がいる部室の隅に美森と須美が向かってきた。ダジャレみたいになっちゃったよ。

 

 

「紅葉さんは混ざらなくて良いんですか?」

「女3人寄ればなんとやら、じゃあ19人寄れば何になるのさ、輪唱?」

「……紅葉くん、騒がしいの苦手だものね。」

 

俺の子供嫌いの理由の一つですな。

 

 

「あーそうそう、誕生日プレゼント渡さなきゃな」

「義務ではないのよ?」

「俺が渡したいだけ、二人分だからこんなもんしか用意できなかったけどな。」

 

俺が近くに置いといた鞄から、二人分の小さい袋を出して渡す。二人が中身を取り出すと、それは―――

 

「栞、ですか……?」

「それも押し花の……もしかして紅葉くんが作ったの?」

 

「オフコース」

「……横文字」

「細かいなお前……その通りだよ。友奈に作り方教わってやったの。」

 

須美には菊、薔薇、牡丹の押し花の栞を。

美森にはアサガオと牡丹に加えて、薔薇ではなく蓮の栞を渡した。

 

「……あら、須美ちゃんのは薔薇なのね」

「二年前の園子ってモチーフ蓮じゃないんでしょ?」

「二年後のそのっち……園子先輩は薔薇ではないんでしたっけ。」

「そういうこと……」

 

しみじみといった雰囲気で、美森は栞を優しく両手で包む。

現実世界での事で思うことが色々とあるのだろう…………いや有りすぎたな。覚えてるだけで数えたら俺3~4回くらい死にかけたし。

 

 

「紅葉さん……ありがとうございます。」

「気にしなくていいぞ。」

「あの……これ、皆で分けても良いですか?」

 

「あー、園子と銀に?」

「……駄目……ですか……?」

「好きにしなさいよ、もうお前のなんだから。」

 

パッと顔色を明るくして、二人の元に走って行く須美を見送って、栞を大事そうに生徒手帳に挟む美森に言う。

 

「粋なプレゼントね、紅葉くん。」

「お前は、同じことが出来ないんだな。」

「……ええ、そうね。」

 

 

須美が部室の奥で銀と小さい園子に栞を渡している姿を見る。感極まったのか園子が須美に抱きついて、須美はまんざらでも無さそうに背中を撫でている。

その様子を見て、銀は苦笑を浮かべながら牡丹の栞を手のひらに乗せて嬉しそうだった。

 

 

「……美森」

「なに?」

「この世界でやって来たことは、無駄にはならない。そうだな」

「……そう、ね。」

 

なんとなく、左手で美森の右手を握る。その手は震えていた。

 

 

「元の時代に戻ったあいつらが3人で仲良く生き残れたとしたら、天ぷらうどん奢ってやるよ。」

「―――本気?」

「世界は無数に分岐するんだ、そんな世界が有ったって良いだろ?」

 

「……貴方が言うと、不思議と説得力があるのね。」

 

「まあな。」

 

 

俺の握った手を、美森は握り返す。

手の震えは止まっていた。

 

過去の私(鷲尾須美)が未来が変えたら、どうなるのかしら。」

「さあねぇ、俺が居ないかもしれないし、そもそも讃州中学に来ないかもしれない。

名前が東郷に戻らず鷲尾のままかもしれないし……確か銀の一件で精霊と満開が追加されたんだろ?下手したらより熾烈な戦いを強制される可能性だってある。

 

良いことずくめでは決してないんだ。それでも一縷の望みに賭けるのかは、お前の自由だぜ?」

 

 

 

ワガママだと笑えば良い、出来やしないと言えば良い。それでも子供の未来を案じることは、決して間違いなんかじゃないのだ。

 

 

銀に生きて欲しいと望むことの、何が悪か、何が間違いか。

 

 

「ふふっ、愚問ね、紅葉くん。」

「あん?」

 

「あの子達なら、きっと出来る。」

 

「言い切るとはまた……それでこそ神世紀の問題児だな。」

「……もう」

 

言葉を短く、美森はぽふっと俺の肩に頭を預ける。流石にわしゃわしゃするのはアレなので、結んで前に垂らしている髪を弄る。

 

小さい園子が着けているリボンと同じものを使っていて、少しばかりどうしようもない汚れが目立つ。俺にはそれが堪らなく綺麗に見えた。

 

 

「信じようぜ、須美を、園子を―――銀を。」

「――――うん。」

 

いつの間にか握っていた手の指は、絡み付くように交差していて。

園子ズに茶化されるまで、俺は美森の暖かさを感じ続けた。

 

 

「あ~!もーみんと東郷先輩がイチャイチャしてる~。い~な~」

「わっしーともーみん、まるで恋人さんみたいだね~羨ましいね~創作意欲湧くね~!」

「なっ、いや、これはちが―――――!!」

 

「ぬわーーーーーっ!!」

「紅葉さーーーん!!?」

 

 

慌てた美森に全力で突き飛ばされ、俺は部室に備え付けられた棚に激突した。

う、腕の骨が折れた…………!

 

 

園子ズに弁解する美森と便乗して詰め寄る須美に、俺の元に駆け寄って心配する銀。

ちょっと変な方向に曲がった腕を見て騒ぐ勇者と巫女達を見て、変な笑いが込み上げる。いやマゾじゃなくてね。

 

 

 

いや、ああ……ほんと、締まらねえなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつかの何処か、とある時空のとある世界。

 

 

 

―――ある時間

 

―――ある一瞬

 

―――ある偶然

 

 

 

少年と少女の切実な願い。

 

神のみぞ知るとある世界。

 

 

二人の望みは……『バトン』は―――

 

 

 

 

 

 

「東郷美森、入ります。」

 

「乃木園子が入るんだぜ~!」

 

「三ノ輪銀、入りまーす!」

 

 

 

 

 

 

―――3つの花に、確かに受け継がれた。

 

それは有り得たかもしれない、とある世界のとある花束の物語。

 

 





一応雪花さんが紅葉になついてる理由はちゃんとあります。

多分勇者っていう超絶美少女に詰め寄られて面倒臭がる二次創作男主人公って紅葉ぐらいだと思う
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