そういえば私は『先人』で『さきひと』と読んでますが、実際は『せんじん』が正しく、意味は過去の人や以前の人、祖先や亡父らしいです。
全く意図せず適当に付けたにしてはこのアホに相応しい名字でしたね。 ちなみに紅葉の花言葉は『大切な思い出』です。
紅葉の体の灰化も元は『LOGAN/ローガン』のウルヴァリンよろしく治癒力が衰えて傷が治らなくなってく描写にするつもりだったんですが、絵面が酷すぎるからやめました。
R-18Gになっちゃうので。
10月も下旬。
今年もまた例に漏れず、あの日の下準備を行うこととなっていた。
「紅葉さん、紅葉さん。」
「んー、どうしたの?」
俺の向かいに座って机いっぱいに広がったお菓子を小動物みたいに口に含んでいた少女が、それを飲み込んで一息つくと聞いてくる。
「学校のあちらこちらで最近良く聞くのですが、『はろいん』……って、なんですか? 」
「あー、そうか。 ハロウィン知らないのか。」
眼前の少女――――国土亜耶は、つい最近までゴールドタワーで巫女として修行を積みつつ防人と共に戦っていたのだ。 幼い頃からずっとそうしていた為、あやちゃんは冗談抜きの箱入り娘だったりする。
ここに来てからは俺に次ぐ第2のマスコットキャラクターの座を欲しいままにしてるが、教室では何故か毎回大量のお菓子を献上されるらしい。 部室の菓子代が浮くから有り難いけど。
「『はろいん』じゃなくて『ハロウィン』ね。 どっかの妖怪和食小娘は頑なに『はろえん』とか言ってるけど、『ハロウィン』だからね。」
「なるほど、ハロウィンと言うんですか。」
「そ、そ。 頭にホッケーマスク被って生首に見立てたくりぬかれたカボチャを持って、夜な夜な子供の居る家に押し入って言うんだよ。 『悪い子は居ねがーーーッ!!』てな」
そこまで言うと、顔を青くしたあやちゃんに代わって横で話を聞いていた歌野に頭を叩かれた。
「いてっ」
「堂々と嘘つくな馬鹿、なにジェイソンとなまはげをハロウィンと悪魔合体させてんのよ。」
「いや、あながち間違いじゃないでしょ。」
「間違ってなさそうに聞こえてくる魔法の言葉はやめろ。」
これ以上はポッキーを鼻に突っ込まれるからやめておく。 呆れた顔の歌野があやちゃんに向き直り、俺の冗談を訂正する。
「ハロウィンってのは外国の風習が日本でのお祭り騒ぎに使われてるようなもので、日本で言うお盆の時期に死者の霊やら魔女やらが家を訪ねてくると信じられていた事から、仮面を被り魔女避けのお香を焚いてたりしてたのよ。
そこからどんどん意味合いが変わっていって、今では
ハロウィンには自分のカボチャを使ってるからか、そういう知識はある歌野。
聞き入っていたあやちゃんがふと呟く。
「今年の勇者部もはろい……ハロウィン?をやるのでしょうか。」
「やるでしょ、まあ去年のハロウィンはそれはもう酷かったけど。」
「私のカボチャがなんか異常成長して巨大化してたわね。」
バーテックスの影響か、栄養や味はそのままに子供サイズに巨大化したカボチャの処理は大変だったもんだ。
「それに俺が仮装して学校練り歩いてるだけで夏凜と歌野に死ぬ寸前までボコボコにされるとは流石に想定できないよね。」
「歌野さんと夏凜さんが!?」
「被害者面するな。 頭にジャックオランタン被って目元発光させて喪服着てる不審者を撃退しただけでしょうが、貴方まさか今年もやるつもり?」
ジトっとした目付きから顔を逸らしつつ、棚の上に封印された俺の仮装セットを見る。
セールで安かった喪服をなんとなく買ったは良いが使い道に困っていた俺は、ハロウィンの仮装でジャックオランタンを被りこれを着て皆を脅かしてやろうとしたのだが――――。
まさか、学校の廊下を歩いてるだけで二人にクロスボンバーされるとは思わないよね。
首もげるかと心配したわ。
「しかし今年のカボチャは普通サイズな訳だが、あれくりぬくのまた俺とお前だけか。」
「じゃないの? あやちゃんにやらせたら何年掛かるか分かったもんじゃないし。」
「……すみません、非力で。」
「ああ、いや、うーん……。」
しょげるあやちゃんを見ては罪悪感があるのか、なんとか良い仕事がないかと首を傾げる歌野。 いやぁ、珍しいね、こうも振り回されてる歌野を見るのは。
あやちゃんは歌野キラーだったか。 良いことを知った。
それはそれとして、カボチャくりぬく役目はあともう一人欲しいんだよなぁ。
「……ったく、こういう時に限ってどいつもこいつも依頼で居ないのはなんでなのかね。」
「仕方無いですよ、この時期になると色んな方々に頼られると聞きましたし。」
「妙な都合の良さを感じるよね、こう……作為的な何かを。」
「馬鹿なこと言ってないで良い感じの助っ人連れてきなさいよ。」
あぁん、人使いが荒い。
蹴り出されるように部室を出た俺は、取り敢えず三年の教室からしらみ潰しに探すことにした。
部室に残った歌野は、亜耶にこんなことを聞かれる。
「歌野さんは、紅葉さんが嫌いでああ言っているのですか?」
「……別に? あの人は他の勇者に好かれてるから、特に厳しくする奴が居ないのよ。 だから私や夏凜がそうしてるってだけ。」
「……そうなのですね。」
納得したと言うよりは、疑問はあるが質問しづらい、だろうか。 歌野も充分紅葉に甘く見えるからこそ、亜耶は首を傾げる事しか出来なかった。
◆
「と、は、い、え~~~。 急にカボチャくり貫く仲間募集中でーす、とか言っても宗教勧誘より怪しいよなぁどう考えても。」
風が居るクラスに顔を覗かせてみたが、料理できそうな奴は居ないし、そもそもなんか妙に敵視されるし。 なんとなく風の隣のクラスに来てみたが、顔見知りなんて居ないしなぁ。
「……仕方無い、二年の方で探すう゛ぇ」
「――――おやぁ、すいませんねぇ。」
「いや、ああ、悪い。 考え事してた。」
振り返った直後に、誰かとぶつかる。 一瞬顔面が柔らかい感触に包まれ、その正体に気づく前に相手の高身長にちょっとビビった。
「え、でかっ。」
「やーん、おにーさんったら何処見て言ってるんですかぁ?」
「お前その言い回しはわざとだろ。」
棗より身長がある俺が見上げる位だから180はあるんじゃないのこいつ……ジョースター家の人間かよ。 焦げ茶色の髪を高い位置のポニーテールにしているそいつは、細めた糸目越しに俺を見下ろしてくる。
「それで……貴方二年の方ですよねぇ? 三年になにか用がありましたかぁ?」
「あー…………勇者部のハロウィンでジャックオランタン作るんだが、人手が足りなくてな。 」
「んひっ、なるほどつまり、料理とカボチャをくり貫く人を探しているのですねぇ?」
「(笑い方キモすぎるでしょ)……まあそんなとこ、なんならあんたがやるか?」
語尾がやたらねっとりしてるし纏ってる空気がなんかヤバイしで誘うべきじゃ無いんだと思うが――――見るからに変なのを誘うと面白いことになりそうだから誘おう。
わざわざ覗き込むように見下ろしてくるこいつは、少し考える素振りを見せてから口を開いた。
「良いですねぇ、私は構わないのですが、やはり頼みと言うのであれば…………報酬には期待しても良いのですよねぇ?」
「なるほど、飴をご所望か。」
「おにーさん方と違ってボランティアには興味ありませんからぁ……。」
変わらず糸目のまま、じぃっと見てくる。 こんなのが欲しがるものってなんだ…………?
「……金か? 6桁までなら出せるぞ。」
「直球ですねぇ……別にお金には困っていません。 というか6桁ってお金持ちですね。」
あんま趣味とか無いから大赦から支給されるお金余りまくってるんだよね。 そうだな……歌野には後で適当に言い訳しとくか。
「うちの部員が畑で育ててるカボチャをジャックオランタンにするんだが、そいつの育ててる野菜を幾つか無償提供でどうだ? サイズも中々だし無農薬で作られてるから生で食える。」
「良いでしょう、それで手を打ちますよ。」
「えらくあっさりしてるな。」
「理由は何でも良かったので、報酬を期待されたからと別の人に頼むのならまあ良いかなぁと。」
「しっかりしてるねぇ。」
長身で巨乳で糸目でポニテで笑い方がキモいとか色々と属性盛りすぎだが、なんだろう、勇者部で慣れてると然程混乱しないな。
部室に向かいながら、俺はこいつとの話を弾ませる。
「そう言えば、あんたは勇者部の事はどう思ってるんだ。」
「そうですねぇ、今時珍しいボランティア集団ですよねぇ? 私ですら労働には報酬を期待するのに、おにーさん方はそれをしない、というのはぁ……なんでしょう、マゾの類い?」
誰がマゾだ、ひなたじゃあるまいし。
「俺は時々個人的に物を戴いてるから違うぞ。」
「おや、いけない人ですなぁ。」
「勇者部にチクるか?」
「しませんよぉ、タダ飯の機会を逃すわけにもいかないでしょう?」
にやり…と言うか、ねちゃっとした気持ち悪い笑みを溢されるとこっちも苦笑いしか出来ない。
ああ、と思い出したように声を出すと、横を歩いていたこいつが続ける。
「確か私のクラスでも貴方はそこそこ知られてますよぉ、勇者部唯一の男性部員だ、と。 」
「碌なウワサじゃねえだろ。」
「ええまあ。 なにせ美少女揃いの中で、ですからねぇ…………嫉妬の声は毎日聞きますとも。」
あの魑魅魍魎が跋扈する天涯魔境を羨ましがるとかそいつら大丈夫かよ。 あいつら見た目は良いけど中身はアレだぞ、へんな幻想抱いてないで身近に幸せ感じた方が良いと思う。
「ところで一つ質問なのですがぁ」
「なんだよ。」
「いえ、あの部室の方々、ここの制服とは違う制服を着ていますが、どういう事なのでしょう?」
「――――秘密。」
「隠す気無いですよねぇ、おにーさん。」
…………参ったな。 この世界は神樹の中に創られた世界で、この世界の住人は『異変』に疑問を抱かないように調整されている。 つまり『疑問を抱くこと事態が異変』なのだ。
「……分かりやすく言ってやるよ、『好奇心は猫を殺す』……だ。 詮索は無し、カボチャのくり貫きを手伝い、あんたは俺たちからタダで野菜を受け取る。 オーケー?」
「……まあ、そう言うことにしておいてあげますよぉ。 ふへっ、一つ貸しにしませんかぁ?」
……強かな奴め。
「それともう一つ、名前聞くの忘れてた。」
「今更ですねぇ、私も貴方の名前は知りませんが。」
「ああ、俺は先人紅葉。」
「紅葉さんですかぁ。」
刻み込むように数回俺の名を呟くと、頷いてから切り返してきた。
「―――私は小鳥遊ヒビキです。
よろしくお願いしますね、おにーさん?」
覗き込むように俺を見下ろすヒビキ。 糸目がうっすらと開かれ、奥から現れた髪と同じ焦げ茶の瞳が、俺の事を鏡みたく写している。
その瞳は、どこか――――人殺しの
小鳥遊ヒビキ
・ゆゆゆい時空では家庭環境は良好であるため、単なる刃物フェチの変態になっている。 美人な事とプロポーションが良い自覚はあるが、自他共に認めるくらいにフェチ具合と笑い方がキモいせいで全くモテない。
人斬りの時は猫背だった為勇者の章紅葉は分からなかったが、実は紅葉よりでかい。
暇さえあれば夜な夜な家庭科室の包丁を磨いたり研いだりしてる事から、讃州中学七不思議の一つに登録されている。
神樹内部の四国市民で唯一勇者部の人員の混沌さに違和感を抱いているが、気付けている理由は定かではない。 変態は目の付け所がシャープだからでしょ(適当)
国土亜耶
・大天使アヤエル。 歌野キラー。 歌野が唯一怯む女。 人を疑うことを知らないこの作品の巫女というか人物の中で一番純粋無垢な穢れの無い子。 単純に他が酷いだけとは言ってはいけない。
まだ防人メンバーが居ないからちょっと寂しい。 教室に居ると休み時間やらに上級生とかがわらわら集まってきてお菓子を奉納して行く様は神社の賽銭のそれ。
信仰深い巫女なので御利益はあります。 帰り道に買ったガリガリ君が当たったりします。