【完結】先人紅葉は一般人である   作:兼六園

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新シリーズ(前回含めて3~4話)

園子の誕生日までには終わらせる(かもしれない)し誕生日回はちゃんと書きます。 ほんへの方はちょっとだけ気力を充電させてください。



Q.乞食やったんだからむしろ評価上がって当然では?

A.(どうせ来ねえだろ)とか思いながらふざけて書いたらマジで来てビビった。




神話事件簿 シスター・オズワルドの狂信

 

 

 

コヨミの発言から数秒、玄関先でフリーズするシスターとコヨミ。

 

 

「うーん。 スベったな。」

 

「…………ふふ、面白いお方。」

 

「おっ、やったぜ。」

 

上品に、口に手を当てて笑うシスター。 明らかな世辞だがそれはさておき。

 

 

「まあ冗談は置いといて、あんた誰だ。 こんな時間にそんなもん(チェーンソー)持って現れるなんて通報案件だぞ。」

「ああ、すみません。 自己紹介がまだでしたね。」

 

鈴を鳴らしたような、とでも言えば良いのか。 聞いていて心地の良い声。

 

これが外人パワーか。 と適当な事を考えているコヨミに、シスターは自己紹介を始めた。

 

 

「わたくし、シスター・オズワルドと申します。 気軽にオズワルドとお呼びくださいませ。」

「そうかいオズワルド。 何しに来たの。」

 

「貴女を我が使命の糧にさせていただきに来ました。」

 

「へー、そう。」

 

 

遠回しに『お前を殺しに来た』と宣言されたコヨミは、その日の内に何度も死にかけたせいで、完全にその辺の感性が麻痺していた。

 

よっこいしょっ……と言う可愛らしい声に反して、厳ついチェーンソーを地面から引き抜いたオズワルド。 けたたましいエンジンの稼働音が静かなその場に鳴り響く。

 

 

「では、よろしくお願いいたします。」

「なにが?」

 

…………いや、なにが? と言いながらパジャマのズボンに挟んだ警棒を素早く引き抜き、上から振り下ろされたチェーンソーの回転する刃を受け止める。

 

ガリガリガリガリと障害物(けいぼう)を削る一撃を意外にも受け止められている相方に、最大限の敬意を示しつつ横に受け流す。

 

 

下駄箱と中の靴を幾つかバラバラに引き裂いて、チェーンソーは玄関の石畳に衝突して火花を散らした。

 

 

「んな大振りの得物で殺れると思ってんのか、ああ?」

「まあ、一芸だけで殺人鬼は勤まりませんのよ?」

 

即座に頭頂部目掛けた一撃を叩き付けたコヨミ―――の胸部に、オズワルドはチェーンソーを右手だけで制御しながら左手の掌底をお返しとばかりに叩き付け廊下の奥に吹き飛ばす。

 

 

「お、ぶぇ」

 

殴られた瞬間に、ミシミシと骨が軋む音が鮮明に耳に届いた。 当然だった。 オズワルドのチェーンソーは刃に魔術的強化を施されていて欠けないようになっているし、長時間稼働させられるように、大型でハイパワーなバッテリーを搭載している。

 

更には銃弾すら防げるように多量の金属を用いた強固な改修を行っているため、見た目に反してその重量は40キロを超えていた。

 

オズワルドがそんなものを容易く振り回せるだけの筋力と、チェーンソーを振るえない状況での最低限の格闘術を備えるのは当たり前と言えた。

 

 

完璧なカウンターを貰い居間に繋がる襖の前まで滑るコヨミ。 うおお……と呻きながら居間の方、そしてその奥の寝室に繋がる方に目が向く。

 

 

「…………暦、なにをしてるんですか。」

「うげ、お袋……」

 

最悪なタイミング―――――と言うかそもそもチェーンソーの爆音を流されては誰だって起きるだろう。

 

 

「っ―――ちょ、ちょい待ち、オズワルド! お前お袋までターゲットに入れてねえだろうな!?」

「…………お、袋? 袋、フクロ……?」

「…………あたしの母親。」

「ああ! なるほど、そう呼ぶ方も居るのですね。 ご安心ください、わたくし、貴女だけを狙えと言われておりますので。」

 

 

居間に出てから廊下に顔を出したひなたは、床に転がるコヨミとチェーンソーを持つオズワルドを交互に見る。

 

ですが……と言い、オズワルドは天井を削りながらチェーンソーを上段に構えた。

 

 

「見られた場合は、恐らく例外かと思われますので、纏めて我が使命の糧に。」

 

「やべ、お袋!」

 

コヨミがひなたを居間に転ばせるように押すのと、チェーンソーがコヨミに迫るのは同時。 新たに取り出した警棒で体を真っ二つにされるのは防いだが、タイミング悪く刃が軽く肩に触れる。

 

 

「ぎ、ぎぎぎぎぎィィィィ!!!?」

「暦っ!!」

「あは、赤……赤、赤色。」

 

それだけでぶしゅ、と赤色が吹き出し、肩の肉が僅かに抉れて血が耳や頬に飛び散る。

 

赤黒いチェーンソーに新たな赤色が加わり、オズワルドは恍惚とした表情を浮かべ、更に力を込める。

 

 

「くそ、馬鹿力かこいつ……!」

「もっと、もっともっともっと、わたくしに赤色を見せてください…………っ!」

「可愛い顔して変態趣味かよ、おい」

 

軽口を叩けては居るが、チェーンソーに抉られて左肩に力を入れづらい。

 

一旦チェーンソーを押し上げ、戻ってくる前に横に回り、肘打ちで腹の部分を打って壁に突き刺す。

 

 

「あら、あら?」

 

「……ふぅーーー。」

 

オズワルドが得物を引き抜こうとしている内に、居間に戻って倒れたひなたを立たせる。

 

 

「お袋、親父…………は一度寝ると電話に気づかねえんだよな、仕方ねえユーリに連絡入れて親父起こさせてくれ。」

「暦! 怪我してるのに無茶しないで!」

 

「しなきゃ抑えられねえんだよ、早くしてくれ、もって数分だ。」

「っ―――分かりました、でも、それ以上の怪我はしないでください。」

 

自分が居ては邪魔になることを十分理解しているひなたは、手早くタオルでコヨミの肩の傷口を縛り、スマホを取りに寝室に戻る。

 

肩を動かして痛みに顔をしかめながら、コヨミは両手に警棒をそれぞれ掴む。

 

 

「もう、大人しく斬られてくれないなんていけないお人。」

「普通無理だからな。」

「ふふふ、ふふ。 そんなに恥ずかしがらなくても良いのに。」

「すいません日本語って知ってます?」

 

 

爆発するのでは、と疑問に思うほどにエンジンが駆動するチェーンソーを両手で掴み、オズワルドか居間に現れた。

 

会話でドッジボールしつつ、テーブルを挟んで立ち、互いを見やる。 既にコヨミの肩のタオルは滲んだ血で赤黒く染まり、チェーンソーの音が断続的に流れ、嫌でも緊張させられる。

 

 

 

「――――せぇい!!」

 

 

開戦。

 

テーブルをオズワルド目掛けて蹴り飛ばし、走り出す。

 

そのテーブルをチェーンソーで粉砕するオズワルドの大股に開いた足元にスライディングし、コヨミは背後の廊下に滑り出る。

 

 

「あら――――う、あ゛っ」

 

襖をチェーンソーで巻き込みながら振り返ろうとしたオズワルドの肩甲骨辺りに、鈍く、重い衝撃が走る。

 

前のめりに倒れそうになった体を一歩前に踏み込んだ足で支え、構わず振り返ったオズワルドの眼前に、金属の棒が迫った。

 

 

ガゴッ、と、打撃音。 頭部という急所に入った一撃で、額が割れたオズワルドの顔に血が垂れる。

 

返す刀で首を打ち、前蹴りで居間に蹴飛ばす。 チェーンソーが床に刺さり、ガタガタと揺れてエンジンが止まった。

 

 

「……あー、血が抜けてダルい……殺しはしねえが、手足へし折って亀甲縛りにでもしてやろうか。 あんた美人だから需要あるぜ。」

 

襲われた方が使って良いのか些か疑問になる言葉遣いで、コヨミはオズワルドに近付く。

 

警棒を強く握り、オズワルドの膝に狙いを定めた――――瞬間、突然起床したオズワルドに左足を掴まれる。

 

 

「うおっ」

「先程から左足を庇うように動いていましたね。 確証はありませんが、もしかして折れているのですか?」

 

狂っているように見えて、その実オズワルドは冷静に相手を観察していた。 コヨミもオズワルドも、互いに互いの機動力を奪う機会を待っていたのだ。

 

 

「あ、はい。」

「それはそれは…………。」

 

『大変でしょう』とでも続きそうな、慈愛の籠った表情。 しかしコヨミは、オズワルドの泥のように光の無い瞳を見て、ほぼ本能で警棒を再度頭に叩きつけようとした。

 

直後、脚を中心に走った衝撃と痛みに壁際まで吹き飛ばされる。

 

 

「いっ、てえ…………あ?」

 

ばさ、と本が頭に落ちてきたのを無視して立ち上がろうとしたコヨミは左足の膝から下に力を入れられない事に気付いて、足元を見る。

 

 

「――――oh」

 

膝から下は、可動域を大きく超えてねじ曲がっている。 子供の喧嘩のようにただシンプルに振った拳によって、コヨミの膝は砕かれていた。

 

「…………うそーん」

 

 

アドレナリンの増加と極度の緊張状態が痛覚を鈍らせているのか、不思議と痛みは無い。

 

どうにか立てないか片足で奮闘するコヨミを他所に、オズワルドは額から血を垂れ流しながら、床に刺さったチェーンソーの元に向かう。

 

 

けたたましい駆動音に意識が向き、気だるげにコヨミは音のする方を見る。 そこには、申し訳なさそうな顔をしたオズワルドが、チェーンソーの高速回転する刃をコヨミに向けていた。

 

 

「…………申し訳ありません、痛め付けるのは、趣味ではないのですが……こうでもしないと貴女はより抵抗してしまうでしょう?」

「―――よくお分かりで。」

 

お前さっき血に興奮してたじゃん。 そんな言葉を口に出す事をなんとか妨げるが、コヨミが凄惨な死体になる数秒前な事には変わり無く。

 

 

――――――――(貴女がわたくしの神ならば)。」

「あ? なんて?」

 

小声で聞き取れない言葉に、コヨミが聞き返す。 しかし、それを無視してオズワルドはチェーンソーを振り上げた。

 

 

「嗚呼、さようなら。 ―――――(わたくしの神よ)。」

「…………終わりか。」

 

時間なら十分に稼いだ。

 

自分が死んでも、ひなたは紅葉辺りがどうにか守ってくれるだろう。 そう考えまぶたを閉じたコヨミの耳に、ガギ、と言う耳障りな音がする。

 

 

「―――――少々、乱雑に扱いすぎてしまいましたか。」

「……は、なんだよ、それ……」

 

コヨミの眼前数センチに迫るチェーンソーの刃が、何度も回転しようとしては、間に小石が挟まったように動かない。

 

壁や天井を削り、床に突き刺さる。

 

そんな無茶な動きを繰り返したチェーンソーの、魔術的強化を抜きにした、単純かつシンプルな不幸(ファンブル)

 

 

 

要するにエンストである。

 

 

 

「すみません、すぐに点け直しますので少々お待ち―――――ぐ、えぇっ」

 

「次なんかねえよ。」

 

オズワルドは即座にエンジンを点け直そうとしたが、その横合いから伸びた足がオズワルドの体をゴムボールのように弾き、縁側のガラスを粉砕して外に叩き出す。

 

コヨミが見上げた先には、左腕をだらりと下げた、作務衣に似た寝巻きを着こんだ紅葉の姿があった。

 

 

「――――親父……っ!」

「おう、中々起きないからって勇理に拳銃のグリップでぶん殴られた親父ですよ。」

「…………親父………。」

 

良く見れば、頭に腫れがあった。

 

懐から手のひら大の金属塊を取り出した紅葉は、右手でそれを持ちながら縁側に向かった。 コヨミもなんとか片足で立ち、壁伝いに縁側に近付く。

 

 

「うーん、内臓潰すつもりで蹴ったんだが、まだ動くのか。」

 

錆びたブリキの人形のような挙動で、修道服を貫いてガラス片が幾つも刺さっているにも関わらず、オズワルドは尚立ち上がろうとする。

 

 

「……内臓が無事でも骨はヤってる筈だが、こいつまさかコヨミと同じタイプ(脳のブレーキが壊れてる)か……?」

 

「誰が誰と同じ何だって?」

 

 

息も絶え絶え、肩のタオルから血を滴らせながらコヨミが紅葉の横に立つ。

 

「こっぴどくやられたな。」

「どう考えても親父の遺伝だろ。」

「そう言われるとなぁ。」

「ぐえぇ」

 

軽く肩の傷口に指を押し当てられたコヨミは呻き声を出して座り込む。

 

オズワルドもまた、殴られ蹴られガラスを突き破り、決して無視できないダメージに悶えていた。

 

 

「…………うー……ああ……」

「やめておけ、息子に警察と救急を呼ばせた。」

「………………あ、う。」

 

チェーンソーを杖のように支えに使い、立ち上がるオズワルド。 紅葉の横であぐらをかいて座るコヨミを見て、ふと動きを止めた。

 

 

「貴女……は……あなた様、は……」

「は?」

「あなた様、なら……きっと……わたくしの、神に……」

 

「……お前なにか地雷でも踏んだな。」

「いやまあ確かに『私が神です』とは言ったけど。」

 

 

じっとコヨミを見ていたオズワルドは、コヨミの血に濡れたボロボロの体見て、顔を見て、()()()()()()()()()

 

「――――やはりあなた様が、わたくしの神。」

「はいぃ?」

「おい、それ以上近寄るな。」

 

 

チェーンソーを杖に、コヨミに近寄ろうとしたオズワルドを、デリンジャーのような形をしたL字の金属を向けて牽制する。

 

その金属の銃口では、青白い光がスパークしていた。

 

 

「ああ、いや、オズワルドもあんだけボロボロじゃ何も出来ねえから大丈夫だ。 あたしに任せろ。」

「…………危険と判断したらあの女に穴が増えるとだけ覚えておけ。」

「わーってら。」

 

はーどっこいせ、とオッサン臭い動作で縁側に座り、オズワルドと顔を合わせる。

 

 

「なんか、言いたいことがあるのか?」

「あ、いえ、あー、その…………」

「落ち着けよ、逃げねえ……逃げられねえから。」

 

頬を紅潮させ、落ち着きのない動きで、手を忙しなく顔の前で動かすオズワルドを見ていると、コヨミはつい先ほどまで殺しあっていた事を忘れそうになる。

 

 

「――――あなた様の、お名前、を……」

「あー、あたし? …………上里暦。」

「(何で本名明かしちゃうかなこいつ)」

 

そう考え呆れる紅葉を横目に、オズワルドは血で濡れていていまいち分かりにくいが顔色を明るくして、小声でコヨミの名前を反芻する。

 

 

「コヨミ……コヨミ…………コヨミ、様……」

「はいはい、コヨミ様ですよ。」

 

熱に浮かされたような顔。

 

デリンジャーのような金属をオズワルドに向けながら、紅葉はコヨミが不味いものを踏み抜いた事を察した。

 

そんな三人は、屋敷の外から聞こえてきたパトカーや救急車のサイレンの音を耳にする。

 

 

「…………お時間ですね、コヨミ様、またお会いしましょう?」

「あたし以外は狙わないって約束できるならな、お袋を巻き込まないでくれねえか。」

 

コヨミの提案に、オズワルドは考える素振りを見せる。 少し間を空けて、困ったように言った。

 

 

「―――約束出来るかはハワードさん次第ですが、()()、狙いません。 コヨミ様が居ますから。」

「……なんか変なニュアンスだな、まあいいや。 ほらさっさと行けよ」

「は? おい逃がすわけねえだろ」

 

 

勝手に約束を取り付け、勝手に逃がそうとしているコヨミにそう言い、紅葉は金属塊――――電撃銃をオズワルドに向けるが。

 

「親父。」

「…………ちっ」

 

言葉を短く。 コヨミに止められ紅葉の手の電撃銃はエネルギーを停止させられて、その間に向かいの家の屋根に軋む体からの悲鳴を無視してオズワルドは跳躍し、姿を消す。

 

手元の電撃銃をポケットに仕舞った紅葉は、コヨミの頭を指の関節で叩いた。

 

 

「言っておくがお前がこの件でどうなろうが、俺はもう助けないぞ。 ここからはお前の戦いになる。」

「分かってるって、オズワルドはあたしがどうにかする。」

 

膝が砕けてぐねぐねしていて、気持ち悪い動きを見せる左足と、チェーンソーに削られ血を噴き出した左肩を一瞥し、紅葉は頭を掻いて月を見上げた。

 

 

 

 

 

「お前、ほんと俺の遺伝子良く継いでるわ。」

 

 






オズワルド、コヨミをロックオンする。 使命とは別にしてマジな一目惚れをされた模様。


『何かしらの理由』で神に救いを求めてる頭ぱっぱらぱーのキ○ガイに対して「私は神です」とか言ったらそりゃ執着されるでしょ、あとコヨミもなんだかんだひなた似の美人ですからね。 性格とボロ雑巾並にボコボコにされるのは紅葉の遺伝だけど。

まあ金髪赤目巨乳シスターとかいう属性盛り沢山な娘に惚れられたんだから役得でしょ、喜べよコヨミ~嬉しいだろぉ~~?



尚、よく登場キャラがボロボロになるのは私の趣味です。 パワーバランスはこれぐらいが好きなんです。 あとキャラの性格の酷さが回復力に直結してる説もあります。

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