『ゆゆゆ二次創作読みに来たら勇者要素もバーテックス要素も皆無の謎シリーズ始まったんだけど…………』と思ってる人は多いと思う。
正直アニメや漫画の二次創作を書いておきながら、その中でオリキャラを複数使ったセルフクロスオーバーするのは読者を置いてけぼりにするから控えた方が良いんだよな(自覚はしてる)
※何故か文字化けが発生する謎の事態になり1から書き直すことに(自動保存も全滅してた)。
正直高評価いっぺんにもらった時より遥かにビビったし、報告されなかったら最悪の場合更新したあとそのまま寝てました。
あの一件から暫く、オズワルドに砕かれた方の足をテーブルの下に伸ばして入れているコヨミの目の前には、あまり『良い』とは言えない表情をした、渋い顔の紅葉が座っていた。
「先ずは退院おめでとう、無駄に頑丈なだけあって治る速度も早いみたいだな。」
「そりゃどーも。」
ずずず、と湯呑みのお茶を啜り、肘を突いて手のひらに顎を乗せて紅葉を見る。
「俺が何を言いたいのか、流石のお前でも良く分かってるよな?」
「――――『なんでオズワルドを見逃した』…………ってか?」
「その通りだ。」
紅葉の顔色は渋いが、怒っている訳でも責めている訳でもない。 ただ呆れ、疑問を覚えている。
「良いか、あいつは恐らく散々人知れず猟奇殺人を行っていた張本人だ。」
「んな事テレビでもやってなかったぞ。」
「余計なパニックを防ぐための情報規制だ。 警察も病院もニュース関連も、全部基本的に大赦が押さえてると思え。」
「あたし大赦苦手なんだよ」
「俺もだ。」
後に大赦内部が、今より酷くなることを紅葉はまだ知らない。
「『HPL』『ハワードと名乗る自称魔術師の外国人』『修道服のチェーンソーを使う外国人』とくれば、何処かの誰かしらが目撃情報なんかをネットにあげるなりなんなりする筈だと思うだろ?」
「ふつーそうだろ、あたしだってするわ。」
神世紀初期以降は、西暦のマナーやモラルの劣悪さが、神樹への信仰と道徳論理の教えによってかなり改善されている。
よって、『事故現場に野次馬して写真をネットにあげる』と言った行動を取る人物は滅多にいない。
だがコヨミのいる現代は西暦だった時期から30年も経っていない。 当然の権利のように事故現場に野次馬、違法アップロード、無断転載なんかを行う者は一定数存在する。
例を上げると、今の時代に『犬吠埼樹のような小さく可愛らしい少女の歌う様子』なんかを誰かがうっかり撮影していたとしたら、格好の餌食になるだろう。
だと言うのに、上記の3つのキーワードに関わる情報を、誰一人としてネットにあげてすらいないのだ。
そうなる状態を紅葉は一つだけ知っていた。
「目撃者を消すなんて毎回やっていたら四国の人間の総数が嫌でも低下して警戒させられる。」
「じゃあなんで、誰もオズワルドとかハワードを知らないんだよ。 外国人なんて今時メタルスライムより貴重だろ。」
「メタルスライム…………まあ、それで理解できるならそれで良いか。
潜めた眉を指で揉み、続ける。
「…………『記憶を曇らせる』と言う魔術がある。」
「なにそれ」
「文字通りに記憶を曇らせる魔術。 厳密には忘れさせるんじゃなく、思い出せなくする魔術だ。 だから脳への負担も少ないし、使う魔力と喪う
「……それで目撃者から記憶を消してるから、誰もオズワルド達を知らないって事か。」
「そう言うことだろう。」
厄介だな、と呟いて、紅葉は深くため息を吐き出した。
記憶を曇らせる事の最大のメリットは、『忘れさせられた事実も忘れる』事にある。
「下手をしたら、俺やお前も知らない内に曇らされる危険性がある。 この一件が片付くまで、一人では出歩くな。」
「ういうい。 …………あれ、そういやユーリとお袋は?」
「勇理は修理が終わったライフルを取りに行って、ついでに杏たちと射撃訓練。 魔術を使う老人を撃ったらしいがその事を引き摺ってる訳じゃなくて関心関心。」
「そりゃ親父とかは平気だろうけどさ。」
紅葉は勇者でも巫女でもないが、それでも戦えない訳ではない。 勇者や巫女に手を出そうとする悪党の相手をする事もあれば、コヨミたちが産まれる前に無形の落とし子を一体倒したことだってある。
…………若葉や千景と言った、神器をまだ使える二人の協力があってこその辛勝だったが。
「あとひなたはハワードやオズワルドの正体を調べるために、生大刀を振るえる若葉が付き添って大赦本部に向かった。」
「ふーん。 んじゃ今ぼっち…………ソロなのって千景だけ?」
「アホ、大葉刈が使えるあいつはこの辺のパトロールだ。 」
勇者の武器という神器の霊力故か、若葉や千景は未だに身体能力が高い。 加えて膨大な霊力を蓄えた神器である生大刀や大葉刈によって、戦闘能力もある。
そのお陰で、こういう時に、パトロールや護衛なんかで引っ張りだこになっていた。
「…………んじゃ、病み上がりの体が鈍ってるし、散歩にでも行ってくるわ。」
「お前人の話聞いてた?」
「聞いてたよ。 千景が見回りしてんなら問題ねーだろ?」
「……そう言うと思った。 それならこれを持ってけ、対『神秘』用の武器だ。 『アレ』みたいなもんは、ただの武器じゃどうにもできん。」
「なにこれ。 随分と古くせえ鉄砲だな?」
紅葉が立ち上がったコヨミに投げ渡したのは、
「言っとくけど、あたしに撃つ才能はねーぞ。 エアガンで空き缶を撃って当てたこと一度もないからな。」
「その弾丸は神樹から欠けて落ちた幹の破片を銀と混ぜて作った特注品で、当たれば『神秘』と対消滅するようになってる。 『撃てば当たる』から心配しなくていい。」
「…………撃てば良いのね。」
長ったらしい説明の八割を聞き流し、取り合えずとベルトに挟む。 ついでに数本特殊警棒を納めると、コヨミは玄関に向かって歩いて行く。
「夕方には帰る。」
「おう。
「あ? なんて?」
「なんでもねえよ。」
小声で何かを呟いた紅葉の言葉には気付かず、ひらひらと手を振った紅葉に追い払われるように、コヨミは外へと躍り出た。
「…………あいつ、危険だな。 オズワルドとやらを妙に心配している。」
薄く湯気が昇る湯呑みを手元で回しながら、オズワルドに関わる話をしている時のコヨミの顔を思い返す。
「絆された……とかじゃない、もしかてあいつ『オズワルドはまだ引き返せるかも』とでも考えてるのか……?」
そこまで考えて、ため息をついて頭を振る。
「無理だな。」
殴られ蹴られガラスを破り、骨や内臓にダメージを負いながらも構わず戦おうとする奴にまともな思考回路を期待するだけ無駄であり――――――そもそも、そもそもだ。
「―――――どんな過去があり、どんな理由であろうと、私利私欲で人を一人でも殺したやつを『人間』とは呼ばない。 」
縁側から庭を見て、紅葉は目元を細める。
修繕の終わった窓ガラスに、何処と無く疲れが溜まっているような気もする自分の顔が写った。
「オズワルドが人間だと言うのなら、人間である内にお前が決着をつけろよ、コヨミ。 俺達が――――大赦が『怪物退治』に考えを変える前に…………な。」
テーブルの上に、無造作に、無骨な形状の金属が転がる。 それが『時間を完璧に理解した精神生命体』が持ち込んだ武器を奪って改造した電撃銃である事は、紅葉以外は誰も知らない。
◆
「んいぃ、あったけえ…………。」
「はっ、何がパトロールだっつの。」
ぼーっとしながら公園を見渡す。 砂場で遊ぶ園児に、ブランコを漕ぐ中学生。 小学生のキャッチボールを出入口で眺める主婦と、平和という言葉を形にしたような光景が広がっている。
「(こいつらは、あんな怪物だの魔術師だのが居てよからぬ事をしているのを欠片も知らないんだな。)」
缶コーヒーを呷り、一息つく。
「(あたしの好奇心にも困ったもんだな、自覚しながら引き返せねえ。 いやほんと、好奇心は猫をも殺すんだなぁ。)」
くぁ、と欠伸を漏らし、開けていたまぶたが閉じられそうになる。
「…………ねみぃ」
このまま横になるか、と考え体を横に傾けるコヨミ。 そんなコヨミの頭にふと、むにっとした感触がぶつかった。
「ぁ、ん……」
「んお、おお、すまん。 眠くてつ、い…………」
人が居たことに気付かなかったコヨミは、急いで顔を上げる。
横にいつの間にか座っていた人の正体を確かめようと、首を向けたコヨミの視線の先に、やや因縁となりつつある相手の姿があった。
「ふふふ、コヨミ様の眠たそうな顔、可愛いですね。」
「……こっちは道端でラスボスに出くわした気分だよ。」
寝ぼけ眼が完全に覚めたコヨミの横で、金髪を揺らしたオズワルドが、赤い、紅い双眸を細めて見てくる。
警戒を解かず、左手を警棒を納めた位置に置きながら、コヨミはオズワルドに話しかけた。
「つか、今日はあのとんでも兵器は持ってきてないんだな。」
「あれはメンテナンスをしていまして……後で取りに行く予定なのです。 ふふ、殺人鬼にも有給休暇はありますのよ?」
知らんがな。 というコヨミの切実な思いは目線で語られるが、オズワルドには届かない。
「…………ところでさっきの柔っこいのってもしかして……」
「…………それは、その…………もう、コヨミ様もお好きですこと。」
「あ、やっぱりおっぱいでしたか。 そりゃ
羞恥心から頬をあの時とは違う色合いで赤くするオズワルドは、腕を胸元を庇うように組んだ。
妙に色気のあるその動作に、コヨミは生唾を飲む。 ごくり……じゃないが。
「―――――触りたいのですか?」
「めっちゃ。」
「……素直なところは、とても宜しいですが……その、もう少し関係が進んでからなら…………。」
即答したコヨミに対し指と指を合わせ、もじもじとするオズワルドとコヨミの間に少しばかり気まずい空気が流れた。 どうでも良い話だがコヨミは好みであれば男女構わずイケる口である。
「残念…………と言いたいが、お前ナチュラルに殺す対象との仲を進展させようとしてんじゃねえよ。」
眠気覚ましに缶コーヒーの残りを呷り、公園の端にあるベンチから反対の端にあるゴミ箱に、飲みきった缶を投げ入れる。
数十メートルは離れたそれに、空き缶は見事にホールインワンした。
「――――オズワルド、お前、なんでハワードなんかとつるんでるんだよ。」
「……わたくしには、会いたい人が居るのです。」
「んー…………ああ、死者蘇生の秘術を『神』とやらから学べるんだっけ。 それで召喚のためにあれこれしてる。」
「はい。 」
にっこり、と。
慈愛のある、聖母のような微笑み。 コヨミはなんとなく、それが肯定の顔であることを理解する。
「自分のしたいことの為に散々人を殺して、お前は誰を生き返らせたいんだ。」
逆上でもされたらと考え、警棒のグリップを握りながら質問を投げ掛けた。 オズワルドはコヨミの自分の濁った瞳とは違う暗さの瞳を見て、あっけらかんと答える。
「わたくしのご両親です。」
「――――――――――。」
呼吸をするのを忘れたように、コヨミの思考は一瞬止まる。 『両親に会いたいが為に人を殺したのか』と考え、『いや家族に会いたいのは当然か』と繋げ、『止めるべきなのか』と悩む。
コヨミは、良くも悪くも甘い。
自衛や弟を守るために傷付ける事は出来ても、殺すことまではしないし、出来ない。
そして、コヨミは家族にも姉弟にも周りの人にも恵まれている。
故にオズワルドのしていることを非難出来ても否定は出来ない。
「……殺されたのか。」
「いえ、事故です。」
「……そうか。」
コヨミは気を遣った言葉を選べず、そう言うしかない。
大切な者を一瞬で、いっぺんに喪った子供の辛さなど分かる訳が無いのだ。
ふと、思い出したように、コヨミはオズワルドに聞いた。
「お前、その『神』とやらに親を生き返らせてもらおうとしておきながら、なんであたしの事も『神』扱いしてくるんだよ。」
「………………。」
「あんたはあたしに、自分を何から救えって言うんだよ、なあ、オズワルド。」
オズワルドは、ただ、にっこりと笑みを作り、コヨミの手を両手で包んだ。
ドロドロと濁った紅い瞳がコヨミの暗い瞳を射抜き、コヨミは嫌でも察せられる。
「救えって、そういう意味かよ。」
「―――――はい。」
目を細め、ただただ、にっこりと笑う。
「
「―――はい。」
コヨミの手を握っていた手をほどくオズワルド。 名残惜しそうに指で手の甲をなぞりながら、ポツリと言う。
「ハワードさんの指令で、今に至るまでの7年間で、わたくしは34人の強い魔力を持つ方々を殺してきました。 そして、あなた様で35人目にして最後の一人。」
オズワルドは、自分のやっていることを、正気を完全に喪いながら完璧に理解している。
親を生き返らせる為に人を殺すことがおかしいとわかりながら、それでも一縷の望みに欠けて、ここまでやってきた。
もう自分では止められない。 だから、殺そうとしても死ななかったコヨミに。
自分こそが神だと言ってのけたコヨミに、期待しているのだ。
「わたくしはあなた様を頑張って殺して、両親を生き返らせますから。 だから、コヨミ様はわたくしを殺してでもそれを止めてください。」
儚げに笑い、立ち上がり去ろうとしたオズワルドを、コヨミは手を掴んで止める。
「――――コヨミ様?」
「あたしはお前を殺さない。」
続いて立ち上がり、オズワルドの目を見据えて言った。
「ぶっ倒して取っ捕まえて、ムショぶちこんで罪を償わせてやる。」
そうした場合オズワルドは、重い罪を課せられるだろう。 捕まったとして刑務所から出られるのは、何十年後かはたまた。
「お前が捕まってる間に、ハワードもぶっ潰して、神とやらから秘術聞き出すなりして、お前の両親生き返らせてやる。」
「――――コヨミ様……っ」
それはきっと、冒涜的な話。
猟奇殺人の犯人を捕まえ、唆した元凶を倒し、神から死者蘇生の方法を教わり、死んだ人間を生き返らせる。
そんな事が赦される訳がないと分かっていながらも、コヨミは胸を張って宣言した。
「あたしが死なない限り、オズワルドはあたしを狙うしかない。 だからあたしはお前を『絶対殺さない』し、お前に『絶対他の奴等を殺させない』。 」
にへら、と笑って、オズワルドの左頬に右手を当てる。 オズワルドはそうしたコヨミの右手に左手を重ね、すり、と頬擦りをした。
「――――嗚呼、良かった。 最後の一人が貴女で。」
小声で呟き、次の言葉はちゃんとコヨミに聞こえるように言う。
「コヨミ様」
「ん?」
柔らかい表情で、穏やかな口調で、歌うように。 オズワルドはコヨミを見やり、心の底からの叫びを言葉にした。
「―――お慕いしております、コヨミ様。 出会って少しばかりでも、この感情に、嘘偽りは無いのです。」
「―――そうかい。」
よく学校で、男友達に『お前が男だったらな』と言われることが多々あったが―――――
コヨミは今日、この日、生まれて初めて本心から『あたしが男だったなら』と願った。
そして、オズワルドの
「あん?」
「……この方達は……!」
老人が着ていたのと同じローブを羽織った、長身のモノ。 そのローブからはみ出た手にはびっしりと鱗が生え、その手には奇妙な形の拳銃が握られている。
「オズワルドの同僚か?」
「いいえ、あれは…………ヘビ人間。 どちらかと言えば、商売敵です。」
怪しんでいるコヨミに答えたオズワルドは、腰を落として拳を構える。
続いて腰の警棒に左手を伸ばしたコヨミは、容赦なく発砲してきたヘビ人間の射線から逃すように、オズワルドを押した。
「っぶねえ!」
「コヨミ様!?」
そのまま防御の姿勢を取ったコヨミの肩と腕に、拳銃らしきモノから打ち出された針が突き刺さる。
秒を跨がず一瞬で体から力が抜け、膝を突いたコヨミは、押されてから踏ん張り倒れなかったオズワルドに叫ぶ。
「――――――にげろ、おず、わるど……ぉお!!」
「っ、う、ぅ…………必ず助けます――――必ず!」
横に走り、追うように発砲したヘビ人間の麻酔ダーツは、オズワルドの影すら捉えず当たらない。
そのまま近くの草木に体を隠したオズワルドは、ヘビ人間の一人に抱えられたコヨミを見て、奥歯が砕けん程に噛み締める。
「よ、くも……コヨミ様を―――――っ!!」
そう言いながらも冷静に手元でスマホを弄り、チェーンソーを修理させている同業者の店に連絡を入れるオズワルド。
殺意を滾らせながら、その姿を路地裏に消した。
オズワルドが消えてから数秒、子供やその親がざわめく公園に、コヨミを抱えていない方のヘビ人間が霧を撒き散らす。
それを吸った者達は、次々に意識を失って倒れ込む。
全員が気絶した後で、二人のヘビ人間は公園を後にする。 ただし、起きた頃には、公園に居た人々はヘビ人間のした犯行を覚えていないだろう。
記憶を曇らされてしまったのだから。
コヨミ(好みなら男女関係なく普通にイケる。 オズワルドに惹かれ始めていて、自分が男じゃないことにちょっとガッカリ気味。)
オズワルド( I LOVE YOU )
ヘビ人間(邪神召喚とかされたら研究諸とも四国滅んじゃうからマジでやめてほしい)
次回、コヨミシリーズ最終回。