みーちゃんまで入れたら紅葉が主人公である意味が無くなる(普通に歌野が主人公になる)ので、みーちゃんファンやうたみと派の皆様には申し訳ありませんが、そういうことです。
通学路を歩いていると、途中までは歌野に引かれてたが、他の生徒がちらほら見え始めた頃には歌野は俺の手を離していた。無言での行動だが流石の歌野でも恥ずかしいらしい。
一年の時にイタズラ心から無理やり手を繋いだまま登校した時は、3日くらい会話してくれなかった記憶がある。
手を離した代わりに俺の隣を歩いており、快活な歌野らしく歩幅と歩く速度は女子にしては中々に早く、男の俺と同等なのはやはり畑弄り様様なのか。
「今日は冷え込むらしいし、鍋にでもするか?」
「―――!鍋!良いわね鍋!」
「そんなに食いたかったのか……」
勢いよく俺を見て歩きながら詰め寄ってくる。お前俺と手を繋ぐ様子見られるのが恥ずかしかったんじゃないのかよ。
「つい言っちまったから仕方ないが、今日は鍋だな。野菜多めでつみれのやつ。」
「おお……それはとても楽しみだわ……!」
食い意地張ってるな、とか言ったら叩かれそうなので黙る。普通は女が男の胃袋を掴むもんだと思うんだがどうだろうか。
◆
会話が終わってから少しすると、俺と歌野は見慣れた後ろ姿を見つけた。
赤い髪を揺らして車椅子を押している少女と、車椅子に座って押されている少女の二人組。確か、あの二人も勇者部に所属してたっけ。
「あら、友奈~!東郷~!」
「―――ん?あっ、歌野ちゃん!紅葉くん!」
歌野みたく明るさが擬人化したような声色で、赤髪の少女は足を止めると車椅子ごとこっちに向き直る。
「よっ、友奈、美森」
「おはようございます、歌野さん、紅葉くん。それと東郷です。」
赤髪に桜の髪留めを着けている少女と、漆塗りのような艶やかな黒髪をリボンで纏めている少女と顔を会わせる。
黒髪で車椅子のお世話になっている方―――東郷美森からは名字呼びに訂正させられることが名前を呼ぶ都度ある。俺はそれに反抗して何時も名前で呼んでいるが。
そして赤髪の―――結城友奈は俺に笑いかけた後、歌野と話し出す。
こいつらは勇者部所属であり同級生、つまり中学二年生だ。
二人の関係は要するに俺と歌野みたいなモノだが小さいときからの幼馴染と出会って数年の二人では少々違う?なぁに、友人関係に時間と年数は関係ないだろう。
「美森はそんなに名前で呼ばれたくないかい。」
「東郷です。他の皆さんには名字で通してますので。」
「あー分かった分かった。」
「本当に分かってますか?」
いいえ全く。
少しばかり怒気のある声で話す美森の怒ってますアピールは無視しておく。記憶喪失に両足が動かないと、色々とハードな人生なのにここまで強かな人間に育つのだから人間の神秘ってすげー。
その横で歌野と友奈はトークに花を咲かせている。
「今日は砂浜の掃除だったよね!」
「ええ!ゴミなんて跡形もなくクリーンしちゃいましょう!」
『おー!』と二人で手を上げるのは良いけどそろそろ歩かないかね。
俺のそんな眼差しを受け取った二人は顔を見合わせて軽く笑うと、友奈は美森の車椅子を押し、歌野は二人の後ろを歩く俺と並ぶ。
しかし、相変わらず後ろから見ているだけでも分かるくらい美森の幸せオーラが凄いな。
まあ記憶もない、足も動かない、そんな中で底抜けに明るく、障害者である美森の事を欠片も不快に思わず真摯に受け止めてくれているのだ。
惚れるなという方が無理というものか。
頑張れ美森、俺は同性愛とか気にしないから好きにやってくれ。
でも友奈は男女問わず大人気だから早めに決着付けた方がいいぞ。
「それにしても、風先輩、なんで紅葉くんだけ駄目だって言ったんだろう……」
「風先輩にも考えが有っての事だとは思うのだけど、本人に聞いてもはぐらかされてしまうのよね。」
そんな話題を聞き、ふと冷静に思った。
「―――普通に考えて、あのうどん……風と妹の樹、友奈に美森に歌野と女子しか居ない空間に俺がいたら滅茶苦茶気まずいよな。」
「まあ確かに、ガールズの中にボーイ一人は駄目よね。」
まず根本的な問題点だった。
俺が入部した場合、男は俺一人。気まずいなんてものじゃない。
だが―――
「それ以前に、あの顔は何かを隠してる顔だったな……勇者部に、女だけ、それでいて俺は駄目と来たら……理由なんて限られるだろう。」
「その理由って?」
歌野の質問に俺は少し躊躇ってから、重く感じる口を開く。
「恐らくだが――――風は女好きなんだよ!!」
「それ後で報告しておきますね」
「後生だからやめて」
◆
通学路を歩く四人の更に先を歩いていた姉妹が居た。
姉であろう背丈の少女―――風が立ち止まり、突発的なくしゃみを撃ち出した。
「……はーっくしょぉい!!!」
「うわわっ!お姉ちゃん、風邪?」
「んー……なんか……凄い不名誉且つとんでもない誤解が生まれたような気がする……」
「……ほんとに大丈夫?」
心配そうに顔を見上げる樹の頭を軽く撫でてやり、再び横に並んで歩き出す。
だが、流石の風でも気付けなかった。遥か後ろを歩く入部を許可しなかった後輩に女好き疑惑を掛けられていることには――――。
◆
「じゃあこの問題を―――」
時間は過ぎて何時もの授業風景、何時もの教師に何時ものクラスメート。
代わり映えが無く、俺は誰が見ても分かるだろうつまらなそうな大あくびをする。
歌野にちょっかいでも掛けるか……
そう思って隣の席――何度席替えしても不思議と毎度隣になるのは
俺と違って美森みたく真面目に授業を受けていた。手を出したら後で怒られそうだが、退屈凌ぎの背に腹は代えられない
「(許せ歌野……後で弁当のプチトマトあげるから……)」
不意打ちで脇腹でもつつこうとした――――瞬間。
『!?』
「あわわわわ!な、なに!?」
「友奈ちゃん……いや、私の端末からも―――!?」
「あら、私のもそうね」
「こら、三人とも、授業中よ!」
「すみません!すぐ消します!」
突如として、三人のスマホからアラーム音が鳴り響いた。不安感を煽るような不快な音だ。だが、アラームを止めようとスマホの画面を見て固まってしまう三人。
「……?おい、歌野、どう―――
◆
―――した…………!?」
一瞬、刹那。
いや、それ以上。
まばたきをしたほんの僅かな隙間を縫って―――
三人が突如として姿を消した。
「は?」
俺の一言は、クラスメートと教師のざわつきに掻き消される。
なんだ、いや、瞬間移動、三人纏めて、どこに、無事なのか、友奈、美森――――
「歌、野……」
――――――――死
「っ」
まて。そうだ、落ち着け。
冷静になれ。念のためにと、うど……風から渡されたアプリ……NARUKOだっけ。あれで全員に連絡すれば良い。
深呼吸をして、いざNARUKOを使おうとした時、教室に謎の人物が入ってきた。
あれは……
「……大赦?」
古くさい和服に仮面を付けた変態集団。四国を牛耳っていると言えば悪口になるがあながち間違いではない、と俺からしたら評価の低いのが大赦の人間だ。
この四国を死のウイルスとやらから守ってくれてる神樹さまを信仰してるのだろうが、俺は無神論者なんだよね。神なんて居るわけないだろ。
そんな大赦の人間が何故ここに、と質問する前に、大赦の人間が教師の横に立つと、手を挙げて注目を集める。
『静まれ』
と言われているのが分かった。
その後の説明を半分近く聞き流してはいたが、重要な部分を抜粋するとどうやらあの三人……勇者部という共通点があるなら恐らく犬吠埼姉妹も、『お役目』とやらを果たすために突如として消えることがあるけど、皆で応援してあげましょう。
―――だそうだ、何が応援してあげましょうだよ。ヒーローショーじゃねえんだぞ。
話が終わってすぐ、教師の制止を無視して教室から飛び出す。
NARUKOでの連絡が通じたからだ。野菜の
いざ屋上へと行こうとすると、先程の大赦仮面が話しかけてきた。
「先人紅葉」
「……あ?」
「君はこの件に関わらない方がいい。」
「――――どういう意味だ?」
無駄に通りがいい、仮面を取ればイケメンなのであろう男の声。
だからか無性に腹が立つ。
「君には彼女達と同じ土俵に立つ力が無い。ただの一般人として、お役目を果たす彼女達の無事を祈ることしか出来ない身で何が出来る?」
「あいつらの、少なくとも歌野の帰ってくる場所にはなれる。」
「―――――。」
即答。
自惚れなのかもしれないが、幼馴染としてあいつが危険な目に遭うとして、俺がその件をどうすることも出来ないなら―――せめて帰る場所になる。
だって昔から荒事担当は歌野だし。
そもそもこんな若さで死ぬような奴じゃないし。
「……そうか……そういう答えも、あるのか……」
「なんだよ。」
「もし君があの娘達に出会ってたら、何か違ったのだろうか。」
「はぁ?」
言うだけ言って、大赦仮面は俺の疑問の声に答えること無くそそくさと何処かに消えた。大方3年のクラスにも説明しに行ったのだろう。
俺は、改めて屋上へと走った。
◆
視界が晴れると、そこは屋上だった。
授業中だったのにどう誤魔化そう、とか。
恐ろしい目に遭った。とか、そんなことより。
「……どうして、私は……」
あんなにも当たり前のように
恐くて動けなかった東郷のように体が震えていた筈なのに、気付けば勇者に変身し、握ったこともない鞭でバーテックスと戦っている自分に驚きを隠せなかった。
武術を習っている友奈や、事情を知っている風さんと妹の樹君ならまだしも、私はただ畑弄りが好きなだけの普通の人間だ。
バーテックスよりも、これからも戦わなきゃいけない事実よりも―――私は私が恐い。
私ではない自分が戦っていたような気がしてならない。
そんな負の思考に囚われていると、屋上に走ってきた紅葉が強く扉を開いてやってきた。
「歌野!」
「――もみ、じ……?」
―――ただそれだけで嫌な考えが吹き飛ぶくらい嬉しいと思うのは、私が単純だからなのだろうか。
紅葉は躊躇い無く真っ直ぐ私に向かって走ってくると、勢いそのままに私を抱き締めてきた。
風さんの「ヒュー!」というからかう声がやけに鮮明に耳に入るが、紅葉の体が少しだけ震えている事が分かる。
……よかった。
恐いと思っていたのは、私だけじゃ無かったらしい。
「……ただいま、紅葉。」
「何処に行ってたんだ馬鹿野郎」
呆れたような、安堵したような声。
色んな感情がごちゃ混ぜになった私は、ゆっくりと、紅葉の背中に手を回した。
身長・約168cm(風が163cm・歌野が158cm)
年齢・14歳
好きなもの・蕎麦、(歌野作の)野菜、白鳥歌野
嫌いなもの・大赦、神樹(本人が無神論者の為)