【完結】先人紅葉は一般人である   作:兼六園

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紅葉と歌野の力関係は、紅葉は筋力では勝てるけどガチ喧嘩では勝てない感じです。


三話 東郷美森は臆病である

 

 

「あー、ゲフンゲフン!中睦まじいのは良いけど、そろそろ良いかネ?」

「うるさいぞうどん女」

「うど―――!!?」

 

 

人の幼馴染との触れ合いを邪魔しやがるうどん女をバッサリ切り捨て、歌野がそこに居ると言う温もりが惜しいが歌野から離れる。

 

「兎に角、無事でよかった。歌野」

「……サンクス、もう大丈夫よ。」

 

嫌な気配が漂っていたから咄嗟に抱き締めたが、これから自殺でも始めるんじゃないかとすら思えた重々しい雰囲気が歌野から剥がれている事を確認し、俯いたまま粉砕しかねない力でスマホを握り締める美森に向かい合い膝立ちになって顔を合わせる。

 

「美森は大丈夫――じゃ、ないよな。」

「……紅葉くん……」

 

名字の訂正すら出来ないくらい追い詰められているようだった。

―――何があったのか、風に問い詰める必要が出てきたな。

 

 

「友奈、美森の手を握ってやってくれ」

「うん!任せて!」

「―――ありがとう。友奈ちゃん、紅葉くん。」

 

とりあえず美森を友奈に任せ、半泣きで風に抱きついている樹を見てから風に話しかける。

 

「おいうどん」

「とうとう『女』すら付けなくなった……」

「全てを俺に話さないと二度とうどんを食えない体にしてやる」

「脅してきた!?」

 

驚いてばっかだなこいつ。

 

 

「いやまあ…説明したいのは山々なんだけどさ。」

「―――ああ、そうだな。日を改めるべきか。」

 

心身共に疲れているのに説明されたって、ネガティブな意見しか出てこないだろう。

風いわく今日はもうこんな事にはならないだろうから、一度帰って体を休めるべきだ。と

 

「じゃ、残りの授業終わらせて帰ろうか。」

「……明日必ず説明するから。」

「それがお前の義務だ。」

「手厳しいわね……」

 

俺の言葉に返事するように、チャイムが俺とこいつらの抜け出した授業の終わりを告げた。

……お役目の為だから仕方ない四人はともかくなんの関係もない俺は流石に怒られるよなこれ。

 

 

 

 

 

翌日、珍しく畑弄りを最低限で済ませ、食事も少量だった歌野を連れて登校する。まあ昼食の弁当は多めに作ったし大丈夫だろ。

以前ダイエットでもしてたのか似たような食事量の時に昼飯も少なく作ったら腹減りすぎた所為(せい)か腕齧られたことあるし。

 

暫く歯形が残ったのを見られる度に()()()()()()をとうとうやったのかと邪推されたこともあったからもう昼飯は渋らない。邪推した奴らはその都度放課後のプールに沈()()が。

 

 

「ねえ、紅葉」

「んー」

「帰ってから私に何をしてたのか聞けたのに、どうして聞かなかったの?」

「お前から聞いたのに風からも説明されたら二度手間だろ。」

「リアリー?」

「しつこい」

 

顔をずいっと近付けた歌野の額を突いて戻す。

疲れていたこいつを余計に疲れさせたくないという理由もある―――が。

 

最大の理由はこいつの説明が下手というのもある。撮影した映像見せてもらったり誰かに代わりに言ってもらう方が早いレベルだからな。

 

膨れっ面で顔を寄せてくる歌野の顔を掴んで止めていると、美森を連れて友奈が向かってきた。

 

「紅葉くん、風先輩が特別に入部認めてくれるって!」

「はぁ。」

「……嬉しくないんですか?」

「なんで歌野は良くて俺は駄目なのかの理由が知りたい程度で別に入りたかった訳じゃないからなぁ。」

「紅葉は昔から良いなら良い、駄目なら駄目で深く立ち入ったりはしないのよ。」

「関わっても問題ないかどうかの判断してる時に首突っ込むのがお前だもんな。」

 

欲とか無さすぎて確か小学生時代のアダ名は『修行僧』だった気がする。

 

友奈が見せてきたスマホの画面はNARUKOに切り替わっており、友奈と風のDMが写っている。

会話を要約すると、『紅葉()に下手に隠すと後が恐いから入部駄目なのやっぱり無しで放課後に連れてきて』だった。

 

俺をどんな人間だと思ってるんだ、失礼な奴め。

『風は女好き』の根も葉もない噂を嘯く検討をしていると、美森が手をもじもじと弄りながら俺を見てくる。

何かを決心したようで、片手を片手で包むように握ると口を開いた。

 

「なんだよ」

「―――紅葉くんは……歌野さんは……どうして風先輩に何も言わなかったんですか。」

 

昨日のあのときに聞けることがあっただろうと言いたいのか。

帰るとき俺にこっそり教えてくれたが、東郷だけが変身出来なかったらしい。変身ってなんだよ。

俺は大赦仮面の奴の言葉にヒーローショーかよと内心で比喩したが、あれ間違いじゃ無いのか?

 

つまりお荷物になった自分を責め、説明もなく友奈を巻き込んだ風に憤り、歌野が巻き込まれたのに冷静な俺に疑問を抱いている訳だ。

それに対し、返答を考えていると先に歌野が答えた。

 

「風さんは説明すると言ってくれた。私たちはそれを信用した。ただそれだけよ、東郷。」

「……美森が怒るのも分かるさ、友奈が巻き込まれたんだ。だがその場の感情で風を責めてもどうにもならんだろう?」

「それは―――っ」

「東郷さん……」

 

 

想像以上に引き摺ってるな……さて、風と衝突しないように立ち回るのは骨が折れるが関係が劣悪になるのも嫌なものだ。

あーあーめんどくせぇなぁもう。

勇者部五ヶ条とか言うのに『悩んだら相談』とかあったけど、予言する。こいつら絶対何かあっても溜め込むだろ、俺が言うんだから間違いない。

 

ふと、友奈が屋上の時の俺のように膝立ちで美森に向かい合う。

 

「東郷さん、私ね、東郷さんが私の代わりに怒ってくれるの凄く嬉しいんだ。」

「ゆ、友奈ちゃん」

「でもだからって、風先輩を嫌いになってほしくないよ。同じ部活の仲間で大事な友達だもん。」

「…………うん。」

「約束だよ?」

「分かったわ。約束。」

 

俺と歌野を他所に二人の世界を展開しないでくれないかね、指切りしてないでさ。

友奈に言われると弱いんだからなぁこいつなぁ。

俺の言葉を全部友奈に代弁させとけばどうにかなりそうなチョロさだ、友奈経由の詐欺とか簡単に引っ掛かりそう……ではないか。そう言う所はしっかりしてるし。

 

……美森は臆病と言われそうなくらいの慎重さを持っていて、友奈はムードメーカーの体現者みたいな明るさを持ってるが実は慎重すぎる性格の持ち主だ。

障害者というハンデを背負っているが故に一歩前に出られない美森は友奈が絡めば相手が先輩だろうとぐいぐい出られて、普段は聞き手に回る事が多い友奈は、隣人であり親友の美森にだけは自分の意見を先に言うことが出来る。

 

「相変わらず、前世で夫婦だったんじゃないかってレベルで上手いこと噛み合ってるんだよなこの二人。」

「確かにいいカップルになれそう、友奈が男だったら間違いなく付き合えそうよね。」

「そーだな。」

 

 

まあ四国以外に行けたとしたらイギリスとかフランス辺りで同性婚出来るんだけどな。

友奈と美森は、何というか美森の歯車を友奈が上手いこと制御してるって感じだ。

 

臆病過ぎるのと慎重過ぎるのが一緒なら程々に打ち消し合えるだろう。

俺なんてアクセル全開のドラッグ(白鳥歌野)カーの横で必死にブレーキ踏んで漸く『これ』なんだぜ、涙が出るね。

 

 

「部室に行った時、あんまり風に強く当たるなよ。」

「……大丈夫よ。紅葉くんじゃないんだから」

「えー。」

「『えー』じゃないの、全く……」

「そう言えば、紅葉くんって何であんなに風先輩に辛辣なの?」

 

友奈の純粋な質問。

―――何でだっけ。

 

……思い出せん。初めて出会ったのが俺が小六で風が中一の時のうどん屋だったのは覚えてるんだけどそっから何があったんだっけ。

 

 

「あー、んー。あえて言葉にするなら……年上としての威厳を感じないのと、女子力女子力言う癖に妙におっさん臭いから…かな?」

「おっさん臭いだけはやめてあげましょう、紅葉。」

「否定はしないお前もお前だぞ歌野。」

 

 

いや、だってさぁ、美森の胸の事を『東郷の東郷』って表現してるやつの何処に女子力が有るんだよ言ってみろ。

 

どうやって敬えってんだ、教えて知恵袋。

 

 

 

 

 

 

 

 

後は適当に下らない話で盛り上がり、俺たちは放課後を迎える。

そして、四人で一緒に部室前に集まり―――部屋をノックした。

 

 

「…………入ってちょうだい。」

 





白鳥歌野(しらとりうたの)

身長・158cm
年齢・13歳

好きなもの・先人紅葉、畑弄り、(自作の)野菜を使った料理、蕎麦
嫌いなもの・悪夢
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