リクエストの『物理的に年下の紅葉が見たい』をついでに消化したかったので、解決のために平均年齢を引き上げました(脳筋は思考が短絡的)。
なんとか間に合った…………
休日、部活参加自由となっている土曜。 俺達はひなたに呼ばれ部室に集まっていた。
「―――神託です。」
その一言で、部室内がざわめき立つ。
……だが、俺一人だけが妙な胸騒ぎに嫌な予感を覚えていた。
「勿体振らずにサクッと言ってくれんかね。」
「ああ、すみません…………実はですね……。」
言葉を溜めてから、ひなたは言った。
「若葉ちゃんが、未来から来ます。」
「…………マジ?」
「マジです。」
「未来の私が? …………何故だ?」
若葉の質問に、俺が答える。
「あー……それはお前が戦いが終わった後も、
西暦で戦いが終わった若葉と千景は超特例措置として、武器の携帯を許可されていた。 外に出るときは常に生大刀と大葉刈をそれぞれ腰と背中に吊るしていたしな。
「どうやら赤嶺―――『造反神側の勇者』に対抗するための新戦力を連れてこようとしたら間違えてしまったらしく…………見つけ次第元の時代に戻す準備を始めるらしいです。」
「ドジっ子路線は流行らないと思う。」
神樹のドジっ子とか誰も得しねえよ。
「……ごほん。 兎に角、このあとこの世界……学校に現れるでしょう大人になった若葉ちゃんは、きっと突然の事に混乱するはずです。」
そりゃそうだ……いや、あいつならそうでもなさそうか。 そんなひなたの言葉に、水都が付け加える。
「だから、皆で手分けして大人の若葉さんを探して欲しいんだ。」
「うむ。 自分を探すと言うのは変な感覚だが……わかった、それなら見付けたら全員にメッセージを飛ばせば良いな。」
「はぁ……仕方ないわね……。」
ヤル気満々の若葉に反して千景は乗り気ではないらしい。
わかるよ。 俺も若葉に会いたくない、昔若葉の体を鈍らせない訓練に付き合わされてたし。 俺当時片腕だったんですけど。
「……帰りてぇ。」
「……ふーん。」
休日の畑仕事を謳歌していた直後に呼ばれ、麦わら帽子に農業王Tシャツにジーパンと、色気の欠片もない私服姿を存分に晒している歌野が俺の言葉に何かを察する。
歌野は俺をじーっと見ると、肩をがっしり掴んだ。 ミシミシ言ってるから手加減して……!
「面白そうだから逃げたら駄目よ。」
「こいつ他人事だと思って……!!」
「実際他人事だし……まあ撮影は任せなさいな。」
「ヤメロォ!」
俺と歌野がぎゃいぎゃい騒いでいると、若葉に首根っこを掴まれる。 やめろぉ離せぇこの馬鹿力!
「楽しそうな所悪いが、お前は私と来い。」
「えー……やだめんどい。」
「あっ、じゃあアタシも着いてって良いですか?」
「構わないぞ、銀。」
「銀が来るなら仕方ねえな……」
「こいつちょっろ……なんか不安だし私も行くわ。」
その言葉は俺の心臓に突き刺さるからやめタマえ夏凜。 そんなわけで、俺と若葉と銀と夏凜で大人の若葉を探しに行くことになったのだった。 あーやだやだ、やっぱ帰っていい?
駄目? えーそんなぁ……。
◆
「紅葉、お前銀が居なかったらどうしてたんだ。」
「屋上で寝てた。」
「そうか、銀、首輪はしっかり着けておけ。」
「りょーかいっす。」
「いや流石にそういう趣味は……俺が着けるより銀か若葉の方が需要あるよ?」
主に園子とか美森とか須美とかひなたとか。 あと杏。
「あ、でも銀に付けられるなら本望かも。」
「去勢して保健所に送るぞ。」
ああん、夏凜ってば酷い。
そんな事を言い合いながら、休日と言うこともあって誰も居ない廊下を四人で歩いていた。
他の連中に一階とか三階とかを担当させ、俺達は二階を担当したのだが、どこにおんねん。
これ行き違いとかになってるんじゃないの。
「一旦戻って休憩しない?」
「紅葉さん、まだ5分も経ってないです。 もう少し頑張りましょう?」
「少しは忍耐力を鍛えたらどうだ、付き合うぞ。」
「甘えんな動け。」
「うごごごご…………」
銀の慈愛に反してこいつらの野武士具合と来たら……。
ボロクソ言われながら歩いていると、ふと人影。 その人影の見慣れた金髪が、答えを物語っていた。
「あ、見っけ。」
「ほんとだ、あれ若葉さんですよね?」
左手に鞘に収まった生大刀を持ったままの若葉は、まだ俺達に気付いていない。
「あれが未来の私か……」
「あんま変わらないのね。」
「そう簡単に変わるもんでも無いだろ―――――変わる、ものでも……?」
「あ? どうしたの?」
「じゃあアタシ呼んできますね!」
俺はそう言って駆けた銀を横目に、違和感を抱く。
「大人になった若葉、勇者の力は無いんだよな。 普通こんなことになったら『敵側の神の仕業かも』って思うよね?」
『―――――あ゛っ』
「あと若葉、後ろからの気配に反射的に生大刀抜く癖あるよね?」
「ああ。 こっちに来てからはその癖も無くなったが……」
「大人のお前、あの癖治ってないぞ。」
俺と夏凜と若葉で顔を合わせ、同時に若葉(大)に駆け寄る銀を見る。
「アカン」
「止めた方が良いんじゃない?」
「っ―――紅葉!」
「……二人は変身しろ、戦いになるぞ!」
二人がスマホを取り出したのを見ずに、俺は銀を追って走った。
◆
銀は大人の若葉の後ろ姿を追っていた。
大人と言うこともあり、歩幅と脚の長さの違いで中々追い付けないでいる。
「(足早いな~おっきい若葉さん、ちょっと脅かしてやろうかな。)」
イタズラ心が芽生えた銀は、足を止めて教室を覗いている若葉(大)に忍び足で近付く。
一つ大声でも出してやろうか、なんて考えていると、不自然にピタリと若葉(大)が動きを止め――――
生大刀を抜刀し、銀目掛けて振り抜いた。
瞬間、銀の背後から二つの影が動く。
一つは紅葉。 銀の首の襟を掴んで引っ張り、抱き止めて尻餅を突く。
二つ目は夏凜。 壁を蹴って跳躍し間に割り込むと、刀で生大刀を受け止め―――きれないと判断。 斜め上に軌道を逸らした。
「どけ」
「が―――」
生大刃が明後日の方向に振り抜かれた事を視認すると同時に、夏凜は若葉(大)に蹴り飛ばされ、廊下を滑る。
若葉(大)は半歩下がり、一瞬で体勢を立て直し、半歩踏み込んで紅葉と銀を纏めて切り捨てようとした。
「不味っ……」
「っ―――させんッ!!」
が、若葉(中)が夏凜と入れ替わるように割り込んで、鞘から半ばを抜いた生大刀で抜き身の生大刀を受け止める。
「見知らぬ勇者に、紅葉に、今度は昔の私か。 ますます訳がわからん。」
「私の話を、聞いてくれ……!」
「断る。」
バッサリと断られ、振り下ろされた生大刀に力が入る。 カリカリと金属が擦れる音が廊下に響く。
自分が邪魔になっている事を理解している紅葉は、銀を庇いつつ座ったまま後ろに下がり、若葉(大)に話しかけた。
「おい若葉、そのままで良いから聞け。」
「………………なんだ。」
「逆に聞くが、どうすれば俺たちを信用できる? 言ってみろ。」
「……そうだな、なら今の私やひなたしか知り得ない秘密を当ててみろ。」
「うわ簡単。」
は? という声が両方の若葉から発せられた。
「はーい若葉の秘密暴露、行きまーす。」
「おい待て、嫌な予感がするんだが」
「成人したての若葉は、酔った勢いで千景と「どうやら本物らしいな。」
「…………最後まで言わせろよ。」
そう言って、若葉(大)はあっさりと生大刀を引いて鞘に納めた。 間に挟まれた若葉(中)は、頭に疑問符を浮かべる。
「……なんの話なんだ。 というか大人の私は千景となにをしたんだ!?」
「それはだな……って言いたいけど、大人の方に真っ二つにされちゃうからまた今度な。」
紅葉はジロ、と若葉(大)に睨まれる。
銀は紅葉に抱えられたまま一言だけ呟いた。
「……部室行きません?」
◆
部室に戻った俺達は、若葉(大)の深々とした謝罪の礼を拝んでいた。
「大変申し訳無い事をした。 本当にすまない。」
「あーもー良いですって、怪我人とか居なかったんですから。」
「いや、しかしだな……」
「うう…………紅葉さぁん」
しつこい謝罪に困った銀が俺にSOSを飛ばすが、悪い、そいつの謝罪あと5分は続く。
「それにしても、夏凜が頑丈で助かったな。」
「じゃなきゃこの面倒臭い謝罪、一時間は続いたんじゃないの。」
「私の怪我の安否はともかく十分面倒臭いけどね。」
暫く続いた謝罪を終わらせた大人の若葉は、ひなたと水都から事情の説明を受けていた。
「なるほど。 ここは神樹様の内部に作られた世界で、造反神と戦っている…………と。」
「そう言うこと。 どうせ明日には帰るだろうが、説明しとかないと面倒だからな。」
二人からの説明を反芻していた若葉(大)……大人若葉? 昔年老いた若葉のこと枯葉とか言ったら張り倒されたことあるし大人若葉で良いか。
大人若葉は、自分を見て興奮し写真を撮りまくってる親友を何とも言えない顔で見ていた。
「ああ……大きくなった若葉ちゃんも素敵です……」
「良いよ~! 大人のご先祖様とヒナたんのアダルトな関係もバッチ来いだよ~!」
「ひなたも紅葉もあまり変わらんな。」
「お前がそれを言うのか…………?」
ひなたの横でエアロガを発動してる園子を見ないようにしてる辺り、自分の子孫があんなんでちょっと複雑らしい。
部室の光景を見ていた大人若葉は、不意に、俺に生大刀を向けると言ってきた。
「そうだ、折角五体満足の紅葉が居るんだ…………
「嫌です…………。」
「なんでだ?」
いやそんな心底不思議そうなトーンで言われましても。 そもそもお前の訓練に付き合うったって、盾で受け止めたりする程度だったし……まあ度々その盾も粉砕されるけど。
あと夏凜から拝借した木刀の柄をグリグリ押し付けるのはやめろ。 木刀で乳首当てゲームするな俺の乳首は真ん中には無い。
悪大官よろしくな『良いではないか』を男側で味わっていると、リトル若葉こと若葉が助け船を出した。
「若葉さん、良ければ私がお相手しても?」
「む、若葉…………自分の名前を呼ぶのは妙な感覚だがそうだな、お前とやるとしよう。」
「ゆ、許された……!」
「そしてその後にお前だ。」
「ヒエ……」
許されてなかった。 良いだろ別にお前の秘密なんて、たかが酔った勢いで千景とキスした程度じゃん。 当時の俺とひなたと杏のスマホにはその記録バッチリ残ってるけど。
まだ生易しいもんだろ、俺なんてその数年後に結婚相手に業を煮やされて薬盛られて襲われるんだぞ。
「それと―――千景、大葉刈を貸してくれ。」
「は?」
部室から出ようとした大人若葉。 思い出したように振り返ると、千景にそう言った。
千景の反応はごもっともだと思う。
◆
時間的には昼飯の辺り。 横で歌野が野菜スティックをボリボリ食ってるのを横目に、俺は肉巻きおにぎりを食っていた。
「野菜も食べなさい。」
「だからっておにぎりに突き刺すな……あーやめろ!」
「これでよし。」
「黒ひげ危機一髪かよ……?」
キュウリとかニンジンのスティックが俺の肉巻きおにぎりに突き刺さり、サボテンみたいになる。
肉のタレが付いたそれを抜いてかじる。 まあ、うん、普通に旨い。
「お待たせ。」
「コンビニで良いの買えたか?」
「ええ、限定の肉巻きおにぎりが。」
「俺と同じの買ったのか」
体育館を貸し切って行われたエキシビションマッチ、若葉vs大人若葉を見に集まったは良いが、弁当の用意なんてしてないわけで。
各自見たいやつが好きに集まって、ついでに昼飯の調達もしていたのだった。
「野菜も食べなさい。」
「……分かったわよ。」
夏凜の頬にニンジンを押し付ける
やはり体格も筋力も技量も違うと、若葉が勝つのも一苦労なようだ。 大人若葉が完成してからもなお研磨を続けてるとすれば、若葉はまだ発展途上だしねぇ。
…………遠当てで大木切断なんて出来るようにならなくて良いと思うんですけど。
若葉は生大刀で斬りかかるも、大人若葉が巧みに扱う大葉刈で接近を許されない。 正直、今の千景よりよっぽど扱いが巧い。
そして今、大葉刈を折り畳むギミックを利用して大人若葉が若葉の生大刀を巻き上げ――――
「危ねぇーーー!!?」
俺の顔を掠めて壁に刺さった。
……なんかどっかで似たような目に遭った気がする。
「……………………すまん。」
「今絶対どさくさ紛れに証拠隠滅謀っただろ。」
「さて、なんのことだか……。」
しれっと誤魔化した大人若葉は、若葉の生大刀を抜いて戻って行く。 楽しそうにしやがって……。
「自分の完全上位互換と切磋琢磨出来るなんて、今回限りだろうな。 若葉からしたら最高の誕生日プレゼントなんじゃないか?」
「……誕生日だったっけ?」
「歌野……覚えとけよ、俺は何回も祝ってるから忘れられないんだけどさ。」
「あー、西暦で?」
「そーそー。」
そして二十歳の誕生日に、あの珍事件が起きたと。 いやあ死ぬほど笑ったね。
とかなんとか想起していると、横で夏凜が貧乏揺すりしていた。
「……ウズウズしてるところ悪いが、一区切り着くまで我慢しろよ。」
「分かってるわよ。」
「あれ私も混ざった方が良いのかしら。」
「刀と鎌に鞭まで混ざるとか混沌とし過ぎてるでしょ。」
そんなバトルロイヤルじゃないんだから。
歌野が買い込んだ大量の野菜スティックを横からつまみ試合を肴に食っていると、どうやら一段落したようで、ひなたから渡されたタオルで汗を拭いている大人若葉が近付いてきた。
「小休止したら、次はお前だ。」
「あ、あれ有言実行するつもりなんすね。」
「当然だ。 生かしてはおけな……じゃなく、今のうちに始末を……でもなく。」
「もうはっきり言っちゃえよ……。」
視界の奥でスポーツドリンクを呷っている若葉を見て、夏凜を見てから歌野を見る。
「……………………夏凜が稽古頼むってさ。」
このあと、歌野も交えた異種格闘技戦でなんとか逃げ切った。
最近誕生日回らしい誕生日回書けてない……書けてなくない?
・乃木若葉(23)
神樹に間違って呼ばれたその1年後にひなたが結婚するが、とある事件でひなたのお見合いの相手を半殺しにする模様。