【完結】先人紅葉は一般人である   作:兼六園

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番外でうたのんとみーちゃんくっ付けたら凄い盛り上がってるし本編一話分より感想多いし正直笑った。皆百合が好きなんでしょもっと素直になってほら




十五話 三好夏凜は無力である

 

 

 

「例えば、杏の友達が顔に傷作って会いに来たとして、これは名誉の負傷だとか言ってきたらどうする?」

「……当然怒ります。」

「だよねぇ」

 

俺間違ってないじゃん。

咳も落ち着いた杏と並んで座り、俺は人生相談というか悩み事を聞いてもらっていた。

 

少しして、でも、と杏は続ける。

 

 

「きっとその友達も、相手に心配して欲しくないからこそそう言っているのかもしれません。」

「そうかね」

「そうですよ、多分。」

「多分か。なら、そうなのかもなぁ。」

 

 

さっきの今じゃ会いづらいし、退院したら謝ろうかなぁ。こうしてずるずる先延ばしにするから関係が悪化するのだが、この程度で根に持つような奴等を好きになった覚えはないし大丈夫でしょ。

 

「―――杏は、友達が好き?」

「―――はい。大好きです。」

「そ。大事にしな」

 

そう言って立ち上がる。あー、なんだろ。なんか泣きたくなってきた。温くなったであろうココアを買い直す分の小銭を握らせ立ち去ろうとすると、杏が引き留めてくる。

 

「あの、こ、これ……」

「それでなんか好きなの買いな。」

「そんな……悪いです!」

「……じゃあ、貸し1。

そのうちなんか手伝ってもらうよ。」

「……わかりました……」

「ガキ相手に変なことは頼まねえよ」

 

ぐしゃぐしゃっと髪をかき回して、今度こそ立ち去る。あいつらが退院するまでは勇者部も休みだなーとか考えながら、病院を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰っても居なかった夏凜を探してあっちこっち、砂浜の方面を歩いていると、ようやく夏凜を見つけた。

こいつ隙有らばいつも木刀振り回してんな。

 

 

「おーいかりーん。」

「―――――ッ!」

「……集中してんなぁ」

 

夏凜の元へ近付きながら声をかけるも、無反応でひたすらに木刀を振っている。どちらかと言えば剣舞に近いその動きは、自分よりデカいモノを斬るために最適化した結果なのだろう。

 

やがて動きが止まり、一呼吸分の休憩を挟んだ夏凜の背後に回ると俺は―――思い切り手を叩いて鳴らした。

 

 

「うわーーーーー!!!??」

 

「うおーーーーー!!!??」

 

 

結果、木刀で頭叩き割られそうになった。

 

咄嗟にクロスして防御した両腕に凄まじい衝撃が走り、腕が痺れる。経験則で分かるが確実に腕に亀裂入ってると思う。

だってガキの頃に歌野にクワでぶん殴られた時と同じ痛みがあるもんこれ、やめろよまた病院行くとか絶対やだからな。

 

 

「う、うごごごごご……」

「―――あ、ごめん」

「いいよ……うおお……」

 

哀れ、クロスしたとき上にした左腕には青アザが出来ていた。まあ亀裂とかアザ程度なら1日で治るけどさ、痛いもんは痛いのよ。

 

 

「……で、なにしに来たのよ。」

「うおあー…………病院に見舞いに行ったらお前も歌野も居ないから探しに来たんだよ、もしかして入れ違いで行ってた?」

 

「あ、多分そうね、歌野は帰りの途中で別れたから知らないけど。覚えは?」

「八百屋巡りでもしてるんだろ、あいつらが退院するまで勇者部もやることないんだし。」

 

自分の育てた野菜以外の出来も確認するのが楽しいらしい。俺にはわからない感性だし、理解しようとも思わない。

俺は二振りの木刀を片手で持ち砂浜から出る夏凜を追いかける。じくじく痛む左腕からの危険信号を無視して、夏凜と並列で歩く。

 

 

「……ほんとごめん」

「大丈夫大丈夫、明日には治ってるから。」

「相変わらずふざけた回復力してるわね、羨ましいくらいよ」

「治りが早いだけで痛いのは変わらんからやめた方がいいぞ」

「そうなの?」

「そーなの。」

 

悪い意味で痛みに慣れてくるんだよねぇ。

殴られたら痛い、切られたら痛い。ってのは忘れちゃ駄目なんだよ、俺は……まだ痛覚あるし大丈夫だと思う。

 

その後も適当に会話をしていると、ふと夏凜が呟いた。

 

 

「……私って、このまま勇者部に居てもいいのかな。」

「なんで?」

「だって私は戦う為にここに来たのよ?」

「そうだな。」

 

「じゃあ、戦いが終わった以上居る理由が無いじゃない。」

「そうかなぁ」

 

なにを言うかと思ったら……まあ大赦に居たときから訓練訓練訓練で碌に友達と触れあうことも無かったんだ、この先どうしたら良いかわからないんだろう。

 

 

「夏凜はどうしたい」

「……私?」

「うん、お前は帰りたい?残りたい?」

「―――私、は……」

 

「そもそも、自主的に大赦の勇者辞めちゃってるお前に行くとこあんのかよ。実家には帰りたくないんだろ」

「うっ……」

 

「俺はお前が居なくなるのは寂しいから嫌だぜ?」

「…………それ誰にだって言うでしょ」

「心外だなぁ」

 

私は知ってるんだぞとでも言いたげな目で睨まれる。うーん信頼がない、泣けるね。

 

 

「それにあの家だって、もう実質お前の家でもあるんだからな?」

「……いや私はただの居候で「俺は」

 

夏凜の言葉を遮って、前に立ち歩みを止める。

 

 

「俺は、お前も家族だと思ってる。だからあの家はお前のものでもあるんだよ。」

「―――あんたって、ほんと変」

 

知ってるよ。それに俺になにかあったら家主がお前になるように契約し直したんだから、居なくなられちゃ困るんだよなぁ。

 

 

改めて横にならんで歩く。チラッと横目で夏凜を見ると、どことなくまだ悩みが残っているように見えた。すぐに決められないと言うのなら、うちの最終兵器を駆り出すしかないな。この手だけは使いたくなかったんだがまだ悩んでるんだもん仕方ないよね。

 

 

 

 

とかなんとか考えていると、ようやく家に到着した。扉を開けて先に入ってから振り返り、夏凜を見据えて言う。

 

 

「―――――おかえり。」

「……………ただいま。」

 

 

うん。やっぱ、俺のポジションは()()だよなぁ。言葉を返しながら恥ずかしさからかそっぽを向く夏凜に苦笑を溢しつつ、俺は家に帰宅した。

 

 

「あーそうだ、どうせ明日も砂浜で木刀振り回すんだろうが、念のため歌野連れてけ。危ないからな」

「―――あんたは?」

「あいつらが居ない間、誰が部室の掃除すると思ってんのさ。」

「……そうね。」

 

そうだよ。

 

その後は、歌野が帰って来て3人で飯を食ってから風呂入って寝た。おわり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「完!全!復!活!」

 

数日後、退院して学校に来られるようになった四人は放課後に部室に集まっていた。

左目に花柄が付いた眼帯を巻いた風が右手を帝王よろしく天に掲げ、樹はスケッチブックを常備している。筆談かぁ、大変じゃない?軽くで良いから手話習えば?

 

それか機械音声に喋らせるか。ゆっくり樹だな。視界の端で部室を見渡していた友奈が、俺に質問してくる。

 

 

「……ねえ紅葉くん」

「なんすか」

「夏凜ちゃんは最近部室に来てないよね?」

「来てないよ」

「なにかあったの?」

 

言っても良いのかなこれ、まあ友奈だし大丈夫か。問題解決自体は歌野に任せればどうにかなるだろうし。

 

「んー、夏凜も悩んでるのさ。戦う為に来た自分が戦いの終わった今、まだ勇者部に居ても良いのかどうか。」

 

「そんな……夏凜ちゃんは勇者部の仲間だよ!」

「夏凜も義理堅いっていうか堅物というか、もう少し気楽に考えたら良いのにねぇ……」

「(それが夏凜さんの良いところなんじゃないですか?)」

 

「まあ弄り甲斐はあるよね。」

「紅葉くんはそろそろ本気で殴られますよ?」

「あーうんそうだね」

 

 

この間珍しく寝過ごしてた夏凜起こそうとしたら、夜這いと勘違いされて顎に良いの貰ったから今更だぞ美森よ。

ふざけて顔近づけた俺も悪かったけど。

 

やんややんやと会話を弾ませていると、突然友奈が立ち上がった。

 

 

「私、夏凜ちゃん探してくる!」

 

「あっ、友奈!もう……紅葉!」

「歌野が付き添ってるから大丈夫なんだけどなぁ」

「いいから!」

「へーい」

 

大急ぎで部室から飛び出した友奈を追いかけるように風に指示され、仕方なく追いかける。

 

 

……うわもう見えない、あいつ足早いなー。

 

武術習ってる勇者と一般人の俺とじゃ素のスペックが違うんだよちくしょう。ほんと、追いかけると引き離されて、追い付かれたらそのまま走り抜けられるなぁ。

 

清々しすぎてもう悔しいとすら思わんよ。

 

 

 

 

 

歌野の性格を考慮しなかったことで俺が後悔するまで、残り数分。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遅れて友奈に追い付くと、友奈は砂浜に降りる段差と大差の無い階段の上でおろおろしていた。

 

 

「うおえぇ……ゆ、友奈……どうした……」

 

息を切らした俺が陸に打ち上げられた魚みたいに必死に呼吸していると振り返った友奈は、俺の背中を擦りながら砂浜の方に指を向けた。

 

 

「歌野ちゃんと夏凜ちゃんが喧嘩してる!」

「………ナンデダロウネー、フシギダネー」

 

俺渾身の棒読みは案の定ガン無視されるが、まあいい。砂浜と言う足場の悪い場所で、夏凜と歌野は殴り合っていた。

夏凜の鼻から血が垂れている所を見るに、不意打ちで頭突きでも食らったのだろう。

 

 

あれーおかしいねー俺は『夏凜の悩み事の相談に乗ってあげて』って言った筈なんだけどねー。

 

 

「……とりあえず止めるか。」

「そ、そうだね!二人ともー!!」

 

俺と友奈が駆け寄ると、それに気付いた二人は一瞬こっちを見るけど、すぐ相手に視線を戻す。

 

 

「いや再開するなよ。俺『悩みを聞いてやれ』っつったよね?おい歌野、お前人の話聞いてた?」

「聞いてたわ、よ!」

 

そう言って歌野は顎を狙った右フックを避け、夏凜の腹をヤクザキックで蹴り飛ばす。モロに食らった夏凜は砂浜を転がった。

 

じゃあ対話して?誰が肉体言語で会話しろって言ったよおいゴリラ、こっち見ろ。

 

 

「……仕方ない。」

「も、紅葉くん?」

 

「見てろ、俺の生き様を……」

「紅葉くん!?」

 

 

俺はそう言って、助走をつけて拳を振りかぶった二人の間に走って入る。クロスカウンターになったであろうパンチを見事なまでに両方から貰い、鈍い音と共に俺の意識は闇に沈んだ。

 

 

 

後で歌野はお説教してやるからな……

 

 





歌野の性格、言動行動がだいぶ違うのは諏訪で戦っていたか否かでかなり変わってくるからです。あと紅葉の影響。
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