【完結】先人紅葉は一般人である   作:兼六園

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本編が気になってるところ悪いがワイバーン(短編投稿)だ!

ミノさん生存+先人母生存のifです
細かいことを気にしてはいけない。



短編 紅い牡丹とがしゃ髑髏

 

 

このご時世にしては珍しく古ぼけた小さな和風屋敷が並んだ道を、3人の少女が歩いていた。

それぞれが赤、青、紫を基調にした服を身に纏い、見目麗しく、それでいて派手にならない程度に着飾っている。

 

 

「おー……ここが紅葉さんの家かあ」

「落ち着きなさいったら……」

 

ある一軒家にたどり着くと、青い少女がはしゃぐ赤い少女を嗜め、その隙に紫の少女がお構いなしにインターホンを押した。

 

「ピ~ンポ~ン」

「あっ園子ズルい!」

 

「……はぁ……。」

 

 

赤青紫の少女たち―――三ノ輪銀と東郷美森と乃木園子の3人は、紅葉宅で勉強会をする約束をしていた。

 

 

 

 

 

『もーみんのお家で勉強会しよーよ~』

『やめた方がいいと思うよ。』

『よーし決定!』

『人の話聞こう?』

 

 

 

 

 

約束を、していた。

本人曰く『俺に人権はねぇ』

 

 

 

間を置いて家の中から人の足音が聞こえてきた。美森が銀と園子を後ろに、家主の登場を待つ。

 

ガラガラと音を立てて中から紅葉が出てくる―――事はなく

 

 

「あ? ンだ小娘共。」

『――えっ?』

 

 

紅葉の代わりに現れたのは、顔に傷を作った目付きの悪い女性だった。

 

 

右目を切り裂くような縦一文字の傷と、左の頬から目と眉毛を貫いて額にまで伸びた―――亀裂のような裂傷。

奥が黒くて見えないその亀裂は、何が原因で出来た傷なのか。

 

 

「あ、あのー……ここって紅葉さんの家っすよね?」

「そうだ。 オメーらあれか、紅葉とつるんでる奴等か。」

「は……はい……」

 

へー。というトーンからは確認し難いが、興味があるような声で園子を盾に会話する銀を含め3人をじろじろ見てくる。

 

 

「ふーん、で、オメーらの誰があいつの恋人なんだ?」

 

「あ、それはアタシ……ん?」

「勿論私で~す………ん~?」

 

 

開いた扉に寄りかかった女性の質問に即答した銀と園子は、顔を見合わせて火花を飛ばす。プレイボーイだねぇとケラケラ笑う女性を見るに確信犯(わざと)らしい。

 

 

「所で……貴女はどなたなんですか?」

「――だぁーれだ、当ててみろ。」

「えっと……紅葉くんのお姉さん、とか」

 

「全然ちげーよ馬鹿」

「ば、馬鹿……!?」

 

バッサリと切り捨てられる。直球の悪口に、笑みを崩さないようにしながらも美森の口の端は震えていた。

 

 

「私はなぁ……「おい母さん、客弄ってねーで通してくれよ。」

 

 

奥からぬっと現れた紅葉が、女性を母と呼び、3人は固まった。

 

直後に再起動。

 

 

『母さん!?』

 

「大当たりー。」

「……あ、そういえば会うの初めてか。」

 

 

 

母と呼ばれた女性は、大笑いしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ももも紅葉さん!あの人が紅葉さんのお母さんってどういうことなんですか!?」

「まあそうなるよねぇ、落ち着きタマえ。」

 

「あだっ」

 

覆い被さるようにのし掛かってきた銀にデコピンしてどかす。比較的余裕のある美森は兎も角、我らが園子様からの圧力が凄いからやめてくれ。

 

 

「あの方は本当に紅葉くんのお母様なんですか。」

「あの人の腹から出てきたのかーと思うと、俺も不思議でならないよ。人体の神秘だな。」

 

 

台所に居座って貰い物のお茶とお菓子を堪能してる母さんを見る。何故か見た目だけは中3~高校生くらいの子供なんだけどねぇ……

 

 

「言っとくけどあれでもう35だからな。」

「さんじゅ……!?」

「じゃあハタチの時にもーみんが産まれたんだ~?」

「詐欺では……?」

「ほんと詐欺だよ詐欺。あぶねっ」

 

台所から飛んできたカステラを受け止めつつ、お茶請けに食う。うん旨い、流石防人んとこのアホ貴族が持ってきただけはある。

 

来る度に防人メンバーを推してくるのはやめて欲しいけど。

 

 

「……赤子の俺を抱いてる写真見たことあるけど、当時からあの見た目だったな。お陰で母さんのあだ名は『妖怪』か『魔女』だった。」

「えぇ……どうなってんだ……」

 

 

俺が知りたいよ。

 

 

などと、下らない話で盛り上がりつつも勉強会は順調に進んでいたのだが、ここで事件は発生した。

 

「……んー、馬鹿息子に直接聞いた方がはえーか。」

「なんだよ。」

 

台所にて我関せずでこっちをぼけーっと見てた母さんが、テーブルに肘を突きながら俺を見ると言った。

 

 

「お前って誰かと付き合おうとか思わねえの?」

「おいふざけんなやめろ。」

 

 

この俗物!その話題出すんじゃねえよこの野郎!

 

筆箱に手を突っ込みながら周りをバレないように見ると、3人にガン見されてた。ヒエーーー。

 

猛禽類に狙われてるネズミの気分ってこんななのかなー、とか思いながらバキッと指圧でへし折れたシャーペンを取り換える。

 

 

「……さ、俺はもう終わったしちょっと風に当たってく―――いででででで」

 

ガシ、と銀に右肩を右手で掴まれる。ちょっとミシミシ言ってるんですけど。

 

 

「ここの問題が分からないんだけど」

「式間違えてるだけだろ。」

 

「もーみんあ~きた~」

「このガチ天才め……」

 

「紅葉くん、その……ここがちょっと。」

「お前俺より頭良いでしょ」

 

 

こいつら……

 

あーもー。一人くらい真面目な奴呼んどくんだった、芽吹ちゃんとかこういう時に限って居ないんだからさぁ。

 

……いや駄目だな、芽吹ちゃん最近アホ貴族とあやちゃんに毒されてきてるから嵐を呼ぶようなもんだ。

あと絶対誰か着いてくる。

 

 

「ヒューヒュー、熱いねぇオイ」

「こ、この野郎どの面下げて……!」

 

 

俺と同じで出された宿題を全部終わらせた園子に後ろからしな垂れ掛かられ、問題が分からないと銀に引っ付かれる。

美森は銀と同じようにノートを見せてくるけど、よく見たらそれ全部合ってるじゃねえかコラ。

 

おっさんみたいにゲラゲラ笑ってる母さんはとりあえず食ってるカステラ喉に詰まらせて欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひー……面白っ」

 

 

笑いすぎて目尻に浮かんだ涙を拭い、小娘3人に絡まれて嫌々言ってる癖に引き剥がそうとしない馬鹿息子を肴にお茶を飲む。

 

防人の5人と、あとなんだ……勇者部のが白鳥のガキんちょと卒業したらしいの含めたら7…9人?か。 多いねえ昔の皇族かよ。

 

 

馬鹿息子はどっか一歩引いて大人ぶってるからか誰かとくっつくなんてあり得ねえみてーに言ってるけど、予言してやる。こいつらからは逃げられないぞ。諦めて受け入れちまえ。

 

 

「おっしやれ!園子!」

「あー!耳は困ります園子様困りますあー!」

「ん、あーむっ!」

「やめろォ!」

 

 

とか考えてたら、赤い小娘に両腕と両足で後ろからがっしりホールドされてる馬鹿息子が、乃木のガキんちょに耳を噛まれてなんか吸われてた。 一番胸がデカイやつは常識人ポジションらしく、止めようとしてるがチラチラ見てる。

 

ははーん、むっつりめ。

 

 

……いやほんと、こいつら見てると飽きねえよ。もう暫く長生きできそうだってくらいは。

 

無意識に引っ掻いていた左頬の亀裂のような……じゃなく()()()()()()を指で撫でる。

 

 

 

 

馬鹿息子にゃバレてねーが、私は元勇者だった。中一から高校卒業まで戦って―――んで、こうなった。

 

6人いた仲間は私が高二の時までに全員死んで、最後になってからは一人でぶっ通し何度も何度も襲ってくるクソバーテックス相手に切った張ったしたもんだが、対価は良いもんじゃなかった。

 

 

偶然にも完璧に適合できた精霊『がしゃ髑髏』の力で吹っ飛んだ手足は骨を基点に再生できたんだが、5回くらい12体のバーテックスと戦ったせいで体の殆どをがしゃ髑髏に再生させた骨で埋まっていた。 要するに全身ががしゃ髑髏の骨になったから、体が老いなくなっちまったんだよ。

 

 

そんな体でも馬鹿息子が産めたのは不幸中の幸いだったが、私としては変な力でも身に付いてねえかヒヤヒヤもんだった。

 

 

ちなみに顔の亀裂は勇者の力を失いかけてた最後の戦いでレオ・スタークラスターに顔を相討ちで吹っ飛ばされた時に勝ったは良いが再生の途中で力を失ったからだ。

頭蓋骨そのものに亀裂が出来てて、その影響が皮膚にまで出てるだけで痛くは無いんだがどうも無意識に掻いちまう。

 

 

今現在馬鹿息子の耳を堪能してる乃木のガキんちょは、確か小学生の時に20回の満開で全身の機能を持ってかれてたんだったか。

それで絶望もしねえで友達を信じてたってんだからなんだ、後輩も結構強かに育ってるんだな。

 

 

「そ、そのっち……そろそろ離してあげたら?」

「む、むふ、はむっ」

「うがあああああああああああ……」

 

 

……強かだな、うん。

……なんだ、私の後輩は皆ああなのか?

 

 

 

 

―――兎も角、私の体は精霊で形成されている。

つまり……あれだ、()()()()。春信の坊主経由で調べて貰ったが長くてあと5~6年しか無理らしい。

 

 

()()()()()、馬鹿息子の成人姿は見られるわけだ。ばーかこの程度で絶望なんてするかよ。

こんだけインパクトある人間をあいつらが忘れるわけがねえだろ、こんくらい怖かねえ。

 

 

馬鹿息子と小娘共を尻目に端末を起動する。

 

待受はずっと昔から勇者仲間のあいつらとの集合写真のままで、撮影ちょうどに私の誕生日だったからあれよあれよとセンターに押し込められて困惑する自分の姿が写っている。

 

 

「わりーな、お前らの所に行くのはもう少し掛かりそうだ。」

 

 

待受画面を撫でて、電源を切る。

 

 

少しでも記憶に残るように、馬鹿息子(先人紅葉)に言葉を飛ばした。

 

 

 

「おいおい男だろお、少しはやり返せよー。」

「んむ? いいよーもーみんバッチ来いだよ~!」

 

「……死にたい。」

「あ、じゃあ次アタシの番で」

 

「ぬおおおおおおおお……!」

 

 

 

 

 

 

 

うん。あと5~6年どころかこいつの孫見るまで死にそうにねーわ。こんな面白いもん見せられてそんな短さで死ねるかよ、あと10年は生きてやるっての。

 





短編世界線の紅葉(15歳)

中学3年生。風の卒業後部長になった樹のサポートをしつつ、勇者・防人の面子と仲良くしている。
母親、防人、勇者部の面々から恋人作らないのかと言われ続けたせいか最近胃に穴が空きそうになってることに気付いた。

ハーレムは早死しそうだしやりませんと本人は言っているが、残念なことに勇者と防人からは逃げられない。強く生きろ。





先人母(35)

本名は先人(もみじ)

漢字が違うだけで紅葉と同姓同名。とてつもなく口が悪く、顔の傷のせいで初見でヤの付く人に間違われることがよくある。
左頬の亀裂は戦いで負ったモノだが右目の切り傷は親の虐待で負った傷。でも本人はあまり気にしていない。

勇者時代の武器は6本の分身剣を生み出せる聖剣と受けた衝撃をエネルギーとして蓄積できる盾。精霊はがしゃ髑髏。神世紀の勇者で唯一精霊を体に卸して無事で済んだ貴重な存在故に、生き残ってしまった。





先人父

名前は先人(かえで)

楓が男の名前でなんで悪いんだよ!とはならないほどの平和主義。
紅葉の口の悪さが母親似なら勇者・防人への無条件の信愛は父親似と言われている。

椛と言う暴走列車に上手いことレールを敷いてやれる唯一の運転手だったが、この世界及び本編では瀬戸大橋の大事故の際犬吠埼姉妹を助けようとして庇い、死亡している。
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