【完結】先人紅葉は一般人である   作:兼六園

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風先輩と東郷さん、原作より火薬詰まってるから書いてて死人が出ないか心配になってる(紅葉を見ながら)



二十四話 乃木園子は先代勇者である・後

 

 

 

「……えっ、紅葉くん!?」

「おおう友奈……と、美森?」

「どうして紅葉くんまで……」

 

 

丸椅子に座ったまま謎のワープをした俺は、戦いが終わってから同じく連れてこられたのであろう友奈と美森に短いスパンで再会を果たした。

 

「そっちは戦い終わったんだよな?」

「あ、うん。やっつけたよ!」

「学校の屋上以外にもコレがあったのですね。」

 

友奈の近くにあった社……祠?は屋上にもあった。どうやら、これがワープ地点になっているらしい。

 

「と言うか俺って椅子と一緒にワープしてきたんだな。すげえ面白い光景だけどよかった、空気椅子とか強要されなくて。」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう……」

 

 

ほんとよかった、ワープと同時に転んだりしてたら歌野だったら写真撮ってたぜ?

 

「……つかここもしかして瀬戸大橋記念公園か?」

「うわあ凄いなぁ……どうやったらあんな壊れ方するんだろう……東郷さん?」

「…………瀬戸、大橋……」

 

 

鷲尾須美として大橋市に居た記憶の欠片が残っているのか、眉を潜めてある方向を見ていた。

 

目線の先には焼いたスルメみたいに丸まる形でひしゃげた、かつての瀬戸大橋があった。

あーあー、前は立派に一本の橋だったのに。

 

 

……ここから讃州市ってかなり距離あるよな。

 

 

夕焼けに照らされた瀬戸大橋を背にあいつらに連絡しようとしてスマホを弄るが、不自然に電波が通っていなくて開けない。

 

動けこのポンコツが!機種変したばっかだろ!

 

 

もしやジャミング?

俺は別として勇者に変身させない為か。

 

 

 

―――瞬間、人の気配を感じた。

 

 

「誰だ」

 

「ど、どうしたの?」

「……紅葉くん?」

 

 

見付けてくれと言ってきているようにあからさまな気配を感じとる。感じた気配を辿ってワープしてきた場所の裏に回るとそこには―――

 

 

「ずっと呼んでたよ。お姉さん、わっしー……」

 

 

―――病院のベッドに身体を投げ出し、服と包帯で隠された顔と身体を見て辛うじて人だとわかる輪郭をした、一人の少女が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「わっしー? 鷲?」

 

首をかしげる友奈は、少女を見てベッドを見る。

 

「って言うかなんで外に病院のベッドが!?」

「……皆が戦ってたのを感じてたから、ずっと呼んでたんだ~」

 

答えになっているか分からない返答をし、友奈を一瞥してから少女は美森に視線を向けた。

 

 

「東郷さんの知り合い?」

「……いえ、初対面だわ。」

 

「あ~、うん。そっか。

……わっしーっていうのはね、私の親友のアダ名なんだ~……ごめんね。」

 

 

一瞬だけ悲痛に顔を歪め、取り繕うように乾いた笑いを溢す。

 

「……ところであのー、どうやって私達を呼んだの? ……ですか?」

「敬語は要らないよ。 ……その祠、お姉さん達の学校にもあるでしょ? だからバーテックスと戦い終わって戻るときに誘導できるかな~って思ったんだ~。」

「! バーテックスをご存じなのですか!?」

 

車椅子に乗ったまま身を乗り出す美森。その肩を押さえて落ち着かせる友奈もまた、驚きを隠せないで居た。

 

 

「一応、二人の先輩なのかな。 私は乃木園子って言うんだ~」

「さ、讃州中学2年の結城友奈です! ……あれ、乃木園子……?」

「私は東郷美森です。」

「……美森ちゃんかぁ」

 

「先輩ってことはつまり、園子ちゃんも?」

「そうだよ~……私も勇者として、二人の親友とえいえいおーって頑張ったんだ~。今はこんなになっちゃったけどね。」

 

 

二人は園子の全身を見回す。

ピンクと言うよりは薄紫の病院服に身体を隠し、脈などを計る機械に繋がれている右腕以外は見えない。

 

顔は左目と口元以外の全てに包帯を巻き、髪が長いと言うことしか分からなかった。

 

 

「乃木さんの怪我は……バーテックスに?」

「んーん、私こう見えて結構強いからそうじゃないんだ。 そうだなぁ……ああ、美森ちゃんとお姉さんはさ、満開って……した?

わーっと咲いて、わーって強くなるやつ。」

「うん、したよ? わーって。」

「私もしました。」

 

僅かに目を見開いて、すぐに閉じる。園子はそっか、と呟くと二人に問いかけた。

 

「花が咲いた後は、どうなると思う?」

「えっ? ……か、枯れるとか?」

「そう、枯れる。散るとも言うね。満開には隠されたシステムがあるんだ、その名前は―――散華(さんげ)。」

 

「花が散る、の、散華?」

「うん。二人とも自覚してるんじゃないかな~。だって、体の何処かが変になったでしょ?」

 

美森は反射的に耳を押さえた。だが、友奈はその言葉にピンとこなかった。

 

 

「……私は()()()()()()()()()?」

 

「―――たぶん、友奈ちゃんの場合は内臓なんかが使えなくなってるのかもしれないわ。」

「そうかなぁ?」

 

美森の脳裏に紅葉から言われた言葉が反芻される。友奈は時おり変になる、というもの。

 

実際、二人だけの時に友奈は良く遠い目で何処かを見ていたり、風と樹を見ながら『タマちゃんとアンちゃんみたい』と言ったこともあった。

 

誰かと聞いても、何のことかととぼけられた事もあった。

 

 

 

事実友奈は、神樹と繋がったことで記憶が流れ込んでいることを知らない。

別人格のようなモノが現れた事で、その負担を押し付ける形で忘れているからだ。

 

 

―――もっとも本来、乖離性同一性障害(いわゆる二重人格)使()()()というのは()()なのだが。

 

 

「一つ咲けば一つ枯れ、二つ咲けば二つ散る。満開すればするほど精霊が増えたり力が増えたりするけど、その代わりに体の何処かが使えなくなる。精霊の力によって私達勇者は死ぬことがない。でも、それで戦い続けてこうなっちゃったんだ~。」

 

「そん、な……」

「どうして私達が……」

 

「いつの時代も、神様に見初められるのは汚れなき無垢な少女達。汚れていないからこそ、大人や男の人と違って大きな力を振るえるんだよ。

そして力を得る代わりに、体の何処かを供物として捧げる。これが今の勇者システムなんだ。」

 

 

無慈悲に、淡々と。

この世の条理はそうなのだと、二人に園子は言う。

園子は、自分の身を以て確かな説得力を見せ付けた。

 

 

「私達が供物なんて、そんなの―――!」

「私たちにしかやれないからって、酷い話だよね~。」

「……それじゃあ私も、皆も……これからも体の機能を失って行くと言うの……?」

 

目尻に涙を浮かべて絞り出すように言葉を紡ぐ美森を抱き止め、友奈は言う。

 

「でも、もう13体全てのバーテックスは倒したんだもん。これ以上に何かを失うことなんてないよ!」

「……倒したのは凄いよね~、前は追い返すのが精一杯だったんだから。」

「そうですよ!だからもう戦いなんて……東郷さん?どうしたの?」

 

「―――これは……」

 

園子がそう言ったとき、ふと美森はベッド脇の小さな引き出しに写真立てが置かれていることに気付いた。

自力で車輪を回して近付くと、そこには6人の男女の集合写真と紅い牡丹の着いた髪留めがあった。

 

灰色の髪をした少女の両腕それぞれに片腕を絡まされた二人の少女、片方は輪郭や髪色で園子だとわかる。そしてもう一人―――

 

 

「わ、たし……?」

「これ……って、あの時の!?」

 

ひょいと美森の後ろから写真を覗く友奈。驚愕の声を挙げ、三ノ輪銀に腕を絡まされた鷲尾須美の顔を見て、更に驚いた。

 

「須美ちゃん―――って、もしかして、東郷さんなの……?」

「美森ちゃん……わっしーはともかく、お姉さんは覚えてるかと思ったんだけどな~」

 

「じゃあ園子ちゃんって、園子ちゃん!?」

「哲学みたいだね~?」

 

唐突に降って湧いた爆弾に、二人は騒ぎ立て、園子はそれを見て楽しそうに目元を緩める。不謹慎ではあるが、二人の慌てようは園子にとって心から望んでいた刺激でもあったからだ。

 

 

「いやこれは、でも、くあwせbrftgy!?」

「落ち着け」

「へぎゅっ!?」

 

混乱の渦に呑み込まれた友奈を、物陰に隠れていた紅葉が背後からの一撃(拳骨)で引っ張り出す。

 

 

「紅葉くん……そう言えば今まで何処に?」

「勇者水入らずで話せるように隠れてた俺の配慮をありがたく思いなされ。」

 

そう言いながら、紅葉は写真立てに寄り添わせるように置かれていた牡丹の髪留めを拾う。

 

 

「……そういや、銀はどうなった。」

「…………。」

「そうか。」

 

何も言わない園子を見て察した紅葉は苦虫を噛み潰したような表情をした後、すぐに表情を戻して髪留めをポケットに入れた。

 

「紅葉くん、私は……私と乃木さんと、この女の子は……友達だったんですか……?」

「俺にはそう見えたけど?」

 

「―――私は記憶喪失を理由にのうのうと平和を謳歌していたんですか!?乃木さんがこんな目に遭っていたのに、私は……!」

 

掴み掛かってきそうな勢いで、紅葉の服を掴む。紅葉は年下にするようにぐしゃぐしゃと髪を撫でた。

 

 

「お前も園子も、結局は大人に利用されたに過ぎん。被害者なんだから仕方ないだろ。そうやって自分を責めるもんじゃない、大赦が悪いよ大赦が。」

 

「……あ、紅葉くん、東郷さん!」

「えっ―――っ!」

「……あーあー、良いところで邪魔しやがる。」

 

頭を擦っていた友奈が、二人に呼び掛ける。美森と紅葉が振り返ると、4人が仮面を被った和装の集団に囲まれていることに気付く。

 

園子の目付きが険しくなり、紅葉が呆れたようにため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大赦仮面マジで絶滅しねえかなーって。

 

 

まあシリアスな空気がアレルギーレベルで嫌いだから今だけは感謝してやるけど。 ……いややっぱ無理。舌噛み切った方が良いわ。

 

 

「俺を狙う物好きは居なくなったみたいだが、俺が嫌いなのはまだ居るみたいだな。 やんのか?」

 

俺を警戒してか、ガタイの良い大赦仮面が数人前に出る。

 

……が、横の園子から発せられた殺意によって重圧が増して動きを止めさせられる。さりげなく俺まで巻き込むのやめてくれない?

 

 

「……3人に手を出したら、許さないよ~?」

「俺まで巻き込まないでよ」

「……もーみんに精霊バリアないの忘れてた~。」

 

えへへ、と笑う園子。 ……次はねえぞコラ。

 

 

「園子ちゃん、勇者システムから散華を取り除く事は出来ないの?」

「うーん、私たちが勇者であるうちは……無理かもね。」

「力を得ることと身体機能の喪失が等価になってる以上、おいそれとその機能を覆すことは無理だろうな。」

 

 

わざわざデメリットまで用意するのはなんでかねぇ、力を貸して貰ってるっていう自覚を忘れさせないためか。

 

 

「乃木さん……園子さん?」

「そのっちで良いよ~、私もわっしーって呼ぶから~。」

「……そのっち、私は『何を』、『何処まで』忘れているの?」

「わっしーは、私と三ノ輪銀……ミノさんと一緒に勇者として戦っていた頃の記憶を失ってるんだ~。」

 

「ぁ―――」

 

ひゅっ、と、美森は息を呑む。

それもそうだ、園子と銀との想い出を忘れているうえに、その自覚も無しに俺たちと中学生生活を送っていたのだから。

 

園子は美森の髪を結んでいるリボンを見ると言った。そういや、それ前は園子が着けてたな。

 

 

「―――そのリボンはやっぱり、わっしーに似合うと思ったんだ~。 綺麗だよ、わっしー。」

 

「ごめん、なさい……そのっちとの……銀との想い出を、私は思い出せない……」

 

「仕方ないよ~…………でも、いつか忘れてしまうなら―――ミノさんを失うなら、もっともっと、色んな想い出を残しておきたかった。わっしーと、ミノさんと、3人で―――私は……」

 

「そのっ、ち……」

 

 

動けない園子の左目から、涙が流れる。

一人は肉体的に死に、一人は人としての尊厳が死んで、一人は友との想い出を殺された。

余りにも無情すぎる選択をこの世界は小学生に迫っていた。

 

 

……そりゃ確かに勇者に死なれてほしくはないだろうさ。精霊は体に入れるんじゃなく形を与えてサポートに特化させ、勇者の殺し方を学習するバーテックスに対抗する為に満開を用意した。

 

俺はそれが悪とは言わねえよ。

 

だが満開の真実を隠し、記憶喪失を利用して美森(須美)を再利用して、風や園子たちを『世界の危機だから』を理由に戦いに駆り出しておいて仕方ないよねで済んだら警察は要らねえんだよなぁ?

 

 

「……美森、これ使え。」

「紅葉くん……」

 

俺は髪留めを入れたのとは違うポケットからハンカチを取り出して美森に手渡す。

 

美森はそれを使って園子の涙を拭った。ちなみに広げるとでかでかと『農業王』と書かれているからその点は注意しろ、いいか、空気が壊れるからそれ広げるなよ。

 

 

「……ありがとう。そろそろ、帰らないと遅くなっちゃうね。大赦の人が車を用意してくれてるだろうから、それで帰った方がいいよ。」

 

「そうした方がいいな、変身対策で電波入らねえけどあいつらに相当心配されてるだろうぜ。」

「あ、そっかあ……風先輩とかカンカンかもね」

「……もう少し話したかったけどこればかりはどうしようもないわね。」

 

 

夕陽がだんだん黒くなって行き、時間を見ても結構遅い時間になっていた。

そろそろ帰らねえと晩飯作る時間が無くなっちまう。もうサプリと煮干しをおかずに蕎麦を食うのは嫌だぞ……!

 

大赦仮面に案内されてこの場から去ろうとした時、園子に呼び止められた。

 

 

「待って、もーみん。」

「あー?」

「渡したいものがあるんだ~」

「……なんだよ。」

 

ベッドに近づく。

目線を引き出しに向けると言った。

 

「その引き出しを一番下、上から2番目、下から2番目に引いてから一番上を開けてみて~」

「えぇ……」

 

からくり屋敷かよ。

 

……とりあえず、言われた通りに引き出しを開ける。

中には茶封筒が入っていた。

 

 

「……封筒?」

「帰ってから開けてね~」

「はあ。」

 

中封筒を制服の内ポケットにねじ込む。

 

「もーみんはどうして勇者でもないのに、自分までここにワープ出来たのか気にならないの?」

「そりゃお前、俺が無垢な心を持つ清純な男の子だからでしょ。まだ中2だぞ。」

 

「いやそれはないよ。」

「クーン……」

 

そ、そんなはっきり言わなくても良いだろ……

 

ニコニコ笑って『またね』と言った園子に背を向け、その場を後にする。リムジンみたいな横長の車のトランクに丸椅子を放り込んで中に入ると、既に友奈と美森が座っていた。

 

友奈の隣に座り、走り出した車に揺られながら、無意識に園子や銀の顔を思い浮かべた。

 

なんとなく二人を見ると、友奈と美森は疲れたのか寄り添って眠っていた。美森が握ったままのハンカチを取り返して、美森の目元の涙を拭う。

 

 

「……あんまり気負うなよ。」

 

寝ている二人の頭を軽く撫で、ポケットに突っ込んだ髪留めを取り出して注視した。

 

赤い牡丹よりも紅い何かが、染みのように付着している。

 

 

「……血か。お前死ぬ最期まで着けてたのか? ……銀」

 

 

色々と起こりすぎて流石に疲れた俺は、髪留めを優しく握りしめて目蓋を閉じた。

 

脳裏に、眩い銀の笑顔を張り付けて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚この日の晩飯は煮干し入り蕎麦とサプリと漬物だった模様。殺す気かこの野郎。

 





実は無意識レベルで銀に惹かれてた紅葉、想いを伝える間もなく失恋するの巻。中2と小6ならまあ……まだロリコンじゃないでしょ

あとそのっちの説明回だからってまた長くなってるのどうにかしろ(自問)
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