【完結】先人紅葉は一般人である   作:兼六園

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そろそろ歌野にヒロインらしい行動させとかないと紅葉が受けメインヒロインのままこの作品が終わってしまうので初投稿です。

結構前に言ってたうた×もみ回……かな?多分。



短編 甘えん坊の白鳥(はくちょう)

 

 

 

何時ものように部室。紅葉と夏凜は特に依頼も無くだらだらと時間を浪費していた。

 

友奈は美森宅でぼた餅を作る約束をしていたのかそそくさ帰ってしまい、犬吠埼姉妹はスーパーのタイムセールを理由に全力疾走していった。

 

 

「あー……紅葉?」

「あん?」

「いや、そのー。」

 

口ごもる夏凜に紅葉は淡白に返した。夏凜は言うか言うまいかで悩んで、少しして切り出す。

 

 

「…………歌野、どうしたの」

「……ああ、こいつか。」

 

夏凜が指をさした方向に紅葉が首を向けるとそこで、椅子に座った紅葉の後ろに同じように椅子に座った歌野が紅葉に抱き付いてうなじに顔を埋めている。

 

 

「んー、まあ。あれよ……ホームシック的な?いや違うな、なんだろ。」

 

「結局どう言うことなのよ。」

 

 

ツッコミ気質の夏凜は、気になってしょうがないのか歌野と紅葉を交互に見る。

 

「ほら、俺とこいつ親居ないだろ。でも互いに甘えてたら堕落しちゃうからって事で、引っ付くのとか禁止にしてるのが暗黙の了解だったわけよ。」

 

「……そう、ああ……ごめん。」

 

「気にすんな。 でもこいつがそれを我慢できなくなるとこうなるんだよねぇ、一日好きにさせとけば明日にはケロっとしてるから別にいいけど。」

 

 

そう言いながら紅葉は後ろ手に歌野の髪をぐしゃぐしゃ撫で回すと、歌野はぐりぐり鼻孔をうなじに押し付けて聞こえるほどの音量で息を吸う。

 

「すーーーーーーーーーー。」

「でもぶっちゃけ正直結構キツい。」

「……頑張りなさい、幼馴染でしょ」

 

応援にもならない叱咤に顔をしかめつつ、それでもされるがまま腰に回された手を外したりしない紅葉を見て夏凜は苦笑を溢す。

 

「……はぁ。帰るか、雨降りそうだし。」

 

灰色の雲が空を覆ってきているのを見て紅葉が提案し、そうね、と言って夏凜が荷物を纏める。

 

「ほら歌野、帰るわよ。」

「んーーーー。」

「いや、んーじゃなくて。」

 

 

呆れた声色で夏凜は歌野の肩を掴むが、それに反して歌野が腕に力を入れるせいで紅葉の腰が悲鳴をあげる。

 

「うわ力強っ……!」

「うごおお……夏凜待て、骨盤がイカれる……」

「……どうするの。」

 

「―――ったく、こうなると面倒くさいけどやり方ってもんがあんだよ。」

 

 

紅葉は歌野の手の甲をさすりながら言う。

 

「ほら歌野、家帰るぞー。」

「んーーー。」

「晩飯作らにゃいかんからワガママ言うな。」

 

「………………だっこ」

「……おんぶならしてやるから、ジャージ履いてこい。」

 

んー、と言いながらのそのそと部室から出て行く歌野を見送って、紅葉もまた荷物を纏めた。

 

 

「じゃ、校門で待つか。」

「手慣れてるのね。」

「親が死んだ6年の途中から中1の半ばまでは週1ペースでああだったからな、そりゃ慣れるよ。」

 

「……妙に子供っぽいと思ったらそう言うこと……」

 

 

親がいない悲しみを紅葉にぶつけるわけにはいかない。でも我慢の限界でどうしようもない。そんな自分にもやもやしていて、歌野はああなっているのだ。

 

 

 

「明日から暫くこのネタで弄ってやろ。」

「……心臓狙ったパンチされるわよ。」

 

紅葉がこんな言動を取るようになったのも、親が居ないことで自立を(大人になるのを)強制されたが故の、ある種の防衛本能でもあるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと落ち着けたぜ……」

 

食後の入浴を終えた俺はこう言う日になると、必ずダルそうになる歌野を夏凜ごと風呂に放り込んでおいた。俺が入るときだけ使ってる高い入浴剤突っ込んどいたし大丈夫でしょ。

 

 

部屋着の半ズボンとだっさい農業王Tシャツを身に纏い、縁側に腰掛けて夜風に湿り気の残った髪を揺られていると―――俺は昔のことを不意に思い出した。

 

もうおぼろ気になっている両親の顔と、歌野の両親の顔と、歌野の無邪気な顔。

 

瀬戸大橋の事故。

 

同年代の子供を抱えて戻ってきたと思えば、またすぐ瀬戸大橋に走っていった親父。

 

 

親父が助けた子供を放っておく訳にもいかなくて立ち往生していた俺と歌野は、それぞれの両親が橋の崩落に巻き込まれているのを見ているしか出来なくて―――――

 

 

「あの子供達結局誰だったんだっけなぁ。」

 

 

……まあいいか。あのあとも生きててくれてるだろうから、親父が無駄死にだったとかそう言うことは無いはず。 母さん?いやあ……あの人殺しても死にそうにないし。

 

その内ひょっこり帰ってきても驚かないからその辺は考えないことにしてる。

 

 

「もーみーじーーー」

「……歌野。」

 

しな垂れかかってきた歌野の重さを感じつつ、こいつと夏凜の為にと買っている高いシャンプーやらの匂いが鼻をくすぐる。

 

 

「髪拭いた?」

「うん」

「よしよ……イーーーッ!!」

 

頭を撫でてやると、がっつり髪が濡れていた。嘘ついてんじゃねえよオラァ!

 

びっくりして思わず戦闘員みたいな声が出たが、タオルを持ってきて前に座らせて後ろから髪の水分をタオルに染み込ませるように拭く。

 

気持ち早めにつけている蚊取り線香やら花のような匂いやらで、なんか鼻が麻痺してきた気がした。

 

「夏凜はまだ入ってるのか?」

「うん」

 

「じゃあ先に出たのね」

「うん」

 

「……うん?」

「うん」

 

「…………そう……」

 

 

だーめだこりゃ。さっさと寝かせよう。

 

 

 

 

 

 

この後居間に布団を並べて3人で川の字に寝るのを要求されて寝ることになったのだが、寝惚けた歌野に夏凜がヘッドロックされて死にかけたのはまた別の話。

 

今日の件でからかった俺が部室で死に(殺され)かけたのも、また別の話。

 





箸休めに書いたので短めです。

あと何回か番外と短編書いてから本編書く予定なので本編投稿は暫くお待ち下され。
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