【完結】先人紅葉は一般人である   作:兼六園

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『暴力表現や流血描写がある事の注意喚起をしよう』と言うことでタグ追加したけど、そもそも必須タグ(R-15、残酷な描写、アンチ・ヘイト)を入れてるし問題ないと思ったので消去。



拙者自己顕示欲の塊侍、投稿後は3分置きに新着感想の確認を……致す!

あー、突然急にお気に入り数1000人行って投票されまくって総合評価も2000とか行ってランキング一位に載らねーかなー(大の字で寝そべる)



エピローグ/白鳥歌野

 

 

 

休日、午後。

 

夏が終わり空気が冷たくなってきた頃、縁側に腰掛け黒猫を膝に置いて背中を撫でている紅葉に歌野がしなだれかかる。

 

またか。 と言った雰囲気で、うんざりした様子の紅葉に歌野は言った。

 

 

「暇。」

「うるせえ」

 

後ろ髪を引っ張られる。

 

 

「ひーまー。」

「うるせえ」

 

耳たぶをつままれる。

 

 

「ひーーーまーーー。」

「うるせえっつーの。」

 

 

戦いが終わって数週間、歌野は暇さえあれば、こうして紅葉に構え構えとじゃれついていた。 日に何度もこうされれば、紅葉でもこうなる。

 

耳元でそこそこ大きな声で言われ続けて、ようやく紅葉は振り返る。 そこには満開の後遺症で髪の色素を奪われた歌野が居た。

 

混じりっけ無しの白色に生え際の深緑色。 加えて本人の申告いわく嗅覚が無いらしく、更にはレオ・バーテックスを止めるために行った3回目の満開が右腕の自由を奪っていた。

 

振り返った紅葉に突っ込んだ事で、膝に座っていた黒猫が『ニ゛ャ゛ア゛』と鈍い悲鳴をあげて潰される。

 

 

「おいこら、千景が潰れてる。」

「あ、ごめん。」

「ったくもー。」

 

歌野が横側に座り直し、紅葉は黒猫―――千景の毛並みを整える。 歌野が触ろうとすると尻尾で手を叩かれた。

 

「いったぁ……その子、千景って言うんだっけ。」

「そうだが。」

「ふーん……ゴールドタワーにもあるけど、あれは漢字が同じだけなの?」

 

ゴールドタワー千景殿。 西暦の勇者・郡千景の名を加えた塔にして、現在は防人と呼ばれる量産型勇者たちの生活の場に使われている。

 

『千景殿』というワードを聞いて、千景と呼ばれる黒猫は猫のわりに分かりやすく顔を歪めた。 本人はあまり好きでは無いらしい。

 

 

「確かに千景殿(せんけいでん)って呼ばれてるけど、初代勇者である千景の読み方を変えただけだぜ。

 

決して千景殿(ちかげどの)ではないぞ、俺はそう言って本人に怒られた。」

 

そう言いながら、紅葉は膝の上を堪能(役得)している猫の方の千景を撫でる。 本人の話を本人の前で話しているややこしさに若干の頭痛を覚えた。

 

人生(ライフ)を満喫しすぎではないかと内心で呟いていると、千景はするりと紅葉の膝を降りる。

 

 

「ん、散歩か?」

 

ニャア、と一鳴き。

 

「分かった、夕方には帰れよ。 お前の身体夜だと暗さと一体化して見辛いから。」

「行ってらっしゃーい。」

 

歌野の言葉に、返事の代わりに尻尾を揺らす。 そのまま木陰に消えた千景を見送って、歌野がぼやく。

 

「私千景に嫌われてるのかしら。」

「いやそれはない。」

「ハッキリ言うのねぇ」

「あいつが人を嫌いになる事は滅多にないから、まあ、なんだ。 千景なりに間合いの詰め方を考えてるんだろ。」

 

歌野は千景に嫌われてる訳ではないが、特別好かれている訳でもない。 そもそも千景は素の性格の段階で『面倒くさい(猫っぽい)奴』なのだ。

 

 

あいつ他人を好く方が珍しい癖に構えオーラ凄いんだよね、と、そう紅葉は語る。

 

これが好かれてる側の余裕かと歌野は考えていた。 居間のテーブルの前に座り直した二人が、会話を再開する。

 

 

「で、暇なんだっけ。」

「そうなのよ。 片手じゃ畑も弄れないから種植えても何時治るか分からないから責任持てないし、なにより出来ることが限られるのが結構つらいわ。」

 

左手で右腕を吊るしているアームホルダーをつつく歌野。 それを見て紅葉は同情的に返答した。

 

「片腕だけはなぁ……うん、その辛さは良くわかるぞ、俺も昔は左腕ずっと吊るしてたし。」

「そうなの?」

「そーなの。 俺はアームホルダーより三角巾派だったな、中にスマホとか財布とか護身道具とか突っ込んでた。」

「医療品を荷物入れに使うのはやめなさいよ……」

 

ごもっともな意見だが、昔の紅葉の腕は歌野のようにいずれ良くなる程度の怪我を負ったわけではない。 動かない腕が垂れていたら邪魔になるから吊るしていただけであって、治療のために吊るしていたのではないのだ。

 

「ちょっとばっさり()られて、神経痛めて痺れが酷いせいで動かしづらくなったから、自分で飯も作れねえわ着替えに時間掛かるわで慣れるのにも時間が必要だったもんだ。」

「……大変だったのね、昔の貴方って。」

「ほんとだよ……あー、うん、大変だったなぁ。」

 

しみじみと言う紅葉。 歌野は話題を切り換えるように、お茶を啜ってから紅葉に話し掛ける。

 

 

「で、暇なんだけど。」

「不器用かお前。」

「悪いけど慰め方なんか知らないのよ。」

「…………いや、お前はそれでいいわ。 じゃあ晩飯の仕込み手伝え、野菜剥くくらいは流石に出来るだろ。 ……出来るよな?」

「出来るわ。」

 

馬鹿にしてるのか? とでも言いたそうにしているが、蕎麦を茹でるくらいしかまともに料理の出来ない者の台詞ではない。

風や美森から少しずつ習っている事もあり、前よりは出来るようになっているが。

 

少しして、歌野が剥いた野菜を紅葉が切り、空いた時間で肉の下味を付けている時間が続くと、不意に歌野が言った。

 

 

「そういえば、私思い出したことがあるのよね。」

「なにを? 小6の時の大喧嘩で通学路の橋から川に俺を投げ飛ばしたことか?」

「違うわよ。 いやまあ、川底の大きめの石で顔面ぶん殴ったことは今でも悪いとは思ってるけど。」

 

小学生時代。 厳密には卒業式後の帰り道、歌野と紅葉は大喧嘩をした。 親が死んだ事やその件で腫れ物扱いされたこと等が重なり、どうしようもないストレスが溜まっていた二人は、些細な口論を戦争のような争いに発展させてしまったのだ。

 

結果は3週間の入院という、紅葉の入院期間の最長記録更新であった。 乳歯や鼻の骨や肋骨等がへし折れ、関節の脱臼に内臓へのダメージと、どれだけ本気で殺り合ったかがわかる清々しいほどの重傷で紅葉は病院へと担ぎ込まれたのである。

 

 

尚、歌野は打撲のみ。 この時点で歌野の戦闘センスはずば抜けていた。

 

 

皮を剥いた野菜をボウルに移した歌野は、会話の流れを切らずにさらりと続けた。

 

 

「昔に諏訪で戦ってた頃の事とか、全部思い出したんだけど。」

「へー。」

「うん。 あ、野菜全部剥けた。」

「お疲れさん………………あ?」

 

肉の仕込みが終わった紅葉は、野菜の入ったボウルに手を伸ばした時にピタリと動きを止めた。

 

「おい。」

「なによ」

「重要な話を普通にしないでくれんか、日常会話過ぎて聞き逃すとこだったわ。」

「ごめーん。」

 

 

ぎゃいぎゃいと、台所で騒ぐ二人。

 

諏訪の英雄と勇者の理解者は、時代を越えた先で密かに平和を享受していた。

 

 






千景生存にも関わらずゴールドタワーに名前が使われてるのは単なる嫌がらせか紅葉たちの面白半分か若葉のド天然善意が爆走バイクしたかのどれかです。 先に言うとのわゆ編で明かされることはありません。



あと前回ラストの会話、口調が似てるせいで勘違いが起きてましたが紅葉と夏凜のものです。

つまりそういうことです。ちなみに他意は無いけど私はぐんたかよりわかちか派だし、ゆうみもよりにぼゆう派です。特に他意は無いですが。
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