【完結】先人紅葉は一般人である   作:兼六園

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猫千景人気過ぎて笑うしかない。



ゆゆゆいにくめゆ組参戦が決定した事で心臓が一回破裂したけどなんとか致命傷で済みました。

亜耶ちゃんが…………可愛いねんな……(遺言)



エピローグ/犬吠埼風

 

 

 

決戦から勇者部部員の退院まで、激動の数週間だったことが記憶に新しい。

 

 

そんなことを考えながら、紅葉は雨が降っている外の様子を眺めていた。

 

犬吠埼姉妹こと風と樹が暮らしているアパートは、風と紅葉の喧嘩で大きく損傷してしまっていた。 紅葉(鈍器)を叩きつけてぶち抜かれた床に、紅葉(鈍器)を振り回して壊れた家電製品。

 

 

戦いが一時休戦となり、退院後にさて帰ろうかとなった時に問題は起きた。

 

二人は何処で寝泊まりすれば良いのか、と言う問題だ。

 

 

勇者部全員で必死に思考を張り巡らせていたが、紅葉の提案でその問題はあっさりと解決した。

 

 

 

『歌野の家、部屋余ってるじゃん。』

 

 

 

自分の家に自分以外の人が居ることがあまり好きではない歌野がものすごい顔をしていたのは言うまでもない。

 

果たして、歌野の家をアパートの修理が終わるまで借りることになった二人。 白鳥宅に二人の家具や服を運び込む作業に紅葉が付き合わされたのは余談である。

 

 

 

雨の空気で冷やされた体を温めるように飲んでいた熱い緑茶の入った湯飲みを置いて、側に置かれていたスマホを手に取る。 通知が来ていた事に気付き起動すると、そこには風からのNARUKOによる個別メッセージが入っていた。

 

内容としては、傘を忘れたから迎えに来てほしいと言うものだった。 買い物に出掛けていた風は、後から降りだした雨の対策をしていなかったらしい。

 

 

「家の傘今一本しかねーんだけどなぁ」

 

そうぼやいて、玄関に向かう。 夏凜と自分の分で先人宅である自宅に、紅葉は2本しか傘を置いていない。 夏凜の分が無いのは夏凜が学校に置き傘しているからだ。

 

これまた余談だが、後に鍛練を終えた夏凜がずぶ濡れで帰ってくることを今の紅葉は知る由もない。

 

 

 

「あー、まあ怒ったりしねえだろ。」

 

傘を取り出して、玄関を開ける。 傘を開いて歩き出すと、パラパラと傘に雨粒が当たる音だけが道路を支配していた。

 

雨は嫌いだが、この静けさは好きだと考える人間は紅葉以外にも幾らか居るだろう。

 

 

 

「~~~、~~~~~。」

 

 

暫く歩いて数分。

 

なんとなく上機嫌の紅葉は、無意識に歌を口ずさんでいた。 それは樹がオーディションの際に使った曲で、紅葉はすることが無いときは必ずと言って良いほどこの曲をリピートしている。

 

 

雨脚が強くなってきて、紅葉の周囲は愚か道路全体を見ても車すら通っていない。

 

バシャバシャという、水溜まりを踏む足音。 傘を叩く雨粒の音。 紅葉の口ずさむ歌。

 

 

「……だーれも居ねぇでやんの。」

 

そう呟くも、その声すら雨に掻き消される。 他の奴らはなにしてんのかな、と思いながら歩き、ようやく目的の店にたどり着く。

 

自動ドアの邪魔にならないように横に立ち雨宿りしていた風を見つけて近寄ると、風もまた紅葉を見つけぱっと表情を明るくした。

 

 

「待ってたわよ、意外と早く来たのね。」

「雨なら仕方ねえだろ、なんだよもう少し寛いでから出た方が良かったか?」

「それは勘弁。」

 

からからと笑う風。 荷物は紅葉の想像より少なく、片手に小さい袋が握られていた。

 

「あ、それだけ?」

「ええ。 だって歌野の家、野菜がやたら充実してるんだもん。」

「しゃーない。 野菜多過ぎて漬物にしないと消費が間に合わねえんだよ、腕が動かせない今のうちに総量減らさないとな。」

「ほんとよ……」

 

風の顔はげんなりしている。 毎日のように多種多様の野菜が食卓に並ぶのは、流石の風でもキツいものがあるようだった。

 

そんな風は、紅葉の手元を見て、傘を見て、もう一度手元を見る。

 

「……で、さ。 あたしの分の傘は?」

「無い。」

「はい?」

「そんなの無いよ。 俺んちの傘2本しかねーんだよ、夏凜の分は学校だ。」

「えぇ……」

 

 

紅葉の言葉に深いため息をつき、一拍置いて頬を染める。

 

「えーっと……つまり、その……あ、相合い傘?」

「そんなに嫌なら濡れながら帰りな。」

「嫌じゃないけどさぁ…………! いっ、今のは言葉の綾よ!?」

「必死に言い訳すると説得力無くなるからその辺注意しとけ。」

 

 

うぐぐ……と言いながら、風は紅葉の傘の左側に入る。

 

自分の歩調に合わせてゆっくり歩く紅葉に、風は聞いた。

 

 

「……ねえ、あんた歌野の家の鍵持ってるんだから、あっちから一本持ち出せば良かったんじゃない?」

「お前天才かよ……」

「あんたが馬鹿なのよ。」

 

呆れたように、再度ため息をつく。 ふと、風の視界が紅葉の濡れた右肩を捉える。 そして自分の左肩を見て、少しも濡れていないことに気付いた。

 

「……紅葉って結構不器用?」

「急にディスらないでくれませんかね。」

「ちょっとぐらい濡れても平気だから、そっちに傘戻して良いわよ。」

「えーっと、やだ。」

 

歩きながらの問答で、紅葉は拒否をした。 即答されて風は顔を(しか)める。

 

「ここまでやってお前に濡れられるのはなんかイヤなんでーす。」

「ガキか!」

「最近精神が見た目に引っ張られてるから反論できねぇ。」

「……はぁ」

「じゃあもう少しこっち寄れよ。」

「それは……誰かに見られたら恥ずかしいし……」

「今更過ぎる。」

 

風も年頃な事もあって仕方がないのだが。

 

二人の互いに濡れてほしくないという売り言葉に買い言葉が続き、痺れを切らした紅葉が強引に風の腰を掴んで自分側に引き寄せた。

 

紅葉は右手に傘を持ち、左手で風の腰を掴む。

 

風は右手で店の袋を持っていて、手持ち無沙汰の左手が紅葉の左手と重なった。

 

 

「……あんたってなんでそう、あー……もう。」

「うるせー、さっさと帰るぞ。」

 

後ろから見たら二人三脚に見えなくもない不格好な姿をしている二人は、再度歩き出す。

 

雨音が二人の呼吸の音すら消し、ただ無言が続く。 自分の腰にある左手をつねったり指を弄っていた風は、なんとなく、その左手の上に自分の左手を重ねた。

 

 

「紅葉。」

「なに。」

「……あの時は、本当にごめん。」

「いーって、許すよ。」

 

 

それだけ言うと、二人は帰路を歩く。

 

 

 

もうちょっとゆっくり歩こうかな……と、風はそんな事を考えていた。

 





ゆゆゆいくめゆ組参戦……これで合法的にくめゆ組の誕生日回を書けますね……(即堕ち蟹刑事)
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