【完結】先人紅葉は一般人である   作:兼六園

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正直『前』の話はほぼ無意識で書き進めてたから意味不明になってると思う。




祝福 古波蔵棗は海人である・後

 

 

 

「やっほー、お帰り紅葉くん。」

「平然と人の部屋に居るのやめてもらっていいっすか。」

 

棗とプールで遊んだ後日、寄宿舎の部屋に戻った俺のベッドの上で、なんか平然と赤嶺友奈が寝そべっていた。

 

後でファブリーズしこたま吹き掛けておこうと決意しつつ、一応お茶を出す。

 

 

「嫌そうな割には律儀だよねぇ」

ぶぶ漬け枠(さっさと帰れ)なんだよなぁ……」

 

出されたお茶をイッキ飲みした友奈は()()()揺らして、ワンピースをひるがえし立ち上がる。

 

 

「ねぇ紅葉く~ん」

「嫌です……」

「まだ何も言ってないよぉ?」

 

やだよ面倒くさい、こいつ絶対無茶振りしてくるでしょ。

 

 

「良いのかなぁ、拒否なんかして。 キミ私に勝てないのは前の一件で良く分かってる筈だと思うけどぉ……?」

 

「それ言われると弱いんだよね。」

 

 

ニヤニヤとした表情で、友奈は俺を見る。

 

 

そもそもこいつが俺の部屋に入り浸るようになったのは、結構前にまだ園子が勇者になれなかった頃、勇者が樹海化で出払った後に部室に襲撃してきた事がきっかけだった。

 

俺が歌野達が戻ってくるまでの時間稼ぎを買って出た結果、生きてるのが不思議なくらい徹底的にボコボコにされたのだ。

 

……いや、普通そうなるでしょ、戻ってくる時間を稼げたのが奇跡なんだぞ。

 

 

 

つまり、俺はこいつに逆らえない。 二度も勇者パンチ(ハートブレイクショット)されたら流石に死ぬと思う。

 

心臓を殴り潰されてついでに肋骨が粉々になっても生きてる奴が言ったところで説得力ないけど。

 

 

 

部屋に入り浸る理由は……よくわがんね、聞いても答えねーんだもん。

 

 

 

「―――はぁ。 で、用は? マリパならお前とNPCに勝てないからもうやらないぞ。」

「紅葉くんゲームへたっぴだよねぇ」

「うるせえ」

 

話題のズレを無理やり修正するように手を叩く。 自分から振ったくせにぃ、というぼやきは無視する。

 

 

「ほらぁ、今度お姉さまの誕生日じゃない。」

「あー、棗か。 もうそんなか。」

「それでプレゼントを贈りたいんだけど、私そういうセンス無いし、ちょっと助けて欲しいんだよねぇ。」

 

「ちなみに断ったらどうすんの。」

「流石に死体の解体はやったことないし、経験しときたいんだけどどう?」

 

俺死ぬじゃん。

 

 

実質選択肢は一つしかなく、俺は了承する以外の行動を許されていない。 こっそり歌野と夏凜辺りに連絡してもいいのだが、それは少しばかりリスキー過ぎる。

 

 

「―――あー…………とりあえず出るぞ、ここじゃ他の連中に見つかる。」

「えー、クーラー切ったら暑いじゃん。」

「…………えーい、オフ。」

「あーーー!!」

「あ゛あ゛!?」

 

俺の膝にわりと本気のローキックが叩き込まれた。 ちょっとそれはシャレにならな…………あ゛ーやめろ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅葉にお返しとばかりに殴られた頭を押さえながら、赤嶺友奈はショッピングモールを歩いていた。

 

ジャンパーのポケットに手を突っ込んでその後ろを歩く紅葉は、友奈に蹴られた右膝を庇うようにして足取りがおぼつかない。

 

 

「いたたた……女の子を本気で殴るなんて信じられないよねぇ……」

「もしかしてそれギャグか。」

 

 

かつて本気の殺し合い(一方的な殺戮)繰り広げた(行われた)同士が平然と買い物に出掛けている様子を見たとしたら、水都辺りなんかは卒倒するのではないだろうか。

 

絵の具が一滴も付いていないパレットのように汚れ一つ無い白髪が、友奈が頭を擦る動きに合わせて揺れ、キラキラと真夏の日差しを反射している。

 

紅葉も大層驚いた事だろう、現時点で、赤嶺友奈が勇者でない時の姿を知っているのは紅葉だけなのだから。

 

 

変装のつもりなのか着用している黒縁の伊達眼鏡が、悔しいまでに良いアクセントになっていた。 だが、紅葉がそう思うのも無理はない。

 

『友奈』という人間は、美人に育つ(そうなる)ように出来ているのだ。

 

 

 

が、しかし。

 

まるで良く出来た彫刻の価値を下げているかのように、友奈の着ているワンピースから露出した腕や肩、足には―――目を逸らしたくなる程に歪な傷痕が付いていた。

 

すれ違う老若男女が同情した目線や露骨な態度で視線を逸らすなか、友奈がそれを気にした様子はない。

 

 

「……それで、棗のプレゼントはどうするんだ。 資金に余裕はあるし、最悪多少は工面するぞ。」

「うーーーん、ありがたいけど、それが悩みなんだよねぇ。 まだ決まらないんだけど紅葉くんはどうするの?」

「俺か。 俺は…………そういやあいつ、この世界に来てから沖縄の料理とか食ったこと無いとか言ってたな。」

「そーなんだ。」

 

 

興味なさげに、友奈はそう呟く。

 

友奈の祖先の赤嶺家は、元は沖縄出身だったのだ。 そして沖縄から脱出する逃げ道を作ってくれたかつての棗を、友奈は尊敬している。 故に『お姉さま』。

 

 

しかし友奈はあくまで『祖先の故郷が沖縄なだけの四国生まれ』だ。 本人は、あまり郷土料理に興味はない。

 

 

「紅葉くんが料理作るなら、私は物の方が良いかなぁ。 あ、あれとか良いんじゃない? 『ぶろーち』? とかいうやつ」

「ブローチ……ね、良いじゃないか。」

 

イントネーションの怪しさから、紅葉は赤嶺友奈に()()()の知識が無いことをなんとなく理解する。

 

 

「―――――俺は料理の材料を買いにいかないといけないが、お前興味ないだろ。」

「うん。」

「即答でよろしい。 ならどっかで待ち合わせるか…………何処にする?」

「……んー、と。 それならあのベンチでどうかなぁ?」

 

友奈が指を指した方には、背もたれ同士を合わせた二席のベンチが置いてあった。 近くに日陰となる木もあって、待ち合わせには分かりやすい目印となるだろう。

 

 

「じゃあ、後であそこのベンチで。」

「はぁ~い。」

 

紅葉と友奈は、それぞれが目的のモノを買うために別の道に向かう。

 

 

「……………………。」

 

そして友奈が歩き去る自分の後ろ姿をじっと見ていた事に、紅葉が気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いやあ、郷土料理の材料探しは強敵でしたね。

 

ゴーヤチャンプルーに決定したあとの材料は卵はともかく、スパムが売ってなくて専門店探すはめになったし、ちょっと遠くまで歩いてようやく手に入ったから少し疲れたぜ。

 

ゴーヤは歌野が栽培してたのを貰って、木綿豆腐も最後の一個を辛うじて入手。 横からかっさらって来ようとした奴には苦戦を強いられたがな、何がお婆ちゃんが言っていた…………だよ喧嘩売ってんのか。

 

 

 

そんな事を考えながら、俺が家庭科室借りて作ってきたゴーヤチャンプルーを食べる部員を見ていた。

 

「うーん、苦い。 もう一口!」

「青汁かな。」

 

球子のCMを挟んで誕生日パーティを満喫していると、棗と歌野が部室の出入口近くに立っている俺に近付いてきた。

 

 

「どうした。」

「……いや、ただお礼をと思ってな。 ありがとう、沖縄で食べた、懐かしい味だ。」

「そりゃどうも、いやしかし歌野がゴーヤの栽培までしてて助かったな。」

 

ちらりと歌野を見れば、更に山盛りのゴーヤを乗せてフォークで突き刺している。

 

 

「崇め奉りなさい。」

「ゴーヤばっか食ってんじゃねえよ」

「良いでしょ私の作ったモノなんだから。」

 

なんかゴーヤだけ減りが早いと思ったらお前か犯人は。 ゴーヤチャンプルーからゴーヤが無くなったらただのチャンプルーだろうが馬鹿野郎。

 

追加で作ってくるかなぁ、と考えていると、少し考えてから歌野が出入口の扉を睨み付けた。

 

 

「―――――誰。」

 

そう言うや否や机にゴーヤでぎちぎちの皿を置いて、扉を勢い良く開ける。 そんな歌野の目の前には、白髪を揺らして驚いた様子の赤嶺友奈が立っていた。

 

 

「あー、えーーっと……。」

「…………マジで誰。」

 

顔をしかめてそう言い、歌野は首を傾げる。 …………ここに来て俺以外が誰も友奈の素顔を知らないことが功を奏したか。

 

本当ならもう少し経ってから素知らぬ顔でさっとプレゼント渡させて解散させようと思っていたのだが、歌野と、あと夏凜辺りが持つ特有の野生の感を甘く見ていたらしい。

 

 

「(紅葉くん、ヘルプ!)」

「(歌野に気配を感知されるとはな……仕方ない、俺の即興に合わせろ。)」

「(……りょーかい。)」

 

アイコンタクトは一瞬。 するりと歌野の横を抜けて、俺は友奈の背中を押して部室に入れると、棗の前に立たせる。

 

 

「……その娘は?」

 

「ああ、以前お前が勇者部の活動で世話になったんだとか。 俺が良く行くショッピングモールで会うことが多くてな、お前の誕生日の事を話したら是非とも御礼がしたかったんだそうだ。」

 

「……そうだったのか、わざわざすまないな。」

「あー、いえ……は、ははぁ……」

 

すげえ、俺の口が回る回る。 まあ勇者の活動(お役目)で皮肉にも『お世話』になってるからな、嘘はついてないな。

 

 

「ふぅん、活動でねぇ。 それにしても綺麗な白髪(はくはつ)ね、それ地毛?」

「若白髪(しらが)とか苦労してるのかしら。」

「場が混乱してくから少し黙ってましょうねー。」

 

歌野と夏凜が並んで友奈を見る。 猜疑の目付きをしている辺り、警戒しているのだろう。 不味い、時間を掛けたら確実にバレるぞ。

 

歌野の皿にゴーヤを追加で盛り、夏凜の口に大きく切ってある木綿豆腐を突っ込んで黙らせておくと、後ろで友奈が棗を前にモジモジしていた。

 

「ほら、渡すもん渡しちまえ。」

「う、うん。 …………あの、おね……じゃなくて、棗さん。」

「なんだ?」

 

口ごもる友奈にふっ、と微笑を浮かべる棗。 安易にそんな顔するから天然たらしとか言われるんだぞ。

 

指を合わせて目線を右往左往させた友奈は、やがて懐から小さな袋を取り出して棗に手渡した。

 

 

「ど、うぞ……っ」

「これは―――――ブローチ、か。 それも……ハイビスカスとはな…………。」

 

袋から出てきたのは、赤いハイビスカスの小さなブローチ。 制服に着ける校章のようなサイズと形をしていて、友奈にしてはセンスがある。

 

 

赤いハイビスカスの花言葉は確か―――勇敢。

 

……皮肉なもんだな。 赤嶺友奈が、()()を表現するモノを人に渡すんだから。

 

 

制服に着けて見せた棗を見て、キラキラと白髪を煌めかせて笑ってみせる友奈を見ていると、本当に敵なのかとすら思えてくる。

 

 

赤嶺友奈。

 

こいつを言葉で表すならさしずめ―――――『人工英雄』か。

 

 

「……ありがとう。 所で、一つ聞きたいんだが……」

「なんです……?」

 

突然の質問に、言葉遣いがやや怪しくなる。 探るような棗の視線に、友奈は恐らく無意識で半歩後ずさった。

 

 

「何処かで、キミに似た人を見たことある気がするんだが……まさかとは思うが―――――「し、失礼しましたーーー!!」

 

棗が最後まで言う前に友奈は部室を飛び出す。 あ……と言う棗の声が後ろからしたが、追いかけて廊下に出た頃には、とっくに友奈は姿を消していた。

 

 

「相変わらず逃げ足の早いやつ。」

「紅葉。」

「ヴァッ」

 

ぬっ、と、部室の扉に手を置いて身を乗り出していた俺の肩に顎を乗せて顔を覗かせる棗。それ心臓に悪いからやめろ。

 

 

「さっきの娘、あいつなんだろう?」

「…………流石に分かるか。」

 

棗は哀愁の漂う表情で、廊下の奥を見やる。 棗も考えているのだろう、『どうにか味方に引き込めないか』と。

 

まあ造反神に力を与えられている以上、それは裏切りになるから、味方に引き込めたとしても力を失ってしまうだろうが。

 

 

「まあ、言わぬが花だ。 今日くらいは、黙っていてやろう。」

「良いのか?」

「駄目か?」

「―――駄目じゃないけどさ。」

 

俺に対して申し訳なさそうに問う。 自分がかつて助けた家族の子孫が俺を殺しにきた事あったんだし、そりゃそうなるか。

 

 

「紅葉は、赤嶺を恨んでいないのか?」

「西暦を生きていた以上一回死んでるし、その辺の感覚はどうにもあやふやだが……友奈は友奈で自分ルールに忠実だからなぁ。」

 

友奈が襲ってきたのは、あくまでも樹海化に伴って戦闘になった後だ。

 

全力で潰しに来たのは戦いが始まってからだし、樹海化が終わって勇者たちが戻ってきたのを合図に俺の時間稼ぎは終わり、友奈の戦闘もあいつが自分で切り上げた。

 

 

「戦いじゃないなら、敵じゃない。 あいつも可哀想な奴だよ、尊敬する相手が敵なんだから。」

「それは私の事か……?」

「お前以外に誰が居るんだよ。」

 

心底不思議そうな顔で、俺は棗に言われる。

 

 

「…………紅葉も、そう見られているぞ。」

「ははぁ、冗談を。」

 

いやそんな、お世辞はいいから。

 

 

―――まて、あいつ確か神世紀初期の人間だよな。 『大赦に発言権のある赤嶺家』が該当するのは、72年のテロの後の話じゃないとおかしい。

 

そして俺が死んだのはその72年の最初の方。

 

 

―――――もしかして俺、西暦の時に赤嶺友奈に出会ってる……?

 

 

俺の疑問が解消される事がないまま、無情にも棗の誕生日パーティは進んで行く。

 

 

赤嶺友奈は、かつて、その身一つで――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん、ふふんふーん……♪」

 

 

軽い足取りで、暗い道を歩く少女の影が一つ。

 

街灯に引き伸ばされた影の正体は、赤嶺友奈。

 

 

スキップでも始めるのではと言えるほどに上機嫌なのは、棗の誕生日を祝えたことも関係している。

 

 

が、突如として足を止める。

 

その姿が白髪で傷だらけの少女から、赤毛で斧のような装飾のある籠手を装備した勇者に切り替わると、友奈は蹲るように体を丸めて呟いた。

 

 

「っ―――なに、『潰してこい』ってわけ……?」

 

造反神の与えた勇者としての力が、友奈の意思を無視して、勇者と巫女を殺してこいと命令する。

 

 

「―――黙れ」

 

命令を()()()()捩じ伏せた友奈は、人が見に来る危険性を度外視して地面を砕く勢いで殴ると、脂汗を額に浮かばせながら言う。

 

 

「ちょっとさ、黙ってなよ…………今日はめでたい日なんだからさぁ……っ!」

 

ぶつぶつと、誰に聞かれた訳でもなく、友奈はそう言いながら、変身が解けるまで地面を殴り、砕き、粉砕する。

 

映像作品がぶれるように白髪と赤毛がコマ送りよろしく入れ替わるとやがて、友奈の姿は部室で見せた白髪とワンピースの格好に戻った。

 

 

「…………いずれちゃんと全員倒すよ、倒さなきゃいけないんだから。」

 

荒い呼吸を整えながら、まるで言い訳でもしているかのようにそう言うと、友奈は染々と言葉を続ける

 

 

「だからさぁ……お姉さまの誕生日を祝うとか……っ、紅葉くんの部屋で遊ぶとか…………そういう()()()()くらい、させてよ……!」

 

言い終わると友奈は幽鬼を思わせるゆらりとした動きで立ち上がり、眼鏡のズレを直して歩き出す。

 

 

 

 

「ああ…………紅葉くん、こっち側に引きずり込めないかなぁ……」

 

 

『味方に引き込めないかな』

 

そう考えているのは、なにも紅葉だけではなく。 夜道に怪しく瞳を光らせ、赤嶺友奈は薄く笑った。

 

 

 






私多分『友奈』の設定に関してはスタジオ五組とタカヒロと岸監督が助走つけてパンチしてくるレベルで改変しまくってると思う。

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