紅葉の結婚秘話はのわゆ編書き終わってからにするかなーとか考えてたけど、勇者の章含めたらいつ終わるかわかんないしどうしよ。 勇者の章終わったら短編として書くか……(予定は未定)
リスペクトしてる作品が更新してたので更新返しで二話目です
暇だったことも含めて、俺は徒歩で丸亀市の丸亀城に訪れていた。 今日は幼稚園で劇らしいけど案の定サボりでございます。
まあ園子の木の役はちょっと気になったけど。
かつては勇者の拠点として使われていた丸亀城も、今では観光地の一つとして扱われている。
かつて誰かが生活の拠点として使っていたのでは? なんて話をタマにニュースで見るが、検討外れな説ばっかり聞くから今では興味もない。
「変わんねぇなあ、ここも。」
教室がわりに使ってた一室、あいつらとの歳もちょっと離れてたりで、退屈な授業だった……なんて事が記憶の奥底にあった。
しかしなんで机とかも当時の位置のままなんだ? 誰かが残しておくように進言したのかね。
「―――ここが若葉、ここがひなたでここが球子で杏、千景に……友奈。」
一つずつ、机を撫でる。
『今日こそ一番乗りだ!』と意気込んでも若葉に勝てない球子。 『ラブソングこそが至高です!』と言って球子と言い合う杏。 『格闘技教えてー!』と俺にせがんできた友奈。
色んな記憶が甦る。
「千景には、しょっちゅう鬱陶しそうにされてたな。 腕を斬られた後か…………あいつが皆と仲良くなったの。」
記憶の想起に伴って浮かび上がったかつての古傷をなぞる。 千景はただ、愛されたかっただけなのだ。 それをわからせようとした結果が左腕の麻痺なら、まあ安いものだろう。
ちなみに俺がここに来た理由は、昔の記憶を思い出すついでに忘れている何かを思い出せるかも、なんて思ったからだ。
果たして感傷に浸るだけでした、泣けるぜ。
さて、他に何か手はないかしら~っと。
そんな事を考えていると、思考の奥がざわついた。 脳の奥、と言うべきか。 とにかく、妙に、気分が悪い。
俺は今も使えるトイレに駆け込んで―――
「う、お、ぇえ…………」
吐いた。 道中で食った飯も朝飯も、何もかもが逆流してビチャビチャと音が鳴る。
「……うわーお、真っ赤っか。」
便器の中は、赤黒い液体で汚れていた。 紙で床に跳ねたりした血を拭いて流し、トイレから出る。
……身体の灰化に、吐血か。
「俺ももう、時間がねぇな……。」
あいつが居てもチャンスとばかりに殺されるだろうから無理だ。
理由は分かっているのもあって、何時、唐突に終わるかわからないと言うのは結構こえーよ。
―――俺
…………そうだ。 思い出した。
神樹は、枯れかけている。
そのうえで、外の世界で炎が活性化している。 天の神が人類が壁に穴を空け、四国という境界を越えた事に怒りを示したのだ。
それを鎮めるために、大赦は巫女を生け贄に捧げる
俺がゴールドタワーに行ったとき、あやちゃん―――国土亜耶がその贄に選ばれた。 だが、俺が帰るほんの数時間前にその使命が無かったことになった。
少し考えれば、分かることだ。
大赦はあやちゃんより適任の巫女を見つけた。
『お願い、紅葉くん。』
ピリ―――と、脳に刺激。
『私を…………忘れて。』
雷に打たれたらこうなのかも。 なんて考える暇もなく、身体に、脳に、記憶に、魂に衝撃が走る。
「あ、が、ががががが―――!!?」
丸亀城の廊下を、みっともなく転げ回る。
身体の内側と外側で、見えない何かが暴れている感覚。 それこそが、間違いなく俺が記憶処理を受けている証拠で―――
「く、っそ、お陰、で……神樹以外、からの……加護まで、あるの、が……わかった……だろうが…………!!」
しかも、別系統。
恐らく、天の神側。
……天の神を裏切って味方に着いた別の天側の神も居るらしいし、そう言うことだってあるだろうが……。
「不快だなぁ、おい。」
腕に力が入る。 全身への激痛と妙な不快感を無視して、立ち上がる。
パラパラと、手の一部が欠けてこぼれ落ちた。
脳への負荷から、鼻と涙腺から血が垂れる。
―――知るか馬鹿。
「―――思い出したぞ。 約束だ、お前を迎えに行かせる。」
鼻血と血涙をハンカチで乱暴に拭い、外に向かって歩く。 誰も居なくて助かった。 救急車でも呼ばれたら、面倒臭い。
「美森。 東郷美森。 東郷、美森……!!」
東郷美森。 勇者にして、巫女の適正を持った少女。 友奈の隣人。 部室のパソコン担当。
―――俺たちの、大事な人。
身体への多大な負荷を以て、俺はようやく、失った記憶を取り戻した。
「―――う、おお……いてぇ、あぁ……」
痛む胸を掻きむしるように押さえる。 心臓が全身に、忙しなく血を送っているのがわかった。 まずいな、無茶をさせ過ぎた。
これだけで幾ら寿命が削れたかわからんが―――不思議と、後悔は無い。
「友奈たちと合流しねえと……幼稚園で劇、だったな…………ぐ、あ…………若葉……頼んだ……。」
「―――あまり無茶をするな、と言ってもお前はするんだな。」
外に出た俺は、待ち構えていた人に戻った若葉に抱えられる。 その姿は、いつもの青い勇者服から山伏姿の天狗へと変わっていた。
三大悪妖怪の一種を憑依させた姿だが、今の若葉に、負担となる生身の肉体は存在していない。
かつてはバーテックスを殺すか負荷で死ぬかの戦いを繰り広げていたと言うのに、死後その力が使い放題になるとは因果な奴。
「悪い。」
「悪いと思ってるなら、やめろ。」
「…………悪い。」
本当に、悪いと思っている。 だが、現状の打破と、勇者や巫女、防人達の幸せには俺の無茶が必要不可欠なんだよ。
だからやめない。
例え、この身を灰に窶しても。
「…………その若さで死んでみろ、ひなたからの説教が三日三晩は続くぞ。」
「……それも良いかもな、今は、あいつの声が聞きたいくらいだ…………。」
若葉は重症だな、と一言呟いて俺を横向きに抱いて飛び上がる。 翼をはためかせ、人の目に観測できない高さまで飛翔してから讃州市に向かって移動を始めた。
「おお……案外寒くないんだな。」
「大天狗は炎を操ることも出来る。 紅葉への負担を和らげる為に、周囲の温度を上げているだけだ。」
「そりゃどうも。」
「……はあ。」
俺なりの最大限の感謝の言葉。 若葉もそれが分かっているからか、ため息をつきつつ、口許は嬉しそうに歪んでいた。
若葉に抱き抱えられながらの空中遊泳を楽しみながら友奈達の元へ向かっている途中、ポケットのスマホが振動する。
「んお。 電話か」
「落とすなよ。」
「馬鹿にすんな―――あー俺のスマホォ!!」
「だから言っただろ、馬鹿者!!」
馬鹿みたいなお決まりで、俺のスマホは手元から滑り落ちる。
若葉は俺を上にぶん投げてから翼を降り立たんで急降下。 スマホをキャッチしてから急浮上し、落ちてきた俺を受け止めた。
「ぐえぇ!?」
「今のはお前が悪いぞ。」
「……今度から首にぶら下げるか。」
子供用のスマホみたいにな。
ともあれ、スマホの画面を確認。 どうやら一度切れたらしく、再度掛かってきたのに出ると、画面越しに園子の焦った声が届いた。
『もーみん! わ、私……どうして……! ミノさん……わっしー……っ!!』
「落ち着け、俺も思い出した。」
『どうしよう……ど、どうしたら……』
「落ち着けっつーの、友奈たちと合流しろ。 あいつらが劇やる予定の幼稚園で待ち合わせるぞ。」
俺の声で落ち着いたのか、焦った声はゆったりとした声色になる。 俺の方は俺の方で、なんだろう、色々有りすぎて並大抵じゃ驚けなくなってるんだよな。
『…………うん。』
「それまでに落ち着いとけ、元リーダー。」
『―――――すー、はー。 うん。 もう大丈夫だよ、もーみん。』
「それでいい、また後でな。」
ピ。 と電話を切る。
俺は気になって、若葉に聞く。
「お前と千景の事を知ってる友奈は例外として、園子くらいには会っておいて損はないと思うんだが。」
「……言っただろう、死者が生者と深く関わるべきではない。」
「なんで急に俺のことディスり出した?」
「そう言うわけではない。 それに、私の子孫……だからこそ、逆に会いづらい訳でだな。」
ははあ、要は恥ずかしいんだ。
それに球子と杏は勇者の力を放棄したから、もう子孫を勇者には出来ない。 千景は子孫を残さないと決意してたから除外、若葉の子孫はあんなん。
ひなた………………の子供は血筋的に勇者にはなれない。 巫女向きだ。 俺? どうなんだろうね、俺のこの体が女だったら予知夢ぐらいは見られたんじゃない?
「自分達の代の子孫で勇者やってるのが若葉の子孫だけって、なんかそれはそれで変な疎外感があるわけだな。」
「…………うむ。」
恥ずかしげに、若葉はほんのり頬を染める。 こういう顔見るのすげー久しぶりだな。
あー役得役得、なんて思いながら、若葉の首に回した腕に力を込める。 友奈達の元に向かいながら、俺は若葉に身を委ねまぶたを閉じた。
―――体から剥がれるように取れる灰の塊から、目を背けるように。
そのうち赤嶺友奈と紅葉の話でも書こうかなーと思ってるけど、まず間違いなく血生臭くなるから更に人を選ぶことになりそう。