【完結】先人紅葉は一般人である   作:兼六園

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お ま た せ

遅れたのは帝都イベントのせいです。
あとドレス銀用のTポイント稼ぎ。



そういえば他の作品で良く若葉の武器を生()刀と書いているのを見ますが、のわゆ上の巻末資料を見る限りは若葉の武器で言うなら生()刀の方が正しいみたいですね。

なお私は何故か若葉の誕生日回で『生大刃』と書いていた模様(修正済み)。 はー、 あ ほ く さ 。



三終目 国防

 

 

 

 

「着地任せた。」

「ああ。」

 

 

幼稚園の裏手に降り立った俺と若葉。 木陰に体を隠し、俺は血が着いてないかの確認。 そうしている俺に若葉は言う。

 

「とにかくこれ以上の無茶はよせ、良いな。」

「考えといてやるよ。」

「手足縛って家に転がしてやろうか」

「……わかったよ。 全く強引な奴」

「お前が言うな」

 

はぁーーーーー。 と、恐らく今まで聞いたなかで一番長いため息をつかれる。 若葉はカラスに姿を変えると、飛び去っていった。

 

…………なんか、どっと疲れた。

 

 

多分若葉もおんなじこと考えてるだろうけど、とっくの昔に死んでる奴とこれからまた死ぬ奴の『あー疲れた』を一緒にしてはいけない。

 

度合いがちげーんだよ度合いが。

 

 

 

服装を整えて、幼稚園にお邪魔する。 するとそこでは、号泣している友奈を園子が抱き締めていた。

 

どうやら突然の事だったらしく、全員が呆然としていて、その視線が全部俺に向いている。

 

 

「………………あー、えー、んー。」

 

咳払いをして、提案した。

 

 

「入室からやり直していい?」

 

当然ダメ出しを食らった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「東郷が、消えた……?」

 

部室の黒板の前に、全員で集まって座る。

 

園子と友奈が黒板と俺たちの間で、美森の話をしていた。 上記の言葉を発したのは、確か風か夏凜。

 

 

「東郷さん、東郷美森。 私の家のお隣さんで、大親友の東郷さん。 私たちは…………それを忘れていたんだよ。」

「私もさっき、墓参り中に思い出したんよ~。 こんな異常事態を引き起こせるのは、限られてると思う。」

 

「まーた大赦?」

 

二人の言葉に、歌野が答える。

 

……うん。 事実その通りなんだけど、風辺りの地雷を容赦なく踏み抜くのはやめようね?

 

 

「もーみん、もーみんも思い出したって言ったよね、何か知らない?」

「…………美森が居た、と言うことだけだ。 それ以外は知らん。 悪いな。」

 

 

大嘘だけど。 それどころか当事者だけど。

 

まあ、言わぬが花だよね。 園子とか風辺りから質問攻め食らいそうだし、絶対言わない方がいい。

 

 

「東郷さん…………今どこで、なにをしてるの……?」

 

友奈が不安気にそう言う。 そんな顔されると言いたくなるけど、今の俺は要するに攻略本。 ネタバレはあんまり好きじゃない。

 

心配しなくても明日には良い情報持ってくるって。

 

そんな事を思いながら、俺は美森が居た本来の記憶を想起していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日、気分で一緒に登校する相手を変えている俺は、珍しく友奈と美森の二人と通学路を歩いていた。

 

「……なんだ?」

「おお……高級車だ。」

 

談笑していると、校門の前に一台の白い車が止まった。 大赦のは黒いし…………誰だ。

 

「……なにかしら。」

「なんだか嫌な予感がしてきたぞー?」

 

 

その予感は的中する。 ドアが開き、中から回転しながら少女が降りてきた。 器用っすね。

 

 

「じゃじゃじゃ~~ん! 乃木さんちの園子だよ~!」

 

「そ、園子ちゃん!?」

「そのっち…………。」

「ほら言っただろ。」

「今日からおんなじクラスだよ~?」

「嘘でしょ……?」

 

うちのクラスもだんだん動物園化が進んできたな、もう既にゴリラが二匹居るんだけど更に増えるとか飼育員の苦労をだね……。

 

サプライズ大成功~! とか言って喜んでる園子に、美森は勢い良く抱き付いた。 あら~。

 

 

「そのっちぃ…………っ!」

「おっと、へへ~わっし~!」

「感動の再開だね、紅葉くん!」

「涙がちょちょぎれるな。」

 

あと胃に穴が空きそう。

 

園子の車の運ちゃんにジェスチャーで去るように指示して、イチャついてる美森と園子の頭頂部をチョップする。

 

つかあの運ちゃん園子と大赦本部襲撃した時、真っ先に園子が顔面にパイ叩き付けてた被害者一号じゃん。顔まだ腫れてたしうわー痛そう、相手が俺じゃなくて良かったね。

 

 

「イチャつくのは自由だけど、校門の前で立ち止まってないで中入りぃ」

「あ、ごめんなさい」

「おっけ~い」

 

あーあー、やだねぇまた騒がしくなるの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「入部希望の~~…………乃木園子だぜェ~~~い!!」

 

放課後、そう言って部室にカチコミしてきたのは、案の定乃木園子であった。

 

 

「園子……相変わらずやんちゃな奴。」

「またそのっちと学校に行けるなんて……。」

 

端末経由で銀の記憶を知っている夏凜と、かつてのクラスメートである美森が、園子の入部を歓迎する。

 

 

「授業中に居眠りしてたら起こしてね~?」

「そもそも寝ちゃ駄目なんだから……分かってる?」

 

園子の額を指で突く美森。 なんか段々、美森も母親感が高まってきたな。

 

「美森お母さん怒らせたら柱に磔にされるぞ。」

「誰がお母さんですか。」

「あと煮干しパパも怖いぞー。」

「誰がパパだ。」

 

ケケケケ、と悪魔みたいに笑う。 夏凜が一瞬友奈のことチラ見したのは見なかったことにしといてやるよ、面白そうだし。

 

あとなんで美森は俺を見た。

 

 

「で、あんた小学校中退でしょ。 どうやって編入したのよ」

「そのっちは頭が良いから、少し学べば簡単なの。」

「乃木家は皆大体そんなだ。」

「照れるぜ~」

 

俺が西暦で生きてた時で知る限り、若葉の娘とそのまた娘は両方天才だった。 あれちょっとズルいと思う。

 

 

「乃木さんもこれから勇者部の一員としてやってくから、皆もよろしく頼むわ。」

「乃木さんじゃなくて、乃木とか園子で良いですよ~フーミン先輩~!」

「ふ、フーミン……?」

 

 

もーみんに、フーミン。

 

「あー……なんか響きが似てるなーと思ったらあれだ、ムーミン。」

「それだ。」

 

パンと歌野と手を合わせる。 ようやく既視感の謎が解消されたぜ。

 

頭に疑問符を浮かべた夏凜が聞いてきた。

 

 

「ムーミン? あんたの親戚?」

「ちげーーーよ。」

 

俺とカバを一緒にすんじゃねえ…………いやムーミンってあいつトロールだっけ、北欧神話のやつ。

 

 

「樹ちゃんはイッつんで~、お姉さんはゆーゆ!」

「わあ、良いね! じゃあ私は園ちゃんって呼ぶ!」

 

楽しそうだなーあいつら。

 

そして、園子が夏凜をにぼっしーと呼んだ所で、夏凜が俺を睨んだ。

 

「おい。」

「歌野です。」

「擦り付けるな。」

「嘘つくな。」

 

4コマかよ。 夏凜にジロジロとガンつけられてる横で、園子が歌野のアダ名を考えていた。

 

「歌野ちゃんは~~~うたのんで!」

「その呼び方を許した相手は一人だけなんだけど…………まあ、いいわ。 わざわざ拒否する事でも無し。」

 

 

仕方ない、とでも言いたそうな顔で、歌野は渋々了承した。 すいませーん、俺そろそろ三角絞め食らいそうなんですけどー。

 

あとどっかの炎タイプみたいにずっと睨み付けてくるのはやめろ、俺の防御力はこれ以上下がらんぞ。 というか下がると困る。

 

 

 

 

 

 

 

後日、部室でパソコンとにらめっこしている樹がふと呟いた。

 

「…………国防仮面」

「どしたの樹、てか何それ。」

「最近巷を賑やかしてる謎のヒーロー、よく近所に出るんだって。」

「へぇ~、勇者部のライバル的なアレかしら。 ねえ紅葉、あんたなんか知らない?」

「……いや、なんも。」

 

 

内心で冷や汗を垂らして、俺は否定する。 許可を出したのが俺で実行したのが美森だとバレたら…………マズイ……。

 

樹の後ろから俺と風でパソコンを覗き込むとそこには、軍服に帽子、アイマスクに軍刀にマントと、気合いの入ったコスプレをした美森が居た。

 

 

「このカメラアングル……撮影者は男だな、間違いない。」

「その心は。」

「俺ならこうなる。」

「…………そう。」

 

よし、上手いこと流せたな。

 

「……って、この胸の大きさ……」

「お姉ちゃん?」

「こいつ絶対東郷でしょ」

「胸ソムリエかお前は。」

 

流石にちょっと……引くかな。 と自分の事を棚に上げつつ、俺は出ていった風の後を追った。

 

 

「んじゃ、ちょっと行ってくるぜ。」

「行ってらっしゃーい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「待てーーーい!!」

 

夕方の道路に、少女の声が木霊する。 ヘルメットを被り引ったくった鞄を抱えて逃げる男が、驚いて振り返った。

 

 

「国を守れと人が呼ぶ―――――。

 

愛を守れと叫んでる――――――。

 

憂国の戦士、国防仮面―――見参!」

 

 

今日日子供が見る日曜朝の特撮番組でもやらないような名乗り口上に、男は跳躍した少女―――国防仮面に呆気に取られる。

 

男は組伏せられる直前に路地裏に待機していた仲間に鞄を投げた。

 

 

「確保! …………っ、仲間が……!?」

 

別の男は鞄を脇に抱えて逃げようと路地裏に踵を返した―――――瞬間、路地裏の奥から飛んで来たレンガブロックの豪速球にフルフェイスヘルメットを砕かれる。

 

衝撃で脳震盪でも起こしたのか、男はそのまま道路の方に仰向けで背中から倒れた。

 

 

「油断大敵……だぜ? 国防仮面さんよ。」

 

鞄を手に取り国防仮面の元に、紅葉が歩いてきた。 もう片方の手には、次弾のレンガが握られている。

 

 

「紅葉く…………ではなく、君は……」

「そこまで言ったなら言いきれよ……まあいいや、ほらよ。」

 

最初の男をロープで縛っていた国防仮面に鞄を投げる。 遅れてやってきた鞄を取られた張本人らしい女性と野次馬が現れた。

 

本当は紅葉の功績なのに、と一瞬国防仮面(東郷美森)は紅葉を見るが、ひらひらと手を振られて仕方なく自分の功績として女性に鞄を返す。

 

 

「…………私は国防仮面、困った者の前に出来るだけ現れます。」

 

で、出来るだけ……と困惑する女性を余所に、野次馬を掻き分けて見慣れたツインテールの少女が姿を見せる。

 

 

「見つけたわよー、とぉーごぉー?」

「……うっ」

「紅葉は家の屋根に跳んでって消えるし、あんたは変なコスプレするし、何時からこの国は無法地帯になったのよ。」

「これは……その…………えっと……」

「とりあえず学校戻ろうぜ、人が多すぎる。」

 

返答に困っている国防仮面―――美森に助け船を出す紅葉。

 

 

「あんた何処行ってたのよ……」

「あの手の引ったくりはもう一人居るなぁと思って裏に回りたかったんだよ。 案の定居たから、仕留めた。」

「仕留めた。 じゃなーい! レンガ投げたら危ないでしょうが!」

「何のためにヘルメットが有るんだよ」

「あんたにかち割られる為じゃないのは確か!」

 

紅葉の顔面を鷲掴みにして怒鳴る風。

 

国防仮面こと美森は、鞄を取られた女性に警察と救急車を呼ばせて二人を大急ぎで引っ張りその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部室に戻った俺と美森は、二人で正座させられ、俺に限っては小道具の手錠で後ろ手に縛られていた。 俺の人権は何処行っちゃったんだよ!

 

 

風、歌野、夏凜に見下ろされ、俺と美森は顔を見合わせる。

 

「まさか、こうなるとは思わなかったわ。」

「中世の魔女裁判の方がましだと思う。」

 

 

うーん、多分魔女! とりあえず死刑!

 

…………どっちもどっちか。

 

 

「さて、何処から話したもんか。」

 

 

そう。 元は罪を償いたがった美森との話から始まり、俺が覆面ヒーローでもすればいいじゃんと適当に提案したのが事の発端だった。

 

まさか本気にされるとは思わなかったしここまで続けるとは思わなかった辺りは、完全に俺の判断ミスだが。

 

いやまあ、なんかさあ…………子供がここまで本気だとジジイとしては応援するしかないと言うかなんと言うか。

 

 

「…………美森、楽しかったか?」

「……ふふっ、ええ。 とても。」

 

横目で美森を見ると、それはとても良い顔をしていた。 じゃあ、この笑顔に免じて許しては……

 

「駄目よ。」

 

ああん、歌野ってば酷い。

 

 

連帯責任で、俺と美森の二人は暫く勇者部活動でひっきりなしに働くことを命じられた。

 

まあこれくらいなら……とか思ってたら、勇者部の扉を勢い良く開いて友奈が現れる。

 

「国防仮面さん来てるのーーー!?」

「ゆ゛っ……友奈さん……」

「もうちょい低い方がいいぞ。」

 

 

俺たちの災難は、もう少しだけ続く。

 





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やったぜ。
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