戦闘シーンはバッサリとカットします。
暑すぎて書く気がなくなってました。 赦しは乞わぬしなんでもはしません(NOと言える日本人)
乃木園子が編入してからしばらくして、東郷美森の元に一人の女神官が訪れていた。
大赦にとって想定外の事態が起こったからだ。
曰く、美森が壁を破壊した事が原因で、壁の外の炎が活性化しているとのこと。
曰く、このままでは外の炎が結界を越え、四国を焼き付くしてしまうとのこと。
曰く、防人を使い進めていた計画を破棄して、現状の打破を優先するとのこと。
炎の勢いを弱め、神の怒りを鎮めるには奉火祭を行うしかなく、それは勇者でありながら巫女の素質もある美森にしか出来ないと。
そこまで聞かされすぐにでも了承しようとした時、家の柱をコンコン叩く音がして、意識が音のした方向に向かう。
神官と美森が向いた先には、柱に体を預けるように寄っ掛かる紅葉の姿があった。
「異議あ~~~り。」
「…………先人、様……。」
「キモいから様付けはやめろ。」
「紅葉くん……どうやって中に?」
「それに、外には部下が居た筈ですが。」
うーん、とわざとらしく思考の時間を作ってから、紅葉は腰のホルスターに挿していたスタンガンを取り出す。
「『我々も必死なんですアピール』なんてしようとしてずぶ濡れになるから感電なんてするんだぜ、そんなの意味ないから覚えときな。」
バチバチと、手元で光がスパークした。 神官への嫌悪感を隠そうともせず紅葉は続ける。
「奉火祭…………ね、何時の時代も馬鹿なこと考えるよな。 要するに世界のために死んでくれって事だろうが。」
深くため息をついてスタンガンをホルスターに収め、その後に神官の目を仮面越しに睨む。
「……ったく、あやちゃんが奉火祭で生け贄になる使命が急に白紙になったと思ったらそう言うことか。」
「あや、ちゃん……って?」
「ゴールドタワーに監禁されてる巫女。」
ほら、と言い写真を見せる。 そこには、紅葉と楠芽吹に挟まれた笑顔の亜耶が写っていた。
「……また女の子の知り合いが増えてる。」
「気にするところはそこか。」
じとっとした目付きで紅葉を見るが、呆れたように頭を振って紅葉はスマホを仕舞う。
追い打ちを掛けるが如く、神官は美森に言った。
「―――国土亜耶様及び、巫女数名が奉火祭の任に選ばれました。 しかし、東郷美森様一人で、彼女らの代わりを果たせるのです。」
「…………セコい奴らだなほんと、そう言えば美森が頷くって分かってるんだろ。」
いよいよ無理矢理にでも帰させるか、と握り拳を作り立ち上がろうとした紅葉の肩を、美森が掴んで押し留めた。
「少し、話をさせてください。」
「……わかりました、賢明な判断を期待しております。 外でお待ちしておりますので。」
「はい。」
感情の籠っていない、平坦な声。 台本を棒読みで読み上げているかのような声色で、神官はそう言うと部屋を後にした。
美森に合わせて座り直した紅葉に、美森は面と向かって話始める。
「まさか俺を説得しようって言いたいわけか。」
「そんなの無駄だって、ちゃんと分かってるわ。」
「じゃあやめろ、お前が行く必要なんてない。」
「でもね紅葉くん、私がやらないと、他の子達が犠牲にさせられる。 あやちゃんと言う娘も、死んでしまうの。」
「俺がさせない。 一度白紙にした計画をまたやるほど、あいつらには余裕がないからな。」
言葉一つ一つを、断言して切り捨てる。 美森はそんな紅葉の言動に違和感を覚えた。 『らしくない』…………と。
普段の紅葉ならきっと、自分の意見を尊重したうえで違う提案をしたりする。
「紅葉くん、私はやろうと思う。」
「あいつらは聞こえの良い言葉でお前から頷かせようとしてるだけだ。 神の元で薪になってこい、と言われてるんだぞ。」
「それでも、そうしないと、世界が滅びてしまうから。」
「―――とっくの昔に滅ぶべきだった。」
紅葉の瞳に、光りは無い。 美森は紅葉の本音を―――――初めて聞いた。
「俺と園子の祖先と上里の人間で昔、ある決まりを設けた。 『次代の勇者達に選択の余地を残すこと』と。」
ザアザアと降り注ぐ雨を窓越しに見ながら、紅葉は続ける。
「それでこの様だ。 大赦は
「…………否定は、しないわ。」
「お前を生け贄にして、平和が訪れたとして、そう遠くない未来であいつらは平気な顔をして違う巫女にのたまうんだよ。 『世界を救えるのは貴女しか居ない』ってな。」
紅葉は、世界の今の仕組みを否定する。 それでも『今誰が一番わがままを言っているのか』を考え、それが自分だと理解しているのだ。
『世界の危機』に『美森と言う救世主』
それで完結している出来事に横から『そんなのは認めない』と駄々をこねているのが紅葉だ。 それは、自分が一番よく分かっている。
「美森は確実に死ぬし、世界の滅びを先送りにするだけだ。 それに俺だけじゃない、友奈達だって哀しむんだぞ。」
「―――――ええ、そうね。 それでも私はやるわ。」
だが、しかし。
美森はその程度では止まらない。
「死ぬのは怖い、皆が哀しむのも辛い。 でも、だからね、私は考えたの。」
紅葉の顔を両手で包むと、正しく花のように、儚げに言った。
「お願い、紅葉くん。」
一筋の涙を流して、紅葉を見る。
「私を…………忘れて。」
「な、あ―――?」
絶句。 直前までしていた呼吸が止まり、紅葉の思考は白く塗り潰される。
言うのか。 お前が、それを言うのか。
声にならない声が、紅葉の口から掠れた音を奏でて漏れ出す。 誰からも忘れられたくない。 誰も忘れたくない。
鷲尾須美だった記憶や友との記憶を失った事のある美森だからこそ、その想いは誰よりも強い。
そんな少女に、『私を忘れて』と、この世界はそう言わせるのか。
「あ、ああ…………美森、お前、は……。」
「……嫌だよ。 怖いよ。 もう二度と誰にも忘れ去られたくない。 けどね、私に出来ることがあって、罪を償う機会があるなら、やらなきゃいけないんだと思う。」
皆が消えた自分を探そうとするなら、
世界は守られ、勇者部の日常も守られる。 なんてことはない、人知れず世界を守るなんて何時もやっていることだ。
ここで紅葉が理屈っぽい言い回しなんかせず、ただシンプルに『お前が大事だ、だから行かないでくれ。』とでも言えていれば、何かが変わったのだろうか。
視線を泳がせ、やがて何かの覚悟を決めたように、紅葉の目を見据えて美森は呟く。
「紅葉くん。」
「…………なんだ。」
「私に少しだけ―――勇気を分けてくれる?」
不安そうな声色で、美森は問う。 紅葉は美森の腰に手を回して引き寄せながら答えた。
「俺で良いなら、幾らでもやるよ。」
「―――――ありがとう。」
コツンと額を合わせて、数秒間を置く。
色々な感情が混ざり、ぐちゃぐちゃになった思考と燃えるような熱を共有するかのように、二人は顔を近付け―――――
「んっ」
「……んん。」
―――――唇を触れ合わせた。
紅葉は美森のエメラルドグリーンの瞳を見て、ただただ純粋に『綺麗だな』と思った。
美森は紅葉のコールタールに漬けたように光の無い黒い瞳を見て、『悲しい人だ』と思った。
そうして、五秒か、十秒か。
短い時間が永遠に感じる程に、二人の時間は、一瞬だけでも止まっていた。
やがて口を離した二人は、無意識に止めていた呼吸を再開する。 美森は文字通りの『口惜しさ』を感じていたが、口付けをしていた体勢のまま固まっている紅葉を見てから立ち上がる。
「それじゃあ、紅葉くん―――――貰った勇気を無駄にしないうちに、ちょっと行ってくるね。」
『ちょっと行ってくるね。』
それはかつて、記憶を
何も言わず、美森の方に振り返る事もなく、石化したように固まった紅葉を名残惜しい顔で見ていたが、美森は頭を振って部屋から出る。
カラカラと、玄関の扉を開き、そして閉じる音がしてから、紅葉は土下座をするような形でうずくまると畳に握り拳を叩き付けた。
「くそ―――くそ、くそっ、くそがっ!!」
何度も叩き付けて、紅葉は額を擦り付ける。
「どうすれば、よかった……! 何が正解だった! どうすれば留まってくれたんだ!!」
ぐらりと力を抜いて横向きに倒れる紅葉は、一人の少女を脳裏に思い浮かべて呟いた。
「ひなた…………もういやだ、もう、大切な人を喪うのは、嫌だ………………。」
寿命と言うどうしようもない理由で勇者と巫女を失ったのなら、まだ耐えられた。
でも今回は、流石に無理だった。
己の無力さを噛み締めながら、死にに行く少女を見送った事なんてものは一度も無くて―――。
閉じた目蓋に押し出されて、涙が一滴ぽたりと垂れた。 こんな感情すら忘れられるなら、美森の判断も悪くないのかもな。
そんな事を考えながら紅葉は、子供が泣き付かれた時みたく、ゆっくりと眠りについた。
起きた頃にはその家は東郷家では無くなっていたのだが、紅葉は何故この家で寝ていたのかを、思い出せなかった。
私自身は安芸先生結構好きなんですが、わすゆでの安芸先生の事情を知らない紅葉からしたら『230年くらい経ったら腐りきってた組織の連中の一人』だからどうしても強く当たってしまうんですよね。
この先とじとも、ゆゆゆい、FGOのローテーションで確実に投稿が遅くなると思う。 これだけは真実を伝えたかった。 でもみーちゃん誕生日回はちゃんと書くよ。