【完結】先人紅葉は一般人である   作:兼六園

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だんだん番外を○○である縛りでタイトル考えるのめんどくさくなってきたけど、タイトルにはある程度の一貫性を持たせないといけないんや。



私の知能指数は小学生レベルなのでいつでも自分の作品が一番面白い作品だと信じて疑ってないのですが、やれ豆腐メンタルだ駄文だと自身の書く作品を卑下する方は一定数居るんですよね。

なにが駄文だよ自分の生み出した可愛い作品くらい自信を持って推さんかいお馬鹿。




祝福 乃木園子は自由人である

 

 

 

俺からしたら、乃木園子と言うのは異星人に近い。 お前本当に若葉の子孫か、と疑ったことは数え知れないだろう。

 

こいつの考えなんて理解できないし、変に鋭いところなんて恐怖すら覚える。

 

 

それぐらいに、俺は園子が良く分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジで分かんねえんだよな。」

「いだだだだだだだ!?」

 

「……なにやってんだあんたら。」

 

部室に入ってきた夏凜が、開口一番にそう聞いてくる。 俺が園子の頭を両側から両手で鷲掴みにして持ち上げてるのを見れば、誰だってそんな反応をするだろう。

 

 

「しめ、締め上げられれれ!!?」

「あんた、今度は何されたわけ。」

「俺じゃねえ銀だ。」

「――――――へぇ。」

 

すっ……と左目を細める夏凜と、それを雰囲気で感じ取る園子。

 

この世界での夏凜は銀の事を妹みたいに気に掛けてるんだから、そりゃこうもなる。

 

 

「罪状は。」

 

「銀が鍵落としたって言ってたろ、落としたのはほんとだがそれを見付けて隠し持ってたのがこいつだ。 お陰で大赦に連絡して鍵穴と鍵の交換したのが無駄になった。」

 

「だ、だってもーみんとミノさんの仲を進展させるいいチャンスだと思ったんよ~」

「なるほど、言いたいことは良く分かるわ。 情状酌量の余地も含めて―――――有罪(ギルティ)ね。」

「異議有りぃぃぃぃぃ!!?」

 

 

異議は却下となります。 締め上げている手に力を込め、頭をへこませる勢いで持ち上げる。 宙ぶらりんになった園子は足をばたつかせるが、そんなものは知らん。

 

俺にちょっかい掛けるのはまあいいよ、子供のワガママに付き合うのは大人の仕事さ。 でも俺だけじゃなく銀にまで迷惑があるのはイタズラにならないのよ。

 

 

「お前、ちゃんと謝ったのか?」

「謝ったし許してもらったんよ~!!」

 

ミシミシと悲鳴をあげる頭蓋骨。 反省しているのは分かった為に、渋々手を離す。

 

 

「ふぃ~……頭がベコベコになる所だったよ~。」

「次は無いからな。」

「わ、分かってるよ。」

 

締められる威力を身を以て体験しているからか、頭を押さえて後退りする園子。

 

最近鍛え直してるからな、今ならリンゴ握り潰すくらいは出来るぞ。 昔は片手で首の骨へし折るくらいイケたんだけどね、その辺は地道に鍛え直すしかない。

 

 

「…………あれ、あんた首のそれどうしたの。」

「あ? あー、これ?」

 

園子に俺への盾にされている夏凜が、俺の首筋を指差す。 そこには薄く血の滲んだガーゼが貼られていた。 指で軽く押すと、少しばかり鈍い痛みがピリッと走る。

 

起きたときには既にこの傷があり、鏡で見る限りは噛み傷で、子供の小さい歯形で、そんな事が出来るのは一人しか居なかったのだが――――。

 

 

 

「――――ちょっと野良猫にガリっと……ね。」

 

 

俺は、そう言って適当に誤魔化した。

 

俺はきっと、嬉しかったんだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もーみんとぉ~~~…………デートだぜぇぇぇぇぇい!! フォーーーーー!!!!」

 

「誰かこの異星人を引き取ってくれ。」

 

 

初手テンションMAXの園子を横目に、俺はそう言いながらため息をついた。

 

あと普段利用してる商店街ぶらつくだけだからデートじゃねえ、変な言い方をするな。

 

 

 

8月30日、園子の誕生日らしい今日は、俺がこの珍獣を引き回す役を与えられたのだった。

 

小さい方は夏凜に任せてある。 今頃好き放題に振り回されている頃だろう――――夏凜が。 子供の手綱なんて握る方が無理なんだよ、諦めて激流に身を任せ同化するしかないからな。

 

 

 

「私はこういう所にはあんまり来ないから新鮮なんよ~!」

「あ、そう。」

 

勇者達で通うのは服屋なんかがあるショッピングモールであって、俺が通ってる惣菜だのなんだのが売ってる商店街ではないからな。 お嬢様にはさぞかし異質な空間だろう。

 

 

「誕生日だってのに、こんな所をぶらつくだけで良いのか? 小さい方を任せてる夏凜は今頃チビと一緒にイルカのショーでも見てるぞ?」

「別にいいよ~、丁度もーみんと話がしたかったからね~。」

 

 

踊るようにロングスカートをひるがえし、飛びそうになった帽子を押さえる園子。

 

へにゃへにゃした毒気の抜かれる顔で、灰色の瞳を向けて、園子は俺に言った。

 

 

「だってもーみん、私のこと嫌いでしょ?」

「――――――。」

 

怒ってるわけでもなく、問い詰められているわけでもなく。 ただ、疑問を問われた。

 

的確に思考回路を射抜かれ、呼吸と思考が一瞬停止する。 しかし、俺は園子が嫌いなのではない。 それだけは真実だ。

 

 

「……嫌いなんじゃない、怖いんだ。」

「おお? 怖いの?」

「俺は、お前がわからない。」

「分からないんだ~。」

 

まばらに散った色違いの石畳の、同じ色に跳んでステップを踏む園子。

 

そうしながら商店街の奥へと向かう園子を追いかけながら、俺は続ける。

 

 

「お前は変に鋭く、妙に勘が良い。 そのくせ何を考えてるかが分からなくて――――――深淵でも覗いてる気分だ。」

 

「底が見えない、とか、そんな感じ~?」

 

「そんな感じ。」

 

 

そうなんだー、と言って、白線を歩く小学生のように同じ色の石畳から石畳へと跳ぶ園子。 必死に追いかけて、背中を捕まえる。

 

 

「ぐえーっ!?」

「少し落ち着いて歩け。」

「だからって引っ張らなくても~」

「さっさと先に行く方が悪い。」

 

首根っこを掴んで隣に立たせると、園子はようやくゆっくりと歩き始めた。

 

 

子連れの親子、杖をついて歩く老人。 歩きスマホの青年に、食べ歩きをしている学生。

 

例え創られた偽りの世界だとしても、この人たちは、この世界で生きている。

 

 

「生きている、か。」

「ん~? どうしたの?」

「いや。」

 

 

そう誤魔化して、片手間に買ったコロッケを園子の口に突っ込んでおく。 庶民の味にご満悦らしく、目を輝かせてサクサクと咀嚼していた。

 

「ね~ね~もーみん、何か面白い話して~?」

「え、やだ。」

「誕生日特権だも~ん」

「…………チッ、仕方ねえな。」

 

コロッケの油で汚れた指を舐めている園子を横目で見てから、思考する。 さてなんのエピソードをひねり出すか。 人生大体90年くらい、話なら色々あるぞ。

 

 

「そうだな――――――俺が若葉と初めて剣を打ち合う事になった話でもしてやる。」

「おー、面白そうだぜ~!」

 

商店街の反対側まではまだ時間がある。

 

出る頃に話が終わるだろうと考え、大きく息を吸う。

 

 

「西暦2017年……あいつが中一の時、俺もあいつも、互いを良くは思ってなくてな。 ある時若葉が俺に剣を振れるか聞いてきたから、俺は『そこそこ』と答えた。」

「それで~?」

「道場で防具を着けて木刀を打ち合う事になって――――――示現流の真似してあいつの頭を一太刀でかち割った。」

 

あっけらかんと言い放つと、園子に凄い顔をされた。 それ女のする顔じゃないよ。

 

 

「もーみん、起承転結って知ってる?」

「いや事実だし。 今度若葉のつむじの近くにある髪分けて見てみろ、傷残ってるから。」

 

だって…………当時の若葉、やれ『助けなどいらん』だ『戦えないなら下がっていろ』だ『大社に帰れ』だのうるさかったんだもん。 こっちだって長野に帰れないせいで、必死こいて大社に雇われる形でなんとかサポーターになったんだぞ。

 

向こうは俺の態度とかに相当イラついてたんだろうけど、こっちもこっちで若葉のこと鬱陶しくて、本気で殺すつもりでぶん殴ったからね。

 

 

居合一辺倒の若葉は示現流および自顕流を詳しく知らなかったらしく、脳天に振り下ろした俺の木刀を受け止めようと自分の得物を水平に構えてしまったのだ。

 

結果、若葉の木刀は真っ二つに折れて若葉の脳天も真っ二つになりかけたと。

 

 

「それ、最悪の場合世界滅んでたよね~。 しかも私も生まれなかったんじゃないかな~。」

「だろうね。」

「だろうね、かぁ。」

 

複雑そうな顔でそう言う。 まあ自分の祖先を殺しかけた男が目の前に居るんだしなぁ。

 

それに『乃木若葉』と言うのは世界を救う――――と言うより、世界が滅ばないように平行線を辿らせるのに必要不可欠の戦力だ。 あいつが欠けただけで、世界はきっと西暦の段階で容易に滅んでいる事だろうさ。

 

 

つまり、俺は戦犯になるところだったのだ。 ははあ、笑える。

 

 

 

「むーん……もっと他にないの~?」

「有るけどネタ切れって事にしといてくれ。 それに、俺はお前に一つ質問がある。」

「ん~、なぁに?」

 

 

 

 

「―――お前の、願いはなんだ。」

 

 

 

 

ピタリ、と。 動きを止めて、園子は俺に向き直る。

 

 

ふわふわしていて掴み所がない、雲のような少女。 そんな園子は常に一歩引いていて、何時も傍観者でいる。 だが今日は誕生日だ、なぜそんな時にまで一歩引いている必要がある。

 

 

まぶたを閉じて、数瞬黙った園子。

 

そして静かに俺の手を取ると、出口に向かって歩き出した。

 

 

「私はね~、小さいときから良く『変な子だ』とか『協調性がない』とか色々言われてたんだ~。」

「そうか。」

「お花を愛でるより蟻の行列を見てる方が好きだし、学校の勉強は学ばなくても分かるからちょっとつまらないかなぁ。」

「…………そうか。」

 

 

商店街を出て、ベンチまで歩き、隣り合って座る。 園子が横で足を揺らしているのを見ながら、俺はただ相づちを打っていた。

 

 

「そんな変な私でもね~、皆が幸せな顔をしているのが――――――幸せそうにしているのが、大好きなんだ~。」

 

へにゃへにゃの顔で、朗らかに笑う。 そこに邪気は無く、ただただ純粋さだけが残っている。

 

 

「私は『幸せなみんな』を見ているのが、一番幸せなんだと思うんだ。 だから誕生日に祝ってもらわなくても、豪華なプレゼントを貰わなくても、私は十分幸せなんだよ~。」

 

「それが――――『皆が幸せなこと』が、お前の願いだってことか。」

 

「そうだよ~。」

 

 

なんの疑問も持たない顔をしている園子を見て、俺は顔を背ける。 ああ、くそ。

 

「…………眩しいな。」

「ん? 日射しが~?」

「……ああ。」

 

 

今はただ、横にいる少女が眩しかった。

 

この少女は友達が好きなだけの、普通の女の子なのだ。

 

 

――――『皆が幸せなら自分も幸せ』とは言っていたが、遠い未来のその中に俺は居ないんだなと言う、変な確信があったことは…………言わない方が良いのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

他愛のない雑談を続けてから数分、そろそろ帰るかと提案し、園子が立ち上がる。

 

その時――――ぶち、という音がして、園子のサンダルの鼻緒が切れた。

 

 

「ありゃりゃ~」

 

「あんなに跳び回るからだ。」

 

再度座らせ、鼻緒の切れたサンダルを診る。 診る? 診るでいいのか……?

 

まあいいや。

 

 

「……んー。 駄目だな、買い換えた方が早い。」

「しょぼ~ん、お気に入りだったのに~。」

「なら買いに行くか? お前らが普段使ってるショッピングモールで買ったんだろ?」

「私片足飛びで歩く事になっちゃうよ~。」

 

それもそうか。 さてどうしようかな。

 

誰かに来てもらうかとスマホを出そうとしたとき、園子は不意に俺の履いているサンダルを俺の足から引っこ抜いた。

 

 

「すっぽ~~~ん!」

「おい。」

 

「ガッチョーーン……」

「おい。」

 

 

無駄に仰々しく俺のサンダルを自分の足に履かせると、園子は立ち上がった。

 

おい。

 

……おい、お前まさか……。

 

 

「それ逃げろ~~!」

「あーーー!!てめーこら園子ォ!!」

 

「へへ~ん、捕まえてごら~ん。」

「返せこら!!」

 

「ぇへ、やーあだっ」

 

 

園子は俺が止める前に、家路に向かって全力疾走を始めた。

 

追いかけようとするが、地面に着けた素足は直射日光で加熱されている石畳に焼かれる。

 

 

「あっつ!! くそ、あの野郎……良い度胸してるじゃないの……!」

 

半ズボンにTシャツでサンダルだからサンダル無いだけで格好がマヌケになるじゃねえか! これならアロハシャツにサングラス…………だと一回通報されそうになったから駄目だな。

 

あーもうあっつ……あっつい、あっっつい!?

 

 

 

「待て園子おおおおお!!!」

 

 

 

視界の果てに豆粒程の大きさとなった園子を、足の裏を焼かれながらその後ろ姿を追いかける。 学校に着いた頃には足の皮がすごい事になっていたのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー。」

「ああ、お帰り。」

「あれ……夏凜どうし…………し、死んでる……!」

 

部室に戻った俺を待っていたのは、杏にでも勧められたか珍しく小説を読んでいる若葉と、机に突っ伏してピクリとも動かない夏凜だった。

 

 

「勝手に夏凜を殺すんじゃない。」

「夏凜は……まあ、子供はパワフルだからなぁ。」

「らしい、帰ってくるなり動かなくなったからな。」

「こっちもこっちででかい子供に振り回されたよ。」

 

園子? とっ捕まえてアイアンクローしといたから大丈夫。 あいつ夕方になるまで逃げやがって…………。

 

 

 

「そういえばさぁ、お前が中一の時、俺と木刀打ち合って俺がお前の頭割った時あったじゃん。 あの時のことなんか覚えてたりするか?」

 

ふと気になって、そんな事を聞いてみる。

 

俺が言い終わると若葉は、少し考えてから口を開いた。

 

 

「…………なんだその物騒な話は。」

「――――覚えてないのか?」

「そもそも私は紅葉とそんな事をしたのか?」

「…………マジ?」

 

マジだ。 と言いながら首を傾げる若葉は、どうやら完全に覚えていないらしい。 良く考えたら、こいつが退院して以降で突っ掛かってきた事は一度も無かった。

 

 

なるほど…………こいつもしかして俺が頭かち割った時に記憶もぶっ飛んだな?

 

 

「ああ、そうか。 なるほど。」

「? 何故一人で解決しているんだ。」

「いやなんでも。 そうだな、今度旨いうどんでも奢ってやるよ。」

 

「は? どうした、気持ち悪いな。」

「良いから良いから。 ほんと……うん、ほんとごめん。」

 

 

 

……マジで悪かったよ。

 

スマホで高級うどん屋に予約を入れながら、俺は心の中でひたすらに謝罪を続けていた。

 

 

 







紅葉は園子が宇宙人かなんかにしか見えず、園子は紅葉が死に急いでるようにしか見えない。

SANが削れてるから幻覚が見えてるとかじゃなくて、単にIQの差からお互いに見えてる世界が違う、とかそんな感じ。


紅葉が青空を見ているときに雲の流れに注目するのが園子で、紅葉が花を見ているときに蟻の行列を見るのが園子なんです。

でも単なる良い子だっただけな事が分かったので、なんだ普通の子供なんじゃんとなりましたとさ。 若葉は犠牲になったのだ…………犠牲の犠牲にな…………。






「示現流の真似して頭かち割った」

めちゃくちゃ分かりやすく言うと真っ直ぐ突っ込んで勢い良く刀を振り下ろすシンプルな技の流派。 防ぐとそのまま押し切られて頭も割られるしで新撰組(天然理心流)の天敵だったらしい。
倒し方? 囲んで叩け。


最近で言うとゴールデンカムイの鯉登少尉とか刀使ノ巫女の益子薫が使ってるやつ。 まあ薫の方は薬丸自顕流だけど。 詳しくはググれ。

ちなみに薫の『祢々切丸』は実際にあるよ。

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