以前周回でイベント歌野を重ねてた私「なんだこのATK上昇……これもう完全にゴリラじゃん………(さもいでの扱いが決定された瞬間)」
今回ちょっと短いです(だから次の投稿が早くなるとは一言も言ってない)
勇者達や紅葉が緊急時に利用している、大赦の息が掛かった病院。 そこの一室で紅葉は、一人の少女が眠っているベッドの脇で椅子に腰掛け、足を組んで
当然だろう、紅葉は学校が終わってから明け方まで、いつ起きるか分からない少女のためにずっと傍にいたのだから。
手持ち無沙汰の紅葉は、眠り続けてる少女の顔を覗く。
記憶操作により存在が消滅していた同級生、東郷美森。 友奈たち勇者の手によって天の神の生け贄とされていた所を救助され、今もなお目が覚めないまま数日が経っていた。
「…………緩んでるな。」
紅葉は緩んだリボンをキツすぎないように絞め直し、目元に垂れた髪を横に分ける。
「―――ん、ぁ。」
その動作がくすぐったかったのか、眠りながら眉を潜めた美森は、少しして瞼を開いた。
「―――――美森」
「…………み……じ、く……」
掠れた声で、ピントの合わない目で、それでも美森は紅葉を捉える。 その事実に、カッと目頭が熱くなった気がした。
起きようとした美森の肩を押して寝かせた紅葉は、美森に優しく語り掛ける。
「……無理に話すな、数日寝てたんだ、喉の負担になる。」
「ぅ、ん……」
美森の目覚めを切っ掛けに、病室は慌ただしくなった。
紅葉がナースコールで人を呼んだり、吉報を伝えるために明け方にも関わらずNARUKOを使ったせいで寝ぼけた勇者達がメッセージ上で阿鼻叫喚の大騒ぎを披露したのは、ひとまず置いておく。
暫くして病室内のゴタゴタした空気が落ち着き、窓の外で太陽が覗き始めた辺りで、美森はベッドの枕側を上げたそれに背中を預けて座っていた。
「紅葉くん、私、どれくらい眠っていたの?」
「一週間ではないが、それでも長かったぞ。 」
「……そっか。」
そう言ってうつむく美森。 だが、僅かに思考してから紅葉に飛び付いてガクガク揺さぶり声を荒げた。
「も、紅葉くん! 奉火祭は!? 私がやらないと世界が炎に―――――っ!!」
「おおお落ち着けけけけ、説明するから手離せ、ガクガクすんな。」
肩に伸ばされた美森の両手を掴み落ち着かせる。 紅葉は咳払いを一つ、説明を始めた。
「どういう訳か、お前が救助された後の炎の勢いは落ち着いたままだったらしい。」
「そんな訳が……まさか他の巫女を……?」
「いや、そうじゃない。 ここ数日は防人を使った偵察も行っているが、星屑すら居ないんだとか。 炎を含めて色々と沈静化してるんだよ。」
使える限りの権限と立場を利用して、紅葉は大赦の上層部および防人経由での情報収集を行っていた。
『神に贄を捧げ赦しを乞う』事がメインとなっている奉火祭から、その贄を奪い返す。 その行いがどれほど愚かな事かは理解している。
そんな畏れ多い行為を行っておいて、何故天の神はなにもしてこないのか。
「今のところ、また活性化する兆しは見えない。 よってお前も他の巫女も、もう生け贄になる必要はなくなった。」
「―――――。」
「お疲れさん、よく頑張ったな。」
ぽかんと口を開ける美森。 そりゃそうか、という呟きすら聞こえなかったらしく、紅葉の言葉を咀嚼して理解した後に美森の目元から、ダムが決壊したようにボロボロと涙がこぼれ出した。
「―――ごめんなさい」
「…………美森……」
嗚咽を漏らし、両目から止めどなく涙を流す。 美森は紅葉に背中を擦られながら、ただひたすらに、胸の内の本音をさらけ出した。
「ごめんなさい……ごめんなさい…………壁の外に運ばれる時、本当は恐かった。 もう皆に会えない、皆の中から私が消える。 その事がただただ恐くて、直前で逃げてしまいたくなった。」
「……誰だってそう思う。 美森に限った話じゃない、もっと根気強く俺が止めるべきだった…………恐い思いをさせて、ごめんな。」
擦る動きを止め、ベッドの端に移り両手で美森を抱き締める。 背中に回した手を通して、美森の心拍を、美森は紅葉の心拍を互いに確かめた。
二人はまだ、生きている。
「お前はちゃんと生きてる、ただそれだけで良かったんだ。 それ以上は要らないから……これからも俺たちの傍に居て欲しい。」
「―――はい。」
強く、強く、強く。
絶対に離さないと言う意思すら感じる程に強く、二人は互いの熱を求めるように暫くの間、静かに抱擁を続けていた。
◆
「悪い、ちょっと顔洗ってくる。 あとついでに水買ってくるから。」
そう言って紅葉は席を立つ。 放課後にすぐ来ていた事もあり持ち込んでいた鞄を手に取って出ようとするが、片方の手を美森に掴まれた。
「どうした、ちょっと出るだけだぞ。」
「…………ゃだ、ここにいて……」
潤んだ瞳で、美森は紅葉に訴え掛ける。
さながら捨てられた子犬か、はたまた留守番を任された子供か。
奉火祭の贄として恐くて仕方がないながらも死ぬ覚悟すらしていたのに、助けられた。
その事実が緊張の糸を完全に緩ませたのか、美森の
「……っ…………大丈夫だ、すぐに戻るよ。 徹夜で居たからか眠くて仕方ねえんだ、目覚ましに顔洗って、冷たい水でも飲んでくる。」
「すぐ戻ってね……?」
「わかってるよ。」
一瞬苦悶の表情を作りそうになった紅葉はそれを死ぬ気で抑え、誤魔化すようにぐしゃぐしゃと美森の髪を掻き乱しておく。
足早に立ち去った紅葉の後ろ姿を見送った美森は、熱すぎるほどに暖かい胸の鼓動を確かめるみたく、両手を胸元で合わせる。
「―――――もみじ、くん。」
そう呟いた美森の頬は、酒気に
「が、あっ―――はぁーーー。」
朝早くと言うこともあって、誰もいない病院の廊下。 そこで紅葉は、心臓を握り潰さん勢いで胸に手を当て、息苦しい中で酸素を求めて荒い呼吸を繰り返している。
「こん、なのを……美森に見られたら……心配されるからな……
美森に
誰かに質問された訳でもないのに、紅葉は弁解染みた言葉を吐く。 拭う暇すらなく顎を伝って廊下に垂れる脂汗を見て、紅葉の口は自然と動く。
「頼む、みーちゃん…………あと少し……せめて、冬が明けるまでの一、二ヶ月で良いんだ……」
心臓の奥深く、魂の根底に居る愛しいかつての古馴染みに、紅葉は乞う。
「あと、もう少しだけ―――――『俺』をこの身体に、繋ぎ止めてくれ………………っ!」
吐血をして、身体の一部が灰となり―――確実に消滅に進んでいる肉体と魂を、それでも尚『藤森水都と言う巫女』に延命させる。
無理、無茶、無謀を極めた紅葉の身体は、とっくの昔に限界を越えていた。
ここぞって時に『ずっと俺の傍に居ろ』とかが言えないヘタレ野郎、お前そんなんだから嫁の方から襲われるんやぞ。