グロい暴力シーンとか書くとお気に入り数が減るのも無理はありませんが、書かないと言う選択肢は無いです。 退きません、媚びへつらいません、反省しません。
西暦の紅葉が死んだのは神世紀72年で、その時の歳が大体88前後だから、頑張れば子供と孫とひ孫に囲まれて死ねたんだよね。 このジジイ大往生過ぎでしょ
東郷美森の帰還から数日、軽いリハビリも済ませた美森の登校が再開したことで、勇者部の総員八人が勢揃いしている。
クリスマスも近づき、部室でも飾り付けが始まっていて、夏凜が脚立を使ってツリーに飾りを付けている後ろで風が渦巻き模様の眼鏡を着けて唸っていた。
「あいつ、あの…………あれなに」
「ああ、お姉ちゃん視力が落ちたみたいで……。」
「……ふぅん、受験生は大変ね。」
そう言いながら、指でチャリンと飾りの鈴を弾く。
樹は右目を喪った夏凜の帯状の眼帯を見て、『貴女がそれを言うんですか』という言葉を飲み込む。
「んで、園子は風の先生なワケ。」
「ええ、私の家で風さんの家庭教師してるのを見たけど、あの子下手な先生とかよりは頭良いわよ。」
風の受験勉強のテストをしている園子を横目に、近付いてきた友奈と歌野を交えて四人で固まる。
普段は美森と共にいる事が多い友奈が歌野と並んでいるのを見て、夏凜が質問を投げ掛けた。
「珍しいじゃない、あんたが東郷と居ないの。 いや東郷があんたにべったりなのか。」
「あはは……流石にあの間には入れないかなー…………って。」
「あん?」
友奈が指を向けた先を夏凜たち三人が見ると、パソコンと向き合ってホームページの改善を行っている美森を、その横にいる紅葉が座ってじっと観察していた。
うわ。 と言いそうになった口を慌てて塞いだ夏凜は、少しして違う言葉を吐き出す。
「そういえば、東郷が奉火祭の贄になる決意したときその場に居たんだっけ。」
「だとしたらまあ、ああなるのも無理はないんでしょうけど……」
「あそこまでベタベタしてるとこう、イラッと来るわねぇ。」
わかりやすく言うなら、隠れて行えてると思っているカップルの社内恋愛か。 もっとも二人は付き合ってすらいないが。
視線に気付いた美森が、紅葉と目を合わせる。 距離があって何を言っているかが聞き取れないが、美森の顔が明るい事から紅葉も変なことを言ったわけではないらしい。
「無性に張り倒したいんだけど。」
「歌野、ステイ。」
両腕に渾身の力を込めて突撃しようとした歌野の両肩をがっちり掴んで引き留める夏凜。 うわ力強っ…………と呟きながら、歌野の動きを止める。
呆れたように頭を振ってツリーの飾り付けに戻った樹と、それを手伝う友奈。
勇者部部員達は、大切な人を取り戻し、八人で揃い、笑い合える時間を手に入れた。
なんだかんだと言って、それが束の間の平和だとしても、勇者と凡人にはそんな平和を謳歌して良いだけの権利があるのだから。
たとえ、二人の人間が抱えている問題に、誰も気付いていないとしても―――――。
◆
最近、友奈の様子がおかしい。
俺が美森にべったりだからかと疑ったが、そもそも俺辺りが美森の監視してないとあいつまた国防仮面とかやりかねないんだから仕方無いじゃん。
人のこと棚に上げてる自覚はあるけどさ。
ともかく、友奈は美森が戻ってきてから数日の間、若干挙動が不審なのだ。
俺たちに何かを言おうとしては、口ごもる。 それを繰り返しては顔色を暗くして、諦めたように何でもないと言い放つ。
残念な事に俺は西暦の時に色々と鍛えられてるから鈍感ではない。 結婚したあとも千景にちょくちょく狙われてたし。
…………猛禽類に睨まれたネズミの気分ってあんな感じなんだなって。
そんな俺が怪しいと思ったのだから、確実に何かがある。 友奈はどうにも、匂い立つ。
隠し事なんてしない以前に出来ない奴なんだから、そんな友奈が言いたいことを黙るなんて余程の事態だろう。
部室でその話して美森に聞かれたら国防仮面が出動してしまうから、確証が得られるまで誰にも相談できないのはどうにももどかしい。
「(悩んだら相談とは言うが、これ律儀に守ってる奴居ねえしな。 バレないバレない、へーきへーき。)」
部室に最初に集まっていた俺と友奈は、俺が窓際で外を眺めていて、友奈が机で押し花製作に励んでいる。 幼稚園のチビ共に配るんだとか。
俺も今日は調子が良いし、運動部の手伝いでもしようかと思ったのだが、翌日に反動と激痛のせいで殺虫剤掛けられたゴキブリみたいに布団の中で悶えることになるからやめておく。
「―――――よぉ」
ふと、ドスの効いた低い声が、部室を開く音と共に聞こえた。
こういう声を出しながら家に襲撃してきた狂信者がわりといた事から、無意識に近くに置いてあった野球部の助っ人用のバットをさりげなく手繰り寄せる。
視線を向けると、そこには不機嫌なオーラを醸し出す夏凜が立っていた。 押し花製作に没頭していた友奈が、その気配に気付いてパアッと表情を朗らかに変えた。
……へぇー、そう言うこと。
「夏凜ちゃん、どうしたの?」
「どうもこうもあるか、新品の木刀が折れたのよ。」
刀袋に入れていた鉄芯の入った木刀を見せてくる。 言われた通り、頑丈な筈の木刀はボッキリと真っ二つに折れていた。
珍しいな、不良品か?
「メーカーに連絡したのかよ」
「帰ったらする。 買ったばかりで資金無いし、暫くは特訓控えて筋トレの量増やそうか検討してるところよ。」
「そろそろ脳ミソもカチカチになる頃だな。」
「はっ」
鼻で笑われた。
その後も随時部員達が集合していくが、友奈
風はうどんを食おうとしたら財布を無くした事に気付き、樹はカラオケでの録音データが消失、園子は料理の勉強の際に手を火傷、美森は家の電球が一斉に点かなくなり―――
歌野に至っては階段の錆びた手すりの割れていて剥き出した部分で腕をバッサリ切ってしまい、破傷風の予防で今病院らしい。
そんなヘマしたのが恥ずかしかったのか緊急だからか、メールがついさっき届いて発覚したのだった。
一人だけわりとヤバい事になってるが、まあ
「嫌なことが続きますね、友奈ちゃんと紅葉くんにまで変なことが起きなくて良かったわ。」
「これでゆーゆともーみんにまで何かあったら、『また大赦の仕業かー!』って騒いでたかもね~。」
『―――――。』
何気ない園子の発言は、部室の空気を死滅させた。 ここでちょっと女子空気読みなよ~、とか言ったら歌野に代わって夏凜に冗談じゃ済まないガチビンタ貰うから黙っておく。
「それは……もー、考えすぎよ! いくらあたしが大赦嫌いだからって、そこまでこじつけたりなんかしないっての。」
「まあここまで偶然が重なると、そう言いたくもなるだろうけど。」
そうだな。 そんな災い染みた真似は大赦なんかには出来ん。
この話題を聞いて表情を曇らせた友奈を見てしまえば、もう『嫌な偶然だなぁ』で見なかったことには出来ない。
春信辺りに調査を頼もうかとスマホを取り出した瞬間、不意打ち気味に部室の扉を勢いよく誰かが開いた。
「お待たせェーーーい!!」
「……歌野はとうとう頭をやられたの?」
「それは元から。」
やたら元気のある歌野が、私服のだせぇTシャツを着て現れる。 アドレナリンが出まくってるのかハイになってるなこいつ。
「……おう、どうした歌野。 何時もより7割増しで変だぞ。」
「めんどくさいからって麻酔無しで腕の縫合なんてするもんじゃないわねぇ! 痛みで気分が昂ってるわァ!!」
「…………そう。」
腕に巻かれた包帯を見せびらかしながら、歌野は騒ぎ立てる。 すいませんちょっとうるさいです。
騒々しい歌野に沈んだ空気を掻き乱され、シリアスな雰囲気をする暇もなくなった俺たちは、顔を見合わせてからいつもの依頼の整理と会議を始めた。
―――さて帰るか、となった夕方。 美森と夏凜が早々に部室を出て行き、帰ろうとした風を友奈が呼び止め、話があるらしく二人で校舎裏に向かう。
「(確証を得るなら、ここしかないか。)」
俺が歌野にアイコンタクトを交わすと、数秒挟んで歌野はダルそうに遅れて二人を尾行しにいった。
「…………だっっっっるぃ」
「(テンション低っ。)」
やっとハイになったのも収まったか。
「風待つのに校門の方に行くか、樹。」
「はい、そうしましょう。」
鞄を肩に提げて、樹と一緒に部室を出る。 最後に残った園子に鍵を投げ渡す。
「私はうたのんを待つから、帰っちゃっても大丈夫なんよ~」
「なんか約束してんのか、戸締まりしっかりやれよ。」
「お疲れ様です、園子さん。」
「は~い、またね~二人とも~。」
手を振って分かれ、廊下を歩く。 ほんと、薄気味悪い程に今日は体調が良いな。
窓の外はオレンジに染まり、ざわざわと木々が鳴っている。
…………妙に胸騒ぎがしたが、何ができる訳でもなく、俺は樹と一緒に校門の前まで歩みを進めた。
◆
夜、友奈の端末のチャットに通知が複数届く。 確認すると、そこには―――――
―――――紅葉と風が車に撥ねられ、歌野がかめやで爆発に巻き込まれたと言う、樹と園子の焦りが見える誤変換を交えたメッセージが届いていた。
ふと西暦紅葉と嫁の間に出来た子供メインの短編を書きたくなってきたけど、勇者の章完結しないと書けないのわゆ編のネタバレになるんだよなぁ。 どうしよ、ネタバレ気にしない人用に番外に置いておこうか。
とか言いながら番外とか誕生日回とかめぶあやで忙しくて本編の雰囲気の書き方を忘れかける馬鹿野郎。
皆は気晴らしに番外を書いても……本末転倒にならないように……気を付けようね!