普通の時空ならセイバーなんだろうけど、この作品時空の世紀末修羅脳筋にぼしだと間違いなくバーサーカーだよねこいつ。
「邪魔……くさいッ!!」
人形の泥に襲われてから、もう何分経過したかも分からない。 夏凜はがむしゃらに刀を振り、泥を斬り続けていた。
首らしき場所を斬り頭を飛ばし、胴体を薙いで真っ二つにするも、無尽蔵に家や塀の影から溢れ出す泥が、新たな泥人形を作り出す。
「しつけぇ!」
すれ違い様に切り裂き、壁を蹴り、飛び上がって指に挟んだ複数の刀を真下の泥人形に投擲。
火薬を使わない勇者システムという『神秘』による爆発が、泥人形を纏めて数体吹き飛ばす。
「雑魚の癖に数が多過ぎる……。」
四つん這いのような姿勢で着地した夏凜を狙う影が後ろから現れ、横に転がって斬撃を避ける。
「っ――――また『剣豪タイプ』か……!」
十数分前に四肢と首を切り落としたはずの、泥人形の中でも格別に輪郭がハッキリとした存在。
その手に刀に近い形状の剣を持ち構えた泥人形に合わせて、夏凜もまた刀を両手に呼び出す。
ただ腕に当たる部分を振り回し、暴れるだけの泥人形とは明らかに違う姿形をした泥人形。
夏凜は通常の泥人形よりも高い戦闘力を持つそれの事を、剣豪タイプと呼び警戒していた。
「はっ――――次は何分だ? さっきが4分だったから…………3分に挑戦してみるか。」
泥のような質感でいて、金属並に硬い刀モドキを受け止め、流しながらニヤリと笑い呟く。
試合でもなんでもない単なる戦いに礼儀もマナーもモラルもクソもない以上、夏凜が真面目にチャンバラに付き合う必要なんてものは無く。
上に召喚した刀の自由落下で背後の泥人形を貫き地面に縫い止めながら、剣豪タイプの刀を数回打ち払い、膝らしい部位を蹴り体勢を崩させて上段からの振り下ろしを脳天に打ち込む。
それを剣豪タイプは人間の肘と肩の可動域を大きく超えた右腕の刀で受け止める。
左手に召喚した刀を即座に振るい剣豪タイプの右腕を半ばから切り落とすが、剣豪タイプは左腕を触手のように振り回した。
「うわキモっ」
左腕を受け止め、鍔迫り合いになった体勢から無理やり夏凜を弾き飛ばし、続けざまに竹を割る勢いで刀を振るうが、夏凜はバク転を繰り返して避ける。
夏凜との距離を取った剣豪タイプは、その辺の泥人形を取り込んで右腕を復活させた。
「は? それズル……さっきはしなかっただろ……!?」
質量の増した剣豪タイプは、刀のように細く、鋭くしならせた右腕を―――――。
「ッ、う、おおおお!?」
槍のように伸ばして突いてきた。
まばたきをしたその刹那の間に眼前まで伸びてきた腕を、なんとか刀の腹で外側に滑らせるように受け流す夏凜。 人間が視認できる速度を超えている動きに、夏凜は防戦を強いられる。
「ぎ、ぎ、ぎ……っ!!」
右で突き、左を引き、右を戻して、左で突く。 それを繰り返され、近付けないでいる。
その合間で接近してくる通常の泥人形にまで気を配らないといけないとなれば、夏凜の集中力はより鋭くもなる。 一定のタイミングで突きを放っているのではなく、地味ながらずらされている動きに、夏凜は鬱陶しさと苛立ちを隠さない。
――――それでも。
「…………よし、
一分の内に行われた八十を越える突きを見て、かわし、観察していた夏凜は、次の突きで伸ばされた刀と右腕を、豆腐に包丁を滑らせるようにして膾斬りにした。
夏凜にそれだけ、観察する隙を与える方が悪いのだ。
接近しつつ、両手に刀を創り、すれ違いながら胴体に突き刺し、振り返り、返す刀で膝裏から地面まで貫通させて動きを止める。 更に四・五本目を両手で構え、跳躍。
左手の刀を空中で体に捻りを加えた遠心力と勢いをそのままに投擲し、肩に突き刺さったそれを足裏で深く押し込むついでに、右手の刀は人間の背骨がある場所を絶つように突く。
「―――――バーン。」
膝を曲げて剣豪タイプから離れるように跳ぶ夏凜は、滞空しながら舌を出して笑った。
直後、夏凜は自分の出せる最大数である五本の刀を剣豪タイプに突き刺さしたまま、神秘という名の爆発エネルギーを剣豪タイプの内側で暴走させる。
ボコボコと沸騰したお湯が泡立つように剣豪タイプの身体が震え、膨らみ―――――周囲の泥人形を巻き込んだ大爆発を披露した。
周りに誰も居らず、住宅にも被害を出さないようになるべく広いところに誘導しつつ戦った甲斐が有ったかと、夏凜は一人冷や汗を拭う。
「これが友奈の祟りによる災いだとしたら、私もしかして天の神にすら『こいつ死ななそう』とか思われてんのか…………なんか段々腹立ってきたな。」
事故に見せ掛けた方法で攻撃してきた癖に、自分だけに関しては泥を使った直接攻撃で、さしもの夏凜も額に青筋を浮かばせる。
「しかし、なんだったんだこいつら。 バーテックスと言うよりは…………感覚は精霊に近い、霊体とかそんなんか。」
そう言いながら、眼帯のズレを直して帰ろうとした夏凜。
だが、不意に聞こえたごぼっという音。
夕陽で陰になっていて見えない夏凜の顔は、恐らく人がしていい形相では無いだろう。
「めんどくさ。」
げんなりした顔で、再度刀を構える。
無限に湧き出る泥人形を相手に、夏凜の脳裏に千日手が浮かんだ。
「千日だろうがなんだろうが関係ねぇ―――友奈を泣かせてんじゃねえよ、ボケ。」
そう言いながら刀の切っ先を泥人形向け、足に力を込めた夏凜の背後から――――。
「――――伏せなさい、三好さん!」
「はあ? ――――うぉっ!?」
突如として後から聞こえた声。 それに反応しようとした夏凜は、直感に従って伏せる。
すると頭上を光を圧縮したような弾丸が通りすぎ、複数の泥人形を纏めて消し飛ばした。
「あっ、ぶねぇ……!」
「だから言ったでしょう、伏せなさいって。」
「誰だ――――って……うわ、芽吹……。」
「ゴキブリを見たような反応は失礼だと思わない?」
振り返った夏凜の目の前に立っていたのは、若草色の装束を身に纏い、銃口の下に鋭い刃を備え付けた銃を構えた楠芽吹の姿だった。
屈んだままの夏凜を一目見ると、続けて弾丸を放ち、泥人形と剣豪タイプを撃ち抜く。
「あんた、なんでここに?」
「紅葉さんが事故に遭って入院したと聞いたからお見舞いに来たのだけど、もう既に退院していたから紅葉さんの家に向かっていたのよ。」
良く見れば芽吹の肩には鞄が提げられており、内側で袋がガサガサと音を立てていた。
「だと言うのに、不自然な程に人と出会わなかったから少し気になってね。 遠くから爆発音まで聞こえたら、見に行くしか無いでしょう?」
「ま、そうね。」
銃剣の持ち手のレバーを下げて薄く発光する弾薬を装填しながら、芽吹は夏凜の横に並ぶ。
「それ防人システムの武器なのにリロードが必要なの?」
「いえ、これは特殊な弾丸を撃つのに使うだけ。 基本的にリロードは必要ないわ。」
ガチャ、とレバーを戻す芽吹は、夏凜にぶっきらぼうに左手を伸ばしながら言う。
「いつまで地面を這ってるの、さっさと立ちなさい。」
「あんたが伏せろっつったんだろ喧嘩売ってんのか。」
その手を弾いて立ち上がる夏凜に不敵に笑いかけ、芽吹は銃剣を両手で掴む。
夏凜もまた刀を出して両手にそれぞれ掴ませ、腰を低く落とす。
「連携訓練なんてしちゃいないし、フィーリングで合わせて頂戴。」
「はっ……誰に言ってるのよ、逆でしょ。 私の指示に従いなさい。」
「―――あ?」
「―――は?」
駆け出そうとして躓きかけた夏凜と、泥人形に銃剣を向けた芽吹は、同時にそう言う。
そして同時に顔を見合わせた。
阿吽の呼吸で指示もなく、フィ
最早、そういう星の下に産まれたのではと言えるくらいには、二人の性格は噛み合っているようで噛み合っていない。
『歯車のサイズは合っている』が、そもそも『回る速度が合わない』のだ。
「防人で隊長をしているのだから、私の言うことを聞くのが道理ではないかしら。」
「ここはあんたの戦場じゃないし、あんたの言うこと聞くとか癪だから嫌よ。」
「『嫌だから』で指示を聞かない奴が一人出るだけでどれだけ被害が広がると思ってるわけ? 貴女こそ喧嘩売ってるの?」
『は?』 と、喧嘩腰の声が重なる。 ぎゃあぎゃあと言い合いを続ける二人に、何処と無く気まずそうな泥人形。
しかして好機な事には変わり無く。
複数回の夏凜との戦闘を以て学習した剣豪タイプが、素早く接近し、刀モドキを構えて跳躍。 二人の首を纏めて切り落とさんと迫った――――が。
ノールックで投擲された二振りの刀が威力を殺すように突き刺さり、胴を弾丸が吹き飛ばす。 跳んだ軌道をなぞるようにして元の位置に戻った剣豪タイプは、またも爆散させられた。
「あーあーめんどくさい、私が突っ込んで、あんたが後方支援! 以上! この話終わり!」
無理矢理話を終わらせ、夏凜は刀を両手に突っ走る。 止める暇もなく、芽吹はため息を一つ吐き、ただ静かに銃剣を構えた。
「…………勇者部って、大変なのね。 紅葉さんも苦労してるわけだわ。」
他人事のように言っているが、近い将来勇者部に巻き込まれることになるのを、今の芽吹はまだ知らない。
普通の泥人形
・クソザコ。 勇者じゃなくても訓練してる警察とかなら倒せる。 でも無限湧き、その辺の影から好きなだけ出てくる。
剣豪タイプ
・その土地に昔いた侍とかの霊を再利用した強い方。 夏凜でも倒すのに数分掛かる。
次回はぎん×もみ回で仲を進展させて、その次で園子の誕生日回、次が球子の誕生日回です。
誕生日が近いから今のうちに書かないと間に合わない。