前回ちょっと短かったのはすまぬ。
今回でアニメ4話分終了(かも)
指先がポロッと逝った小指にさも突き指しましたとでも言いたそうな感じに包帯を巻いて、俺は結城宅に訪れていた。 ちなみに現在23時、傍迷惑も良いところである。
体の灰化か、オルフェノクだな。 とテンションが上がったのは最初のみ、今では少しずつ体が死んで行く感覚が恐ろしくて叶わん。
まあ元から死んでるんですけど、と言う西暦ジョークはさておき、インターホンから数秒置いて扉を開いて現れたのは、友奈が遺伝子を良く継いでるのが分かる女性の姿。
「まあ、貴方は確か……友奈の彼氏くんね?」
「あいつが狙ってるのは別の人です。」
「あら、そう……。」
心底残念そうな顔はやめろ、『友奈』をそういう目で見たことは無い。
友奈がご熱心なのは死にかけの内臓スッカスカ男じゃなくていりこ出汁の方ね。
いやあ、案外肺が片方消滅してもなんとかなるんすねぇ。
「……突然の訪問ですみません、友奈が寝静まった頃合いじゃないと、余計な心配背負わせる事になるので。」
「――――そういう話、なのね。」
すっ、と。 結城母は顔色を変える。
どうやら友奈が面倒事に巻き込まれている事は知っているらしい、そもそも勇者である事も知らされているのか。 ……どうだったかな、今ってその辺の秘匿は親にもしてるのか?
「あの子が命を落とす危険のあるお役目を果たしている、と聞いたときは心臓が止まるかと思ったものよ。 そして今も、何かに苦しんでいるのね。」
「はい。」
どうせ嘘をついても結城の血筋なら絶対見破ってくるだろうし、誤魔化せば信用を失う。
「…………そっか。 ……そっかあ。」
「……はい。」
しみじみと呟いて、結城母はシワのある、家事での細かな傷が目立つ手で顔を覆う。 自分の子供が手の届かないところで命のやり取りをしていたのだから、そうもなるだろうさ。
分かるよ、俺も馬鹿娘が居なくなったと思ったら血まみれで帰ってきたときは流石にビビったもん。 指二本根元から無くなってたし左肩パックリ割れてたし。
「きっと。」
「……?」
「きっと友奈は、学校では元気な姿を見せてるんでしょう。 あの子はそういう子だから。」
「ええ、まあ。 分かりやすく元気なフリをしてますよ。」
「そう…………でも、それは貴方も……よね?」
つい、その言葉に返す声を詰まらせる。 なんだってこう俺の周りの連中は無駄に勘が鋭いんだ。
友奈に色濃く継いでるのであろう、ルビーのような深い紅色の双眸が俺を貫いた気がして、自分の表情が強張るのを感じ取る。
「…………さぁ。」
「ふふっ……その顔。 そういう顔をね、最近の友奈も良くするの。」
哀愁の漂う顔で、結城母はそう言う。
一応は俺も親だった。 故に、その顔が何を意味するかは大体分かる。 無力感に襲われているのだ。 ああ、わかるとも。
――役に立てないって、辛いもんな。
◆
「どうかしら、口に合うと良いんだけど。」
「……えー、あー、はい。 美味しいんですけども。」
リビングに通された俺は、何故か結城母に紅茶と菓子を振る舞われていた。
夜中にお菓子を食べるなんて悪い人ね、私たち。 なんていたずらっ子みたいな顔で言われては乗るしかないだろう。
取り敢えず湯気の立つ紅茶の香りを楽しみ、クッキーを食べる。
「友奈の顔見てすぐ帰るつもりだったんですがねぇ。」
「……ごめんなさい、なんだか貴方も放っておけないんだもの。」
「俺、そんなに心配される顔してます?」
「小突いたら死んじゃいそう。」
「……まあ、合ってます。」
樹とかにスネでも蹴られたらそのまま膝から下が灰化しかねないもん。
「そう言えばね、友奈が小さい頃、座敷わらしが居たのよ。」
「へぇ…………家にも居ましたよ、座敷わらし。」
「その座敷わらし、ちょうど今の友奈位の背丈でどことなく友奈に輪郭が似ていたの。」
「――――なるほど。」
そいつ知ってます。
……とは、言えない。
「でも友奈が小学生を卒業する頃には見えなくなっちゃって、今頃どうしてるのかしら。」
「…………元気にしてるんじゃないですか。」
と、適当に返答してから、紅茶を飲み干して席を立った。 結城母は不思議そうな顔をする。
「じゃ、友奈の顔見て帰ります。」
「友奈今寝てると思うわよ?」
「……寝顔だけでも見て、こっちも安心したいんですよ。 それに…………。」
「それに?」
――――――突如として現れた不定期の体の激痛。 それを抑えるように服の胸元を握り締め、冷や汗を垂らしながら言った。
「もう、時間がないので。」
「――――。」
何も言わない…………と言うよりは俺の状態に絶句している結城母を置いて、友奈が居るだろう二階への階段に向かう。 そして、上がる前に結城母に向けて伝える。
「もし、仮に……友奈が死んでしまう、とか。 世界が滅ぶ事になるとか、そうなった場合は……きっと、俺の判断ミスが原因だと思うので――――。」
ルビー色の瞳で俺を見ている結城母に、ただただ静かに話す。
「その時は、最期まで、俺を恨んでください。」
それだけ言って、俺は階段を上がった。
「子供が大人の為の犠牲になっていい世界なんて、あって良い筈が無いのだけど、ね……。」
リビングで立ち尽くす結城母がそう言いながら、力なく椅子に座った事を俺は知らない。
◆
痛む体に鞭打って階段を上りきると、友奈の部屋らしい扉を見つける。 音を立てないようにしながら扉まで近付くと不意に扉の奥で物音がした。
「(…………盗み、か?)」
これまた音を立てずに扉を少しだけ開く。 扉の死角になっている所、恐らく本棚の辺りに、誰かが居るのだ。
「(なるほど、泥棒か…………なら殺そう。 慈悲はねえ。)」
懐からスタンガンを取り出し、
―――直後、扉を開き、泥棒が気づく前に接近。 数十センチの距離まで近付き、ようやく相手が気付いたところで振り返られる前に襟首を掴んで床に引き倒す。
そのまま顔面にスタンガンを叩き付けようとしたとき、ゴリ、と胸元に金属質のなにかを押し付けられた。 見れば、それはSFチックなデザインの拳銃らしき武器で……。
「えっ…………紅葉くん……!?」
「……美森、なんで居るんだよ。」
泥棒の正体は勇者に変身した美森だった。 拳銃を握っているのとは反対の手に、深い青色の本を一冊握っている。
…………俺は、その本の事を知っていた。
「勇者御記…………。」
「これを知っているの?」
「ああ、勇者がつける日記みたいなもんだ。 内容は殆ど大社が検閲して塗り潰すがね。」
スタンガンの電源を消してから腰に戻し、倒れたままの美森を立たせる。
拳銃を虚空に花びらと共に消した美森は、勇者御記を両手で持ち直した。
「友奈ちゃんが普段は読まない本のカバーにこれを隠していたの、紅葉くんは何か知らない? もしかして、西暦の勇者もこれを使っていたの?」
「あー、使ってたな。 今大社が検閲して保管してるのはコピーだけど。」
先の騒ぎでも起きる気配が無かった友奈を見る。 どこか苦しそうに、それでいて眠りながら祟りが刻まれているであろう左胸の上辺りを掻くように掴んでいた。
「というか電気点けたのか?」
「……いいえ、最初から点いていたわ。 多分怖いのよ、暗闇の中で眠るのが。」
「そうか。」
――――子供の力になれない、大人を見た。
―――大人に助けを求めない、子供を見た。
「―――そうか。」
「……なに?」
「いや、ああ、そうだ。 御記を読むなら歌野の家にでも全員を集めてから読め、俺は怪しまれないように徒歩で帰るから後で読む。」
「……うん、わかった。」
美森は御記を小脇に抱えて、開けた窓から出て行く。 鍵を窓越しに侵入してきた青坊主がかけ直して、跳躍して姿を消した。
緊急事態だから目を瞑るが、次やったら相手がお前でも関係なく通報するからな。
―――結城宅の玄関を開けて、外に出る。 春に向けて冬が徐々に終わりを迎えていた。
それでもまだ気温は低く、吐く息は白い。
湯気のようなそれは、空気が汚れているからこそ生まれるもので、埃や汚れが大気中に殆ど無い北極や南極での息は白くならないらしい。
「北極のクマも南極のペンギンも、みんな等しく炎に焼かれているわけだ。 笑えるな。」
お前らもそう思わないか?
と言って振り返る。 俺の目の前には、夏凜達が襲われたのと同じ、泥を押し固めたような姿のヒトガタが立っていた。
もはや、友奈に近付くことそのものすらアウトらしい。 もしくは神樹からリソースを分けられて生き長らえている俺を始末しておくチャンスだからか。
ただ、まあ。
「俺がノコノコ一人で、しかも丸腰で歩くわけねーだろバーカ。」
素早く懐から、デリンジャーのようで、それでいて丸みを帯びたオモチャめいた金属の塊を取り出す。 握るのにちょうど良い部分を掌全体で包み、人差し指をレバーに引っ掛けた。
「押し入れで埃を被ってたイス人の電撃銃だ、とくと味わいタマえ。」
バチ、と銃口から光がスパークすると、一瞬間を置いてから、電気の塊が高速で射出される。
電気の塊はヒトガタの泥を数対消し飛ばし、一際でかかった泥の上半身を吹き飛ばした。
「…………再生無し、と。 電気も光だからな。」
上半身が消えた泥は動くことなく、周囲の泥は健在。 一発でこれなら効率はあまり良くないな。 それ以前に、自分へのダメージがシャレにならない。
「いてててて、手が痺れる……。」
電撃銃の電源を落として、ポケットに入れる。 強く握っていた右手は、分かりやすい程に震えていた。 電撃銃の電力と勢いが強すぎるためだ。 まだ痺れてやがる。
嫌になるね。
と考えながら横から殴りかかってきたヒトガタを避け、足の裏で膝カックンの要領で蹴り転ばせてから、ぐちゃっと頭を潰す。 どうやら急所も体の動きも人間と変わりないようだ。
「ああ、もう、歳を取るって嫌だねぇ。」
刀を振り回すガタイの良いヒトガタの得物を避け、時に普通のヒトガタを盾に使い、振り回し、鈍器よろしく叩き付け、手の痺れが治ったのを確認して出力を落として二発目を撃つ。
今度は急所を逸れ、左腕を肩回りごと蒸発させるだけにとどまった。 うーん惜しい。
斬られそうになっては避けて、ヒトガタを殴り蹴り倒しては走り、そうしているとやがて、子供が遊ぶのに使っている広場に躍り出た。 後ろは壁。 故に行き止まり。
「…………悪い、今の俺じゃこれが限界みたいだわ。」
ぽつりとそう呟くと、瞬間、大きな鳥が翼をはためかせる音が頭上から響き渡った。
見上げるとそこには、山伏装束に身を包み巨大な翼を背に生やした少女が、俺と泥のヒトガタを見下ろしていた。
天狗の少女の肩に器用に乗っていた黒猫がひょいと飛び降りると、宙でその姿を艶のある黒髪の少女に姿を変え、どこからか大鎌を取り出して紅い装束を即座に着込む。
更に着地する直前に純白の衣服をその上に纏い、黒髪の少女は七人に姿を増やす。
天狗の少女がつぶてのような火炎を幾つも雨あられと降らせヒトガタに穴を空けるのと、七人に増えた少女の七つの斬撃が七体のヒトガタを両断するのは全くの同時だった。
鎌に付着した泥を払ってから分身を解き、白いローブと紅い装束から学生服に衣装を戻した少女が、壁に背を預けて大人しくしていた俺に話しかけてきた。
「――――もう大丈夫よ、紅葉くん。」
「ああ。 助かったよ千景、あと若葉。」
「私はついでか。」
天狗の少女……もとい若葉は頭上高くを滞空していたにも関わらず、翼を一度はためかせるとまばたきを挟んだ刹那の内に着地した。
次いで刀を握っているヒトガタに向けて、大天狗を纏った事でその姿を変異させ大太刀へと化した生大刀を素早く突き刺す。
そのまま生大刀を、若葉は凄まじい
音もなくただただ赤とオレンジの入り交じった爆炎が宙に咲き、遅れて降ってきた生大刀を若葉がキャッチする。 不思議と生大刀は無傷である。 神器とはズルく不思議なモノだ。
千景と似た制服に服装を変えると、若葉は、どこか諦めたような、呆れたような顔で俺に言ってくる。 横の千景は任せたと言わんばかりに我関せずとまぶたを閉じていた。
「その顔……やはり、決意は変わらないのか。」
「そうだな…………いや、そうとも。」
「むしろ、より強く決意を固めたみたいだな。」
「大人が体を張る時が来たってだけさ。」
夜空と月明かりが照らすなかで、俺の顔が二人の目にどう写っているかは、わからないが――――。 きっと清々しくくっきりと、死相が浮かんでいるのだろう。
滅多に無い紅葉の敬語ほんと違和感やばい。
若葉様の動きはビルドvsグリス戦でのホークガトリングハザードの動きが頭を過ったからそれを採用した。 上手く書けてないけど。
結城母
名前は特に決めてないけど候補としては
本人曰く友奈が小学生の時は今の友奈くらいのナニカが座敷わらしみたいに友奈の側に居たらしい。いったい何嶋何奈なんだ…………?
ちなみに基本四国の夫婦は夫が尻に敷かれている。
紅葉の娘(コヨミ)
結構ガチのバイ。 誘拐されて帰ってきたと思ったら指が二本切断されてるわチェーンソーがめり込んだ肩の部分が裂けてるわで、クトゥルフ編では書かれてないが即入院させられてた。
相手が好みなら女もイケる。 男女含めてフってフラれてを繰り返して8回目くらいでようやく結婚に漕ぎ着けた剛の者。
弟? ああ、こないだ若葉と杏ちゃんの娘に監禁されてたよ。 面白いから助けなかったけど。