東方札ノ騎士   作:しゃりなり

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プロローグ

ここは、人、妖怪、神と様々な存在が住まう楽園、“幻想郷”。ここでは現世と違い、人が絶対的頂点なる存在ではない。何故ならば上記したように妖怪や神などの人外がいるからだ。故に普段は人里から離れた魔法の森などに入ると鬱蒼とし、薄気味悪いと感じるであろう。しかし、今宵は普段とはまた違う雰囲気が漂っていた。それは、妖気の様にねっとりとしていて、霊気の様にひんやりとしている。どう考えても尋常じゃない森の様子に、“七色の人形使い”こと、アリス・マーガトロイドは森の調査をしていた。

 

「.....ふーむ、森中に充満しているせいかしら?はっきりとした位置を感じれないわ...」

 

アリスの言った通り、その“気”が森中に飽和しているため、特定の位置を割り出して特定する事が出来ず、いたずらに時間だけが過ぎていく。アリスが悩んでいると、何処からか可愛らしい人形が飛んできた。

 

「おかえり、上海。何か見つかった?」

 

アリスに問いかけられた上海はコクコクと頷いた。そして、やってきた方向へともう一度戻り出す。

 

「そっちに何かあるのね?よし、言ってみようかしら」

 

アリスは上海へとついていき、暗い森の奥へと進んで行く。しばらくして、森中に人形使いの悲鳴が響き渡った。

 

 

光写真館、少し古い洋風でお洒落な造りのその店で、門矢士は、椅子に座って自分の撮影した写真を眺めていた。写っているのは、嬉しそうな顔、怒っている顔、泣いている顔、笑っている顔と、様々な表情と様々な人物であった。しかし、その写真には全て共通点があった。歪んでいる。ぼやけたり、二重になっていたりと、歪んでいるのだ。

 

「....この世界も俺の世界では無いみたいだな....」

 

写真を机に放って、光写真館の館長である光栄次郎のい淹れたコーヒーを一口啜る。

それを見ていた光栄次郎はニコリと笑う。

 

「君の世界とかはともかく...現像代は?」

 

「ツケといてくれ」

 

答えは分かっていたが、栄次郎はため息をつく。しかし幾度となく行われてきたやりとりの為、もはや慣れっこだ。

 

「まあまあ、いい写真撮れなくて士も落ち込んでるんですよ」

 

コーヒーを片手に笑顔で栄次郎を慰めるのは小野寺ユウスケ、整った顔はとても爽やかな印象を受ける。

 

「誰が落ち込んでいるだ、バカユウスケ」

 

士が不機嫌そうにため息をつくと、店の奥から1人の若い女性が歩いてきた。その女性は光夏美。栄次郎の孫であり、光写真館の看板娘だ。士にはナツミカンと呼ばれている。そのままツカツカと歩いてきた夏美は士をキッと睨んだ。

 

「士くん!また現像代ツケてるんですか!いつになったら払ってくれるんです!てゆーか払う気ないですよね!」

 

「払う気はあるぞ、いつかな。それに、この店は碌に客が来ないし、良いだろそらくらい」

 

士がそう言うと、夏美の眉がドンドン吊り上がっていく。

 

「もう怒りました!光家秘伝!笑いのツボ‼︎」

 

夏美がそう叫び、士の首元へ親指を突き立てる。すると、それまで偉そうな態度を取って居た士が大声で笑いだした。

 

「ハハハハハ!!!ちょ、ハハハハ!!止めてくれアハハハハ!!!!」

 

笑い転げる士、床で踊っている様にも見える。そのまま転げ回っているとトイレに行こうと立ち上がった栄次郎にぶつかり、栄次郎がよろける。ウワーー!っとちょっとした悲鳴をあげて転倒しそうになるが、撮影の背景用に使うペーパースクリーンの鎖に捕まることにより、転倒を防いだ。すると、鎖に捕まった瞬間、ガラガラガラと1枚の背景が降りてきた。

 

「鳥居と、神社?」

 

ユウスケが絵を見て呟いた。ユウスケの呟いた通り、絵には立派な鳥居と、少し古そうな神社が映し出されている。

 

「ここが次の世界...か」

 

「今度はどんな世界なのでしょうか?取り敢えず外に出て見ましょうよ」

 

夏美の言葉に賛同した士扉を開け、写真館の外に出た。

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