転生者は静かに過ごしたい   作:紅風車

3 / 10
転生者はコソコソと動く

伯爵となった僕だが、どうやって過ごすか考えていた。

この世界には魔法があり、異世界ではあるのが分かるが正直生活の基盤がどうにも・・・といった感じだ。

 

「・・・魔力・・・か」

 

この世界には魔法ともう一つ、スキルがある。

詳しく言えば、《魔法》というものから分かれていくのだが、《火》《水》《雷》《氷》《土》《風》《闇》《冥》《光》《聖》の10種類が魔法のスキルになる。

もっと難しい感じではあるが、そこまで理解するのは面倒だった。

ちなみになんでこんなことを知っているのかといえば、僕が生まれ持った能力による恩恵だ。

何故かその能力も分けられており、《剣の頂》《魔の頂》という二つがある。

そのうち《魔の頂》の派生から知識を得ている。

難しいが、慣れれば簡単でしかもこの二つは剣と魔法に関して天才的なほど扱える様になる。

 

 

《魔の頂》は派生に《元素操作》があり、それを使えば恐らく金属生成が出来る。

元素はその物質を構成する為に必要な物で、例えばダイヤモンドなら()()原子を操作すれば作れる。

原子の組み合わせと結合次第で変わるが、ダイヤは炭だ。

それを作って売れば金には困らないがそれはそれで面白さが減る。

それにこの国には王立総合学院という学校があるから、それを国王に褒美にしてもらえば良かったといまさら思っている。

 

「まぁ、直談判も・・・悪くはないか」

 

国王謁見が終わったすぐでは無理ではあるだろうが、どうにか話し合えないかを考えようとすると通路には見知った女の子がいた。

 

「あれは・・・ミリエル様?」

 

「あっ、ユーリ!」

 

僕の姿を見つけた途端走って抱き着いて来る。

というかこれ色々とまずいのでは。

 

「お父様と会ったんでしょう?」

 

「ん・・・はい」

 

「何か・・・あった?」

 

「えっと・・・陛下からミリエル様の救助の礼とその褒美に伯爵の爵位を頂きました」

 

「本当?伯爵だなんて・・・」

 

「伯爵よりも欲しいものがあったのですがね・・・言いづらかったので」

 

「欲しい物・・・?それは何?」

 

「物というよりはですね、学院に通いたいのです」

 

「学院・・・お父様に言ってみる!」

 

ミリエルを利用している感じになって罪悪感を感じたが、仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。

利用したくないのなら話さなければ良かった。

 

「・・・はぁ」

 

何度目になるか分からない溜息をつきながら、壁にもたれて少し寝ることにした。

 

 

 

 

 

気がつけば、明るかった王宮内部は暗くなっていた。

無意識に僕は気配を消していたようで、誰も気がつかなかったようだ。

 

「ん・・・暗い」

 

《魔力操作:身体強化》

《闇魔法:気配遮断》

 

「よっ・・・っと」

 

魔力を操作して僕の身体強化を施す。

身体能力は高くても、強度が低かったら意味が無いのでその強化と、自身の存在を完全に消し去る。

 

「・・・ミリエル様の部屋、どこだろうか」

 

《闇魔法:気配察知》

魔法を使うと頭の中に王宮内部の構造が全て入ってくる。

そしてその中からミリエルの物が見つかったが、もう一人違う気配があった。

 

「・・・まぁ、とりあえず行ってみる・・・か」

 

場所は遠くはなく、近かったためすぐにたどり着く。

すると中から揉めているような声がした。

 

「嫌です!」

 

「嫌々ではないだろう?君と僕は結婚するのだから」

 

「わ、私には心に決めた人がいるんです!」

 

「へぇ・・・?誰だい?僕の花嫁を横取りしようとするのは」

 

言い争いというより何かを強要されかけているのか。

ミリエル様と後一人は青年ほどの声の主。

 

「・・・どうするか」

 

このまま突撃しても良いし、放置しても良い。

とりあえず様子見しようか。

 

「全く、今日のところはこれで帰るよ。君が嫌がっているからね」

 

そういうと部屋から一人出ていく。

恐らくこの男がミリエルの婚約者なのだろう、話的に。

ズカズカと偉そうに歩いていくが僕には一切気づいていないみたいだ。

扉が空いている間にさっさと入ってしまおう。

 

「はぁ・・・」

 

中に入るとミリエル様が小さくため息をつく。

 

「何かお悩みですか」

 

「っ・・・!?」

 

魔法を解除して話しかけると、ミリエル様が驚く。

まぁ当然なんだろうけど。

 

「ゆ、ユーリ?」

 

僕だと分かると一気に安心したのか、緊張を解いた。

 

「ど、どうやってここに?」

 

「秘密ですよ。それで、何か?」

 

「・・・さっきね、婚約者が来たの。私は嫌だけど・・・」

 

「・・・そうですか」

 

「それでね、お父様に聞いたの。ユーリを学院に通わせれないかって。大丈夫だって言ってくれた」

 

「・・・ミリエル様ではなく私が言うべきなのですが・・・」

 

「ううん。それでね、学院は全寮制で私は王族だから・・・戻れるのだけど基本的に無理なの」

 

「構いませんが・・・どうか?」

 

「男女別なんだって。ユーリに会いに行けない」

 

「それは大丈夫では・・・?そもそも会う理由がございませんし」

 

「大問題なの!私は・・・その・・・ユーリの事好きなんだから」

 

そういうミリエルは顔を赤くしているがしっかりと僕を見ている。

 

「・・・は、はぁ・・・」

 

「本気なんだからね!?」

 

「・・・立場を考えてください。陛下も反対なされます」

 

「うう・・・」

 

いくら貴族とはいえミリエル様は王族だ。

立場の差が違いすぎるし、大切なご息女を陛下が易々と出しはしない。

 

「じゃあお父様が良いと言ったら受けてくれる?」

 

「何故そうなるのですか・・・」

 

「私はユーリが良いの!それ以外は微塵も興味はないわ!」

 

「またはっきりですね・・・」

 

正直ここまで好意を持たれるような事をした覚えはないのだが・・・とにかく色々とまずい。

婚約者がいるのにそれを横取りするようなものだから国王も激怒するはずだ。

 

「っと・・・」

 

するとミリエル様が僕に抱き着いて来る。

あの時とは違い、今度のは離さないと言うように力強いものを。

 

「我が儘は駄目です。王族として生まれたミリエル様ならば分かるでしょう?」

 

「やだ!ユーリが良いっていうまで離さない!」

 

「はぁ・・・」

 

《冥魔法:身体操作=睡眠》

このままではらちが開かないので冥魔法でミリエル様の眠気を操作する。

急に寝てしまったため、力が抜けた身体を支えてお姫様抱っこするとベッドに寝かせる。

邪悪な事を考えていれば寝込みを襲うのだろうが僕はその気はない。

 

「・・・では」

 

《魔力操作:身体強化》

《闇魔法:気配遮断》

ここに来るのと同じ様に自分に魔法をかけて、この部屋の窓から抜け出す。

しばらくは隠れて過ごすことにして、今はこの屋根の上で寝ることにしよう。

人間その気になればどこでも寝れるのだから。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。