転生者は静かに過ごしたい   作:紅風車

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氷点下の雪片

寝ていた感覚が引き戻されたのは寝始めて数十分ほどしてから。

急に教室内が騒がしくなり、それと同時に体が誰かによって揺さぶられた。

 

「んむ・・・」

 

「ユーリ!起きて!」

 

僕を揺さぶるのは婚約者になったミリエル。

だがその声はどこか焦っているというか怯えているような物だった。

 

「ミリエル様・・・?」

 

「起きた!?早くここから出なきゃ!」

 

「出るって・・・先ず何が・・・」

 

《闇属性:気配察知》

瞬時に気配察知を使うと人の気配ではない物があった。

だが感じたことがあるそれは、以前ミリエルを襲った魔物の類の物だ。

 

「ん・・・なる、ほど」

 

 

「ミリエル様、先に逃げてください」

 

「ユーリは!?」

 

「・・・」

 

人のために動くのは好きではないけれど、結果的にミリエルへと繋がるのならそれは排除する。

国のためじゃない、ミリエルのために。

 

「・・・それでは」

 

「待って!」

 

ミリエルの制止の声も無視して気配察知で分かった場所へと向かうと城壁で国兵が迎え撃っていた。

 

()()()()()()()()()()()

 

《空想具現化:無限収納=銀霜刀》

あらかじめ決めていた呪文を唱えると氷の結晶が現れてそれが一つに集まると一本の刀へと変貌する。

存在するだけで辺りの空気が一気に冷え、凍っていく。

 

「ん・・・」

 

空気というのは主に酸素、二酸化炭素、窒素で出来ており、その中でも酸素と窒素はおよそー200°Cで液状化する。

触れれば一瞬にして氷点下の温度を得れるそれは使い方次第では兵器にもなる。

《元素操作:原子・分子組み換え》

窒素と酸素の結合を組み換えて凝縮する。

液体は言わば物質の塊で、気体も集めれば固体や液体になる。

《元素操作:液体操作》

液体にした二つを操作して雨のように降らす。

場所は魔物がいる場所に。

 

「んじゃ・・・」

 

《魔力操作:身体強化》

魔力を体中に這わせて強化すると魔物の中心部へと突入した。

ざっと見えて数百以上のそれはこのままでは兵士も持たないだろう。

 

「・・・()()()()()()()()()()()()()()()()

 

《氷属性:絶対零度》

《氷属性:氷山創造》

氷属性の最上級魔法を一気に詠唱するとたちまち辺りの空気は冷え、氷が降り注ぐ。

僕が地面に足を付けばそこから地面が凍っていき、同じく地に足を付けている魔物もろとも凍らせていく。

 

「・・・呆気、無いな」

 

「ほぅ?貴様何者だ」

 

僕以外の声が聞こえるとその方向には今までの魔物よりも強そうな者がいた。

人の形を持つそれはおそらく()()だろう。

 

「・・・邪魔になるから、蹴散らしただけ」

 

「なるほど、それがお前の最期の言葉だな!?」

 

何か変な感じがして、その場から飛び退くとさっきいた場所の空間が爆発した。

 

「・・・空間、爆発・・・」

 

空間という多次元の概念はそうそう操れはしない。

適正があろうとも、それに辿り着けるまでには人の生では届かないほどだ。

この魔人もそれを知っているからか、少し機嫌よくしている。

 

「どうだ、貴様ら人間では扱えない空間魔法は!」

 

《魔の頂:術式構築》

傲慢そうに踏ん反り返るその態度は前の世でも見てきた。

だからこそ嫌いだ。

その程度しか出来ないのに。

《空間魔法:操作=座標軸固定》

 

「・・・うるさい」

 

一瞬にて編み上げた粗末な魔法術式だがそれは傲慢な魔人を肉片へと爆裂させた。

 

「はぁ・・・」

 

《闇属性:気配察知》

辺りの気配はもう微塵も残っておらず、凍てついた地面と雪景色が広がるだけ。

凍えるような空気が自分の白い息で分かる。

 

「帰ろ・・・」

 

氷属性魔法の名残は数日で消えるだろう。

今はもう何もやることがなくなった。

 

「・・・銀霜刀。()()

 

《空間魔法:無限収納=銀霜刀》

空想具現化から先程編み上げた空間魔法に仕舞い込むとここへ来た道を戻る。

液化した空気は再び気化させて何もなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校へと戻ると生徒達は各々の寮へと入って避難していた。

まだ入りたてだろうが上級生だろうが、危険が無いことこそが良い。

 

「僕のは・・・どこだろう」

 

恐らくあの騒ぎの時に場所も発表されていたのかもしれない。

僕は飛び出して行ったから分からないのだけど・・・。

 

「お前、何をしている」

 

廊下で適当に歩いていると突然声をかけられる。

気配察知を使ってはいたから分かっていたけれどね。

 

「生徒は寮に入っているはずだ。何をしている」

 

「・・・迷いまして」

 

「ほう、迷ったのか。先生方が率先していたのだが逸れたのか?」

 

「・・・はい」

 

「・・・名は」

 

「ユーリ・スカーレットです」

 

「ユーリ、着いて来い」

 

拒否する理由も無いので着いていく。

念のためいつでも魔法は発動できるように。

 

「・・・そういえば忘れていた。私はミレッツ・クロニカル。この学院の魔法戦闘講師だ」

 

「は、はあ」

 

「お前のことは聞いている。第三王女様が泣きながらお前を探していてな。私らではお手上げだ」

 

「・・・すみません」

 

「それは構わんが・・・一つ聞きたい」

 

「何でしょう」

 

「お前が使う魔法。それに興味があってな。見せてくれないか」

 

「お断りします」

 

魔法は僕にとって自慢するものではない。

戦うため、生活の手段として使っているだけであり競い合いたいとは思わない。

だが、僕のを見て勝手に真似てみる、それは気にしない。

相手の業を盗んで自身の魔法を向上させる事に嫌いは無いから。

 

「ま、私は勝手に盗み見させてもらおう。さてここがお前の寮部屋だ」

 

「ありがとうございます」

 

「構わん。だが心配はかけさせるな、手が付けれないのだ」

 

素っ気ないけれどあの人は善人だ。

戦うこと、魔法への探究心が絶えないが魔法使いらしいとは思える。

 

「さて・・・入る、か」

 

寮部屋と案内された中へと入ると、そこそこ広めの部屋でベッドが二つ。

そのうち一つにはミリエルが横たわっており、近くによって見ると目元が少し腫れていた。

 

「・・・ごめんね」

 

自分のために泣いてくれたのだろう。

少しは考えてあげるべきかな。

 

「・・・よしよし」

 

軽くミリエルの頭を撫でると自分のベッドに入ってそのまま目を閉じる。

案外疲れていたのか、その眠りはすぐに襲ってきて寝てしまった。

 

 

 

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