【完結】ONE PUNCH MAN 最弱のヒーローと時間泥棒   作:春風駘蕩

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  七撃目 超・時間旅行

「ジェノス! あれ見ろ! 恐竜だ‼︎」

「まさか中生代ですか⁉︎」

「か…カメラ! 誰かカメラ持ってないのか⁉︎」

「俺のゲーム機なら録画機能あるよ」

「でかしたキング!」

 

 ジャングルの向こう側に見える巨大な生物たちに、サイタマたちが大騒ぎする。普段は無表情のサイタマでさえ、この時は少年の輝きを瞳に宿していた。

 どんなに歳を取っても、男たちの古代の浪漫への憧れは枯れたりしないようだった。

 

「男って……ほんとにもう」

「ここは違う……と」

 

 ゼロライナーの車内でくつろぐフブキはそんな彼らに呆れた目を向け、ハナは我関せずといった様子でリストに赤線を引いた。

 

 また別の時代では、巨大な真新しいピラミッドがそびえ立っている前ではしゃぎまくるサイタマたちをよそに、ハナだけがイマジンたちを探し。

 江戸時代では、目立たないために当時の衣服に着替えたハナに合わせて、フブキが綺麗な着物に袖を通したり。

 

「あら、いいじゃない」

「ところでサイタマ氏はどこ行っちゃったの?」

 

 ゼロライナーに乗り込んだハナたちが、そこでようやく和服を着たサイタマが追いかけてきていることに気づいたり。

 

「うおおおおおおおおおおめーら置いていくんじゃねぇよ‼︎」

「先生!」

「この時代も違ったか…」

 

 色々とトラブルに巻き込まれたりしながら、ゼロライナーは過去と未来を行き来する。

 離れ離れになった仲間を探して、大航海時代、ルネサンス、安土桃山時代、旧石器時代、様々な時代をめぐり続けた。

 

「…ここも違う」

 

 リストの半分を目前にした部分に赤線を引いたハナは、そこで険しい表情を浮かべてリストを置く。

 そして彼女は、ジトッとした目でサイタマたちを睨みつけた。

 

「あんたたち、旅行か何かと勘違いしてない?」

「え?」

 

 様々な時代で収集してきた土産物を広げるサイタマたちに、ハナは滔々と説教をしたい気分に陥る。

 過去の世界から物を持ち出すことや干渉することの危険性もそうだが、真面目に探す気があるのかと問い詰めたくて仕方がなかった。

 

「まったくもう……手伝ってるんだか足手まといなんだか」

「もういい加減リストも尽きてきただろう。一体どこにいるんだ、お前たちの仲間は」

「そんなに急かさないでよ……ミライが救った時間って本当に多いんだから」

 

 かなりの時間を巡ってきたが、それでもまだイマジンたちは見つけられない。

 まだリストの半分以上も巡らなければならないのかと思うと、流石に心が折れそうになってしまっていた。

 

「何か手がかりでもあればいいのに……」

 

 気の遠くなりそうな作業を繰り返し、疲弊した様子でテーブルの上に突っ伏すハナ。

 そんな時、備え付けられた座席からうめき声が聞こえ、ハナはガバッと体を起こした。

 

「……っ、ぁ…」

「ミライ⁉︎ 目が覚めたのね! よかった…」

 

 毛布をかけられた座席の上で横になっていた少女、ミライが薄目を開けてハナを見つめていた。

 顔色はまだ悪く、弱々しい様子ではあったが、今までずっと眠ったままであった少女が反応を示したことで、ハナは希望を見出していた。

 

「西暦…19XX年の……五月…」

 

 すると、ミライはか細い声で何か口にし始めた。

 ハナは慌てて耳を寄せ、ミライがなにを伝えようとしているのか聞き取ろうとした。

 

「…みん、なが……待って…」

「え? な、何? 何を言ってるの?」

 

 途切れ途切れの声は、うまくハナに言葉を伝えてくれなかった。

 しばらくするとミライは再び目を閉じてしまい、苦しげな寝息を立て始めてしまった。

 ミライの様子を見ていたフブキは、険しい表情で考え込む。

 

「……もしかして探している奴らの手がかりなんじゃ」

「多分そうだわ。きっとその時代にモモたちが……!」

「ここ、Wi-Fi繋がってるかな…あ、いけた」

 

 そこで、おもむろにスマホを取り出したキングが何かを検索し始めた。

 過去と未来を行き来している今、ネットにつながるのか疑問ではあったが、偶然電波が届く時間帯にでも差し掛かっていたのだろうか。

 キングは見出したスマホの記事を、ハナの前に差し出した。

 

「あのさ、もしかしてこれじゃないの?」

「ん?『お手柄3人組、米泥棒を見事捕らえる!』……って、あぁ‼︎」

 

 キングが検索したのは、大昔の新聞記事などを特集したサイト。

 そこのあるページに写っていた、三人の男の写真を目にしたハナは、思わず大きな声で反応してしまった。

 

 

「ウラタロス〜…僕お腹すいたよ〜」

「しょうがないでしょ、お礼にもらったお米はキンちゃんが全部食べ尽くしちゃったんだから」

「あれだけじゃ腹の足しにもならへんわ…」

 

 ボロボロの民家の中で、壊れかけのちゃぶ台を囲む三人の男がいた。

 これと言った特徴のない、どこにでもいそうな平凡な男たちだったが、変わったことに全員それぞれ髪に青、黄、紫のメッシュを入れていた。

 

「でもまさか、僕たち三人とも同じ時代にきちゃうなんてね」

「みんなで別れて逃げようっていったのウラタロスじゃんか〜」

「まぁ、みんなバラバラに逃げとったらもっと早く倒れとったかもしれへんけどな」

 

 青いメッシュの眼鏡の男が呟き、紫のメッシュの青年がちゃぶ台に突っ伏し、ギュルギュルとうるさい腹を抑える黄のメッシュの男がぼやく。その表情はみな暗かった。

 

「僕らこのままどうなっちゃうんだろうね〜…」

「ここ可愛い女の子いないし、そのうち身も心も乾いちゃうんだろうなぁ…」

「泣けるでぇ…!」

 

 先の見えない現状を嘆き、男たちは天井を仰ぐ。

 そんな時だった。

 

「―――あんたたち一体何やってるのよ⁉︎」

 

 スパーン! と障子が叩きつけるように引き開けられ、肩を怒らせた少女が顔を出した。

 突然の来訪者に男たちは目を丸くし、あっけに取られた様子で少女・ハナを凝視した。

 

「……は」

 

 すると次の瞬間、男たちからサラサラと砂つぶが漏れ、半透明の三色の光が飛び出した。

 

「「「ハナさんだ―――――‼︎」」」

 

 光はそれぞれ青い亀、黄色い熊、紫の龍に似た怪人へと姿を変え、ハナに向かって飛びついた。

 ハナは悲鳴をあげるも、三人の勢いに負けて押し倒されてしまった。

 

「夢じゃないよねこれ⁉︎」

「俺はもうあかんとおもてたで…‼︎」

「わーいわーい♪ デンライナーに帰れる〜!」

「うるっさいわ‼︎」

 

 怪人、イマジンたちを押しのけながら、ハナはイライラした様子で怒鳴りつける。

 手間をかけさせたこともそうだが、バラバラに逃げろと言ったのに一箇所に集まっていることを叱りつけたかった。

 

「おお、賑やかになってきたな」

「い、今人の中から出てきたような…⁉︎」

「あれが取り憑くということか」

 

 民家の外から覗き込んだサイタマたちは、畳の上に放置されている男たちや、話に聞いていた憑依能力を見せたイマジンたちを興味深そうに観察していた。

 その時、再びジェノスのセンサーに引っかかる反応があった。

 

「―――! 接近する熱源を多数感知……この反応はイマジンか‼︎」

 

 ジェノスの言葉にハナはハッと表情を変える。

 イマジンたちを見つけたことで安堵していたが、危機が去ったわけではないのだ。

 

「ねぇハナさん、そちらの人たちは誰?」

「説明してる暇なんかないのよ! ウラ! キン! リュウ! あんたたちもさっさと戦闘準備!」

「ええぇ…(イマジン)使い荒いなぁ」

「さっさとやんなさいエロガメ‼︎」

「は〜い」

「よっしゃ! いっちょやったるで!」

 

 パシン、と膝を叩いた熊のイマジン(キンタロス)が立ち上がり、民家の外に意気揚々と飛び出す。その後ろを、亀のイマジン(ウラタロス)が気だるげに、龍のイマジン(リュウタロス)が陽気に続いた。

 いきなりぼろ家の中から現れた怪人を目にした周囲の家の住人は、非常に驚愕した様子で悲鳴をあげてその場から逃げて行った。

 

「見つけたぜぇ‼︎」

「大人しく捕まりやがれ‼︎」

「ああもう! しつこいなぁ!」

 

 そこへタイミングを計ったかのように、バリバリと隣の民家の戸を蹴破りながら怪人たちが姿を現した。

 フクロウの怪人やクジラのイマジン、その他複数の怪人たちが、口汚く罵りながら早速ハナたちに襲いかかった。

 

「そんなにしつこい奴は…女の子にモテないぞ?」

「うおっ⁉︎」

 

 そこへ、亀の甲羅を模したような槍を持ったウラタロスが迎え撃つ。素早い槍さばきで翻弄し、怪人たちの足を掬い上げて転ばせていった。

 

「ドスコイ‼︎」

「ぐわぁぁ⁉︎」

 

 よろけた怪人たちに、今度はキンタロスの張り手が襲いかかる。凄まじい力で弾き飛ばされた怪人たちは、ひとまとまりにされて倒れていく。

 

「俺の強さは泣けるでぇ‼︎」

「ふ……ふざけんな!」

 

 四股を踏んで挑発するキンタロス。

 立ち上がって反撃しようとする怪人たちに、今度は紫の弾丸が食らいついて激しい火花を散らせた。

 

「ヘイヘイヘ〜イ♪ お前ら、倒すけどいいよね? 答えは聞かないけど‼︎」

 

 敵の数は多いが、三人のイマジンたちは高度なコンビネーションで圧倒している。

 思わず感心するジェノスたちだったが、その背後からハナが焦った様子で呼びかけた。

 

「ザコは放っておいて、早くゼロライナーに戻って!」

「え⁉︎ デンライナーじゃないの⁉︎」

「説明はあと! とにかく急いで‼︎」

 

 戸惑うイマジンたちを急き立て、ハナはゼロライナーが停泊している場所へ走る。

 すると首を傾げながらも走るウラタロスたちを追って、怪人たちが集まり始めた。

 

「焼却砲…!」

 

 最後尾に立ったジェノスが、雄叫びや怒号をあげる怪人たちに強烈な火炎放射を浴びせかける。

 その威力に、リュウタロスが思わず声をあげた。

 

「うわぁあぶなぁっ⁉︎」

「早く乗れ!」

 

 火だるまになって苦しむ怪人たちに背を向け、ゼロライナーに急ぐジェノス。

 しかし、突如死角から手が伸び、走っていたハナを引き寄せた。

 

「逃すかよ……裏切り者どもめ‼︎」

「きゃあっ⁉︎」

「まずい!」

 

 狼のイマジンに囚われたハナを目にし、ゼロライナーの中からデネブが鉄砲の指を向ける。

 しかしハナが直線上にいるために撃つことができず、迷っているうちにどんどん周囲を怪人たちに囲まれて行ってしまった。

 

「ヤバイぞこれは……!」

 

 ジェノスたちがハナを救出しに向かうが、その間にもイマジンは集まり始めている。

 絶体絶命のピンチと思われた時だった。

 突然、着物を着た男が狼のイマジンに蹴りかかり、ハナを抱きかかえてジェノスたちの方に飛びのいた。

 

「デネブ! お前がいて一体何やってんだよ‼︎」

「ユウトォ‼︎」

 

 振り向き、デネブに怒号を放つユウトと呼ばれたその男は、懐から取り出したベルトを腰に巻くと、一枚の黒いカードを取り出して目の前に掲げた。

 

「まとめて叩き潰してやる……変身!」

Altair form(アルタイル・フォーム)

 

 ユウトがカードをベルトに差し込んだ瞬間、電子音声とともに周囲に緑色の破片が舞い、集まって黒いスーツを作り出す。

 さらに胸と顔に金色の線路のような装甲と緑の装甲が張り付き、顔の線路を二頭の牛の顔が通る。牛の顔は変形すると、目の形となって顔に張り付いた。

 

「最初に言っておく。俺はか〜な〜り、強い‼︎」

 

 近未来的な鎧を身に纏ったユウトは、勇ましく怪人たちに吠えると腰に下げたパーツを組み合わせ、一振りのサーベルへと変えて猛然と挑みかかった。

 

「うおおおおおおお‼︎」

 

 幅広い剣が、我先にと向かってくる怪人たちに食らいつき、火花とともに弾き飛ばす。凄まじい力で振るわれる斬撃は、硬い怪人の表皮も簡単に切り裂いていた。

 勇ましく怪人たちに斬りかかる緑の戦士の姿に、ジェノスは目を大きく見開いた。

 

「あの男は…⁉︎」

「彼はユウト。ゼロライナーの持ち主で、電王と同じように時の運行を守る戦士、ゼロノス!」

 

 ハナの説明を表すように、ゼロノスとなったユウトは圧倒的な力で怪人たちを相手取る。

 ゼロライナーに近づこうとする怪人を片っ端から斬り伏せていきながら、ユウトは立ち尽くしているジェノスたちに声を張り上げた。

 

「いまのうちに行け!」

「ユウト! 後ろ狙われてるよ!」

 

 デネブが背後から迫る敵を知らせるが、運悪く別の怪人とつばぜり合いになってしまったために動くことができない。

 迫り来る狼の怪人の爪を前にして、ユウトは思わず仮面の下で焦りの表情を浮かべた。

 

「死にさらせぇぇ‼︎」

「何しやがんだコノヤロー」

「ぎゃわばああああ⁉︎」

 

 が、その寸前で気の抜ける声とともに怪人が吹っ飛ばされ、他の怪人を巻き込んであっさり爆散してしまった。

 呆然となるユウトをよそに、間の抜けた顔のままのサイタマは無慈悲にも次々に怪人たちを殴り飛ばしていく。

 

「あ、俺が過去で暴れても大丈夫だったのかな」

「ぐわああああああ⁉︎」

 

 最後の一体をもぐらたたきのように殴りつけながら、サイタマは「ま、いいや」と面倒臭そうに肩を落とした。

 

「……これ、ユウトが来た意味あったのかな?」

「一枚無駄にしちまったじゃねぇか!」

 

 颯爽と登場したのに、ものの数秒で出番が終わってしまったユウトは、苛立たしげに地面を踏みつけることしかできなかった。

 当初の目的である仲間のイマジンの回収は達成できたものの、なんとなく締まらない結果に終わってしまったのだった。

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