――僕は主人公になりたかった、物語の中でスポットライトを浴びることが出来る主人公に。
名字は2文字、名前は1文字。
父親はIT企業に勤めるサラリーマンで、母親は専業主婦。
周りに褒められるほど優等生という訳でもなく、かといって問題児というわけでもなく。
進路指導の教員に勧められるがままに高校進学を目指し、それなりに苦労しながらも志望校に合格。
高校入学後は多くもないが少なくもない友人達に囲まれながら過ごし、今はやけに馴れ馴れしい部長にこき使われる日々。
3年になれば大学進学のために受験勉強に明け暮れる日々が待っているんだろう。
こうして今までの人生を振り返ってみると僕はそれなりに幸せな部類の人間だ。
親は沢山の愛情を注ぎながら育ててくれたし、悪いことをしたときにはきちんと叱ってくれた。小学校の頃はいくつもの習い事をさせてくれたし、高校にも通わせてもらっている。
友人にも恵まれた。
高校生活初日、周りに知り合いがほとんどいなく、ボッチ回廊まっしぐらだった僕を拾ってくれたアイツには今でも感謝している。
・・・・・拾ってくれたという表現を使うと間違いなくアイツはキレる。だけど今の僕の交友関係のほとんどに彼が関わっている事実から「拾われた」という表現はあながち間違ってない。
そう、間違いなく僕は、
刺激が欲しかった。才能が欲しかった。個性が欲しかった。
忘れられたくなかった。周りにの空気に流されたくなかった。その他大勢に分類されたくなかった。
周りの人間を先導するカリスマ性が欲しかった。他人の意見に惑わされない強い意志が欲しかった。誰にも譲れないプライドが欲しかった。
けれど間宮健という人間は何処まで行っても普通で、平凡で、没個性で。
そんな自分を憎み、周りの人間を妬んだ。
――だからだろうか。
いつもは軽く聞き流す先輩の思いつきに乗せられる形でこんな所まで来てしまったのは。
『どうせたちの悪いいたずらか、誰かが流したデマでしょう?』、なんて彼女の前ですまして答えてはいたが、存外僕も期待していたのかもしれない。もしかしたら、今度こそ何かを得られるんじゃないかと。
まあ、結果はお察しだけど。
・・・・とりあえず、無事に家に帰ることが出来たら明日先輩を殴ろう。
大丈夫。こっちは現在進行形で三途の川渡りかけてるんだ、グーパンぐらい許される。もし死んだらあの畜生にテストのたびに猛烈な腹痛・下痢に襲われ続ける呪いをかけよう。
あーこんなことになるなら遺書でも書いておけばよかったな、両親にはあまり思い詰めて欲しくないし。
あと、今更なんだがこういうのを走馬燈っていうんだろうか?
▲▲▲▲
「あ~特ダネが欲しい~!出来れば政治家の汚職とか既婚俳優の不倫騒動レベルのビックでダーティーな特ダネが欲しい~!!」
「藪から棒に何言ってんですか。原稿放り投げないでさっさと作業してください」
「教師と生徒の禁断のラブストーリーレベルでもいいからさあ~。そういうの無いの、間宮後輩?」
「あるわけ無いだろ」
宙に舞ったいくつもの原稿を眺めながら言い放つと、ぐぎゃ~なんて気の抜けた声を上げて机に突っ伏す先輩。おい、サボってないで仕事しろ。
「というか最後のやつなんて実際にあったらシャレになりませんからね。実際にあったらそいつの首飛びますよ」
「か弱い女子生徒に手を出す大人なんだから当然の報いでしょ。それに他人の不幸は蜜の味って言うし」
――
僕が通っている高校の生徒であり自分より二つ上の先輩である彼女は、同時に新聞部の部長でもある。その長い黒髪を一つにまとめた彼女は成績は優秀らしく、クラスメイトや教員からの信頼も厚い。
ついでにかなりの美人(認めたくはないが)
まあこの人の素の姿を知ったらその評価も変わると思うが・・・・。
何を隠そうこの先輩、先ほど漏らした言葉から分かるようにかなりの腹黒である。
三度の飯よりゴシップ・スキャンダルを愛し、座右の銘は「幸災楽禍」。愛読書は週刊文春で、将来の夢はパパラッチとして著名人の私生活をあんな所からこんな所まで丸裸にすることらしい。
・・・・改めて文章にして見てみると悪趣味にも程がある。腹黒なんて生やさしい物じゃない、ただの性格悪い人じゃないか。
これで人望があるとか間違ってる、やっぱり世の中顔が全てか。
「それを言うなら顔じゃなくて金じゃないかな。あと3次元の女の子に夢見るなよ、だいたい皆腹の中まっくろくろすけだぞ~」
「ナチュラルに思考を読まないでください」
そしてそんな事実知りたくなかった。
「――っていうか全然進んでないじゃないですか原稿!締め切りあさってだから急いでくださいねって言ったでしょ!?」
「いや、だからネタが無いんだって。こう、私の中の加虐欲をそそられる内容のさ~」
「どさくさに紛れて自分の属性増やすのやめてくれません?」
「締め切りなんて守らなくていいでしょ、薄っぺらい記事を何枚も書くより一つの特ダネだって。量より質を重視すべきだよ」
「生徒会から予算降りなくなるんですよ、そして何故か先輩じゃなくて僕が怒られるの!」
というか毎回締め切りギリギリの人が言っても説得力ないから。
だからそのどや顔やめろ。
▲▲▲▲
「はぁ・・・・、分かりました。じゃあ俺がネタ提供するんで先輩はそれの記事書いてください。幸いなことに僕はもう記事書き終わってますから」
「え、マジ?・・・けどな~、間宮のネタっていっつもパンチが弱いからなあ~・・・」
「隙あらば人の心抉るのやめろ」
事実だからぐうの音も出ないけど。
なんで性格はアレなのに、文章力とか表現力とかは多才なのかねこの人。天は二物を与えずってのは嘘っぱちか?
――いや、そうじゃない。
「・・・・後輩~?」
「・・・・あ、え~とすみません。ぼんやりしてました、それでネタなんですけど最近編入してきた河西についてのインタビューってのはどうでしょう?」
「あ~、あのすっごい美人だって噂の娘?確か、アメリカから帰ってきた帰国子女だったっけ?」
流石先輩、学校内の情報はすでに把握済みって訳ね。
「
うん、それは僕も思った。
金髪・ツインテ・帰国子女。
そんな二次元要素を詰め込んだ人間がこの世にいるものかと最初は疑ったが、噂の広がりようからして事実らしい。
「でもよく考えてみてくださいよ先輩、今って10月ですよ?この微妙な時期にわざわざ編入なんてしてきます?ウチって特別偏差値が高いわけでもないし、強い部活があるって訳でもないのに。」
「たまたまなんじゃない?」
「それが彼女、転校してきたか理由を聞こうとしても頑なに拒否るみたいなんですよ。おまけに無駄にミステリアスな雰囲気醸し出してるから根も葉もない噂が広がってて・・・・・」
――そこまで伝えると先輩はニンマリとした笑顔でうなずいた。
いや、先輩怖いっす。焚きつけた僕が言うのも何だけど目がギラギラしててめっちゃ怖いっす。なんですかその笑顔、チャシャネコの真似ですか。・・・・いや、笑みを浮かべている女の危険性を考慮すると口さけ女が妥当か。
「いいね~、盛り上がってきたね~!突如現れた絶世の美少女、飛び交う噂の数々。これはインタビューしなくても、あること無いこと書き放題だ~!」
「いや、インタビューはしろよ!?」
あること無いことって、アンタ編入してきたばっかの生徒を登校拒否させるつもりか!?おいやめろよ、アンタの本性知ってる僕からすると全く笑えないよ!
「いや~助かったよ間宮~。ありがと~」
「いや、ですから、ちょっと話を――」
「お礼に私からも~、秘蔵のネタを差し上げよう!」
「へ?いや、いいよ。僕はもう原稿書き終わってるし・・・・」
「よいではないか~よいではないか~」
先輩は満面の笑みを浮かべながら俺の言葉を遮り、こう切り出した。
心底楽しそうに僕の困惑した顔を見ながら、こう切り出した。
「ねえ、間宮後輩。
――後に、僕はこの日の出来事を一生後悔することになる
初めまして、夏ミカンです。
今回初めてオリジナルの小説を執筆してみました。
作者はあまり文才が無いので多少見苦しい点もあると思いますが、温かい目で見守ってくれると嬉しいです。
評価・感想はどんな物でも受け付けてます!
あ、でも作者は豆腐メンタルなんで出来ればお手柔らかにお願いします<(_ _)>