艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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ジャンケンの結果、選抜メンバーは以下の通りになりました。


龍驤改二・妙高改二・神通改二・那珂改二・瑞穂改・五月雨改


低燃費メンバーで妙高さん大満足。






第104話

 

「……」

 

「清霜ちゃん、そろそろ機嫌直して……」

 

「……うるさい」

 

「うーん、どうしようかな……」

 

 

出撃ジャンケンが終わってから1時間ほど経つが、メンバー全員はまだ会議室でだべっている。

理由はそれぞれだが、鯉住君に関しては、ブスッとしてゴキゲン斜めな清霜をなだめるためである。

 

 

 

……清霜は夕立(元レ級)とドンパチやって帰ってきたのだが、その時には既に色々と終わっていた。

 

そもそも欧州に行くことになったなんて初耳の清霜は、自分もみんなと旅行()に行きたい!と思ってるのに、お留守番を言い渡されてしまった。

転化してすぐの夕立(元レ級)の世話係に任命されたのだ。

 

こんな置いてけぼりをくらっては、へそを曲げてしまうのも仕方ない。

そもそもジャンケンにすら参加させてもらえなかったのだ。

いくら転化直後のレ級には世話係が要り、彼女がその役にピッタリとはいえ、流石にかわいそうである。

彼女はまだ、その辺が割りきれるほど大人ではない……というか、我慢なんて自前の辞書には載ってない、元気一杯なちびっこなのだ。

 

 

 

そんな彼女の気持ちがわかるからこそ、鯉住君は文句のひとつも言わず、清霜の相手をしている。

元々面倒見はよい方だし、お人好しなところもあるので、そんな理由なくとも相手していた気もするが。

 

 

……彼も色々思うところがあるようで、清霜をあやしつつも思いを巡らせている。

 

 

 

・・・

 

 

 

清霜ちゃんが拗ねてしまうのは、まぁ、仕方ない。

ジャンケンにすら参加させてもらえなかったわけだし、まだまだ小さいんだし。

 

……それはいい。それはいいんだけど……

ジャンケンに負けちゃった他のメンバーまで、へそを曲げているのは、正直どうかと思う。

あなた達いい大人なんだから、それくらい我慢していただきたい……

 

 

 

……結局あのジャンケンで決まった選抜メンバーは、一通りの準備の後、30分も経たないうちに出撃していった。

普通の出撃でも準備にはそれくらいかかるというのに、欧州への長期遠征の準備でそれとは……やっぱりここの人たち頭おかしい。

 

 

ちなみに短時間の準備の中で、加二倉さんがしていった事とは……

 

 

佐世保鎮守府の統括である鮎飛大将への出撃報告

(『今から行くから後ヨロシク』みたいなこと言ってた。他に諸々の連絡もしていた)。

 

同行するメンテ班の選出

(流石に自身の鎮守府を持つ鯉住君は、同行せずに済んだ)。

 

後を託す秘書艦の選定

(赤城さんに決定。加二倉さんが渡したクッソ適当な方針メモに頭を抱えていた)。

 

 

こんなところである。

 

本人もテンションが上がってさっさと出撃したそうだったので、かなり適当な感じで済ませていた。

 

 

ちなみに、大将との話の中で

 

『ここ(佐世保第4鎮守府)のメンバーが一番槍+本隊に決定。

継戦能力を考慮して、佐世保第1鎮守府から後詰めで輸送艦隊とメンテ部隊を送る』

 

という話になったらしく、メンテ班のアテができたため、

憲兵隊見習いの皆さんの多くは鎮守府残留ということになった。

 

一番槍にして本隊とか、それ一体どういうことなの……?

なんて思ったが、そんな疑問もまた、ここのメンバーに対しては今更な話だった。

 

 

 

そして今回の一件で、こちらの鎮守府メンバーも無関係とはいかず……

 

なんと、天龍と龍田が佐世保第1鎮守府の輸送部隊に組み込まれる運びとなった。

 

提督である俺の意見が考慮されないのは、今更なので慣れっこだが……

加二倉さんが佐世保鎮守府統括である鮎飛大将に向かって、編成の指示を出していたのはどうなんだろうか?

あの人やりたい放題過ぎやしないだろうか……?

 

 

……ちなみに、その通達を受けたふたりは、凄く複雑な表情をしていた。

 

佐世保第4鎮守府の阿修羅艦隊と直接接触しなくともいい安堵と、

一方で、ここからしばらく地獄の鬼たちと少なからず関わらないといけない恐怖と、

まるで面識のない艦娘と長期出撃するという不安。

 

それらがない交ぜになって、そんな表情になっていたのだろう。

 

流石にかわいそう過ぎるので、何か俺にできることを見つけて、ケアしてやらないといけないな……

 

 

 

・・・

 

 

 

清霜のご機嫌を取りながら、そんなことを考える鯉住君である。

 

 

……ちなみに残留組の全員が全員、同行できなくて悔しいと感じているわけではなく……

 

赤城は無期限提督代理とかいう肩書をサラッとつけられたことに拗ねていて、

川内は妹ふたりにドヤ顔されたことに対して、プンスコしている。

 

逆に言えばそのふたり以外は、置いてけぼりくらったせいでいじけている。

そろいもそろってバトルジャンキーとはいえ、なんともいえない話だ。

 

そんな状況なので、清霜をなだめられるのが鯉住君だけだったともいえる。

 

 

 

「清霜ちゃんが仲間外れにされちゃって悔しいのはわかるけど……

レ級の世話は清霜ちゃんしかできないって、認められてるわけだからさ。

元気出してよ」

 

「龍ちゃんに清霜の気持ちなんて、わかるわけないもん……グスッ……」

 

「そんなこと言わず……

重要なお仕事任されて偉いじゃない。

みんな清霜ちゃんのこと、信用してるって証拠だよ」

 

「そんなこと言われたって、全然嬉しくないもん……ヒック……」

 

 

パイプ椅子の上で体育座りでべそをかいている清霜には、何を言っても届かないらしい。

見ざる言わざる聞かざるみたいな状態になってしまい、まともに話ができない。

 

……とはいえ鯉住君は小さいころ、親戚の妹分ふたりをあやしていた経験があるので、こういった場面には慣れていたりする。

 

言葉で説得する作戦は一旦保留。

こういう時の子供は感情の津波に押し流されて、まともな判断をつけられない状態なのだ。

話を聞いてもらうためにも、いったん気を紛らわせて落ち着かせる必要がある。

 

 

 

「そっか……

それじゃお仕事任されて偉いから、ご褒美になにか言うこと聞いてあげる」

 

「……ホントに?」

 

「ホントだよ。

まぁ、無理な事じゃなければだけど」

 

「じゃあ……ここに居る間、ずっと清霜と一緒に居て……グスッ……」

 

「えーと……」

 

 

清霜からのお願いは、要は鯉住君に甘え倒したいというものだった。

 

加二倉さんも他の鎮守府メンバーもそういう相手じゃないのはわかるし、このくらいの年齢の子が誰かに甘えたい気持ちもわかる。

このお願いを受けてあげて、機嫌を直してもらうのが吉だろう。

 

とはいえ彼女には、鎮守府メンバーとしての本来のお仕事もあるはず。

 

 

……清霜ちゃんを暫く借りてもいいか、提督代理をぶん投げられた赤城さんに確認しておこう。

 

 

「赤城さん、清霜さん借りちゃっても大丈夫でしょうか?」

 

「……え?ああ、すみません。

これからの鎮守府運営について考えていて、聞いていませんでした」

 

「あぁ、ええと、かくかくしかじかで……」

 

「あ、はい、構いません。

……というか、こちらこそすみません。

ただでさえ提督として忙しく活躍していらっしゃるというのに、天龍と龍田を借りるだけでなく、清霜の面倒まで見てもらうことになってしまって……」

 

「いえいえ、こちらこそ皆さんにはお世話になりましたから。

私としても恩返しするいい機会です」

 

「まぁ、相変わらずお優しいですね。

提督として活躍されている理由も、よくわかりますね。ふふふ」

 

「あ、その……あ、ありがとうございます!

赤城さんにそんなこと言ってもらえるなんて、本当に嬉しいです!」

 

 

赤城に褒められて物凄く嬉しそうにする鯉住君。

赤城は彼が今の人生を送るきっかけになった艦娘であり、憧れそのものなので、そんな態度とられてしまうと嬉しくてしょうがないのだ。

 

 

「龍ちゃんなに赤城さんと仲良くしてるの!?

清霜と遊んでくれるって言ったでしょ!?」

 

 

ガシイッ!!

 

 

「うぐえっ!?」

 

 

自分の相手をしているというのに、放っておかれた挙句、他の相手と仲良くしてるのを見せられた清霜。

ちびっ子メンタルの彼女にこれは耐えられなかったようで、我慢できず鯉住君におぶさってきた。

 

 

「ちょっと清霜ちゃん……驚くから急に飛びつかないで……」

 

「清霜と話してるのに、赤城さんと仲良くしてる龍ちゃんが悪いの!!

今から清霜が行きたいとこ言うから、このまま連れてって!」

 

「いや、流石に自分で歩いて……」

 

「なんでも言うこと聞くって言ったでしょ!

ウソつきは泥棒の始まりなんだよ!?」

 

「わかったわかった……」

 

 

さっきまでべそをかいていた清霜は、プンスコしながら鯉住君に負ぶさったまま、ふたりで会議室を出て行った。

 

 

「あー!ずるいっぽいー!

ふたりでちゃんと私のお世話するっぽいー!!」

 

 

ついでに元レ級の夕立も、彼らを追っかけていった。

あの様子だとすぐに追いついて、鯉住君はさらなる心労に見舞われることだろう。

 

実際夕立がダッシュで出て行ってすぐに「ギャー!勘弁してくれー!」というセリフが聞こえてきた。

そのすぐ後に清霜と夕立の笑い声が聞こえてきたので、清霜の機嫌はよくなったらしい。

 

相変わらず彼は、自分のメンタルを犠牲に、他人を幸せにしていくようだ。

 

 

 

・・・

 

 

 

鯉住君たちが出て行った会議室では、彼の部下たちが話をしている。

 

 

「師匠は本当に大変ですよねぇ……」

 

「泣いてる子には勝てねぇっていうしな。

提督は本当にお人よしだぜ」

 

「清霜ちゃんもご機嫌戻してくれたみたいだし、一安心だね~」

 

 

怖い人たちが軒並みその剛腕でジャンケンに勝利し、出撃していったため、天龍と龍田には心の余裕が生まれたようだ。

夕張と普通に会話できるくらいにまでなっている。

 

 

「しかし師匠だけじゃなくて、天龍さんも龍田さんも、息つく暇もないですよね……

まさか激戦区の欧州に向かうことになるなんて……」

 

「まぁ、それ聞いた時は俺もビビったけどよ……

なんだかんだ詳しく聞いてみれば、神通教官の部隊とは直接かかわらない仕事だっていうじゃねぇか。

教官たちと一緒に戦うことがなければ、もうなんでもいいぜ……」

 

「神通教官の戦闘は……ダメ、思い出したらダメだわぁ……」

 

「は、はい」

 

 

龍田の目からハイライトさんが消えかかっている。

思い出しただけでこれとか、一緒に長期出撃なんて言われてたら、ふたりともどうなっちゃってたのだろうか……?

 

 

「ま、まぁアレだよ。

俺達が艦隊に配備されることで、提督に『大規模作戦に参加、活躍した』って経歴が正式に残ることになるんだ。

ちょうどいいじゃねぇか」

 

「まさに渡りに船ってところねぇ。

提督は色々あって出世しなきゃ行けないみたいだしぃ」

 

「ああ。それに俺たちが目覚ましい活躍をして、MVPをとることができりゃ、その功績にプラスして『大規模作戦で優秀な戦績を残した』って評価もつくんだ。

いつにも増してやる気が出るってもんだぜ!」

 

「教官たちが深海棲艦全部沈めちゃわなきゃいいんだけどね~」

 

「はー……流石ですね。おふたりとも。

……私も師匠の役に立てるように、今以上に頑張らなきゃ……!」

 

 

今回の話は寝耳に水案件ではあるのだが、見方を変えれば、提督の出世を大きく後押しできる案件だとも言える。

さらに言うと、一騎当千(誇張ではない)の阿修羅たちのサポートという、一定以上の実力(上限解放レベル)さえあれば、限りなく安全な案件。

ポジティブにとらえれば、とんでもないチャンスが目の前に現れたことになるのだ。

 

ダイレクトに提督の役に立てると意気込むふたりと、それに影響されてフンスとしている夕張である。

 

 

「はー……ふたりとも、妹たちのことヨロシクね」

 

「わかりました。川内サン」

 

「しっかりと後方支援してきますねぇ」

 

「そーじゃないよ!

アイツら、ひとりだけジャンケンに負けた私になんて言ったと思う!?

『川内姉さんは留守番よろしくお願いします』に、

『那珂ちゃん国際アイドルデビューしてくるから!川内ちゃんは地味なお仕事ヨッロシクぅ~』だよ!?

アイツら姉ちゃんのことなんだと思ってんのさ!?」

 

「「 あぁ……そういう…… 」」

 

「アイツらの痴態をしっかり記録してきてってこと!

はい!小型カメラ!」

 

「わかりました……

ていうか、あの人たちがヘマするなんて、想像つかないんっスけど……」

 

「こ、これ本当にカメラなんですかぁ……?

ボールペンにしか見えないんですけどぉ……」

 

「特注品だから!

ホント頼んだよ!帰ってきたら散々笑ってやるんだから!!」

 

「「 はい…… 」」

 

「天龍さん……龍田さん……

頑張ってきてくださいね……」

 

 

やっぱりなんだかんだ、ふたりとも心労からは解放されない模様。

何かできるアシストをしたいと考えるも、何にも思いつかない夕張なのであった。

 

 

 

 

 

 




悲報・鯉住君、ロリコン確定。
おんぶと称して清霜のケツにタッチする事案発生。

……冗談です。
どっちかというと、妹分をおんぶしてた記憶がよみがえってるので、いやらしさよりはノスタルジーを感じています。



あ、今更感ありますが、基本的に前書きもあとがきも、読まなくても特に本編には影響しない内容にしております。特にあとがきは。

私が設定を把握しときたいから、備忘録的な意味を込めて書いてるって面もありますしね。

そんな感じなので、よろしくお願いしますm(__)m

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