艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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輸送艦隊について


この世界では輸送艦隊といえど、駆逐艦は基本組み込まれません。

艦時代ならいざ知らず、当時と比べたら足回りや燃費にほとんど差がない艦娘ですので、わざわざ駆逐艦を起用する理由もないのです。

さらに言えば、提督やメンテ技師が同行する場合も多く、そうすると各資材を積んでいける工作艦と同行することになりますからね。
艦自体の輸送能力はほとんど重要視されません。

とはいえ、長期遠征であるのは確かなので、燃費の悪い大型艦は避けられます。
だから艦隊に組み込まれるのは、メインが重巡と航巡に軽空母、ついで軽巡と潜水艦といった感じになります。

また、護衛で最も大切なのは索敵と対潜。
そのあたりが得意な艦が選ばれることが多いみたいですね。



第107話

「うわぁ……師匠それ本気で言ってます……?

……ホントに本気で……正気ですか……?

いくらなんでも、それは恥ずかしすぎるんじゃ……」

 

「……やるしかないんだよ……」

 

「絶対にここの人たち、みんな集まってきますよ……?」

 

「そうだろうけども……

逆に考えるんだ……ウチ(ラバウル第10基地)で部下のみんなに囲まれながらそれをやるよりは、だいぶマシだと考えるんだ……」

 

「まぁ……ウチでそれやったら、全員分やらされることになるでしょうし……」

 

「想像しただけで死にたくなる……

でも、天龍と龍田が少しでも楽になるのなら、このくらいのこと……」

 

 

夕張にこれから何をしなきゃいけないか説明しながら、ふたりと3人(3匹)は建造炉の目の前まで来た。

これから始まる大惨事に、テンションが地を這っている鯉住君。

 

なにせこれからやろうとしているのは、大勢の知り合いの見てる中、部下に愛を叫ぶという変態行為である。

 

夕張も十分に鯉住君の気持ちはわかるようで……

「自分の分もやってください!愛してるって言ってください!」

とは流石に言えなかったようだ。

 

……本当はすっごく言ってほしかったみたいだが。

 

 

(しっかりいめーじするですよー)

 

(ちゅうとはんぱないめーじだと、ちゅうとはんぱなものが、できちゃいますよー)

 

(うまくいくまで、けんぞうろ、うごかないようにしてあげますから)

 

(かどうぼたんおしても、はんのうしないようにしとくよ)

 

(おもうぞんぶん、うまくいくまで、なんどもなんども、ちゃれんじしていいですよ!)

 

 

「その配慮はありがたいけど……そんなに何度もできないって……」

 

 

(それじゃいっぱつできめちゃって)

 

(できるものならねー)

 

(うでのみせどころー)

 

 

「なんとかやってやるさ……」

 

 

いつも通り鯉住君を煽りつつも、建造炉にひっついて準備万端な妖精さんたち。

どうやら長丁場になると踏んでいるらしく、それに配慮して余計に建造炉が動かないよう、コントロールしてくれるとのこと。

 

しかし彼としては、そんな恥ずかしすぎる真似なんて何度もしたくない。

出来れば一発で決めたいところ。

 

 

「……ふー……

よし、心の準備は出来た……今からやるぞ……!」

 

 

(おー!)

 

(ついにはじまるですね!)

 

(もりあがってまいりました!)

 

 

イメージ……イメージするんだ……!

 

海の上を往く天龍に龍田……

その姿は自信に満ちていて、美しく、チカラ強い……!

どんな敵が出てきても、ひるむことなく、堂々と沈めていく……!

 

 

「ふー……よし……!」

 

 

(いめーじできましたかー?)

 

(おっけーなら、かどうぼたんをおすです)

 

(ちゃんと、あいをさけぶですよー?)

 

 

「わ、わかった」

 

 

イメージはこれでいいだろう。

あとは……彼女たちへの気持ちを言葉に出すだけ……!

 

……呼吸を整えろ……心を乱すな……一発で決めてやるんだ……!

俺は彼女たちのことは、この上なく信頼してる……!

できるさ……絶対に、上手くいかせてやる……!

 

 

「すー……はー……」

 

「師匠……すごく緊張してるけど、大丈夫かな……」

 

 

(どきどき)

 

(わくわく)

 

(なにがでるかな、なにがでるかな?)

 

 

心の準備も終え、すぅーっと息を吸い込み……

 

 

 

 

 

「天龍、龍田……!

俺はキミたちのことを、愛しているぞーーーッッ!!!」

 

 

 

ポチッ!!

 

 

 

 

 

……しーん……

 

 

 

 

 

「う、動かない……!」

 

 

(はー……それほんきですか?)

 

(じゅってん)

 

(そんなんじゃあまいよ)

 

 

「だ、ダメだったんですか!? 師匠!」

 

 

やれやれという風に手のひらを上に向け、首を振る妖精さんたち。

これでは全く足りないようだ。

 

これ以上、どないせーっちゅうねん……

 

 

「はぁ……はぁ……ダメだったみたい……」

 

 

今の一息ですんごくエネルギーを消耗してしまったらしく、鯉住君は肩で息をしている。

 

 

(こころのかべが、ぜんぜんとっぱらえてないですねー)

 

(ぶれーきふみながら、あくせるかけてるみたいな)

 

(それじゃあ、あいてのこころには、ひびきませんよ?)

 

 

こいつら……好き勝手ダメ出ししやがって……!

……こうなったら何度でも挑戦してやる!

ギャラリーが集まってくる前に、なんとしても任務完了してやる!

 

 

「ハァ……ハァ……つ、次行くぞ……!!」

 

 

(ひゃっはー! れっつとらい!)

 

(うまくいくまで、おつきあいしますぞ!)

 

(めしうまー!)

 

 

「師匠……大丈夫かなぁ……」

 

 

 

・・・

 

 

 

鯉住君が愛を叫んだ、その暫く前

 

 

 

・・・

 

 

 

佐世保第4鎮守府の波止場。

 

天龍と龍田、そして提督代理の赤城が、たった今到着した佐世保第1鎮守府の輸送艦隊メンバーと、物資輸送用の工作船を出迎えたところである。

 

 

輸送艦隊メンバーは、以下の通り

(練度は本人たちは数字として把握できないので、「このくらい」といった感覚です)

 

 

 

旗艦・航空巡洋艦『利根改二』 練度85

 

2番艦・重巡洋艦『青葉改』  練度72

 

3番艦・軽空母『瑞鳳改二乙』 練度82

 

4番艦・駆逐艦『時雨改二』  練度78

 

 

彼女たちプラス、物資輸送船かつ簡易ドックつきの小型工作船(乗員メンテ技師3名)

 

 

抜群の索敵力を持つ利根、

情報収集力が高く、記録が得意な青葉、

艦時代は護衛空母として活躍していた瑞鳳、

有名な呼び名『佐世保の時雨』の名を冠する時雨、

 

対外諜報に特化した、佐世保第1鎮守府にふさわしいメンバーだといえる。

 

ちなみに利根と瑞鳳は佐世保第1鎮守府・第1艦隊メンバーで、

青葉と時雨は第2艦隊メンバー。

 

主力からメンバーを派遣してきたというのはつまり、欧州遠征という大規模作戦に出し惜しみしないという、鮎飛大将の意思の表れだろう。

 

 

ここに天龍と龍田のふたりが合流して、艦隊完成となる。

 

 

 

 

 

提督代理として、お客さんを出迎える赤城。

天龍と龍田は彼女の後ろに控えている。

 

それに対する佐世保第1鎮守府メンバー。

メンテ班は色々の作業があるため工作艦に残し、艦隊メンバーの4名が挨拶に来た。

 

 

「皆様ようこそお越しくださいました」

 

「うむ!久しぶりじゃのう!赤城!

息災なようで何よりじゃ!」

 

 

軽く握手をしながら、笑顔で挨拶を交わす赤城と利根。

 

片や鬼ヶ島の(実質)筆頭秘書艦、片や第1鎮守府の第1艦隊メンバーというエリート中のエリート。

とんでもなく立場も実力も優秀なふたりは、色々な場で顔を合わせる機会も多く、何度か交流したことがある。

 

 

「うふふ。利根さんこそお元気なようで。

相変わらず堂々としていて素晴らしいです」

 

「ふふん。吾輩は立場ある身じゃからの!

手を抜いて実力を落とすなど、あってはならんのじゃ!」

 

「とてもご立派です。私も見習わないと」

 

「貴様等はこちらを見習う必要など、無いと思うがのう」

 

「腕っぷしが強いだけではいけないんですよ。

心の強さの方が重要です」

 

「そこも含めて十分じゃと言っておるのだが……」

 

 

いつも自信満々で実力も高い利根は、佐世保第1鎮守府の顔役だ。

 

ここ鬼ヶ島の異次元艦娘たちの実力をよく知る、数少ないひとりであり、

その阿修羅たちの驚異的な実力を知りつつ普通に接することができる、稀有な人材でもある。

 

 

「他の皆さんも、なかなかの実力なようですね。

身のこなしが整っています」

 

「戦闘を見ているわけでもないのにそこまでわかるとは、流石じゃのう!」

 

 

他のメンバーは実際に阿修羅たちの戦闘を見てはいないので、利根ほどしっかりと彼女たちの実力を把握しているわけではない。

しかしそれでも、彼女たちがヤバい人たちだということは知っている。

 

そんな相手から評価されたというのは、やはり嬉しいことのようだ。

みんないい表情で喜んでいる。

 

 

「お褒めいただき、ありがとうございます!赤城さん!

青葉がんばっちゃいます!」

 

「瑞鳳たちに任せてください!

しっかり第4鎮守府の皆さんのアシストしてくるからね!」

 

「第4鎮守府の赤城さんに褒めてもらえるなんて……

嬉しいかな……うん。

天龍さんと龍田さんのことも聞いてるよ……よろしくね」

 

「オウ。よろしく頼むぜ。

俺たちは教官たちと比べたらまだまだひよっこだけどよ、教官たちのアシストくらいなら問題ないぜ。頼りにしてくれ」

 

「うふふ~。みんなよろしくね~」

 

 

ドヤ顔の天龍と、ニコニコしながら手を振る龍田である。

 

 

「うむ!貴様らの活躍には、うんと期待しておるぞ!

では赤城よ、早速じゃが出撃計画のすり合わせをしようぞ!

そしてそのあとは艦隊行動練習じゃな!

いくら吾輩を筆頭に実力者揃いとはいえ、即席艦隊には違いないからのう」

 

「ええ。よろしくお願いしますね」

 

 

 

・・・

 

 

ミーティング中

 

 

・・・

 

 

 

「しかしなんというか、加二倉中佐は相変わらず意味が分からんのう。

こちらに連絡をよこした1時間後には、既に出撃してしまっているとは……

そもそも輸送艦隊よりも本隊が先行するとか意味が分からん。

輸送艦隊が前線基地をこしらえてから、本体がそこを拠点にするのが普通であろう?」

 

「まぁ、それはそうなんですが。ウチの方針は即断即決ですので」

 

「青葉の感覚では、即断即決って言っても、そこまでしないものなんですが……」

 

「ボクだったら、ここまでできればOKっていう線は、出撃の方針決定から大将にそれを打診……かな。

そこからさらに出撃決行なんて、行き過ぎな気がするんだけど……」

 

「大丈夫ですよ。ウチの提督は実現不可能なことはしませんので」

 

「瑞鳳、そういうことじゃないと思うんだよね……」

 

 

当事者から事の顛末を聞いて、呆れ顔の4人である。

ここでは比較的常識人な赤城ではあるが、他の鎮守府から見たら十二分におかしい感性をしているのだ。

 

 

「まぁそんなこと、今さら言っても仕方ねぇよ」

 

「そうね~。天龍ちゃんの言う通り、これからのことを考えましょ~。

……赤城教官、先行した艦隊の皆さんは、アラビア半島沖のソコトラ島で待機する予定でしたよね?」

 

「ええ。その通り。

ある程度の燃料と弾薬、食糧は、提督と憲兵見習いさんが乗っていった大発動艇に積み込んであるうえ、道中補給も予定していますが……

インド洋へ出てからは補給ができないので、そのあたりが物資的に限界だろうという判断です」

 

「ここからそこにたどり着くまでの航路は……

東シナ海、南シナ海を超え、リンガ泊地を経由して、

アンダマン海、ベンガル湾、アラビア湾の順に進むことになるのう」

 

「言葉にしてみると、とんでもない長期航海ですねぇ」

 

「ただ航海するだけでも大変だっていうのに、先行してる皆さんは本当に大丈夫なの?

リンガ泊地エリア端っこの、タイ国近海のアンダマン海までは、日本海軍で海域維持できてるけど……

そこから先は深海棲艦の勢い、半端じゃないって聞くよ?

いくらみんな実力が高いって言っても、瑞鳳心配だよ……」

 

「まったく問題ありませんよ。瑞鳳さん。

リンガ第3泊地で一旦各種補給をしてもらうよう、打診してありますので」

 

「瑞鳳はそういうつもりで心配したんじゃないと思うよ……うん……」

 

 

やっぱり話が噛み合わない。

佐世保第1鎮守府の面々は、強力な深海棲艦と何連戦もすることに対する心配をしているのに対し、赤城はそれを燃料弾薬切れの心配をしていると捉えている。

 

どっちの感覚も知っている天龍龍田は、苦笑いするしかない。

 

 

「まぁ、先行組の心配はしても仕方ない。

我々は我々の心配をするべきじゃろう。

我々も先ほど瑞鳳が言っていたのと、同様の航路を往くのじゃ。

各区間での物資消費量の上限値など、念入りに計画を立てねばならん。

それを怠れば海の藻屑待ったなしじゃぞ?」

 

「それもそうだな。

そういうのは龍田が得意だろ?任せていいか?」

 

「いいわよ~。

でも私だけじゃ、そちらさんの事情が分からないわぁ。

ひとり出してもらってもいいかしらぁ?」

 

「ふむ。承知した。

吾輩はそういったものは筑摩に任せっきりだから無理なのじゃ。

というワケで、頼んだぞ、青葉。

貴様は数字に随分と強かったじゃろう?」

 

「ええ!この青葉にお任せください!

それでは龍田さん、よろしくお願いしますね」

 

「はぁい。こちらこそよろしくね~。青葉さぁん」

 

 

どうやら細かい物資消費の計算については、龍田と青葉のふたりが担当するようだ。

 

 

「したらば吾輩達は、これからする艦隊行動練習のプランでも立てようか。

明日の朝出発だから、そこまで無理な訓練は出来ん。

効率的に息を揃えられるようなプランを立てていくぞ!」

 

「それでしたら、私にいい考えが……」

 

「あ、赤城サン!ちょっと待ってください!」

 

「あら。天龍、どうしたんですか?

何かいい案でもあるんですか?」

 

「は、はい!その程度で赤城サンの手を煩わせることなんてないっスよ!

俺にいい考えがあるんで、赤城サンはお客さん達の受け入れ準備の方に入ってほしいっス!!」

 

「う、うむ!天龍殿の言う通りじゃのう!

吾輩たちに任せてくれて構わんからな!」

 

「「「 ??? 」」」

 

 

赤城の真の実力と、普段の常軌を逸した演習を知るふたりは、必死に赤城を遠ざけようとしている。

 

これはまぁ当たり前のことで、佐世保第4鎮守府基準の『無理のない訓練』が、どれほど鬼畜極まりないレベルになるか……ここでの普通を知らない者からすれば、想像もできないだろう。

 

ということで、その辺の事情を知らない3名は、ふたりが急に焦りだしたのを不思議に思って、首をかしげている。

 

 

「……? なぜそんなに焦っているかわかりませんが……

確かにそちらの準備は考えていませんでしたし、ちょうどいいですね。

それではお任せしますので、よろしくお願いしますね」

 

「は、はい!任せて欲しいっス!」

 

「そ、そうじゃな!吾輩たちだって一人前なのじゃ!

任せて安心なのじゃー!」

 

「は、はぁ……

それでは私はそちらの準備のため、席を外させていただきますね。

あとはよろしくお願いします」

 

 

天龍と利根の謎の態度を不思議に思いつつも、赤城は退室していった。

 

 

「ふー……利根さん、ナイスっすよ。

赤城サンに演習プランなんて組ませたら、2,3日は出発が遅れちまうところだった……」

 

「吾輩もあの拷問というか処刑というか……

阿修羅道に落ちたかのような沈めあいを見たことがあるからの……

あの基準で『無理のない訓練』とか言われても、着いていけんわ」

 

「話が早くてありがたいっすよ……」

 

 

冷や汗を流しながら額をぬぐっているふたりを見て、何とも言えず不安な表情の3名である。

 

 

「司令官から、ここの取材は絶対に禁止って言われてましたけど……

理由が分かった気がしますね……」

 

「あんまり深入りしちゃダメってのは、よくわかったよ……」

 

「ボクも余計なことは聞かないようにしておくよ……」

 

 

 

・・・

 

 

 

数時間後

 

 

 

・・・

 

 

 

それぞれが分担された仕事を終え、艦隊行動のすり合わせもある程度済ませた一行。

 

陣形の素早い切り替えや、演習を通してのお互いの実力確認などを行い、随分と一体感のある動きができるようになった。

鎮守府近海に出撃して、駆逐イ級相手に軽い実戦をしたりと、なかなか実践的なこともできた。

 

ちなみに天龍と龍田の艤装は、ここの妖精さんたちが工廠から運んできてくれた。

 

やけにニヤニヤしていたのだが、言葉が分からないうえ、彼女たちの機嫌がいいのはよくあることなので、なんか嬉しいことがあったんだろうな、くらいに捉えることにした。

 

艤装の動きはとても良いものに仕上がっており、天龍も龍田も夕張にはすごく感謝したようだ。

 

 

……そんな感じで一通りの艦隊行動を練習することができたため、現在は波止場で、練習に使った備品の片づけをしているところだ。

 

 

 

「それにしても驚いたぞ。貴様等あれだけ動けるとはな!」

 

「まぁ、あれくらいなら。随分と鍛えられたんで」

 

「青葉もビックリでしたよ!なんですかあの正確な砲撃と雷撃!

イ級が口を開けた瞬間にそこを砲撃するなんて、偶然にしか見えませんでしたよ!」

 

「ボクも驚いたよ。

まるで攻撃する瞬間がわかってたみたいじゃないか……」

 

「……ん? それくらいわかるだろ?」

 

「えっ?」

 

「あん?」

 

「なにそれ怖い」

 

「まぁ私達ぃ、す~っごく頑張りましたのでぇ。

その程度なら普通にできますよ~」

 

「あの魚雷を機銃で百発百中相殺するのも……?

ウチの第1艦隊メンバーでも、あんなにおかしな精度で射撃できる人、居ないよ?」

 

「近隣の駆逐イ級程度ですものぉ。

それに魚雷の撃ち漏らしなんかしたら、被弾して痛手になっちゃいますからぁ」

 

「普通はそのために、雷跡見てからの回避をするんだけどね……

ふたりとも全然動かなかったのには驚いたよ……」

 

「あの程度ならなぁ」

 

「ここで2か月ほど研修を受けたと聞いとったが、大概な実力になっているようじゃのう……

……ま、よいではないか!

これから赴く海域は、人類の手が届いていない危険地帯も数多く存在する!

味方が頼もしいに越したことはないの!」

 

「それもそうですね!

おふたりがここまで実力があるのであれば、青葉も未解放海域や、寄港する港町の情報収集がしやすくなります!楽しみだなぁ!」

 

「そういえば青葉は特命も受けてたんだったね……」

 

 

そんな感じでせっせと片づけをしていたのだが、工廠の方角から大声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

「……愛しているぞーーーッッ!!!……」

 

 

 

 

 

「「 !!!??? 」」

 

 

その声が聞こえた瞬間、すごい勢いでぐるりと頭をそちらに向けるふたり。

 

 

「な、なんじゃあ!?今の大声は!?」

 

「な、何なの一体……!?

しかも、愛してるって……!?」

 

「意味が分からないね……」

 

 

突然の意味不明な叫びに、全員もれなく困惑してしまっている。

そりゃそうだろう。

 

 

「ちょ、ちょっと天龍ちゃん……今の声ってぇ……」

 

「ま、間違いねぇ……提督だ……!」

 

「な、何がどうしたのかしらぁ……?

提督があんなセリフを口に出すなんて……ありえないわぁ……」

 

「お、おう……訳が分からねぇ……」

 

 

特に部下である天龍と龍田の動揺は激しい。

普段そういったことは口に出さず、愛とか恋とかの分野については、艦娘と結構な距離を置くようにしている提督である。

 

そんな人物が「愛している」なんて口に出すとは……

しかも鎮守府中に響き渡るくらいの絶叫で……

 

 

「な、なにやらよくわからん……

……気になるのことは気になるし、今すぐ見に行きたい気持ちがあるが、我等は現在片付け中じゃ。

これを終わらせてから改めて見に行くことにしようか」

 

「そ、そうですね~……」

 

「か、片付けは大事だもんな……」

 

「ふたりとも随分動揺してますねぇ……」

 

「瑞鳳も提督があんなこと言ったらドン引きするだろうから、気持ちはわかるなぁ……」

 

「鯉住龍太中佐だっけ……?

なんだか顔合わせするのが怖くなってきたよ……」

 

 

先ほどまであれだけ余裕で戦闘していたふたりが、あたふたして心ここにあらず状態になっている様子を見て、佐世保第1鎮守府組は怪訝な表情をしている。

 

他所の鎮守府で「愛している」なんて叫ぶとか、どんな感性をしている提督なのだろうか……?

 

知らないところで変人扱いされ、株が下がりまくっている鯉住君なのであった。

 

 

 




だいぶ長くなっちゃったので、鯉住君のやられっぷりは次回に持ち越し。
メンタルブレイク著しいですね。かわいそう。
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