艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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ナレーション部分の最初を1マス空けるようにしてみました。
国語の授業を思い出す変更。些細なものですけどね。


あと変な性格の艦娘が出てきますので、嗜好に合わない方や嫁艦がバグってると感じた方は、大変申し訳ございません。



第112話

 なんやかんや情報共有を済ませた面々。

そこから増援メンバー選定と、基本的な行動指針の話し合いまで済ませてしまい、現在は全員でまったりしているところである。

 

 愛宕が淹れてきてくれたお茶を飲みつつ、鯉住君がお詫びの意味も込めて買ってきたお土産『長崎カステラ』をお茶請けに、みんなで口をモグモグしている。

 

 

「パクパク……しかし中佐。報告はしっかりせねば。

色々と訳が分からなすぎて、その指摘が正しいのかどうかすら、若干分からなくなっているが……」

 

「すいません中将殿……なんかもう色々と……

『強い深海棲艦は復活する』という話が、まさか誰も知らない情報だったとは夢にも思わず……」

 

「まぁ普通に考えたら、そりゃそうだよねー。

龍ちゃん、転化体の知り合いたくさんいるし、そのうちのひとりくらいは知っててもおかしくない話だもんね。ムシャムシャ」

 

「私もその情報は初耳です。

沈んでしまえばそこまでだと思っていました。ススッ……ふぅ」

 

「鳥海さんは、なんと言うか……

自分が復活できるとか、そういう感覚ってなかったんですか?

自分のことなんですから、わかりそうなものですが」

 

「考えたこともありませんし、感じたこともありませんでした。

死んだ後のことなど、考えても意味がないわ。

今を全力で生きることが大事ですもの」

 

「前向きだなぁ……

今を全力で生きた結果が、あの大攻勢だったんですね……

もっとこう、穏やかでゆったりとしたスローライフみたいな発想って無かったんですか?」

 

「鯉住さんはそれでいいかもしれませんが、私はそのような生活には耐えきれませんので。

そもそも深海棲艦に対して人間を襲うなというのは、どだい無理な話です」

 

「血の気が多いっすね……」

 

 

 鳥海は戦いこそ生きがいといった性格をしているので、理想の生き方の話では鯉住君とは全く噛み合わないようだ。

 まぁ、戦いと言っても実際に自分が戦う方ではなく、部隊を動かす指揮官としての戦いに飢えているようなのだが。

 

 

「しかし中佐は、一体その、なんというか、一体何なのだ……?

そもそもホントに人間なのか? 姫級個体と繋がりが強すぎて、まったく信じられないのだが……」

 

「なんていうかスイマセン……

ちゃんと人間です……普通の一般人です」

 

 

「「「 一般人? 」」」

 

 

「全員でキレイにハモらないで下さい……

ていうか夕張までそんな……キミは事情わかってるでしょ?」

 

「だって……師匠は師匠ですし」

 

「なにをそんな、俺の存在自体がイレギュラーみたいな……」

 

 

 いつも通り満場一致で逸般人認定を受ける鯉住君である。

 

 

「とにかくだ。

川内君と中佐のおかげで、スムーズに救援メンバーを決定することができた。報告感謝するぞ」

 

「どういたしまして!」

 

「電話でも良かったのに、押しかけてしまって申し訳ないです……」

 

「い、いえ、タイミングも良かったので……

本当にお気になさらず」

 

「うぅ、優しさが染みる……

ありがとうございます、大和さん」

 

 

 今回の会議の結果、増援は以下のメンバーに決まった。

 

 

 

 増援部隊・第1艦隊

 

 

旗艦・航空戦艦『扶桑改二』 大本営第1艦隊より

 

2番艦・正規空母『瑞鶴改二甲』 大本営第1艦隊より

 

3番艦・正規空母『翔鶴改二甲』 大本営第2艦隊より

 

4番艦・重巡洋艦『愛宕改』 大本営第2艦隊より

 

5番艦・軽巡洋艦『球磨改』 横須賀第2鎮守府より

 

6番艦・軽巡洋艦『多摩改二』 横須賀第2鎮守府より

 

 

 

 増援部隊・第2艦隊

 

 

旗艦・航空戦艦『日向改』 大本営第2艦隊より

 

2番艦・軽空母『千歳航改二』 横須賀第2鎮守府より

 

3番艦・軽空母『千代田航改二』 横須賀第2鎮守府より

 

4番艦・軽巡洋艦『矢矧改』 横須賀第3鎮守府より

 

5番艦・潜水艦『伊19改』 大本営第2艦隊より

 

6番艦・潜水艦『伊8改』 横須賀第3鎮守府より

 

 

 

 航空戦力に重点を置いた、支援のための布陣。

 当然ながら、個々の実力についても折り紙付きであり……実際に過去の大規模作戦でボス艦隊を相手にした経験があるメンバーが揃っている。

 

 

 

「このメンバーであれば、何があろうと全員無事に作戦を終えることができるだろう。

万が一、二つ名個体と遭遇したとしても、逃げに徹すれば犠牲が出ることはあるまい」

 

「しかし元帥殿、万全というのはその通りでしょうが……

この顔ぶれならば、例の二つ名個体を討伐してしまうことも可能なのでは?

大規模作戦のボス艦隊とて、余裕をもって沈めきることが出来るほどのメンバーですよ?」

 

「可能性は無くはないと思うが……

どうだ? 鳥海君」

 

「そうですね……

私と同じ程度の戦闘力であるならば、打倒は可能でしょう」

 

「やはりですか。

この布陣で突破できない相手など、早々居るはずがない」

 

「? 何か勘違いしているようですが……

私が言ったのは、『最弱の』二つ名個体程度なら勝ち目があるだろう、ということですよ?

私の戦闘力はそこまで高くないですから」

 

「な、なんと……」

 

 

 今回送り出す連合艦隊は、日本海軍の準オールスターと言っても差し支えない面々。

 中将が言ったように、これで勝てなきゃおかしい、という意見が出るのは、当然と言えば当然だろう。

 

 だが、そのお相手本人(相当)から見れば、それでも不十分という評価になるようだ。

 人類側と最上位姫級の間にあるチカラの差は、誰もが想像するよりも、遥かに開いているのだろう。

 

 それにしても、いつも自信満々な鳥海が、弱気な発言をするとは……

 

 

「ふーん。鳥海さんってば、だいぶ弱腰じゃん?

演習してるときは、あんなに自信満々なのにさー」

 

「別に『私が弱い』と言ったわけではありません。

戦闘力が足りない分は、知略で十二分にカバーしますので。

チカラが強いだけの猪など、相手にならないわ」

 

「ああ、そゆこと。そっちの方がらしくていいねー。

しっくりくるよ」

 

 

 

・・・

 

 

 

 そんなこんなで雑談していると……

 

 

 

 トントントン

 

 

 

「む。どうした?」

 

(愛宕です。またお客さんをお連れしました)

 

「ようやく着きましたか」

 

「鳥海君が呼んだのか? まぁいい。入ってくれ」

 

(では、失礼します)

 

 

 ガチャッ

 

 

「お話し中申し訳ありません。

横須賀第3鎮守府からお越しの、お三方です」

 

 

 愛宕に連れられてやってきたのは、鳥海の同僚でもある元気いっぱいな3名の艦娘だった。

 

 

「失礼します!

鳥海さんにお呼ばれしてやって来ました、綾波型9番艦『漣(さざなみ)』です!

元帥さんと大和さんにはお世話になってます! いつも定例将棋大会の許可くれて、どもども!」

 

「ども!恐縮です、青葉型1番艦『青葉』ですー!

極秘情報の収集から記念写真の撮影まで、なんでもお申し付けください!」

 

「ひゃー!大物が勢ぞろいじゃないっすか!

夕雲型……じゃなくて! 陽炎型19番艦『秋雲』です! よっろしくぅ~!」

 

 

「うむ。よろしく。

鳥海君はなぜ3人を呼んだのだ?」

 

「私は『手の空いたものを寄こしてくれ』と頼んだだけだったのですが……

少しばかり、鯉住さんのサインが必要な書類がありまして」

 

「なに? 中佐の?

大和君、何かそのような案件などあっただろうか?」

 

「い、いえ、知る限りでは。

……というか、ずいぶん賑やかな人たちがいらっしゃいましたね……」

 

 

 

「うわぁ、すごいテンションの高さ……

ねぇ師匠、この人たちも師匠の知り合いなんですか? ……師匠!?」

 

「   」

 

 

 ハイテンション極まりない3名を見た鯉住君は、白目を剥いて口をパクパクしている。

 その姿はさながら本物の鯉。過去になんかあったらしい。

 

 

「ど、どうしたんですか師匠!? すごい顔してますよ!?」

 

「ナンデ……ナンデ、コノ3人ガ……?」

 

 

 

「あー! 久しぶりですね、鯉住さん! キタコレ!!

ちょっとちょっとォ! 二の腕がたくましくなり過ぎじゃないですかぁ!?」

 

「これはいけません! 非常にけしからんです!

一枚撮らせてもらっていいですよね!? 返事は聞きません!! パシャパシャ!!」

 

「久しぶりですね~!! あいさつ代わりにちょっとタッチさせて!! さわさわ……おほぅっ!!」

 

「ちょ、ちょっとそんな急に何を!

師匠も何やってるんですか!? 元帥や大和さんがいるんですから、なんとか止めようとしてください!」

 

「無理……聞イテクレナイモノ……」

 

「どこか遠いところを見てる!」

 

 

 

「うわぁ、ずいぶん賑やかになってきたねぇ。

大和さんもあそこに混ざって、龍ちゃんの二の腕、触ってきたら?」

 

「い、いえ、そんな破廉恥な真似は出来ません……」

 

「やりたくない、じゃなくて、出来ない、なんだねー。ふーん?」

 

「な、何を言ってるんですか!?

ニ、ニヤニヤしないで下さい! なんでもありませんから!」

 

「アハハ! やっぱりそうだったんだねー!

武蔵さんから聞いてたから、アタリはついてたけどさ」

 

「そうって何がですか!!」

 

 

 

・・・

 

 

 

 クールダウン

 

 

 

・・・

 

 

 

 散々3人にボディタッチされた鯉住君だったが、ようやく解放され、本題を進めることができるようになった。

 

 3人はみんなして興奮しすぎて鼻血を出してたが、それも収まったようだ。

 たった今も写真を撮りまくってたり、スケッチしまくっていたりと、まるで懲りていない様子だが。

 

 

「……ハァ、鳥海さん、それで一体何の書類にサインすればいいんです?」

 

「足柄の異動関係の書類です」

 

「え? あ、足柄さんの?

足柄さんが異動してきたのって、随分と前じゃないですか。

そんなに前の書類なんて、なんで未処理になって残ってたんですか?」

 

「そういうわけではなく。異動後の意識調査の書類です」

 

「あぁ、なるほど。そっちですか」

 

 

 実は日本海軍には、異動した艦娘に対する意識調査制度がある。提出のタイミングは、1か月後、半年後、1年後の3回。異動前と異動後の両鎮守府のサインが必要だったりする。

 

 理由は当然ながら、艦娘が十全な実力をその鎮守府で発揮できるか調べるため。非常に個性的な面々が勢ぞろいの艦娘なので、肌が合うか合わないかというのは、かなり大きなファクターなのだ。

 もっと言うと、ブラックな運営をしている鎮守府をあぶりだすという側面もあったりする。実際にこの制度のおかげで運営不全が発覚したところもいくつかあり、加二倉中佐が私刑に処した提督たちについても、ここから明らかになったのだ。

 

 

「しかしそれにしたって、中途半端な時期ですね。確か次の提出は、1年後の書類だったはずでしょう?

それにその書類だったら、FAXで送ってもらった方が良かったのでは?

足柄さんに書いてもらうこともたくさんありますし、先に俺のサインだけ入れたって……」

 

「いえ、ご安心を。

実は足柄の方から既に、提督のサインが入れば完成という状態の書類を送ってもらっているんです。

1年後に提出するものですが『どうせ不満なんかないから』と言って、先にこちらのサインを入れるために書類をFAXしてもらっていたんです」

 

「そ、そうなんですか……?

なんで先に俺のサインもらわなかったんだろ? それに足柄さんが俺に連絡もせずに独断行動なんて……?」

 

「一応秘書艦には一報入れたらしいですよ。

まぁ、そんな細かいことはどうでもいいじゃないですか。ちょうど大本営に居るのですし、そのまま提出してしまえば一石二鳥です」

 

「うーん……それもそうか。

何かあった時のために提督印も持ってますし、ちょうどよかったですね」

 

「ええ、本当に。

……それでは、この欄にサインと印鑑を……」

 

 

 そう言って3人衆から受け取った書類を差し出す鳥海。

 

 鯉住君はその書類に、なんだか違和感をもちつつもサラサラとサインをしていく。

 

 しかし……

 

 

 

 

 

 パシィッ!!

 

 

 

 

 

「!? せ、川内さん!? いったい何を!?」

 

 

 鯉住君がサインを終え、カバンから取り出した提督印で押印しようとしたところ……なんと川内が横から提督印をひったくった。

 

 

「……こういうおイタはよくないと思うなー」

 

「……なんのことでしょう?」

 

 

 先ほどまでのゆるゆるな雰囲気はどこへやら。一気に威圧感を醸し出すふたり。

 川内は鳥海の刺すような視線を気にも留めず、足柄の意識調査書類をペラっと持ち上げ……

 

 

 

 ペリペリ……

 

 

 

「川内さん何やって……!?」

 

 

 川内はなんと書類を破りだした!

……ように見えたのだが、よく見ると書類は二枚の紙が密着しており……!

 

 

「これはどういうことなのかなぁ? んん?」

 

「……余計なことを」

 

「ゲェッ!! 何故バレたし!?」

 

「漣ちゃんの特殊工作(図工的な)スキルが一目で見抜かれるとは!?」

 

「マジィ!? 川内サン、コワイ!!」

 

 

 なんと足柄の意識調査書類はフェイクだった!

 真の内容はその下に隠されており、その上部には書類のタイトルが……!

 

 

 

「へぇー……『婚姻届』、ねぇ」

 

 

 

「へぇあっ!?」

 

 

 

「……返しなさい。それは横須賀第3鎮守府にとって、最重要なものなのです」

 

「は? なんで私がこんなもの返さないといけないのさ?」

 

「聡美司令と鯉住さんは、早々に結ばれるべきなのです。

早ければ早い方がいい。その程度のこともわかりませんか?」

 

「寝言は寝て言ってくんない?

そりゃ龍ちゃんもいずれは誰かと結婚するだろうけどさ。今じゃないっしょ」

 

「いいえ。今です。ナウです。

……さぁ、提督印を寄こしなさい。痛い目を見ますよ?」

 

「面白いこと言うねー!!

いいよ。取り戻してごらん?……出来るものなら」

 

 

 

ピシイッ……!!

 

 

 

 ふたりの闘気で部屋中の圧力が増す。

 

 きしむ家具。震える窓ガラス。

 

 

 

「……いいでしょう。

大和さん、演習場お借りします。

……さぁ、3人も準備なさい。化け物を狩りますよ」

 

「チョー怖いけど……やるしかねぇ!

10年選手なベテラン駆逐艦の本領、見せてあげちゃいますよ!」

 

「正直勝てる気が……いやいや、そんな弱気ではいけませんね!

ここで勝てば完全S勝利! 私たちのハーレム大作戦が完遂となるのですから!」

 

「負けられない戦いが、ここにはある……!!

秋雲さんも超スーパー修羅場モードで本気出しちゃうよっ!!」

 

「アハハ! たったの4人で私とやろうだなんて、度胸あんじゃん!

アリがいくら集まっても象には勝てないこと……思い知ってもらおうかな!!」

 

 

 

「「「 ……!? 」」」

 

 

 あまりの超展開に、何にもついていけないその他の人たち。

 いつも通りな元帥以外は、みんな目を丸くして何も言えなくなっちゃっている。

 

 

 

「3人とも。

1秒先の思考で3秒先に砲弾を撃ち込みなさい。

それができなくては、1分ともちませんよ」

 

「かわいい弟子たちが欧州から帰ってきた時に、ガッカリさせるわけにはいかないからね。

……すこーしだけ本気出しちゃおうかな」

 

「俺の提督印……返して……」

 

 

 

 

 




ちょっとした変更だったけど、どうだったかな?
こっちの方が様式的には正しそうだし、違和感あるって意見が無いようなら、続けて行こうと思います。

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