元帥「この川内君は大和君を一方的に降した神通君の姉……
いくら鳥海君が転化体と言えども、4人では厳しいかもしれんな」
及川中将「軽巡1隻に対し、重巡2隻に駆逐2隻、しかも転化体が旗艦……
こんなもの勝負になるのか? あの川内はなぜ、こんなに自信満々なのか?」
大和「川内型コワイ……川内型コワイ……!!」
夕張「今日はいい天気だなぁ……(現実逃避)」
「くっ……!! 全然当たらないっ……!!
……キャッ!? あ、秋雲中破ァ!!」
「瞬きの間に見失う……!! そこおっ!!
……ウッソ!? 何で今のがかわせるんですかぁ!?」
「ちょっと厳しいです……な!! っとぉ!!」
「もっと研ぎ澄ませなさい!! まるで間に合っていない!!
ひとりでも落ちたら一気に押し込まれますよ!!」
……ドドドオォンッ!!
「アハハッ!! やるねぇ!! 言うだけはある!!
この私を、もう小破させるなんて!!」
「この……!! 余裕ぶって……ッ!!」
……ドドドオォンッ!!
「な、何が……どうなっているのだ……!?
こんな……ありえない!! 何だこの動きは!?」
「信じられんな……
目で追いきれないほどの速さで動くなど」
「ねぇ師匠……
川内さん、動きが速すぎて2人いるようにしか見えないんですけど……」
「まぁ、そりゃあ川内さんだし……
それにしても、楽しそうだなぁ。
おいてけぼり食らった鬱憤、ついでに晴らしてるんだろうなぁ」
「川内型コワイ……無理……もうやだぁ……」
ついに始まった、4対1の、鯉住君の提督印を賭けた決闘演習。
現在戦闘開始から1分経過したところである。
横須賀第3鎮守府の面々は、完璧と言っても良い予測砲撃を行っているのだが……
川内はその上をいっており、的確な絶え間ない砲撃でさえも、彼女を小破させるに留まっている。
敵の動きに合わせて、臨機応変に殺し間(十字砲火)の態勢を作るという、神がかった連携を見せている横須賀第3鎮守府の面々。
しかし、だというのに、鳥籠の中の鳥が捉えきれない。詰めの部分で手こずっている。
川内は尋常でないスピードに加え、独特な水上歩行技術、砲撃の反動を利用した回避と加速、激しい緩急がついた動きを駆使することにより……短距離ワープのような挙動を実現。瞳に映る残像によって、分身を創り出していた。
これが加二倉中佐の技術を完璧に受け継ぎ、艦娘の潜在能力を十二分に引き出した者のみが到達できる領域。このレベルまで来ると、艦種がどうこうという話ではない。
砲撃の反動で後ろにのけぞりながらサマーソルトキックして、重巡主砲を蹴り上げる。
空砲を適度に交えることで思考に間隙を作り、視線と完全に一致する角度で距離感を掴ませない砲撃を撃ち込む。
制服艤装にギリギリ掠らない超至近距離で、音速に近い速度の砲弾をかわし続ける。
その技術と動きのどれもが、艦娘から見ても意味不明なもの。相当な実力者でもなければ、自分の見ている光景が何なのかすら理解できないだろう。
……実際に目の前で起こる激戦を見学している面々は、川内の戦闘をよく知る鯉住君以外、自分の見ているものが信じられないといった様子である。
ちなみに見学者は先程から一緒にいたメンバーだけではなく、大本営第1艦隊と第2艦隊メンバーも加わっている。
元帥直々に「後学のため」ということで、見学者の追加を川内に打診し、オーケーをもらった形。
ちなみにその打診の際に、川内が
「見てもいいけど……私の存在は他言無用ですよ。
それが守れなかった人は誰であれ、二度と浮かんでこれないようにしますから」
などという、鉄骨クラスにごんぶとな釘を突き刺していったため、大和は現在涙目となっている。
・・・
館内通信で元帥に呼び出された大本営第1艦隊と第2艦隊の面々は、そろって目を丸くして驚いている。
「よ、呼ばれてきたのはいいですけれど……
なんだかスゴイことになっていますね……」
「なんであの川内、分身の術使ってるんでちか……?」
「ちょっとコレありえないんだけど……
ねぇ、木曾さん、何が起こってるのかわかる……?」
「いやこれ……なん……これなに?
なんであの川内、完全に死地に追い込まれてんのに、あんなに優勢なんだ……?」
「だよね……
加賀さんだったらコレ、どうやって相手する?」
「……どちらが相手でも、この状態に持ち込まれては無理ね。
川内の方は目で追いきれないし、鳥海旗艦の部隊の方も圧倒的な連携を見せているわ。
大和さん、貴女ならどうするかしら?」
「川内コワイ……無理……」
「……大和さん?
何をボソボソしゃべっているのかしら?」
「……ハッ!
え、ええ、そうですね……
近づかれたら敗北は必至ですので、遠距離から仕留めるしかありませんね」
「さすがは大和さんね!
アウトレンジから仕留めるしかないって事ね!」
「アナタにできるのかしら?
五航戦のアウトレンジ大好きな方」
「で、できるに決まってるし!
加賀さんこそそんな冷静っぽくしといて、ホントは焦ってんでしょ!?」
「焦ってません」
「ウソだね! 加賀さんいつも以上に鉄面皮になってるでしょ!?
焦ってるときはいつもそうなってるじゃない!」
「は?」
歴戦の第1艦隊でさえこの有様なので、第2艦隊メンバーも全員が全員、目の前の光景に呆気にとられている。
もちろん大本営の見学メンバーの実力が低いというワケではない。日本海軍の顔を務める面々なのだ。実力は折り紙付きである。
川内と横須賀第3鎮守府の面々が頭おかしいくらい強いと言うだけの話だ。
……ギャラリーがそうこうしているうちに、演習も大詰めになった。ついに秋雲と青葉が同時に大破判定を受けてしまったのだ。
「ア゛ーッ!! 耐えられなかったああぁぁl!」
「……ッ!! スイマセンおふたりとも!!」
「ヤッベぇ! 鳥海さん、どうします!?
私は中破してるし、鳥海さんもほぼ中破っすよね!?」
「……ッ!!」
4対1で何とか拮抗していた戦闘バランスが、一気に崩れた。これで横須賀第3鎮守府側の勝利はほぼ無くなったとみていいだろう。
「さて、どうする? 続ける?
私も中破まで持ってかれちゃったし、続ければ勝てるかもよ?」
「……ハァ。……降参です。艤装を収めなさい、漣。
秋雲と青葉もご苦労様でした」
「あー、やっぱかー!
もうちょっとだったんだけどなぁ。萎えー……」
勝ち目がないことを悟って、鳥海は降参を選択した模様。
実戦であれば退却ということになるだろうが、演習ではそこまですることは基本しない。退却の訓練をしたいときくらいである。
ということで、これにて演習終了。5名は演習場からギャラリーのところまで戻ってきた。
「あーあ、つまんないの。もうちょっと楽しませてくれてよかったのに」
「勝ち目のない戦闘など、するだけ無駄です。
勝率0%の勝負など、勝負とは言えません」
「ひゅー。クールだねぇ」
「戦闘に負けても目的を達成できれば、なんの問題もありません。
……今回は退きますが、必ず聡美司令と鯉住さんを結婚させてみせますので」
「別にタイミング選んでくれればいいんだって。
今回は私も無視できない事情があったんだよ」
「その事情ってなんなんすか? 川内さん。
なんだかおもしろい気配がしますぞ!?」
「あ! それ青葉も気になります!!
普段ひょうひょうとしている川内さんが、そこまでムキになるなんて!!
のっぴきならない事情とお見受けしましたこれは!!」
「私も鯉住さんが何やらかしたのか気になる!
秋雲さん内蔵の電探には、愉悦の気配がビンビン反応してるんだよね~!!」
「ん? 何があったか知りたいの? えっとね……」
「わーわー!! お疲れさまでした皆さん川内さんちょっと黙って!!」
例の事件をあっさりバラそうとする川内。
当然ながら鯉住君的に、こんな大物しか揃ってないところでそんな恥辱を受けるのはNGなので、無理やり止めようとしている。
「えー? 別に話しちゃってもいいじゃんか。すごかったんだし」
「ダメです! 絶対ダメ!」
「どうせ事の顛末は書類報告するんでしょ?
だったら今話しちゃってもおんなじじゃないの?」
「時間と場所をわきまえて!? 全然違いますから!!」
((( あやしい…… )))
必死になって川内を止めようとしている鯉住君を見たおかげで、さっきまでの極限バトルの衝撃から回復したギャラリーの皆さん。
それと同時に、あの超人がここまですることになった理由が何であったのか、みんな気になりだした。
「中佐、いったい何があったのだ?
川内君はどうやら本気だったようだし、それほどの事態であれば相談してほしいところだが」
「い、いえ、な、何でもないです!元帥殿!
ちょっと佐世保第4鎮守府でいろいろあっただけなので!
別に何か危機的状況だとかそういうわけでは!」
「そうなのか?
とても些事だとは思えないのだが」
「あー、えー……夕張、どうしよう?」
「私に振られましても……
まぁなんて言いますか……正直に吐いて楽になるしかないと思うんですが」
「そんな無慈悲な……」
「師匠にカオス空間の鎮圧を丸投げされたの、忘れてませんからね?」
「……すんませんでした」
割とゲスい無茶振りされたのを、夕張はまだ根に持っていたようだ。どうやら助けにはなってくれないらしい。
彼女は例の事件のあと、現場鎮圧に小一時間ほど全力投球させられたのだ。水に流すにはハードな要求過ぎたようだ。
「艤装と妖精さんとの関係とか、建造炉と愛についてとか、色々と超重要な情報があるんですから、やっぱり後日の書類じゃマズいですよ。
これだけ日本海軍の中心人物が集まっているんですから、話しちゃったほうがいいと思います」
「う……そ、そう言われると……」
「観念してください。
いい加減私もわかってきたんですけど、師匠は多分、そういう運命の下に生まれちゃったんですよ」
「そんな殺生な……
……はぁ、仕方ないか……言うよ。洗いざらい吐くから……」
「別にそんな責め立ててるつもりはないんだけどなぁ……
あ、川内さんとしては、いろいろ大丈夫ですか?」
佐世保第4鎮守府で、数多くの超常現象経験を積んだことで、夕張はだいぶたくましくなったようだ。
その成長を喜んでいいのか、心の安定剤扱いできなくなったのを悲しむべきか……
「問題ないよー。公開しちゃっても。
龍ちゃん以外の誰かじゃ、どーせうまく使えない情報だしね」
「そっすか……ハァ……
それでは元帥、一切合切あったこと、口頭で報告しようと思うんですけど、大丈夫ですか……?」
「うむ。問題ない。よろしく頼む。
……演習を行っていたメンバーは、その間に汚れを落としてくるように」
「いえ、元帥閣下。
話を聞くに、私たちも聞いておかねばならない情報と判断します。
入渠は話を聞いてからにさせていただきたく」
「そうか。それでも構わない」
「ありがとうございます」
「私たちも聞いてきますぞ! ワクテカ!」
「これは一大スクープのにおいがしますねぇ!!」
「捗っちゃうネタの提供、感謝しまーす!!」
「よりにもよってこのメンツの前で、あのこと話さなきゃならないなんて……
うう、不幸だぁ……」
・・・
説明中……
・・・
「……ということでして」
「「「 ヤバい 」」」
やらかしたことを一切合切話し終えた鯉住君。
周りからの反応は、おおむね佐世保第4鎮守府メンバーと同様だった。
「ふむ。まさか艤装と妖精の間に、そのような関係があったとはな。
さしずめ彼女たちは、艤装の乗組員というところだろうか」
「提督……もっとツッコミを入れたいところ、無かったんですか?」
「ああ、中佐の行動のことか?
必要だとわかってもなかなかできることではないな。大した度胸だと思う。素晴らしい」
「そういう……まぁ、それはそうなんですが……」
「今回の情報を活かせるとすれば、妖精との友好関係は決して崩してはならないということだな。
普段から彼女たちの行動に対して、かなり融通を利かせるように、全鎮守府へ通達しよう。
……そういうことで、大和君。急ぎというわけではないので、手の空いた時にでも書類を作ってくれ」
「はい……承知しました……」
いつも通りな面々はいつも通りなのだが、それ以外のメンバーはみんな揃ってあっけにとられてしまっている。
さっきの極限バトルの衝撃がぶり返してきたこともあって、度重なる常識ブレイクのせいで思考回路がうまく回らなくなっちゃっている。
「それでは皆、いろいろと頭の整理があるだろう。いったんここで解散とする。
中佐と夕張君は、このまま執務室まで来てほしい。大まかに話してもらった内容の詳細と、当事者としての所感を聞きたい。
演習を行った面々は入渠ドックを開放するので、そちらで汚れを落とすように。それが終わったら執務室へ来るように。感想戦を行う。
第1艦隊と第2艦隊の面々は元の執務に戻るように。色々と質問がある者は、1時間ほどしたら執務室に来るように。
中将は自身の鎮守府へ戻り、欧州救援の準備を進めるように。何か質問があればいつでも電話を掛けてきてくれて構わない。
……何か意見がある者はいるか?」
「「「 いえ、大丈夫です…… 」」」
「うむ。それでは解散」
「「「 了解しました…… 」」」
元帥にズバッと場を仕切られ、心ここに在らずな状態のまま、トボトボと解散する一行なのだった。
横須賀第3鎮守府・簡易メンバー紹介
第1席・鳥海改二
戦略戦が三度の飯より好き。転化体。キラークイーン。
第2席・霧島改二
イタリア留学中の比叡の妹。筋肉系知将。マッハパンチ。
第3席・香取改
ここでの教育係。大井の主導教官。防衛戦無敗。無限城壁。
第4席・Roma改
イタリアのオリーヴィア提督が本当の主人。留学生。大帝国。
第5席・大淀改
完全左脳派の筆頭秘書艦。むっつりメガネ。艦娘スパコン。
第6席・伊8改
本の虫。ドイツ艦娘にメル友が居る。将棋図書館。
第7席・巻雲改二
感覚派駆逐艦。北上の主導教官。シックスセンス。
第8席・足柄改二
現在は鯉住君の部下。もうちょっとでG7入りの実力。
第9席・漣改
一ノ瀬中佐の初期艦。最初の艦娘のひとり。歴戦の猛者。変態。
第10席・飛龍改二
制空の要。女子力低い。元気いっぱい。オープン。
第11席・蒼龍改二
制空の要その2。女子力低い。元気いっぱい。むっつり。
第12席・秋雲改
コミケ帰り艦隊旗艦。絵を描くのが生き甲斐。変態。
第13席・矢矧改
真面目枠。自由組の保護者。酒匂のおねーちゃん。
第14席・青葉改
定例将棋大会での司会担当。写真撮影が生き甲斐。変態。
第15席・衣笠改二
定例将棋大会での司会担当。青葉に振り回される役。苦労人。
第16席・朧改
筋トレ大好き。筋肉も大好き。カニも大好き。磯遊びが好き。
第17席・祥鳳改
比較的新入りの空母。飲み込みが早い。真面目。
第18席・曙改
釣りが大好き。サンマ漁大好き。好意は隠すが隠しきれない。
第19席・瑞鳳改
比較的新入りの空母。飲み込みはあまりよくない。頑張り屋。
第20席・夕雲改
コミケ帰り艦隊の精神的旗艦。圧倒的包容力。家事全般が得意。
第21席・酒匂改
難しいことは考えない感覚派。精神年齢低め。優しい。
第22席・風雲改
よく朧とランニングする。秋雲に振り回される役。苦労人。
第23席・潮改
戦闘が嫌い。三鷹少佐のとこの電ちゃんとメル友。優しい。
番外・明石改
工廠専任艦娘。むっつりピンク。鯉住君に完敗した経験あり。