艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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ゴールデンウイーク突入、明日から西伊豆旅行ということで、テンションが高まってしまいました。

ホントにごめんなさい。先に謝っときます。ホントにごめんなさい。




鯉住君修羅場モード → 修羅場に対応するためのモード

夕張修羅場モード → 修羅場を創り出すためのモード


似 た も の 師 弟




第115話

「……」

 

「……あの、夕張さん……?」

 

「誰が口を開いていいって言ったの?」

 

「スイマセン……」

 

 

 鯉住君の無神経発言により、逆鱗を鷲掴みにされてしまった夕張は、今現在激おこ状態である。

 

 その怒り心頭っぷりは、それはもうすごいもので……

 どれだけ彼女にストレスとかモヤモヤとかが溜まり溜まっていたのか、それは今の状況を見れば一目瞭然。

 

 廊下のど真ん中で正座させられている鯉住君と、仁王立ちしながら腕を組んで冷たい目で見下ろす夕張とかいう、地獄のシチュエーションが完成している。

 

 もっと言えばここは、大本営本館と、客人用宿泊棟のちょうど中間地点。

 つまり……大本営所属の面々と、用事があって大本営まで出向いてきた、あらゆるエリアの日本海軍所属者が、ひとり残らずこの光景を見物できる状態ということだ。とってもステキな状況となっている。

 

 

 

 ザワザワ……

 

 なにあれ……? ヤバくない……?

 

 え、あの人提督……? うそでしょ……?

 

 あんな怖い夕張、初めて見た……

 

 

 

 当然ギャラリーも盛りだくさんである。

 

 

「修羅場キタコレ!

他人の痴情のもつれは蜜の味ですな! グフフ!

スマホの録画アプリ起動して、っと……」

 

「やっぱり鯉住さんは最高です!

たった一日で、いくつスクープを提供してくれれば気が済むんですかぁ!? たまりませんねぇ!」

 

「ホントっすよね! 青葉さん!

あ゛~、修羅場の参考資料収集がはかどるぅ~!」

 

 

 まだ帰っていなかったらしい、第3鎮守府の3人も観戦している。例によって写真撮ったりスケッチしながら。

 鯉住君にとっては、地獄そのものである。

 

 

「師匠、なんで私が怒ってるか、わかる?」

 

「ええと……」

 

「すぐに答えられないの?」

 

「い、いや、その……

空母ふたりの現状擦り合わせが終わったら、そのまま大和さんと遊びに行くことにしたからかな、って……」

 

「……で?」

 

「え……?」

 

「なんでそれで、私が怒ってると思ってるの?」

 

「え、えーとですね……」

 

 

 怖い。本当に怖い。いつもの夕張じゃない。

 こんなに怖いのは、研修前に部下全員に処されかけた時以来だ……

 ここは言葉を慎重に選んでいかねば……!

 

 

「遊びに誘うなんてして、忙しい大和さんに迷惑かけるな、とか……」

 

「……」

 

「じ、じゃなくて! 仕事とプライベートくらいハッキリ分けろ、とか……」

 

「……」

 

「で、でもなくてですね! えーとですね……

当事者抜きで勝手に研修の話進めるな、とか……」

 

「……」

 

「あー、えー……

そ、そうだ! 夕張も大和さんと一緒に遊んでみたかったとか!?」

 

「フンッ!!!」

 

 

 ドゴォ!

 

 

「ぐはあっ!!?」

 

 

 夕張のモンキーレンチが、鯉住君のドタマに炸裂する。

 

 

「話を聞いてれば、大和さん大和さんって!!

 

そりゃ大和さんはものすごく美人で仕事もできて胸も大きくて戦闘もすごい強くてスタイルバツグンで胸が大きくて大和撫子でクールなのに可愛くて頭もすごいよくて胸がとても大きくてすごく魅力的で階級もすごい高くて身長もすごい高くて多分料理もうまくて女子力全開で胸がとんでもなく大きいわよ!!

 

だから夢中になるのはわかるけど! でも! まずは! 大和さんよりも先に! 構わなくちゃいけない相手がいるんじゃないの!? ここにぃ!!」

 

「ひえっ……」

 

「ひえっ……じゃない!!

師匠がケッコン指輪渡したのは誰なの!? 責任とってあげるって言ったのは誰なの!? いつも優しくして、慣れない仕事がうまくいくか気遣って、自分の技術を丁寧に伝えたのは、誰だと思ってるのおぉお!!?」

 

 

 ブンッ! ブンッ!

 

 

「ウオオッ! すまんかったっ!

すまんかったから揺すらないでぇえ! さっき食べた甘味が出ちゃうぅ!!」

 

「誰がしゃべっていいって言ったのおぉ!!?」

 

「スイマセンでしたぁぁ!!」

 

 

 ビジュアル的にもずいぶんと激しくなってきた修羅場に、ギャラリーの面々は思い思いの反応をしている。

 

 具体的には、夕張に共感してうんうんと頷いていたり、目をキラキラさせながら光景を脳裏に焼き付けていたり、鯉住君のあまりの察しの悪さに眉をしかめていたり、スマホの録画アプリを起動していたり、カメラのシャッターをきり続けていたり、高速でスケッチをしまくっていたり。

 鯉住君にとっては、地獄そのものである

 

 

「ハァ……ハァ……わ、悪かったよ、ホントに……

いつも一緒にいるからか安心して、夕張よりも仕事の方を優先しちゃって……」

 

「ホントそう!!

私がどれだけ師匠の事が大好きか、全然分かってないんじゃないの!?」

 

「あ、あぁ……ええと……

指輪を渡した(?)時に、その、嬉しいこと言ってくれたから、分かってるつもりなんだけど……」

 

「そんなのウソ!

もしわかってたなら、もっと私に態度で示してくれるはずよ! 今から私が、どれだけ私が師匠が好きすぎるか教えてあげるから!!」

 

「い、いや、その、こんな大勢の前で……」

 

「そんなの関係ないでしょ!? 何言ってるの!?

いい? よく聞いてよ!? 師匠のことが好きでスキでしょうがないから、最初のうちは一緒にいるだけでいつもドキドキしちゃってたけど、最近は一周まわってそれもなくなってきたんだからね!?

一緒にいるのが当たり前になりすぎて! それが幸せで! 傍にいるとドキドキするのを通り越して、近くにいないと不安になるようになっちゃったんだからね!?

一生面倒見るって言ってくれたの、ホントに嬉しかったんだから!! 私をこんなにした責任、とりなさいよぉ!!」

 

 

 

「「「    」」」

 

 

 

 大胆な告白は乙女の特権。

 夕張の熱烈すぎるというか、激甘すぎるというか、ともかくそんなカミングアウトに、鯉住君含め周囲の面々は言葉を失っている。

 あのやかましい3人組まで、口をポカンとあけながら鼻血を垂らしているほどの衝撃である。

 

 

 

 

 

 

 

 ……ハッ! い、いかん、あまりのアレな感じに、意識が飛んでた……!

 しかし夕張、なんていうかその……女の子の口からそこまで言わせてしまって、本当にゴメンよ……!

 

 

(みさげはてましたねぇ!!)

 

(はー! もう、はー! ほんとに、はー! なんだから!!)

 

(ばりぃちゃんにここまでいわせるとか……ほんまつっかえ!!)

 

 

 う、うぐ……!! 反論できない……!!

 い、いや、しかし、いくらストレスが爆発したり、俺の対応がホントにゴメンナサイだったとしても、普段温厚な夕張がここまでなるなんて、やっぱりおかしい……!! いったい何が……?

 

 

 

 

 

 ここで夕張ちゃんの、本日の甘味処『間宮』でのお食事内容紹介

 

 

・『伊良湖最中』 2個

・間宮特製『出来立て手作りどら焼き』 1個

・『間宮アイス with 純米大吟醸』 1皿

・有機栽培の『ゆず』を使った特製『ゆべし』 1皿

・カクテル『カンパリ』を使用した氷菓『グラニテ』 1皿

・新潟県産 純米にごり酒 2合

 

 

 

 

 

 ……あっ! 酒かぁ!!

 

 考えるまでもなかったわ!! これ絶対夕張酔ってるやん!! 普段お酒禁止してるからわからなかったけど、夕張ってそんな酔いやすいの!?

 

 

(ゆうばりんのよっぱらいやすさ、あまくみちゃいけませんよー?)

 

(めろんちゃんがだいじょうぶなのは、あまざけとか、ほっぴーまでです!!)

 

(すとれすと、あいじょうのせいで、おとめぜんかいになってますねー!! はいぶーすと!!)

 

 

 マジかよ!? 甘酒とかホッピーって、そもそもアルコール入ってないやん!? 夕張ってそんな極端な下戸だったの!?

 

 

 

「ちょっと師匠ぉっ!! 聞いてるのぉ!!?」

 

「うおおゴメン!!」

 

「こんなに師匠を愛してるんだし、いつもいっっっつも私のご褒美後回しにされるし、今日という今日は言うこと聞いてもらうからっ!!」

 

「……ええと、というのは……?」

 

 

 

 

 

 

 

「私を抱きなさい!!」

 

 

 

「   」

 

 

 

 

 

「今! ここでっ!!」

 

 

 

「……ハッ! 夕張何言っ……ここでぇっ!!?」

 

 

 

 

 突然の告白は乙女の特権。

 暴走酔っ払いラブマシーンと化した夕張は、とんでもないことを言い出した。

 

 この状況に冷静でいられる者など居るはずもなく、ギャラリーの皆さんは、目の前の特濃ラブコメを凝視するマネキンとなり果てている。

 何人か興奮しすぎて倒れ始めたり、鼻血勢が3倍に増員されたり、鼻息荒くハァハァと荒い呼吸をしていたり、1秒たりとも目を離せない状況である。

 

 

「ハァ……ハァ……

ヤバイ……ヤバいですぞこれ……!! いったい何が始まるんです!?」

 

「大惨事大戦だ!! ヤバいですねやはりヤバイ……!!

もうおなか一杯なのに、これ以上提供してくれるんですか!? もう無理……! 入らないのぉ……!!

お願い、キュン死しないで私! 青葉が今ここで倒れたら、鎮守府のみんなや写真集出版社との約束はどうなっちゃうんですか!? フィルムはまだ残ってる! ここから先をカメラに収めれば、お宝写真集(R18)ができるんだから!!」

 

「次回、『青葉死す』! デュエルスタンバイ!!

い、いやいやいや、これ流石にヤバいのでは!? 止めなくていいの!? 漣ぃ!?」

 

「いーんですっ!」

 

「「 グッドコミュニケーション!! 」」

 

 

 見ている側ですら、もうなんかよくわからなくなっちゃっている。

 

 

 

 

 

「ダメだって夕張! ようやくわかったけど、今の君は酔っぱらってる!!

酔いがさめたら恥ずか死しちゃうから、いったん落ち着いて!?」

 

「何言ってんの師匠!? それくらいしてくれたっていいじゃない!!」

 

「それくらいってキミ!!」

 

 

 

 

 

「師匠は……お姫様抱っこもできないの!!?」

 

 

 

 

 

「……お、おひめさまだっこ……?」

 

「誰が見てようと、私は師匠を愛してるんだから関係ない!!

師匠だってそうでしょ!? だったらお姫様抱っこくらいしてよ!!」

 

 

 そっちかぁ……と一瞬安心するも、結局すごいことするのには変わらない。

 そんなこと考えている余裕、今の彼にはないが。

 

 

「わ、わかった夕張! する! するから!!」

 

「じゃあ早く! いっつもそう言って、私のこと後回しにするんだからっ!!」

 

「よ、よし、わかったから!

……今からお姫様抱っこするからじっとしててくれ!」

 

「ん!!」

 

 

 

 ヒョイッ

 

 

 夕張の背中と太もも後ろに手を添え、軽々と夕張を持ち上げる鯉住君。

 

 

 

 うわぁ…… うわぁ……!!

 

 お、お姫様抱っこ……!! 初めて見た……!!

 

 私だって、私だって提督と……!!

 

 ハァ……ハァ……しゅごい……しゅごい……!!

 

 (目を皿のようにして凝視)

 

 

 

 乙女の中では、恋する相手がお姫様抱っこしてくれるというのは、すごく特別なことのようだ。

 

 金剛仁王像のようだった表情から一転、これ以上ないくらい幸せそうな表情となった夕張。鯉住君の首に腕を回し、そのたくましい胸板に頭をあずけ、どんどんその表情は、だらしなく蕩けていく。

 それを見たギャラリーの興奮は、本日最高値を更新。ストップ高を知らない熱狂は、危険な領域へ突入する……!!

 

 

 

「あっ……えへへ……!! 師匠……好き、愛してるぅ……」

 

「お、俺もだぞ、夕張」

 

「えへへへへ……」

 

 

 

「メシウマ! メシウマ! キタコレ! キタコレェ!!」

 

「あーダメダメダメ!! えっちすぎます!! ダメですこれダメェ!!」

 

「あっ、あっ、もう無理……しゅき……尊い……尊い……」

 

 

 変態3人衆は語彙を無くしている。

 

 

 

「夕張……その、なんだ……本当にゴメンな、今まで」

 

「いいんです……わかってくれれば……えへへ……」

 

「これからはもっとキミのことを大事にするよ。後回しになんかしないように」

 

「師匠……」

 

 

 鯉住君に抱き着くチカラをギュッと強めたかと思うと、夕張は……

 

 

「……」

 

「……夕張?」

 

「……すー……すー……」

 

 

 どうやら想い人に大切なことを伝えることができ、それを受け取ってもらえたことで、一気に安心してしまったようだ。

 もともと疲れが溜まっていたところ、酔いも相まって、夕張は眠りに落ちてしまった。

 

 

「……ハァ。俺も覚悟を決めないとな……」

 

 

(おっ? おっ?)

 

(ついに!? ついに!?)

 

(はぁ はぁ はなぢが……!!)

 

 

「頭の整理しないといけないとだから、少し先になるけどな」

 

 

((( んもうっ!! )))

 

 

 ハイテンションになっているお供妖精さんたちに背を向け、ギャラリーへと向き直る鯉住君。

 その多くが萌え死、キュン死して、死屍累々となっている面々に、鯉住君は夕張を抱いたまま声をかける。

 

 

「皆さん、こんな夜遅くにお見苦しいものをお見せしてしまい、大変申し訳ありませんでした。

私のことはどのように話してもらっても構いませんが、夕張の名誉のために、彼女については隠して下さると嬉しいです。……それでは、失礼します」

 

 

 そう言って、その体勢のままペコリと一礼。

 ザッと踵を返して、堂々とした姿勢で自分たちの客室のほうまで歩いて行ってしまった。

 

 修羅場に見せかけた痴話ゲンカ劇場は、そんな終わり方を迎えた。

 その場に取り残された面々は、しばらくの間しゃべることも動くこともできなかったという。

 

 

 

「夕張……明日はなんだかんだ言っても仕事だから付き合えないけど、明後日は空いてる。一緒にデートしよう。今度こそ」

 

「……すー……すー……えへへぇ……」

 




師匠がやったんだから、弟子ができない道理もないよね!(愛を叫ぶ)

夕張のサービス回はすぐそこぉ!大和さんゴメン!


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