艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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鼎大将の教え子3名の階級はかなり低いです。
一ノ瀬提督と加二倉提督は中佐。三鷹提督は少佐です。
功績的には3人とも将官で全く問題ないのですが、大本営受けがすこぶる悪いので出世できないようです。
中央のエリート的に外様が出世するのは面白くないからとか、3人とも色々とやらかした経験があるとか、そんな理由で昇進は望み薄。
そんな状況ですが、3名とも昇進には全然興味がないので、そんなことはどうでもいいといった受け取り方をしています。


第12話

あれからもいくつか聞きたいことを聞いたり、逆に教え子の皆さんからの疑問に答えたりした。旗風さんも徐々に慣れていったようで、積極的に質問していた。よかよか。

 

 

俺が心配していたことのひとつに、艦娘の轟沈がある。

 

いくら提督になるつもりになっても、艦娘の皆さんから轟沈が大量に出るようのが普通、なんてことなら絶対にお断りだ。轟沈なんてさせてしまったら、ストレスがマッハで毛根と胃腸が世紀末になること請け合いだ。1か月も色々ともたないだろう。

しかもそれが普段から仲良くしている子達とあらば、ストレスは倍率ドン。さらに倍。立ち直れなくなる自信がある。想像しただけで胃が痛い。同僚とともに死地に赴く軍人さんってすごいんだなあ、と実感。

 

しかしその心配は杞憂だったようだ。轟沈というのは、実は現在滅多にないことらしい。

 

皆さんの話では、艦娘運用がよくわかっていなかった初期には轟沈は日常茶飯事だったとのこと。そのせいで多くの提督が心を病み、色んな形で退役。それが原因で現在提督不足となっているようだ。

 

そんな大問題だった轟沈だが、現在はとある技術の開発により回避可能になった。

その技術というのが『羅針盤』。

妖精さんと高名な風水師がタッグを組んで開発したらしい。

 

その効果は絶大で、その日その時に『幸運な』方角を指示してくれる効果があるらしい。

日々配置の変わる深海棲艦の支配海域を、最も被害の少ないルートで通り抜けることができるということ。すごい話だな、それ。

 

基本的に羅針盤に従っていれば最悪でも大破判定で済み、撤退も被害なく行える。

それでも羅針盤を無視して行軍したり、大破判定の状態で無理に進軍したりすれば、轟沈もある。まあ、そうなるとわかっていて無理するような奴はいないと思うが……

 

正直な話、羅針盤の話を聞いて、本当に安心した。

そのような技術があるなら、今の職場での轟沈もないということだ。大将が下手をうてばその限りではないが、そんな真似をする人ではない。

 

ホッとしたけど、肩透かしだなあ……俺がどれだけ安否を心配したと思っているのか……

こちらは生きるか死ぬかの戦闘を行っていると思っていたら、本人たち的には、ケガをする心配もなく、スポーツ感覚に近い認識だったという話。最悪服がはじけ飛ぶだけの被害で済むなら、まあ、そんな気持ちになるのもわかる。

 

しかしなんで服がはじけ飛ぶんだろう……いや、理屈は説明してもらったんだけどね。

実は服も艤装の一部で、ダメージを肩代わりしてくれるらしい。

だから大破判定ともなれば、服(艤装)ははじけ飛び、布切れ同然になるようだ。ズタズタになってしまった服(艤装)は、本人が入渠という名のお風呂に浸かると自動修復されるらしい。

いやいや、なんなんすかそれ。意味わからんですわ。いやね、ダメージを服が肩代わり、の時点で大分おかしな話だと思う。でもまだそれはいいよ。鎧みたいなものだと思えばギリギリ納得できるよ。

でもさ、お風呂入るといつの間にか服が戻ってるっていうのは納得できない。

お風呂でさっぱりすると、いつのまにか脱衣所に新品の服が置いてあるってどないやねん。おかしいやろ。謎技術といっても限度があるっしょ。

 

 

……とにかく、それは置いておくとして……

大事なこととして、戦闘で艦娘の皆さんは基本的には傷つかず、無事に帰ってこれるということがわかった。

もし俺が提督になってしまうことがあっても、感じるプレッシャーは想像よりもずっとずっと少ない、ということになる。大分気は楽になった。

 

余談だが教え子の皆さんも、轟沈がしょっちゅう出るようだったら提督なんかやっていない、と言っていた。同じ感覚だったのが分かり親近感がわく。

まあ、若干1名は「それなら元の憲兵のまま暴れていた」と物騒な事を言っていた気がするが、気のせいだろう。俺の聞き違いに決まっている。うん。

 

 

あと面白いところだと、旗風さんが教え子の皆さんのプロフィールを聞いていた。俺も初春型の皆さんと遊んだときに根掘り葉掘り聞かれたし、みんなそういう話題が好きなのかもしれない。艦娘は軍人といえど、女の子でもあるということなのだろう。

すっごい目がキラキラしてたし、あれは完全にアイドルと話ができた時のファンの反応だった。旗風さん、見かけによらずミーハーだったのね……

 

 

他には、俺のことについても皆さんから質問された。

大将がそこまで激推ししている人材なんだから、気になるのは当然、ということだ。俺としては若干恥ずかしかったが、色々教えていただいた以上義理を欠くわけにもいかない。

技術屋になったいきさつや、どんなことを考えて仕事をしているのかの話をした。そしたら皆さん色々と褒めてくれた。自分の想いを話して褒められるのは、やっぱり嬉しい。

 

 

昼食時に食堂で、教え子の皆さんが艦娘の皆さんに囲まれて質問攻めにあったり、

旗風さんが同席しているのを知った神風さんが「末っ子の旗風が参加して、ネームシップの私が参加しないのはおかしいわ!」などと言って、乱入してきたりと、

賑やかで充実した時間を過ごすことができた。

それもこれもみんな教え子の皆さんたちがこちらに気を遣って下さったおかげだろう。おかげで胃薬の出番もなく、穏やかに一日を終えられそうだ。感謝感激である。

 

 

 

 

……と、思っていたのだが……

 

 

 

 

「ちょっと~キミぃ~もっと飲みなさいよ~」

 

「や、やめてください一ノ瀬さんっ!そんなに密着しないでぇっ!」

 

「そうだぞ。自分の酒が呑めんというのか?ん?」

 

「ちょ、ちょっと!加二倉さん!その一升瓶を俺の顔に近づけてどうするつもりですか!?」

 

何だこの人たち!?酒癖が悪すぎる!助けてぇ!

 

 

いい時間になったため質疑応答をお開きにし、非番なり任務終わりなりで参加できる艦娘も集めて、宴会に突入することになった。

せっかくいい人たちと知り合いになれたのだから、俺ももっと親睦を深めたいと思っていた。だからけっこうウキウキしながら宴会を始めたのだが……

 

 

まさかこんなことになってしまうなんて、思ってもみなかったよ……

 

 

「いくら一ノ瀬中佐といえど、わらわの婚約者を誘惑するのは許さぬぞっ!」

 

「なに?妬いてるの?かわいいわ~」

 

「婚約してないからぁ!助けようとしてくれる気持ちは嬉しいけど、話がややこしくなるんで初春さんは黙っててください!!」

 

「はっはっは!モテモテだね!鯉住くんは!はっはっは!」

 

「三鷹さん!笑ってないで助けてください!」

 

「いやあ、今日は記念すべき提督誕生の祝賀会じゃ!皆の衆、呑み放題食べ放題じゃぞ!」

 

「「「わーい!」」」

 

「「「やったー!」」」

 

「言ってない!提督やるって言ってない!人の話を聞いて!」

 

これはマズいですよ!圧倒的な突っ込み役不足!俺1人のチカラでは全く対応できない!

 

 

周りの自由人の相手にてんやわんやしていると、後ろから何かが……

 

 

ドサッ!

 

 

「ふげぇっ!」

 

背中に衝撃が伝わる。それと同時に、何かこうふんわりとした感触が……

 

「いえ~い!鯉住くん、呑んでる~?」

 

「ファッ!?お前は明石!?」

 

何で明石がここに!?今日は自分の仕事+俺の仕事で残業不可避のはず!

というか俺に抱き着くんじゃない!背中にあれが当たってるから!独身男性にその感触は刺激的すぎるから!

 

「何でお前ここにいるんだ!?仕事の途中で抜けてきたのか!?」

 

「終わらせてきましたよぅ~。私が本気出せば、ちょちょいのちょいなんだから!」

 

「なんであの仕事量でもう終わってんだよ!お前いつも手ぇ抜いてんのか!?」

 

「同僚の送別会に参加しないほど薄情じゃありません~!あなたのために頑張ったんだから褒めてよ~」

 

「やかましい!送別会じゃないから!そして今すぐ離れなさい!女の子が男にくっつくもんじゃない!」

 

「なに~?照れてるの?かわいい~」

 

「うるせぇな!どけぇ!この酔っ払い!」

 

これ以上は限界なので、無理矢理明石を引っぺがす。

あ~ん、じゃないよ。俺の理性と正気度のために今すぐ離れなさい!

 

「明石ぃ!貴様何をしておる!わらわの婚約者をたぶらかすでない!」

 

ガシッ!

 

「だから婚約してないでしょ!

あ!やめて、初春さん!アイツに対抗して引っ付かないでください!」

 

「はっはっは!いやあ、愉快だね!はっはっは!」

 

「さっきまでの冷静な三鷹さんじゃない!笑い上戸なの!?」

 

「初春さんずるいです~これでもうお別れなんだから私も~」

 

ガシッ!

 

「やめろぉ!明石ィ!せっかく引っぺがしたのに、また引っ付くんじゃない!」

 

右手に初春さん、左手に明石が抱き着いている。今の俺を見たら世の男性は嫉妬の炎に包まれるのだろうなあ……

実際ね、ハーレムなんてうらやまけしからん、と思っていた時期が俺にもありました……

しかし悲しいかな、そうなってみると冷や汗しか出ないのですわ。望まぬハーレムは地獄だって、はっきりわかんだね。

更に悲しいことに男の男たる部分も反応してしまう。これが人間のサガ……か……。

 

「だ、ダメです2人とも!今すぐ!今すぐ離れてください!」

 

「なんでじゃあ!わらわより他の女の方がいいというのかあ!この浮気者っ!」

 

「違います!色々と違います!ああ、もう、泣かないで下さい!このままだと俺がマズいんですって!」

 

「んん~?何がマズいのかなぁ?お姉さんにも教えて欲しいな~」

 

「うるさいよ、この淫乱ピンク!分かってて聞いてんだろ!?離れろぉ!」

 

 

俺がヒィヒィなっているのを横目に、大将組が何か話している。

 

「ほっほっほ。若いっていいのう」

 

「そうですね~、先生。

でも私はまだ若いですから、その話の振り方はちょっと間違ってますね」

 

「う、うむ。すまんかった」

 

立場弱いな、あの人。いや、年齢の話題になったときの一ノ瀬さんが強力すぎるのか……

というかそんなことを考えている場合じゃない!

俺の救難信号を誰かしら受け取ってくれ!ヘルプミークイックリー!

 

俺が声なき悲鳴を上げていると、1人の男性が大将に近づいてきた。

 

「大将……鯉住の奴、ほっといていいんですか?さっきから助けてほしそうにしていますが……」

 

あ、あれは先輩!先輩じゃないすか!!もう俺の味方は先輩だけっすよ!

さっすが既婚者の先輩!この状況の辛さをわかってくれるんすね!

 

「ああ……大丈夫じゃろ。初春も明石も限度はわきまえておるじゃろうし、明石に関しては近々彼とお別れじゃからな。最後に楽しい思い出が欲しいんじゃろ」

 

「そ、そうですかね」

 

余計なこというなよクソ提督!先輩、あなたの考えが正しいんです!早くタスケテ!

 

「ま、わしに任せてキミも楽しんできなさい。せっかくの鳳翔の宴会料理じゃ。楽しまねば損じゃろ?」

 

「そういうことでしたら、よろしくお願いしますね」

 

アァーーーッ!!先輩!せんぱぁーいっ!!行かないでーーー!

クソ提督お前なんもしてくれないじゃないか!何がわしに任せろだぁーーーっ!!

 

(もてもてですね)

 

(いつかさされそう)

 

(このたらし)

 

お前ら俺の心の声聞こえてんだろ!

だったら普通そんなセリフ出てこないと思うんですがねぇ!?

大体誰にも手を出してないってのに、何なんだこの状況は!

 

(よくいう)

 

(くどいておいてこのたいど)

 

(ぎるてぃです)

 

口説いた覚えなんてないっつーの!ねつ造、ダメ、絶対!

 

もしやこの左のピンク!こいつのせいか!?ただの同僚にしては距離感が近すぎんだよ!

お前のせいで変な誤解を周りに与えてるんじゃないか!?今すぐ離れろぉ!

 

「何を黙っておるのじゃ!貴様!

よもや隣の桃色の乳でも見ておるのか!?そんなにデカいのがよいのか!?」

 

「ちょ、何言ってんですか!?」

 

「わらわだって大きくはないが形はよいのじゃあ!」

 

「だから何言ってんですか!落ち着いてください!公共の場でそういうこと言っちゃいけません!」

 

「そうですよ、初春さん。私のは大きいだけじゃなくて形もいいんです!」

 

「黙ってろ明石テメェーーー!!火に油を注ぐんじゃない!」

 

「ぬおーーー!言いよったな貴様!それではどちらの方が形がよいか、皆に判断してもらう!

明石よ!着物を脱げい!」

 

「望むところです!」

 

「やめて!マジでやめて!誰か助けてーーー!!」

 

ダメだこの酔っ払いども!脱ぎだすんじゃない!ああ、もう、止められない!誰でもいいから助けてぇ!

 

「はっはっは!いいぞいいぞー!ぬげぬげー!」

 

「ふむ。鎮守府内の部下の仲は良好なようだ。流石先生の鎮守府」

 

「あら、胸なら私も負けないわよ?飛び入り参加しようかしら?」

 

ダメだこの3バカトリオ!普段は頼もしいのに酔っぱらうとポンコツかよ!

 

 

俺が暴走する2人を止められず焦っていると……

 

 

ゴツンッ!!

 

 

「「んひぃっ!」」

 

酔っ払い2人に強烈な拳骨が落ちる。

衝撃で2人の目から星が飛び出すエフェクトが見えるようだ。

 

拳骨の主は、ここ『居酒屋鳳翔』の主、鳳翔さんである。

日常的に出撃、遠征に参加したうえで、隔日で居酒屋を営んでいるすごい人だ。

 

居酒屋でのどんちゃん騒ぎも楽しみのうち、ということで、普段はかなり大目に見てくれている。しかし流石にこの狼藉は目に余るものだったらしく、助けに来てくれたようだ。

 

 

「おふたりとも、鯉住さんの言う通り、ここは公共の場です。あまり迷惑になる真似はしないで下さい」

 

「「は、はい……」」

 

にこやかな笑顔だが、その目は笑っていない。まるで猛禽類が獲物を狩るときの目だ。あれは怖い。

 

「それと鯉住さん……」

 

「は、はい」

 

鳳翔さんはこちらに近寄り、耳打ちの形をとる。

 

「私の店であまりこういった騒ぎは起こさせないで下さいね。貴方の想い人なんですから、女の恥をさらすような行動をしそうになったら、貴方が止めねばなりませんよ?」

 

「……わ、わかりました」

 

色々と勘違いされているようですが、俺は彼女たちとそういう関係ではないんですよ。

 

……なんて言えないんだよなぁ。だって怖すぎるんだもん。

至近距離で例の目をしながら囁かれたら、反論なんてできるはずございません。

 

俺にできることは素直に忠告を聞き入れて、この場をしのぐことだけだよ……

 

「わかっていただければいいんです。それでは皆さん、まだまだ楽しんでくださいね」

 

鳳翔さんは雰囲気を穏やかなものに変え、手をパンパンと叩きながら周りに呼びかける。

それにより、周りに集まっていた野次馬たちは、各々の席に戻ることになった。

 

「ほっほっほ。さすが鳳翔は頼りになるのう」

 

「いやー、先生のところの鳳翔はやっぱり違いますね」

 

「そうだな。あの目は生半可な経験で得られるものではない」

 

「あの感じだと、うちの子じゃちょっと勝つのは厳しいかもしれないわね~」

 

目の前でストリップショーが開催されようとしてたのに、なんでこのクソ提督一派はそんなに落ち着いてるんだ?

 

……あ、そうか。俺、わかっちゃいました。

あの人たちが通常営業な理由は、艦娘が中破大破で帰ってくると、半裸とかほぼ全裸がデフォルトだからだわ。見慣れてんだ、裸。普段から裸に慣れてるから、初春さんも明石も脱衣に抵抗なかったんか……

この空間で普通の感性をしているのは、どうやら鳳翔さんと俺だけらしい。

 

うーん……このままほっとくのは教育上よくないよなぁ……初春さんには、人前で抜いじゃダメって教えてやるべきだよな。

あ、分別つく年齢の明石が脱ごうとしたのは、当然許されません。バツとして今度仕事投げてやる。覚悟しとけ。

 

 

「初春さん……もう人前で裸になっちゃダメですからね?そんなことをされると、俺は心配です。貴女のカラダはそんな安いもんじゃないんですから」

 

「え……?そ、そうかのう?」

 

「そうです。俺のいないところで肌をさらすようなことはやめてください。いいですね?」

 

「あ……うん……貴様がそこまで言うのなら……」

 

ふう。よかった。わかってくれたようだ。

いくら艦娘として肌を見せ慣れているとしても、人前でそんなことしていいわけがない。最悪俺が止められるように釘も刺しておいた。

その辺の教育をしっかりしてなかったクソ提督にはあとで文句をつけるとして、これで鳳翔さんに面目をたてることができ、一安心。

初春さんが恥ずかしそうに俯いているのも、自分が恥ずかしいことをしたって自覚してくれたからだろう。ちょっと悪いことをしちゃった気もするけど、自覚ができたのはいいことだ。

 

 

……ちなみにこの時の鯉住君の言葉は、初春含めて周りの面々にはこう聞こえていた。

 

『これからは俺以外には裸を見せるんじゃないぞ。お前は俺のものなんだからな』と。

 

周りからしてみれば、つまりそれはそういうことである。公衆の面前で堂々とそんな発言をするなんて、男らしいとかいうレベルではない。

恋バナ好きな艦娘たちは、この場にいるほぼ全員が、今のやり取りに聞き耳を立てていた。そしてそのほぼ全員が「奴はなんて爆弾発言をするんだ」と息を呑んだ。鼻血を噴出する娘もいるほどだった。

鯉住君のこの発言により、彼の評価は『半端なく艤装メンテがうまい良い人』から、『半端なく艤装メンテがうまいヤバい奴』にランクアップした。

 

 

(ほんとにざんねんなおとこです)

 

(もっとよくかんがえたはつげんをするべき)

 

(くいあらためて)

 

なんでそんなこと言うの!俺いい仕事したよ!?

艦娘の皆さんが一般人の前でストリップでもしてみなさいよ!俺みたいに若い男は我慢できないよ!?襲い掛かっちゃって迎撃されて血の雨が降るよ!?

それを防いだんだからグッジョブと言われてしかるべき!

 

(((はぁ……)))

 

かわいそうな子を見るような目で俺を見るんじゃない!何が不満なんだキミたちは!

 

 

妖精さんたちをたしなめていると、拳骨を喰らった頭をさすりながら、涙目の明石が声をかけてきた。

 

「ねぇ、アナタ今いい仕事したって思ってるでしょ?そういう顔してるもん」

 

「なんだよ明石、当たり前だろ?お前らの脱衣癖はよくないって教えてあげたんだから……」

 

「はぁ、やっぱり……相変わらず乙女心が分かってないわよねぇ」

 

「なんだよ、何が言いたいんだよ?」

 

「何でもないよ。私がわかってればいいのっ」

 

ガシッ!

 

そういうと明石は嬉しそうに俺の腕にひっついてきた。

せっかく離れてたんだから、そのまま距離をとっていてほしかったよ……折角初春さんも離れてくれて、解放されたと思っていたのに……

 

というか初春さんは何をボーっとしてるんだ?

あ、もしかして、こんな宴会の場で説教じみたことしちゃったし、ショックを受けちゃってるのかな?そうだとしたら、責任もってフォローしとかないといけないだろう。

 

「あの、初春さん?」

 

「……」

 

「初春さん、大丈夫ですか?」

 

「……!! ど、どうしたのじゃ!?」

 

「ええとですね……さっきは強引に話を進めちゃってすいません」

 

「いや、その……わらわも悪い気はせんかったし、だ、大丈夫じゃ……」

 

「そうですか。そう言ってもらえると嬉しいです。

それでは似たようなことがまたあったら、声を大にして伝えさせていただきますね」

 

「こ、声を大に……!? そ、それはさすがに恥ずかしくはないか……?」

 

「何言ってるんですか!俺は初春さんが大事だからはっきりと伝えるんですよ!

ひとつも恥ずかしいことなんてありません!」

 

「~~~~~っ!!」

 

 

うん!初春さんがいい子でよかった!

すごく嬉しそうな顔をしているし、俺が何か注意するのは初春さんのためだ、ってわかってくれたことだろう。

人前で注意されるのが恥ずかしいと思ってるようだけど、そんなことはないからね。間違ったものを間違ったままにしておく方が恥ずかしいことだからさ。

しかし小学生くらいのメンタルだと思っていたけど、聞くべきことはしっかり聞けるなんて素晴らしいことだ。大人でも難しいことだというのにね。

 

 

言うまでもなく、この鯉住君のフォローも、周りには違った意味でとらえられていた。

当然初春もそっちの意味でとらえており、喜びと恥ずかしさのあまり耳まで真っ赤にしている。

新たな爆弾発言により多くの艦娘の血(鼻血)が再度流れ、『益荒男鯉住』だの、『偉丈夫鯉住』だの、新たな二つ名がいくつか誕生することとなった。

 

 

(((あああーーー!!もうーーー!!)))

 

お、おい、お前ら、何してんの!?

何で机の脚をひたすら殴ったり、頭を床に打ち付けたり、どこかに向かって拝んだりしてるの!?何がお前らをそうさせるの!?

やめなさい!ケガしちゃうでしょ!お兄さんそんなの許しません!!

 

 

「こ、鯉住君、キミ思ってたよりすごいね。わし驚いたよ?」

 

「ホントすごかったわ……関係ない私までクラっときちゃったもの……あっ鼻血が……」

 

「やるねえ!あんなの僕じゃとても無理だよ!」

 

「うむ。自分の意思をはっきり伝えられるのは美徳だな」

 

「は?へ?そ、そんなに驚くようなことですか……?」

 

「え……?キミ、あれが普通なの……?ちょっとわし信じられない」

 

「いやいや。こういう時は、はっきり伝えないと伝わらないでしょう?

相手の事を考えたら、言葉を濁すのは失礼ですよ」

 

「私も一度くらいそんなふうに言われてみたいわ……あ、鼻血がまた……」

 

何故か大将組の皆さんから絶賛された。

なんだろう? ちゃんと子供を叱ってあげるのは大人の役目だと思うんだけど、そんなにすごいことなんだろうか?

もしかして艦娘の場合と人間の場合では何か違いがあるんだろうか?

 

……というか一ノ瀬さん鼻血出てるぞ?大丈夫なの?お酒の飲みすぎだとしたら、すぐに寝たほうがいいんじゃないだろうか?

 

「大丈夫ですか?一ノ瀬さん。寝ますか?俺も付き合いますよ?」

 

「え!?ちょ!?……ね、寝る!?付き合う!?」

 

「ええ。一ノ瀬さん1人で行かせられるわけないでしょう?俺も一緒に行きますよ」

 

「だ、ダメよ!!いけないわ!キミには初春ちゃんがいるじゃない!」

 

「初春さん……? それは関係ないでしょう?何を言ってるんですか?俺は今一ノ瀬さんの話をしているんです」

 

「いけないわ……そんなの……不誠実よ……」

 

「一ノ瀬さんを放っておくほうが不誠実ですよ。来ていただけますか……グハァッ!!」

 

一ノ瀬さんを病室に連れて行こうとしていたら、後頭部に衝撃が走った。

クラクラする頭で後ろを見ると、明石がスパナをもってニコニコしていた。

 

「あ、明石……一体何を……」

 

「ちょっと唐変木は黙っててくださいね~」

 

「な、何を言って……」

 

「すいませんでしたね、一ノ瀬中佐、うちの同僚が。私が責任もって連行しますので」

 

「え、ええ……彼は大丈夫なの……?」

 

「ちゃんと問題ない角度で打ち込んだので問題ありません。慣れてますし」

 

「そ、そう」

 

「ということで、失礼しました~」

 

そう言うと明石は鯉住君をズルズルと引きずって行ってしまった。

 

 

「……先生、ここの鎮守府ってすごいんですね……」

 

「わしもビックリしてます」

 

「……一ノ瀬、気を確かに持て」

 

「私、あんなに情熱的に迫られたの初めてだわ……あ、鼻血が……」

 

 

酒が入ると理性的な判断が下せなくなるのは、人間も艦娘も同じです!飲酒はほどほどにしましょう!

自分の言動のツケを即座に払うことになった鯉住君の明日はどっちだ!




思わせぶりな態度をバラまいて、知らず知らず自分で自分の首を絞める鯉住君!
そんな彼に新たな出会いが迫る!

次回「ああ、あの人の姿が見える……」!

お楽しみに!
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