私は新規艦目白押しで大変満足できる結果となりました。
秋月、葛城、同志でっかいのと中くらいの、サラトガ、アイオワ、イントレピッド、そしてフレッチャーと、超強力かつ超レアな面々を迎えることに成功しました。やったぜ。
石垣ちゃんと岸波、大和とは未邂逅に終わりました。岸波は分かりませんが、大和さんはこの作品での扱いに思うところがあったのかもしれません。おこなのかもしれません。
これからトライする大型建造で、大和さんは果たして来てくれるんでしょうか? 代理人として武蔵(既所持)ばっか出てくる気もします。私の気のせいでしょうか。そうだといいなあ。
叢雲からの尋問はつつがなく(?)終わった。
鯉住君の必死の弁明と、夕張による的確な合いの手により、いやらしいことは一切なかったと信じてもらうことに成功したのだ。
とはいえ叢雲の説得のためにやむを得ず、『超性能な艤装のために天龍たちに愛を叫んだ』という、出来れば切りたくなかったカードを切ることになってしまった。
それを聞いた叢雲は、ひとしきり八つ当たりした後「ふーん……そう。ふーん……そうなのね。ふーん……」と何か意味ありげに思案していたのが、鯉住君にとっては非常に印象的だった。
その様子を見て「フフ、怖い」なんてブルっちゃう鯉住君。遠からぬ将来に、良からぬことが起こるのを感じ取ったのだ。ついに未来予知能力に目覚めてしまった様子。
それはともかく、現在は夕方の18:00。夕食の時間である。
今日の夕食は、色々な出来事(研修生受け入れ、提督帰還、昇進祝い、ガチ婚祝い)に対する祝賀会といった体で行われるので、かなり豪華なオードブル形式である。給糧艦顔負けな足柄と秋津洲のふたりが腕によりをかけたのだ。
そんな豪華な会食が始まる前に、この鎮守府代表である鯉住君の挨拶が行われている。
「えー、皆さん、今日はこのような素晴らしい会を開いていただいて、ありがとうございます。
皆さんのおかげで私も大佐などという過分な身分に昇進できたことに加え、栄えある大本営からの研修受け入れという、非常に名誉ある大役を担わせていただくことと相成りました。
研修に来てくれたふたりとは、ぜひとも仲良くしてあげてください」
「久しぶりね! ヨロシク! 大本営第1艦隊の瑞鶴よ!」
「先輩ともどもよろしくお願いします! 大本営第2艦隊の葛城です!」
よろしくねー。頑張りましょー
ムニャ……あら、葛城じゃないですか……いつの間に……zzz……
お前様ー! 妾は頑張ったのじゃ! 労ってくりゃれー!
私も頑張ったかも! ご褒美が欲しいかもー!
「はいはい。挨拶中だから細かいことはあとでね。おふたりには会食中にぜひ絡んであげてください。
……それとですね。ここに居ない天龍と龍田は、現在みんなのために欧州まで出向いてくれています。危険はほぼないとはいえ、それでも確実とは言えません。みんなからも応援の連絡をしてあげてください」
わかりましたー
ふぅん。天龍なら問題ないわね。私に勝ったのだし
流石はウチの二枚看板ですね!
「……えー、またですね、紆余曲折ありながらも、この度夕張と改めて夫婦となりましたことを、この場を借りてお知らせしたいと思います」
「えへへ……!!」
!? あの草系男子な提督が、そんなに堂々と……!?
夕張先輩が、あんなに幸せそうに……!!
提督ヤバいわー、全然動揺してないわー……!!
なんなのよ、ヘタレのくせに……!!
おめでとうー! 鯉住さーん!
「はい、これも皆さん色々言いたいことあると思いますが、会食の後でね。秘書艦のふたりがそういう場を用意してくれてるみたいだから。不本意にも。
……とにかく、挨拶はこれくらいで。足柄さんと秋津洲が丹精込めてこしらえてくれた料理を、存分に楽しみましょう。
それでは皆さん、お飲み物(ノンアルコール)をお持ちください」
カチャカチャ……
「それでは……みんなの頑張りと、研修生ふたりの頑張り、そしてラバウル第10基地のこれからを祝して……カンパーイ!」
カンパーイ!!
・・・
会食はバイキング形式ということもあり、会場のあちこちでは楽しそうに談笑する姿が見られる。
特に人気なのは、研修生である瑞鶴葛城コンビと、鉄壁な提督の守りを酒の勢いでこじ開けた夕張。
食事を楽しむ暇がないほどに質問責めにされている。
その様子とは対照的に、鯉住君の周りは比較的静かだ。
もっともそれは、この後の質問会で色々聞くからは今は楽しんどけ的な「嵐の前の静けさ」であるのだが。
そんな彼の下に、今回の歓迎会の立役者のひとり、ここの厨房を任されている足柄がやってきた。
「どう? 提督、楽しんでるかしら?」
「あぁ、足柄さん。いつもですが、こんなおいしい食事を用意していただいて、ありがとうございます」
「それが私の仕事だもの。気にしないでいいわ」
「そういうわけにはいきませんよ。いつでも足柄さんの料理が食べられるってだけで、元気になれるんですから。
ここから離れている間中ずっと足柄さんの料理が恋しかったくらいには、気に入っちゃってるんです」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね。アナタの胃袋はバッチリ掴めてるってことかしら?」
「なんだかそうみたいですね。頼りにしてます」
「それは責任重大ね。……それはそうと、ちょっとこれ見てほしいんだけど」
「ん? 一体どうしたんですか?」
足柄は自身の端末の画面を鯉住君に見せてきた。
どうやらチャットアプリの画面のようだが、その中身は……
「ん゛ん゛っ゛!?」
・・・
[ 友達申請リクエスト ]
伊良湖(大本営:
お久しぶりです! 私、大本営所属の給糧艦、伊良湖と申します。
ずっと前に調理技術の相談をしていただいたことがありますが、覚えていてくださいますでしょうか?
現在は鯉住大佐の下にいらっしゃると聞き、居てもたってもいられず友達申請を送らせていただきました!
聞くところによると、艦隊の食を預かる私達と同じくらい、もしくはそれ以上に、料理の腕前が上達されたとのこと。
給糧艦の艦としての能力抜きで、そこまで人に認めさせるだけの実力が発揮できるなんて! 正直信じられないくらい驚いてますし、尊敬もしています!
一度しか面識がないうえ、いきなりで不躾だということは理解できていますが、情報交換やレシピの相談、調理技術の色々についてお話ししたいという気持ちが抑えきれず、こうしてご連絡させていただきました!
もし嫌でないのなら、お友達に追加して欲しいです! そして色々とお話ししたいです! よろしくお願いします!
追伸:
鯉住大佐の鎮守府運営に対する信念についても非常に好ましく思っており、そこで働ける素晴らしさについても教えてもらいたいな、なんて思ってます!
実は私、大佐と直接顔合わせした際に、そちらで働かせていただけないか打診させていただいたのですが、残念ながらその時はお断りされてしまいました……残念ながら……
しかし! これから何かの拍子で私を受け入れてくださることもあるかもしれません! そして私達給糧艦一同は、その時を待ち望んでいます!
もしそうなった時は、改めてよろしくお願いします! 一緒に頑張りましょう!
・・・
「そうきたかぁ……外堀から……」
「ねぇ提督、大本営で何やらかしてきたの?」
「いや、あのですね、伊良湖さんからウチに来たいって打診されてですね、それを断ってきまして……」
「文章に書いてある通り、私は大本営の伊良湖と面識あるのよ。
彼女ってば、すごくいい娘でね。本来こんなに押しが強い性格じゃないのよ。むしろ逆ね」
「そ、そうなんですか? かなり強めにアピールされましたが……」
「本当にアナタ、艦娘からモテるわよねぇ。そういうフェロモン出してるとしか思えないわ」
「そういうワケじゃなくてですね……たぶん……
伊良湖さんが言うには、俺の運営方針に共感してくれてるってことなので、モテてるとかじゃなくて理想の上司として見てくれてるんだろうなって……」
「あのねぇ……艦娘にとって、理想の上司って言ったら尊敬の対象なんだから。それが恋心や愛情に発展してもおかしくないでしょう?
そもそも元帥なんていう超一級提督が治める大本営の所属なのに、僻地の大佐相手にそこまで想いを寄せてるんだから、推して知るべしというものよ」
「あんまり考えたくないなぁ……」
「粉かけた責任は取りなさい。アナタは艦娘の女性の部分に特効持ってるんだから」
「その特効、心底要らないっすね……」
なんか予想外のところから予想外のアプローチが飛び出してきて、とってもげんなりする鯉住君。
足柄が言うように、鯉住君自ら粉をかけたわけではない。というか、勝手にいつの間にか粉がかかっちゃってたような状況だ。
とはいえ見て見ぬふりして逃げ切るのは不可能なのだろう。ハッキリと結論を突き付けるしかない。
「……ハァ。彼女のことを受け入れてあげたい気持ちはあります。ありますが、そこは俺も提督です。
艦隊運用の面から考えて、ウチでの給糧関係は足柄さんと秋津洲で十二分に事足りてますし、給糧艦の皆さんをお迎えすることはできません。然るべき赴任先はいくつもあるでしょう」
「アナタやっぱりお堅いわよねぇ。とはいえそれが正しい判断なんでしょうね。
もし大規模作戦が起こったりして、私と秋津洲だけで厨房を回すのが難しくなったとしても、2,3人にお手伝いをしてもらえれば問題ないでしょうし」
「ですよね。ということで、大本営に向けた電文で、しっかりとお断りを入れるようにします。
『将来的に見てもラバウル第10基地で給糧艦が必要になる局面は訪れない見立てなので、給糧艦の赴任については断固拒否させていただきます』みたいな感じで」
「伊良湖には申し訳ないけど、それしかないわよね」
「気まずいかもしれませんが、足柄さんの方からも伊良湖さんに連絡を入れてもらえると助かります」
「そのくらい構わないわ。それくらいで気分悪くするような性格してないでしょうし」
「ありがとうございます」
ドッと疲れが出てくる話だったが、ここでハッキリとした対応を決めることができたのは、これからにとって良いことだったのだろう、なんて考える鯉住君。
無理にでもそう思っていないと心労が加速するので、思い込んでいるだけということでもあるのだが。
「ハァ……とにかく、この話はここまでで。
足柄さんの作ってくれた料理、まだまだ楽しまさせてもらいますからね」
「アナタも大変よねぇ。ま、しっかり食べるもの食べて、精をつけておきなさい。この後にメインイベント(質問会)も待ってるんだし」
「とりあえずそのことは忘れておきたいので……」
「それもそうね。頑張ってね」
「やっぱり頑張らなきゃいけないんすね……」
・・・
会食が始まってから2時間ほど経過し、料理もずいぶんはけ、宴もたけなわといった様相である。
夕張は質問責めに遭ってため息をついているし、空母ふたりの研修組は、ここの面々と顔合わせを無事に終えることができ、満足そうだ。
そんな会場に、パンパンと手を叩きながら、秘書艦である叢雲が声を響かせる。
「はいはい、みんな注目なさい。そろそろ楽しむだけ楽しんだから、会食も御終いにするわ。
片付けまでふたりにやらせるのは申し訳ないから、みんなでやっつけちゃうわよ。あ、ただし瑞鶴さんと葛城さんのふたりは、今日のところはお客さん扱いだから、のんびりしててくれていいわ」
「そういうワケにはいかないわよ。私たちも手伝うから」
「そうですよ! こんなにおいしいお料理を頂いちゃったんだし、それくらいさせて下さい!」
「あら、悪いわね。それじゃ全員で片付けしましょ。始めるわよー」
「「「 はーい!! 」」」
叢雲の号令と共に一同は片付けを始めた。
とはいえ人数が人数だったので、あっさりと10分程度で終わってしまったのだが。
片付けが済んだ会場は、いつも通りの食堂に戻っている。
「ありがとな、叢雲。仕切ってもらっちゃって」
「アンタがいない間はずっと私が仕切ってたんだから、もう慣れたものよ」
「俺がいなくても鎮守府が回るんじゃないかって思えてくるな……」
「バカ言ってんじゃないわよ。それじゃ……」
会話を中断した叢雲が秋津洲に視線を向けると、彼女は心得たように厨房の方へ引っ込んでいった。
そして次に出入り口にいた古鷹に目を向けると、彼女も秋津洲同様に心得た様子でピシャリとドアを閉めてしまった。ご丁寧に鍵までかけている。
その様子を見て、猛烈な悪寒にブルっと身震いする鯉住君。
「……なぁ叢雲、お腹の調子が悪くなってきたから、ちょっと用を足しに行きたいかなー、なんて……」
「さっき行ってたでしょ。ガマンなさい」
「えーと……」
「さ、それじゃみんな、席に着きなさい」
叢雲の指示に従って、その場にいる全員がキビキビと着席していく。
何が何やらよくわかっていない先輩後輩空母は、古鷹が誘導していた。
「なぁ叢雲さんや」
「何かしら」
「なんか雰囲気が変わったんだけど……」
「そうでしょうね。アンタが居ないのは2週間くらいだったけど、お互いに色々あったでしょ?」
「それは、まぁ……」
もしかしなくても、これから始まるのは、彼に対する質疑応答及びなんやかんやに対する追求だろう。
本当にお腹が痛くなってきた鯉住君。
「それじゃみんな。前半の祝賀会も終わったところで後半戦に入るわ。心の準備はいいかしら?」
「そんな大げさな……」
無言でうなずく面々。困惑している研修組。
「聞きづらいこともあるでしょうから、それに対する対策もとってあるわ。秋津洲、お願い」
「わかったかも!」
叢雲の合図で厨房から戻ってきた秋津洲。彼女の両手には……
「ちょっと叢雲さんや」
「何かしら」
「アレは禁止にしたはずでは?」
「乙女に素面で恥ずかしいこと発言させようっていうの?」
「いや、その……」
酒だった。
この鎮守府では酒乱でないメンバーの方が少ないので、永久封印を施していた酒。
それがカクテル、日本酒、焼酎、洋酒……ありとあらゆる酒と人数分のグラスが、秋津洲の手によって次々に揃えられていく。
「私は焼酎でお願いします」
「やったぜ! お酒久しぶりー! 私はねー柑橘系かなー」
「とにかく強いものをお願いします……!!」
「うむ。ラム酒を貰おうか」
「日本酒呑みたいです……ふわぁ……」
そしてそのバリエーション豊かな酒は、座っている面々にどんどんと届けられていく。
「何なのだ、これは! どうすればいいのだ?!」
「難しいことはないわ。質問に答えればいいだけ。
さぁ、アンタも席に着きなさい。私と古鷹で両隣に座ってあげるから。感謝なさい」
「ただでさえ大変なことになるってのに、酒が入ったらそれはもう地獄じゃないですか! ヤダー!」
「つべこべ言うんじゃないわよ。男なら潔く諦めなさい。古鷹もそう思うわよね?」
「そうですね。私も隣に居てあげますから、思う存分本音で話してください」
「叢雲の言葉のチョイスが酷い! あと古鷹の目から光が消えていて怖い!」
「大丈夫ですよ。色々と黙ってたことに対して、少しだけお聞きしたいことがあるだけですから……」
「そうよ。私たちが何徹もして書類を捌き続けた意味さえ理解してくれてれば、それでいいから」
「くっそぅ……なんて日だ……!!」
両側を秘書艦ズに固められ、とぼとぼとお誕生日席まで連れていかれる提督からは、そこはかとない悲壮感が漂っていた。
今から始まる精神的処刑タイムに、決めたくなかった覚悟を決める鯉住君であった。
瑞鶴と葛城のふたりは巻き込まれてしまいそうですね。
鼎大将一派の研修では、変なところで精神がやられるのは確定的に明らか。
鯉住君のところでも、ちゃんと先輩3人からの系譜を受け継いでいるようですね!