艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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 鼎大将組以外は、基本的にシリアスなのです。今回はそんな感じの内容。



第131話

「ど、どうすんのよ、こんなことになっちゃって……」

 

「まさかの戦艦2隻とはなぁ……」

 

「しかも金剛さんに榛名さんって、ラバウル第1基地の主力オブ主力ですよ……?

そんなすごい人たちの研修って、私たちにどうしろっていうんですか……」

 

「そんなこと言ったら、瑞鶴さんも葛城さんも実力者だけどね……」

 

「そもそもウチにはもう、自由に動ける戦艦が居ない(天城は葛城担当)ってのに、どうやってあのふたりを鍛えればいいってのよ……」

 

「そこはもう、なんとか工夫するしかないよな……」

 

「もうっ……!! あとで白蓮大将に抗議文書送ってやるんですから……!!」

 

「高雄さんが胃痛で倒れちゃうから、ほどほどにね……」

 

「アンタまたそんな甘いこと言って……

まぁどのみち白蓮大将には、何言っても暖簾に腕押しでしょうけど……」

 

 

 

「? 3人とも何をコソコソ話してるデスカー?」

 

「あ、ああ! スイマセン、ほったらかしにしちゃって!」

 

 

 白蓮大将の無茶振りからの金剛型2隻の来襲に、3人してテンパってしまう第10基地首脳メンバー。

 

 さっさと研修受け入れを断るなり、細かい話を要求するなりしていればよかったのだが……とっても忙しいタイミング(半期に一度の棚卸中)での連絡だったため、すっかりとそのこと自体を忘れてしまっていたのだ。

 

 そもそも研修願いを出すにあたって、研修開始日、研修人数、研修対象艦種、その経歴と実力、目標練度など……それらのすべてを知らせることなく『よろしくな!』だけで連絡した気になってる大将がクレイジーすぎるのだが、そんなこと言っても始まらない。

 

 

「ええと……それじゃ、おふたりにはまずは鎮守府見学をしてもらいましょうか。

ここの鎮守府、少し変わってるので」

 

「少し……? 里山と水族館が敷地内にある鎮守府デスヨ?

大佐はもっと自分が異端だってこと、自覚するべきだと思いマース」

 

「それは、まぁ、そうですねぇ……」

 

「よく言われるわ。それにしても久しぶりね、金剛さんと榛名さん。

私が第1基地に居た時は、新兵ド真ん中だったから、ふたりが私のこと覚えてるかはわからないけど」

 

「忘れるわけないヨ!

あんなに頑張って新しいカラダに慣れようと努力してた叢雲のこと、忘れるわけがありマセン!!」

 

「榛名もよく覚えています。数年ぶりの新規建造艦だったというのもありますが、毎日真剣に研修を受けていましたよね」

 

「そ、そう?」

 

「叢雲さんは頑張り屋ですからね。ふふふ」

 

「ふ、古鷹まで! やめてちょうだい!!」

 

 

 自分の新兵時代を知る3名に温かい目で見られ、叢雲はあたふたしながら照れまくっている。頭の電探艤装が真っ赤にピカピカ点滅している。

 それを眺める鯉住君は、笑顔が抑えられない。信頼する筆頭秘書艦が自分以外にも認められているのを見るのは、気分がいいものだ。とてもいいものだ。

 

 

「……アンタは何見てんのよ……!!」

 

「ん? ああ、ゴメンゴメン。仕事するから。

……叢雲はおふたりを鎮守府案内してあげて。それで古鷹はおふたりの使う部屋を整えてあげて欲しい。金剛さんも榛名さんも相部屋で構いませんよね?」

 

「イグザクトリー! もちろんネー!」

 

「榛名も大丈夫です!」

 

「よかった。それじゃふたりとも、よろしく頼むよ」

 

「……フンッ!!」

 

「お任せください、提督」

 

 

 いきなりの金剛型ふたりの来訪で面食らってしまったが、別にふたりに恨みがあるわけではない(大将に対しては少なからずある)。

 ひとまずはここでの生活に慣れてもらい、細かい研修プランはそこから考えればいいだろう。

 

 そう考えていたのだが、予期せぬ人物から待ったがかかった。

 

 

「……大佐、少しいいでしょうか?」

 

「ん? どうしました榛名さん?」

 

「榛名は少し前に鎮守府見学……と言いますか、大佐の鎮守府改造を目の前で拝見いたしましたので」

 

「あー……そうでしたね。私は当時の記憶がありませんが……」

 

「き、記憶がない……?

ええと、ともかく、そういうことなので、榛名は鎮守府案内は結構です。大佐にお話したいこともありますし……」

 

「そうなんですか? こちらとしてはそれでも構いませんけど……」

 

「ンンー? 榛名は大佐とトークタイムデスカー?

あっ、もしかして榛名……大佐のことが……?」

 

「ち、ちち、違います!! 金剛お姉さま!!」

 

「そうですよ、金剛さん。榛名さんとお会いしたのは一度だけなんだし、そんなはずありませんって」

 

「アーハン? 恋はエブリデイエブリタイム、いつ訪れるのかわからないものデース!!

お姉ちゃんは応援しますヨー! グッドラック、榛名!!」

 

「あ、ちょ、ちょっと待って金剛さん!! 私が案内するから!!

……アンタは榛名さんに手を出すんじゃないわよっ!!」

 

 

 ニッコニコの金剛と、案内役なのにそれを追いかける形となってしまった叢雲は、ドタバタと執務室から出て行ってしまった。

 

 

「もうっ! 違うんですって、金剛お姉さまっ!!」

 

「あはは。賑やかなお姉さんですね」

 

「自慢のお姉さまなのですが、時々ああやって暴走してしまうのが玉に瑕で……」

 

「妹想いなのが伝わってきますし、素晴らしい方だと思いますよ」

 

「……はい! 金剛お姉さまの良さをわかっていただけて、榛名感激です!」

 

 

 榛名はお姉さんの金剛が褒められるのが嬉しいのだろう。鯉住君の感想を聞いて、すごくうれしそうにしている。

 

 

「それじゃ私は寝室の用意してきますね。

榛名さんは何やら提督に話があるようですし、本日の他の仕事もある程度片付けておきますから」

 

「それはすごく助かる。ありがとな、古鷹」

 

「私達のためにお気遣いいただき、ありがとうございます」

 

「大丈夫ですよ。あ、でも提督」

 

「どしたの?」

 

「叢雲さんも言ってましたが、榛名さんを口説き落とすのはNGですからね?」

 

「あ? え? いや、何言っちゃってんの古鷹。

ちょっと話するだけだよ? そんな気も全然ないし。

天地がひっくり返ってもありえないから」

 

「完全にフリにしか聞こえませんよ?

それに、そんなに簡単に天地がひっくり返ったら、たまらないじゃないですか」

 

「部下が手厳しい……」

 

「あはは……」

 

 

 何故か太い釘を秘書艦ズにぶっ刺されつつ、榛名との対談に移る鯉住君だった。

 

 

 

・・・

 

 

 

「それじゃ……まずはご挨拶を改めて。

お久しぶりです、榛名さん。以前にお泊めさせていただいた時以来ですね」

 

「あの時は本当にお世話になりました。

大佐に救援に来ていただけなければ、榛名たちはまた海の底に沈むことになっていたでしょう」

 

「そんな大袈裟な……アークロイヤルも天城もやる気なかったみたいですし、おおらかな性格だし、逃げるだけならなんとかなったんじゃないですかね?」

 

「そうは到底思えないです……

あと、欧州で大量虐殺をしてきた彼女たちに対して『おおらかな性格』なんて、普通は言えないと思うんですが……」

 

「そうかなぁ。自分に正直すぎるところはあるけど、相手のことも考えられる子たちですよ?

人間と折り合いつかなかったのは、深海棲艦特有の敵対感情に加えて譲れない部分があったせいですので」

 

「……高雄さんが言ってた『鯉住大佐が居なくなったら、ラバウル基地は壊滅するかもしれない』って言葉の意味が、少しわかった気がします」

 

「いやそんな、基地壊滅とかありえないですって、そんなこと……

高雄さん何言ってるんすかホントに……」

 

 

 実際彼が雲隠れしたら、世界最強クラスの姫級2体が野放しになるのに加え、艤装パーツ生産効率がガタ落ちし、さらに言えば第10基地の艦娘の士気が地の底を這うだろう。

 

 あながち高雄の懸念は言い過ぎとも言えないのだが、本人にはその自覚がないらしい。

 

 

「まぁ、それはともかくとして。榛名さんは何の用があって、話をしたいなんて切り出したんですか?」

 

「はい、実は……今回金剛お姉さまと榛名が研修をお願いしたのには、大きな理由がありまして。大佐にはそれを知っておいて欲しいんです」

 

「研修に来た理由……ですか。

確かに金剛さんも榛名さんも、研修が必要なほど実力が足りないわけではないでしょうし、不思議に思っていたんです」

 

「確かに一般的に見れば、実力が足りないというほどではないでしょう。

……でも、それではいけないんです」

 

「……と、言いますと?」

 

 

 思うところがあるのだろう。一拍置いた後、榛名はゆっくりと、それでいてハッキリとした口調で言葉をつなぐ。

 

 

「榛名と金剛お姉さまには、なんとしても解放しなければいけない海域があるんです」

 

 

 

・・・

 

 

 

「解放しないといけない海域……?」

 

「はい。ラバウル第1基地の直轄エリアには、深海棲艦の勢力が強すぎて解放できていない領域があるんです」

 

「え? そうなんですか?

第1基地直轄エリアに未解放海域とは、ちょっと意外な気もしますね」

 

「あまり知られていませんが、実はどの鎮守府エリアにもそういった領域はあるんですよ。

第1鎮守府や第1基地でないと、深海棲艦の勢力拡大を抑えることすらままならない。そういった危険度特級区域とも呼べる場所が」

 

「穏やかじゃないですね……

……とすると、私たち第10基地のような、第2以降の基地に割り振られる解放目標海域には、そういった特級危険区域は含まれてはいない、と」

 

「そういうことです。

そもそも第1基地で対応できない領域を、第2基地以降に任せるわけにはいかないですからね」

 

「それもそうか。

……それで、榛名さんと金剛さんは、その危険すぎる海域を解放したいわけですか」

 

「はい」

 

「理由を聞いても?」

 

「もちろんです。その話をするためにお時間を頂いたので」

 

 

 

 少しの逡巡の後、榛名の口から飛び出てきたのは、予想外の一言だった。

 

 

 

 

 

「実は……あの海には、比叡お姉さまと霧島が眠っているんです」

 

 

 

 

 

「!! それは……」

 

「今から9年前。深海棲艦が現れ始めて、1年も経っていない頃……

まだ羅針盤すら発明されておらず、提督と艦娘の関係すら朧気だった時代のことです。

ラバウル基地エリアには大量の深海棲艦が現れたことで、戦力増強の観点から、当時としては数が少なかった戦艦枠として、榛名達、金剛型4姉妹が異動することになりました」

 

「……榛名さんも金剛さんも、最初期からの古参艦娘だったんですね」

 

「はい。金剛お姉さまも同様ですが、記録上では最古の戦艦艦娘ですね」

 

「おふたりとも、凄い人なんだなぁ」

 

「ありがとうございます。

……そんな経緯で提督……白蓮大将と一緒に海域解放してきたのですが、ある日出撃した未解放海域で、事件が起こりました」

 

「事件……」

 

「……忘れもしない、雲一つない晴天だったあの日。普段問題なく使用できていた無線が、いきなり繋がらなくなったのです。

まだまだ榛名たちの練度は低く、提督の優秀な無線指揮に頼って戦闘をしていたので……このトラブルは文字通り致命的な問題として、艦隊メンバーに降りかかりました。

それと同時に、前後左右を囲むように、無数の深海棲艦が海中から出現したのです」

 

「無線が使えなくなって、強烈な奇襲……それってもしかして」

 

「……お察しの通り、罠だったのでしょう。

そんな不測の事態、絶望的な戦力差の中で採れる作戦は『囲いを一点突破して撤退』以外にはありませんでした」

 

「……」

 

「しかし敵の数は艦種混合で50以上、こちらの戦力は損傷激しい連合艦隊12隻。

どうあっても全艦無事に帰投は望めない、誰かを切り捨てて誰かが助かれば幸運という、差し迫った状況でした。

……そんな極限状態で……ふたりが、比較的損害が少なかった比叡お姉さまと霧島が、殿(しんがり)を買って出たんです」

 

「……その状況で殿って」

 

「……金剛お姉さまが『自分が代わりに』と言って、最後までふたりを押しとどめたのですが……

比叡お姉さまも霧島も『これは損傷少なく、囮ができる練度の自分たちの役目だ』と言って譲らず……金剛お姉さまは断腸の思いで、連合艦隊旗艦として、その作戦を決行したのです……」

 

「そんなことが……」

 

「今思えば比叡お姉さまと霧島の判断は適切なものでした。

……でも、それしか手がなかったなんて……そんな簡単に割り切れるものではありません。

……榛名は……榛名は、悔しかった。

なんで自分はこんなに弱いのか。もっと実力があれば、比叡お姉さまと霧島は犠牲にならずに済んだんじゃないか。道中がすんなりいきすぎだったところから罠だと気づけていれば。提督の指揮無しで艦隊を率いることができる判断力があれば。

……今でもあの時のことは夢に見ますし、いくら後悔しても、し足りないくらいです」

 

「それは……そうですか」

 

「そして榛名の抱いているその気持ちは、金剛お姉さまも同様です。

……いえ、その作戦を最終的に決定したのは金剛お姉さまなので、榛名が思っているよりも遥かに深く心に傷を負ってしまっているはずです。『大事な妹ふたりを見殺しにしたのは自分だ』と……」

 

「……」

 

「榛名でも心が引き裂かれるほどなのに、金剛お姉さまのお気持ちを想うと……

それでも金剛お姉さまは、周囲を気遣って明るく振舞える性格ですから、その事件以降も務めて精力的に艦隊を引っ張ってきました。ご自身の辛い気持ちは、心の奥底に押し隠して……」

 

「強いなぁ……」

 

「今でもお姉さまは、あの時の失態を取り返すと言わんばかりに、やり過ぎと言えるほどの過酷な自主訓練をこっそりと続けています。榛名も強くならねばとは思い行動していますが、金剛お姉さまには遠く及びません。

……榛名は金剛お姉さまの悲痛なお姿を、もう見ていられないのです。そしてその気持ちは提督も同じだったようで……今回大佐を頼ることにさせていただいたのです」

 

「……そうだったんですね」

 

 

 

・・・

 

 

 

 榛名の話を聞き、心の中で頭を下げる。

 

 羅針盤がない時代のことはうっすらとしか知らないが、艦隊運用というものが今とはまるで違うものだったのだと痛感する。

 いくら万全の準備をしたとしても、轟沈の危険が常について回る。轟沈が確実に回避できる今とは、何もかもが違う。

 深海棲艦の奇襲など、現在は起こらない。羅針盤に従っていれば『幸運な方角』を指し示してくれるので『不測の事態』そのものと無縁なのだ。

 

 そんなすべてが手探りの黎明期に、文字通り必死で道を切り開いてきたのが、彼女たちなのだ。

 彼女たちと当時の提督たちの試行錯誤と犠牲の上に、今日の日本海軍が成り立っている。

 

 ……そして、そんな時代を生きてきた榛名と金剛。あまりにも悲痛な経験を経て、それでもなお心折れず、仲間たちを引っ張ってきた。

 本当に、本当に強い人たちだ。その時代を生きた面々は、艤装や練度で表せないギリギリで発揮される底力では、最高峰の実力があるのだろう。

 

 ふたりを尊敬しながらそんなことを考えつつ、気になったことを聞いていくことにした。

 

 

「……おふたりの経験した出来事と、お気持ちは、よくわかりました。

そのうえでいくつか質問させていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

「もちろんです」

 

「まずは……なぜそのお話から、ウチの研修へとつながるのですか?

ウチには戦艦がいませんし(表向き)、金剛さんや榛名さんに何か教えられるほどの高練度の部下も、ほぼいないはずです。

ウチでの研修は、おふたりの実力向上には向いていない気がしますが……」

 

「それは……提督が元帥と相談して決められたことだそうなので、榛名には詳しくわかりません。

ただ、大佐の鎮守府でしか学べないことがあるということは聞いていますので、考えあってのことだとは思うのですが」

 

「うーん……元帥がそう言ったならそうなのかもなぁ。白蓮大将は置いとくとしても」

 

「あはは。提督は普段はすごくテキトーですけど、やる時はやる御方なので、もっと信頼してあげてください」

 

「まぁ、それはそうですね。

……とにかく、なんとかしておふたりの実力向上に貢献させていただきますので、よろしくお願いします」

 

「具体的な指示もなかったようですのに、そこまで真摯にとらえていただいて……感謝に堪えません」

 

「さっきの話を聞いて協力しないなんて、口が裂けても言えませんよ。

今まで何年も人類を護り続けてくれたことへの、恩返しだとでも思っていただければ」

 

「……本当に、ありがとうございます」

 

 

 ラバウル基地エリアでも最高クラスの練度を誇るふたり。その研修が自分の鎮守府で行われることになった理由は、どうやら明かされることはないようだ。

 話を聞くに、元帥が一枚噛んでいるようだが、あの思慮深い元帥がこちらに何も知らせなかったことを考えると、自己完結させることができる内容だということだろう。

 こちらへの信頼ということでプラスに受け止め、なんとか研修を成功させることを心に決める。

 

 そして、そうなってくると、もうひとつ聞いておかなければならないことがある。

 

 

「それでは、もうひとつお聞かせください。先ほどのお話に関係することです」

 

「はい。なんでしょうか?」

 

 

 

「榛名さん。貴女は深海棲艦のことを恨んでいますか?」

 

 

 

「……恨み、ですか」

 

「はい。どうでしょうか?」

 

「それは……恨んではいないと思います。

先ほどさせていただいたお話では、確かに榛名たちは深海棲艦の罠にかけられたと言いました。でもそれは、仕方のないことだと思っています」

 

「……金剛さんも、そうでしょうか?」

 

「はい。金剛お姉さまから、そういった心暗さは感じません。大丈夫のはずです」

 

「ハァ、よかった。それを聞いて安心しました」

 

 

 ホッと安堵のため息をつく鯉住君。それを見る榛名は不思議そうな顔をしている。

 

 

「ええと……深海棲艦を恨んでいると、何かマズいのでしょうか?

確かに良い結果にはならないという感覚はありますが、うまく言葉にできないです。

榛名たちのように姉妹艦が犠牲になった子もたくさんいますし、そういった感情を抱く子も少なからずいると思いますが……」

 

「かなりマズいですね。榛名さんも、そういった子が居たら、憎しみを解きほぐしてあげてください」

 

「理由を聞いてもいいでしょうか?」

 

「はい。そんなに難しい話じゃありません。

深海棲艦が人類と、それに与する艦娘に、並々ならぬ悪感情を抱いているのは知っていますよね?」

 

「もちろんです」

 

「深海棲艦に対して憎しみをもって戦うということは、憎しみを憎しみで塗りつぶすということに他なりません。人間で言えば、殴られた相手を殴り返すようなものです。

その連鎖は終わることなく続きますし、それを続ける限り、お互いはすごく近い存在だということになります。

『朱に交われば赤くなる』とか『人を呪わば穴二つ』というのは、そういうことです」

 

「そう、ですね」

 

「憎しみに捕らわれたまま強くなっても、それは本当に強いということではないと思います。

ただ強いだけでは、姫級最上位個体なんかには手も足も出ないことでしょう」

 

「大佐は、普段からそのようなことを考えているのですね」

 

「変な奴だというのは自覚してます。

ともかく、おふたりにそういった気持ちがないのなら、大丈夫です。

……ちなみに、例の海域を解放して、何をやりたいのですか?」

 

「……比叡お姉さまと霧島のために、あの場所で、花を手向けようと思っています。

約束したんです。ふたりと別れる時に『絶対に戻ってくる』と」

 

「……そうでしたか」

 

「榛名も金剛お姉さまも、そうすることでやっと、気持ちの整理をつけることができるはずです」

 

「それは素晴らしいことですね。尚のこと、協力しないといけない気持ちになりました」

 

「金剛お姉さまのために、よろしくお願いいたします」

 

 

 深々と頭を下げる榛名。

 

 

「頭を上げてください。それと、金剛さんだけじゃなくて、榛名さんのためにも、ですよ」

 

「本当に……ありがとうございます」

 

「いいんですよ」

 

 

 瑞鶴や葛城とは違った、強くなるべき理由を持つふたり。

 自分が今、色々と戦闘以外のことを考えた運営をしていられるのは、彼女たちが土台を造り上げてくれたおかげなのは間違いない。

 

 恩返しの気持ちを第一に、ふたりの研修プランを組んでいこうと心に決める鯉住君であった。

 

 




 金剛改二(ラバウル第1・第1艦隊) 練度95(+指輪)

 榛名改二(ラバウル第1・第2艦隊) 練度83(+指輪)


 ふたりとも10年選手です。
 深海棲艦出現初期から活躍している数少ない艦でもあります。


 あと、せっかくアンケート機能があるので、使ってみようと思います。お気軽に投票してみてください。

次の話で、真面目な金剛型の昔話読みたいですか?

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