艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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ついにイベントが始まりましたね!
小規模イベントなので、非常にありがたいです。何がありがたいって、お札管理がとっても楽なところ。

今回は甲勲章取れるかな? ドロップ艦次第かな。
ひとまずはE1甲でチャレンジしてみます。


第133話

「あー……生き返ったー……文字通り……」

 

「ですね先輩……さっきまで半死半生でしたもんね……カラダがもう動かせません……」

 

「あの優しそうな大佐が、こんなにドレッドフル(凄まじい)なメニューを組んでくるとは、思いもよらなかったデース……」

 

「はるなはだいじょうぶじゃないれす……」

 

 

 ここは艦娘寮(旅館)の大浴場。

 後付けされた入渠ドック(スーパー銭湯の仕切り付き泡風呂浴槽みたいな感じ)が横並びに4つ。そこに収まるのは研修生の瑞鶴、葛城、金剛、榛名である。

 

 元々大浴場にはドックがなかったのだが、研修生用にということで、妖精さんが張り切って増設したのだ。

 もちろん普通はそんなに簡単にドック増設なんてできないのだが、そんなこと言ったら他の施設どうなの? って話である。

 

 

 彼女たちは現在、地獄の研修で負った重傷を癒しているところ。

 そのまま放っといたら最悪の事態もあり得るので、当然バケツ(高速修復材)使用中。

 つい先ほど、自身の教導艦たちの手でドックに突っ込まれたのだ。

 

 ボロ切れと化した制服艤装を纏って気絶している姿には尊厳のかけらもなく、ほぼ全裸だというのに色気よりも憐みの方が強く出てしまうビジュアルだったのだが……そんなの見慣れてる教導艦たちからしたら、その惨状はいつものことだった。

 彼女たちを運び込んだ教導艦の面々は、米俵を担ぐようにして彼女たちを脱衣室まで運び込み、邪魔なボロ切れをひん剥き、ドックにポイっと放り投げていた。例えるなら荷物搬入といった感じだった。倉庫搬入作業の方がまだ優しい扱いだった。

 

 自分たちが研修中に同じようにやられていたことだったりするので、それが当然と思い込んでいるのだ。とんでもない当然もあったものである。

 

 

「バケツのおかげで傷は治ったけど、全然動けそうにないわ……」

 

「無理です……カラダが動くからって、あんな地獄から生還してすぐに何かしようだなんて、まるで思えません……」

 

「毎日大破するのが基本って、どうかしてるヨー……」

 

「はるなはだいじょうぶじゃないれす……」

 

 

 バケツを使えば瞬く間に傷が治り、五体満足な状態に戻るのだが、あくまでそれは肉体面の話。精神的な疲れまで取れるわけではない。

 心の疲れの方は、お風呂に浸かって一息つくことでとる必要がある。

 

 ということで、限界の一歩先くらいまで追い詰められた4人は、お風呂でガールズトークとしゃれこんでいるところだ。

 まぁガールズトークと言っても、死にかけの帰還兵のようなメンタルであるし、毎日ドックで顔を合わせていることもあるので、話に花が咲くというよりは生きていることを確認しあうといった意味合いの方が強いのだが。

 

 

「確かに私さ、二つ名個体クラスを倒せるようになりたいって言ったよ?

言ったけどさ、ホントにそういう相手と毎日タイマン張らさせられるとは思わないじゃん……

あの魚好き、頭おかしい性能してるのに、毎日毎日私が大破してるのに攻撃してきて……」

 

「そもそもなんで演習弾使わないんでしょうね……おかげで毎日ドック入りですよ……

だいたいあの天城姉なんなんですか……? なんで航空機を3ケタも発艦させられるんですか……? 雲龍型ってそういうのじゃないでしょ……」

 

「演習弾を使わないのは、緊張感を持たせるためなんデショウ……でもここまでくると、訓練というか拷問の域デスネ……」

 

「はるなはだいじょうぶじゃないれす……」

 

 

 愚痴というか心の叫びが止まらない面々。

 うつろな目をしながら無表情で天井を眺めている姿は、さながらゾンビとか廃人といった様相である。

 

 

「わかるよ……? 私達って、自分で言うのもなんだけど、かなり練度高いからさ……実戦とかシチュエーション対応とかの方が効果出るってのはわかるよ……?

でもさ、おかしいじゃん……? 毎日大破させられながら『大破してからが本番だぞ!! 沈まない程度に追い詰めてやろう!!』なんて言いながら追い回されるのって、おかしいじゃん……?」

 

「もっと天城姉って優しいはずなんですよ……いや、ここの天城姉も言葉は優しいんだけど、そういうことじゃなくて……

今日も『早く提督の膝枕で寝たいので、今から手数を倍にしますね……葛城、早めに気絶させてあげますね……』なんて意味不明なこと言って、空が埋まるほどの艦載機を発艦してきて……

私が知ってる天城姉は、どこにいっちゃったの……?」

 

「ワタシと榛名も、今日は地獄を見マシタ……

妖精さん特注のバルジ(超重い)を3つも付けられて、満足に動けない中で四方八方からの砲雷撃……いくら応急修理要員を積んでるからと言ったって、あんまりデース……

雷撃処分される標的艦の気持ちが痛いほどわかったヨー……大破してもお構いなしだったから、実際沈みかけたほど痛かったヨー……」

 

「まさか研修で、応急修理要員を装備することになるとは思わなかったよね……」

 

「応急修理要員の妖精さんが4体以上いるとか、大本営より豪華ですよね……

いきなり大佐が『この子たちがいるから、万が一の時も安心だよ』って妖精さん連れてきた時は、ヘンな笑いが出ちゃいました……

おかげで研修が二回りくらいハードになったのは、全然笑えませんけど……本当に笑えませんけど……」

 

「転化体のふたりは『これで手加減しなくて済む』って、喜んでましたネ……」

 

「私あれなのかなぁ……こんなにひどい目に合うなんて、前世でなんか悪いことしたんだっけかなぁ……?

……あ、私の前世って艦だったわ……結構酷いことしてたわ……」

 

「戦争だったからいっぱい人命を奪っちゃいましたもんね……時代が時代だったんだし、仕方ないですよ先輩……」

 

「いやそんな別に罪悪感感じてるわけじゃないけどね……そもそもお互い様だったし……」

 

「これが業(カルマ)……償いからは逃れられないんデショウカ……?」

 

「いのちだいじに……今世こそ命を大事にしていきましょうね、先輩……」

 

「そだね葛城……生きてるって素晴らしいよね……生命バンザイ……」

 

「はるなはだいじょうぶじゃないれす……」

 

 

 徹底的に追い詰められすぎたせいで、中身があるようでないような、とっ散らかった会話というかなんというかの応酬を繰り広げる4人。

 今から約5時間も経過すればまた明日が始まり、別の地獄に身を投じなければならない故の現実逃避である。

 

 ……だが彼女たちはまだ知らなかった。

 この鎮守府の常識がフライアウェイしちゃった面々は、これでもまだ緩いやり方だと思っているということを。毎日大破する『だけ』で済んでいると考えているということを。睡眠時間が4時間『も』あると考えていることを。

 

 ……のちのち合同訓練と称した、研修組2名づつVS転化体2名+鎮守府メンバー4名という地獄オブ地獄が待ち構えていることを。

 

 

「あぁ……お風呂を出て4時間も寝たら、また明日が始まるわ……」

 

「先輩……明日のことは言わないでください……今を生きさせてください……」

 

「ソウネ、瑞鶴……身の危険がないこの天国で、地獄の話をしちゃノーなんだからネ……」

 

「はるなはだいじょうぶじゃないれす……」

 

 

 

「「「 はぁーーーーーー…… 」」」

 

 

 

・・・

 

 

 それはそれとして……

 

 

・・・

 

 

 

「みんな、よく集まってくれたね」

 

「鯉住くんがわざわざ名指しで私たち集めるなんて、珍しいね」

 

「いったい何する気なんですか? 師匠」

 

「みんなで集まるのなんて久しぶり! 楽しいかも!」

 

 

(てーとくー! きょうはなんのようじー?)

 

(おまつりみたいでたのしいです! はい!)

 

(なんでもいってください! わたしはだいじょうぶです!)

 

(ようせいずいいちのずのう、おみせいたします!)

 

 

 ここは英国妖精シスターズがハッスルして造り上げた新工廠(大正モダンなレンガ造り)。

 鯉住君の呼びかけにより、本日お仕事の面々だけでなく非番だったメンテ班も全員集合した。英国妖精シスターズも集合し、鯉住艤装メンテ班勢ぞろいといった様相である。

 

 まだ彼の口からは今回招集された理由が説明されていない。だというのに、文句のひとつもなく(というかむしろ嬉しそうに)、非番を潰してまでも招集に応じてくれたというところに、彼への絶大な信頼が垣間見える。

 

 そんな状況なのだが、今回メンテ班が招集されるに至った理由が鯉住君の口から語られる。

 

 

「非番の子もいるってのに、わざわざ付き合ってくれてありがとう。

今日みんなを集めた理由はふたつあるんだ」

 

「ふたつ? なんか緊急の用事ってあったっけ?」

 

「いや、別にそういうワケじゃないんだけどな。やっとかなきゃいけないことと、やってみたいことがあって」

 

「もったいぶりますね。やってみたいことって、何か変わったことでもやるんですか?」

 

「まあ思い付きだから、できるかわからないんだけどね。

……とりあえずそっちの用事は保留。まずはやっとかなきゃいけないことからやろう」

 

「それでなにするのー? 提督ー」

 

「今いるこの新工廠ってさ、結局使ってないじゃない?

だからもしもの時のために、工廠の機能調査というか、工廠見学しておかないとと思って」

 

 

 鯉住君が佐世保経由大本営帰りしてきたときに、英国妖精シスターズによってこの新工廠は造られた。

 しかしなんだかんだ言って、広すぎる空間であることと、今までの工廠(町工場規模の倉庫)に慣れ親しみ過ぎていることから、誰もこっちの工廠を利用していないのだ。

 

 確かに今の艦隊の規模なら、今までの工廠の規模で何の問題もないため、わざわざ慣れない新しい設備を使うことはない。

 とはいえ、大規模作戦の際に拠点基地となる可能性も考えると、それではいけない。

 他所の鎮守府からメンテ班を招集して、修羅場ともいえる仕事量のメンテをこなす必要が出てくるため、その時には必ずこの新工廠が必要になることだろう。

 

 有事の際にここの鎮守府の面々が新工廠に慣れていないでは、本末転倒。

 というわけで、徐々にこちらの工廠にも慣れていこうという考えなのだ。

 

 

「あー、なるほどね。確かに鯉住くんの方針だと、大規模作戦がこの辺で起こったら、かなりの人数のメンテ技師がウチに来ることになるよねー。

後方支援する時にはこのくらいの規模の工廠ならフル稼働させることになるから、リーダー格が『慣れてません』じゃ話にならないか」

 

「そういうこと。特に俺とお前(明石)はリーダーとして動くだろうからな。いざって時にスムーズに指示出せるくらいにはなってないと」

 

「だよねー」

 

「むむっ! 師匠! 私だって主戦力ですからね!?」

 

「明石だけ特別扱いするのは、いくら提督でも許さないかも!!」

 

「ご、ゴメンゴメン。そういうつもりじゃないんだよ。みんな実力高いのは知ってるから。あくまで特殊技能持ちってことで、明石の名前出しただけだから」

 

「「 本当かなぁ……? 」」

 

「そんな疑わないでよ……」

 

「ふふっ。まま、時間も無くなっちゃうし、ササっと施設を見に行きましょう!

私としては、もうひとつの用事の方が気になりますので!!」

 

「むー……それは私もそうですけど……」

 

「そ、そうそう、明石の言うとおりだよ! ちゃちゃっと見学しちゃおう!」

 

「なんか焦ってる……煙に巻こうとしてるようにしか見えないかも……」

 

 

(てーとくはみんなからあいされてますねー)

 

(すてきなおかたです! はい!)

 

(わたしのこともあいしてくれても……だいじょうぶです!)

 

(けいさんいじょうのおかたですよね!)

 

 

 

・・・

 

 

 ……職場見学後

 

 

・・・

 

 

 

「いやー、思ったよりもずっと機能的だったねぇ」

 

「実際に動くにあたって、動線がうまいこと重ならないつくりになってたよね」

 

「私はいまいちピンとこなかったけど、そんなにすごかったんですか?」

 

「そうだね。このつくりなら、30人とかが一斉に作業しても問題なく動けるんじゃないかな」

 

「ふーん。秋津洲もよくわかんないかも。そんなに大人数で作業したことないから」

 

「ああ、そういえばふたりともそういう経験はないのか。まぁ実際にそういう機会が来れば、自然とわかるよ。

ホントによくやってくれたね、キミたち。頭を撫でてあげよう」

 

 

 なでなで……

 

 

「「「 あ゛ぁ゛^~~~…… 」」」

 

 

 

 英国妖精シスターズの頭を撫でまわしながら労っていると、明石が話しかけてきた。

 

 

「その子たちを労うのもいいけど、そろそろもうひとつの用事を教えてくれない?

見学してる最中から、気になってたんだよね~」

 

「ん? ああ、そっちの話な。言っても実現できるかわかんない話だぞ?」

 

「だからこそいいんじゃない。キミのアイデアって、かなーりぶっ飛んでることがあるから、聞くだけでも面白いんだよね~」

 

「そんなことないでしょ」

 

「そんなことあるかも! 大艇ちゃんをすっごくしてくれたの、秋津洲は感謝してるかも!」

 

「それはまぁ、明石の入れ知恵というか……」

 

「私のせいにするとか、いけないんだ~。キミの発案なんだから、人のせいにしちゃだめだよ?」

 

「まぁ、それはそうだけど……」

 

「秋津洲はとっても嬉しいかも!」

 

「そう言ってもらえると、こっちも嬉しいよ」

 

「皆さん、私に関係ない話で盛り上がらないでください! 話についていけないじゃないですか!

……それで師匠、もうひとつの用事ってどんなことなんですか?」

 

「ああ、それはね……」

 

「それは……?」

 

 

 

 

 

「出撃中に艦艇修理ができる艤装、作れないかなって」

 

 

「「「 何言ってるの? 正気? 」」」

 

 

 

 

 

「いや……みんなちょっとひどくない? 俺はいつも正気だよ?」

 

「一回暴走したから、正気って言われてもなんにも説得力無いよね。

それより戦闘航行中に艦艇修理とか、小学生でも思いつくような発想じゃない」

 

「そりゃそうなんだけど。

もちろんそれがほぼ不可能だったってことまでわかって言ってるから」

 

「というと、なにかアイデアがあるんですか?

普通に考えたら、敵地のど真ん中でのんびり艤装修復なんてしてる暇ないですよ?」

 

「だいぶ無理があるかも」

 

「かなり限定的なシチュエーションになっちゃうけど、できなくはないと思ってさ。

ま、とりあえず聞いてみてよ」

 

 

 

・・・

 

 

説明中

 

 

・・・

 

 

 

「……というわけ」

 

「うーん……それだけ限られた状況なら、実現できなくもない、かな……?」

 

「また師匠はすごいこと考えつきますよねぇ」

 

「それだったら、秋津洲でも手伝えることがあるかも」

 

 

(さすがはてーとくねー! とってもおもしろいよー!)

 

(わくわくしてきますっ! はいっ!)

 

(がんばります! だいじょうぶです!)

 

(わたしのけいさんのうりょくを、ぞんぶんにかつようしますよー!)

 

 

 説明を聞いて、一転乗り気になってきた面々。その様子を見て、発案者の鯉住君はホッと安堵のため息を漏らす。

 

 

 

 彼の考えてることは、以下のような感じ。

 

 

 出撃中、交戦の合間を縫って艤装を修復できれば、継戦能力が圧倒的に向上するのでは?

 

 ……という誰でも考えそうな頭悪そうな発想を基に、鯉住君は洋上応急修理施設の草案を作ってみた。

 

 

 そもそもそんな誰でも考えそうなアイデアが実現されてこなかったのは、相応の理由(問題点)があるから。メンテ班のみんなが呆れてたのもそのせい。

 

 その問題は何かというと、具体的には……

 

 

・その艤装が開発できたとして、扱える艦娘は工作艦の明石しかいない。ということで、非戦闘艦の工作艦を艦隊に組み込むくらいなら、6隻すべて主力艦で構成した方がいい。

 

・艤装の修理には相当な集中力と時間が要る。出撃中にそんな状況を用意できるか。

 

・修理にかかる資材をどうするのか。艦隊メンバーの保持している資材を使用してしまったのでは、航行できる距離が短くなり、継戦能力は逆に下がってしまう。

 

 

 といったところ。

 

 つまりは、そんなもの造って明石にのっけて艦隊枠圧迫しながら出撃するくらいなら、普通に主力艦隊で何度も出撃して試行回数稼いだ方が、ずっとずっと効率的ではないだろうか? ということなのだ。

 

 それは鯉住君も当然わかっていることなので、こんな解決策を考えた。

 

 

・非戦闘艦筆頭の明石しか装備できないじゃん

→ウチの超優秀な夕張ならいけるのでは? 夕張なら最低限の戦闘はできるし。

 

・洋上で艤装メンテとか無理

→それはもう仕方ないので陸を探す。離島や孤島がある海域に限って運用しよう。

 

・出撃中にメンテ時間の確保できるの?

→そもそも艤装の応急修理が必要な場面は、長時間かかる遠方への出撃のみ(近場なら出撃回数増やした方がいい)。だからどこかしらで長時間の休憩は入るはず。

 

・資材の工面はどうするの?

→せっかく補給艦が赴任してくる(無理やり)んだし、彼女たちに資材運搬を任せてみてはどうか。洋上補給もできるので一石二鳥。

 

・そもそも補給艦って戦闘できるの? 足手まといじゃない?

→速吸なら艦攻積めるらしいから、彼女に特訓してもらえばなんとか……

 

・非戦闘要員が2枠(工作艦or夕張、補給艦)入ってしまう以上のメリットはある?

→一度の出撃でかなり遠方まで出撃できるようになるはず。小破程度までならパーツ換装無しで修理できるはずなので、無理しなければ持続航行距離は大幅に伸びる予定。

 

・それでも2枠が潰れてしまうのは痛すぎるのでは?

→正直その通りなので、負担を薄めるために連合艦隊を組む時限定の運用にする。

 

 

 半分くらい解決できてない気もするが、一応疑問に対する答えは出すことができた。

 

 

 ごちゃごちゃしてるのでまとめると……

 

 

 遠方への出撃で、連合艦隊を組むような大きな戦いのとき限定で、補給艦と工作艦(もしくは夕張)同伴の上でのみ、洋上応急修理を可能にする艤装を造りたい。

 性能としては、艤装パーツの持ち込みは流石にかさばりすぎるので、艤装パーツ交換の必要がない小破までの修復、辺りを目指す。

 

 

 といったところだ。

 

 

 正直有用性はすっごく微妙なので、わざわざ開発するべきかと聞かれれば、優先順位はものすごく低いと言わざるを得ない。

 もっと言えば、そんな特殊過ぎる艤装の開発なんて誰もやったことがないので、どう転ぶかわからない。手間に対してのリターンが低すぎて話にならないレベルである。

 

 そんな具合なので、こんなこと真面目に話し合っている時点で随分とクレイジーなのだが……そこは艦娘の艤装に対する技術について、周回差をつける勢いで世界トップなラバウル第10基地。

 

 暇を持て余した変態艤装ジャンキーが集まった此処だからこそ、本気でそんなもの開発しようと考えたというものである。

 

 

 

「実際有効に活用できる場面なんてそんなにない気がするけど、選択肢は多いに越したことがないよね。やっちゃう? やってみちゃう?」

 

「明石お前楽しそうだなぁ……」

 

「そりゃそうでしょ! 新しい艤装の開発とか、工作艦の私が喜ばないわけないじゃん!」

 

「それならいいんだけどな」

 

「私も兵装実験軽巡としてグッとくるものがありますね!」

 

「秋津洲も協力するかも!」

 

 

(だれもつくったことないぎそう……うでがなるねー!)

 

(おてつだい、ぜんりょくでまいります!)

 

(わたしもだいじょうぶです!)

 

(もりあがってきましたね!)

 

 

「正直どういう反応になるか心配だったけど、みんな乗り気なようでよかったよ。

ま、別に開発がうまくいかなくても、必要になるかどうかは分からないからね。あまり気負いせずに行こう。

それと実は秋津洲には、特別にお願いしたいことがあってね」

 

「特別!? なになに提督! 気になるかも!!」

 

「秋津洲がどんな艦だったか知るために、昔の……艦だった時代のころの資料を色々読んだことがあってね。

そこに書かれてた内容だと、秋津洲って『秋津洲流・戦闘航海術』ってのがあったんだけど……」

 

「提督、秋津洲のこと調べてくれてたの!? 嬉しいかも!」

 

「そりゃあ秋津洲は大事な部下だからね。それで、その技術って今も使えるのかな?」

 

「当然! 爆撃をかわしたり潜水艦から身を護ったりならお手のものかも!」

 

「おぉ、思った以上に自信満々……

そういうことならさ、もし艤装開発に成功したらだけど、夕張と赴任してくる給糧艦にその技術を伝授してあげてくれない?

元々戦闘艦じゃない面々だから、回避第一で動いてもらいたくて」

 

「お安い御用よ! 夕張、厳しくいくから覚悟しとくかも!」

 

「わかりました、師匠。秋津洲もよろしくね。なんだか秋津洲に教えられるって、不思議な感じがするわ」

 

「ふっふ~ん! いつまでも妹弟子だと思ったら、大間違いかも!」

 

「別に急がなくてもいいから、空いた時間に訓練してほしい。

そもそも洋上修理できる艤装が開発できるかが最初の山なんだけどね」

 

「そこはこの明石にお任せ! 勤務中以外のプライベートでも艤装開発してきた腕前、存分にお披露目しちゃおうかな!」

 

「おう、頼りにしてるぞ」

 

 

(わたしたちをわすれちゃ、のーなんだからねー!)

 

(ひええー! みなさんやるきまんまんです!)

 

(がんばります! だいじょうぶです!)

 

(けいさんいじょうのはたらきをします!)

 

 

「キミたちもありがとな。

……それじゃ、今日はまだ時間あるし、やるだけやっちゃおうか!」

 

「「「 おーっ!! 」」」

 

 

 そのあとはみんなでアイデアを出し合い、艤装開発について夜まで話し合った。

 当然ながら即日完成とはいかなかったのだが、それでも着実に実現可能なアイデアが出てきたので、艤装メンテ班の手の空いた者が隙間時間を見繕って開発を進めることとなった。

 

 そんなこんなでちびちびと試作品を造っては修正案を出し、ということを続けていったのだが……

 なんとなんと、1週間ほどの短期間で、本当に洋上修理が可能な艤装を開発することに成功した。

 

 完全新規の艤装をたったの1週間で開発するとか、絶対に他所の工廠では真似できないことである。他で同様のことをしようとしたら、少なくとも2か月はかかることだろう。

 ラバウル第10基地の艤装メンテ班は、存在自体がオーパーツと言っても過言ではない。

 

 ということで艤装も完成したので、現在はメンテ班全員で新工廠に集まり、お披露目会兼祝賀会としゃれこんでいるところだ。

 

 

「いやぁ、みんな頑張ったね! まさか無事に何事もなく完成、しかもこんなに早く完成するとは思わなかった!」

 

「やー、頑張ったよねー! 久しぶりにいい汗かいちゃった!」

 

 

(やりましたねー!)

 

(おみごとです! ひええー!)

 

(がんばりました! だいじょうぶです!)

 

(けいさんいじょうですね! しれー!)

 

 

「だいぶ大型になっちゃいましたけど……兵装実験軽巡の私なら、問題ないレベルです!」

 

「すごくおっきいね! なんか棺桶背負ってる感じかも」

 

「秋津洲ちょっと……棺桶っていう表現は縁起悪いからやめてくれない? 担いでる私が不吉な存在みたいじゃない。

どっちかっていうと千歳さんや千代田さんのカラクリ艤装に近いし、そっちの認識に変えて欲しいわ」

 

 

 出来上がった洋上修理施設はかなりの大きさで、夕張が基本艤装と一緒に背負うとだいぶ威圧感が出てくるほどのものだった。

 中にメンテに必要な機材が収まっていることもあり、重量もそこそこである。重心バランスもそこまでよくないので、そこは改善課題のひとつだろう。

 

 

「それもそうかも。でも夕張、その大きさでまともに動けるの?」

 

「うーん……普通に動く分には問題ないけど、戦闘行動になるとどうしても影響出ちゃうかな」

 

「それはしょうがないよね。そんな大きさなんだし。

そこはまぁ、ホラ、秋津洲に回避行動を教えてもらってくれ。

秋津洲、この艤装背負ったままでも『秋津洲流・戦闘航海術』は使えそうかな?」

 

「大丈夫かも! 重心バランスさえうまく取れれば使える航海術だから、艤装の重さは関係ないかも!」

 

「ホントに優秀だなぁ……こう言っちゃなんだけど、それだけの回避方法があるなら、戦闘が苦手っていうのも違うんじゃない?

普通に戦闘してもイイ線行くと思うんだけど」

 

「えーと、それはちょっと厳しいかも。あくまで回避特化の技術だから、攻撃とか防御と併用できるものじゃないかも」

 

「成程。でも非戦闘艦からしたら、攻撃を受けないことが何よりも重要だから、夕張や補給艦とは噛み合ってるし……ウチの鎮守府の非戦闘艦勢の必須取得技術にしようかな?」

 

「いいんじゃない? 被弾率が減れば戦闘で優位に立てるし。

ま、私は戦場に出ないから、必要ないけどね~」

 

「明石お前なぁ……ま、お前は戦闘には出さないし、それでもいいか」

 

「あ、それって『私のことをいつまでも手元に置いておきたい』っていう独占欲の表れかな? 照れちゃうなっ!」

 

「バカ言え。適材適所ってだけだよ」

 

「もっとノってくれたっていいのにー。ケチー」

 

「お前なぁ……」

 

「ふふん。別にいいけどね。今度予定してるキミとの個別面談で、じっくりとお話しちゃうから」

 

「勘弁してくれよ、マジで……」

 

 

 なんか明石と鯉住君がイチャイチャしだしたので、夕張を筆頭に他のメンバーの機嫌が悪くなり始めた。

 

 

「……師匠? 明石さんと仲良くするのはその辺で……」

 

「明石ばっかりお話してズルいかも!」

 

「ご、ごめんごめん。話が逸れちゃったね」

 

「そのまま逸れ続けて、私との濃密なコミュニケーションに移ってもよかったのにな~」

 

「明石さんとばかりお話してないでください! 私とも面談して!」

 

「夕張とは話がついてるから、他の子を優先させてほしいなって……」

 

「またそうやって私のこと後回しにする!」

 

「いやいやいや、個別面談に関しては夕張がトップバッターで……」

 

「そうかも! 夕張は提督のこと独り占めし過ぎかも!」

 

「そんなことないの! 全然足りないの!」

 

「いやちょっと、今日は新装備のお披露目だから、その話はまた今度……」

 

 

(やれやれ、ていとくはだいにんきですねー!)

 

(さすがはしれいです! ひええー!)

 

(わたしにももっとかまっていただいても、だいじょうぶです!)

 

(あたまをなでなでしていただくのも、ごいっこうください!)

 

 

「キミらもぶれないねホントに……」

 

「アハハ! 結局こうなるんだね! いよっ、女たらし!」

 

「明石テメェ! お前が火付け役だろが!」

 

 

 新艤装を開発するとかいう結構な偉業を成し遂げたにもかかわらず、結局はそのことを特に気にもせず、いつも通りになってしまう一同なのであった。

 

 




 この話(出撃中の艤装修理)は前々から考えてたのですが、まさかの公式とまるかぶり(緊急泊地修理)。
 公式の方ではなかなか使い勝手が難しい気もする追加要素ですよね。
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