艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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ジャービス以来、ついに新しい艦娘と邂逅しましたよ!



神風ちゃんです!

1-4です!




……アクイラさんと岸波ちゃんは……まぁ、なんていうか、そうねぇ……(目逸らし




第136話

 衝撃的な転化体(元北方水姫、現ガングート)との初顔合わせも終え、合同会議の初っ端から疲労困憊の3名(鯉住君、叢雲、古鷹)。

 

 とはいえ呆けてはいられない。

 なんせ目の前では、中型タクシーからぞろぞろと会議参加者が降りてきているからだ。

 

 ……というか……

 

 

「……あの、三鷹さん?」

 

「ん? どうしたのかな?」

 

「今タクシーから降りてきてるのって、今回の参加者ですよね?」

 

「うん。そうだよ」

 

「……多くありません?」

 

「そう?」

 

「そうです……」

 

 

 三鷹少佐と鯉住君が話している間にも、絶え間なく顔を知る艦娘たちが降車してきている。

 

 鯉住君の見通しでは、三鷹少佐含め3、4人だろうと予想していたのだが、そんなことはなかったようだ。

 パッと見たところだと、鯉住君が研修中に顔合わせした艦娘が半数以上揃っている。

 

 

「せっかくのバカンスだもの。できるだけ大勢で楽しみたいでしょ?

そういうわけで用事が無かったり遠出できる子は全員来たわ。迷惑だった?」

 

「いやー、その……迷惑というわけではありませんが……

部屋と食事どうしようかなぁ……」

 

「部下たちの部屋は相部屋でいいから、そんなに気を遣ってくれなくてもいいよ。4人一緒とかでもいいって話してて決まったから。

あ、それと食料についてだけど、あとからトラックで運んでくるから安心してね」

 

「あぁ、それなら安心……ん……? ト、トラック……?」

 

「そう。トラック。僕らの泊地の方じゃなくて、車の方ね。

何人で来たらいいかって確認無かったから大勢で来ちゃったけど、食料くらいは自前で何とかしようってことになってさ。予定必要量の3倍くらい用意したよ」

 

「さ、さんばい……!?」

 

「同志は何事も事前準備こそが肝要だと常に言っていてな。潤沢でやり過ぎなくらいの準備を心がけているのだ」

 

「いや、ガングートさん、それにしたって3倍って……叢雲、そんなに大量の食料、必要ないよな……?」

 

「そ、そうね。確かに今の食料備蓄だと足りないけど、そんなには必要ないわ……」

 

「まぁまぁ。そんなこと言わずに。

どうせ他の皆さんも大勢で来るだろうし、結局はそれくらい必要になるはずだよ。

あ、もちろん費用の方はボクの方で負担するから、そこは気にしないで」

 

「あー、えー……ま、いいか。ありがたくご厚意に甘えさせていただきます」

 

「いやいや、ご厚意に甘えてるのはボク達の方だよ。いつもありがとうねー」

 

「いえいえ、そんな……」

 

 

 なんだか色々想定外な事態が続くが、悲しいことに鯉住君にとってはこの程度のアクシデントなど慣れっこである。

 3,4人だと思っていたのがフタを開けたら8人だったとしても、そこまで驚いていいことではないのだ。

 

 そういうわけで精神安定のために余計なことを考えず、これからの方針について話を進めることとした。

 

 

「ところで、こんなに大勢で来てしまって大丈夫なんですか?

担当海域の哨戒を怠ってると、深海棲艦に勢力圏取り戻されちゃいますよね?」

 

「ああ、それは大丈夫。残ってる子たちは非戦闘要員ばっかりだから哨戒はできないけど、ガンちゃんの部下が代わりに哨戒してくれてるから」

 

「え、それって……」

 

「うむ! 私の部下の駆逐や軽巡に縄張りを更新させたからな!

私よりも実力が上の存在が攻めてくるでもしない限り、全く問題はない海となった!」

 

「やっぱり深海棲艦に任せてきたんすね……なんかもう、なんなんでしょうね……?

鎮守府の存在意義が揺らぐような感じになっちゃってるんですね……」

 

「あはは、使えるものは使わないとね。

それに万能ってわけでもなくて、いくらガンちゃんの支配下にある深海棲艦とはいえ、人間が近寄り過ぎると本能に負けて襲いだしちゃうみたいだし」

 

「なんか物騒っすね……」

 

「仕方あるまい。元より深海棲艦とは本能が先に立つ存在だ。私のように自我を持つ者の方が珍しい」

 

「まぁ、それはそうですよね……はぁ……」

 

 

 あまりの自由っぷりにため息をついてしまう鯉住君。

 色んな人から「お前んとこおかしい」なんてよく言われる彼だが、周りの関係者がみんなこんな感じなので、鯉住君が「自分はマトモ」なんて思いこんじゃうのも仕方ないことなのかもしれない。

 

 ……そんな感じで話し込んでいたところ……

 

 

 

「「「 …… 」」」

 

 

 

 気が付くと鯉住君の周りには、三鷹少佐の部下が勢ぞろいしていた。全員タクシーから降車し終わったらしい。

 そして何故か、一定の艦娘たちは無言で彼のことをガン見している。

 

 そのことに気が付いた鯉住君、驚きの声を上げる。

 

 

「……うおっ、ビックリした!」

 

 

「「「 …… 」」」

 

 

「え、ええと……お久しぶりです、皆さん。

……ていうかなんで何も言わないんですか……? 怖いじゃないですか……」

 

「ああ、それはね、龍太君。

みんなキミに会いたがってたから、一斉に話をしに行っちゃうと場が収まらなくなると思ってさ。

ボクの用事(ガングート転化からの研修依頼の件)が済むまでは、キミに話しかけないように言ってあるんだよね。

まだボクがゴーサイン出してないから、みんな黙ったままなんだよ」

 

「いやもうそれ意味なくないですか!?

気遣いは嬉しいですけど、すでにこんなに接近されてガン見されてるんですよ!?」

 

 

「……」

 

 

 

 ギュッ

 

 

 

「ホラ、山風ちゃんなんていつも通りくっついてきちゃったし!

無言で囲まれるの怖すぎるんで、わちゃわちゃしちゃってもいいからゴーサイン出しちゃってください!」

 

「うーん、個人的にはもう少しゆっくり話していたかったんだけどね。

仕方ないか、みんな楽しみにしてたし。

……あ、その前に。むっちゃんは叢雲ちゃん、古鷹ちゃんとこれからの動きについて話しておいて」

 

「あら、私も龍太君とお話ししたいのに」

 

「あはは、そこは他のみんなに譲ってあげてよ」

 

「んもう、仕方ないわねぇ。

それじゃ叢雲さんに古鷹さん、この前お話し出来なかったのも含めて、しっかり打合せしましょ」

 

「「 は、はい…… 」」

 

 

「よし、それじゃみんな、もうしなきゃいけない話は済んだから、龍太君と自由に話をしてもいいよ! ただし迷惑にならない程度にね!」

 

 

「「「 ハーイ! 」」」

 

 

 

・・・

 

 

 

 三鷹少佐からの許可が出るや否や、ニコニコしながらトラック第5泊地のゲストたちが話しかけてきた。

 

 今回遊び……もとい提督の護衛でやってきたのは合計7人。

 筆頭秘書艦の陸奥に、先ほど紹介されたガングート。そして正規空母の大鳳に、航空巡洋艦の最上と三隈。そしてビジネスパートナーでもあった山城と、鯉住君にやたら懐いている山風である。

 

 トラック第5泊地のメンバーの半数はこちらに来たことになる。

 その中でも一番に話しかけてきたのは、ニコニコと爽やかな笑顔をしたふたり。最上と三隈である。

 

 

「やあやあキミィ、久しぶりだね! ボクと会いたかったよね?」

 

「まあ、モガミン、レディがそんなにガツガツ行くものじゃありませんことよ。

お元気そうで何よりですわ、龍太さん」

 

「お久しぶりです、最上さんに三隈さん。研修の時は色々教えていただき、お世話になりました。

最上さんは人にぶつかっちゃう謎の現象、少しは解明できました?」

 

「いやー、全然なんともだね。

原因がわからないのに真相解明なんて、なかなか難しいものさ」

 

「それもそうか」

 

「あはは、今は全然不自由してないから、別に気にしてないよ。

提督が『鎮守府内は右側通行』のルールを徹底してくれたし、白テープで通行帯まで作ってくれたし。

おかげで人とすれ違う時でも、鎮守府内ならぶつからなくなったのさ」

 

「おー、流石は三鷹さんですね」

 

 

 実は三鷹少佐のところの最上には『人とすれ違う時にほぼ確実に衝突する』という謎の特性がある。

 そのせいで今までいろんな鎮守府をたらい回しにされてきたのだ(それの巻き添えで妹の三隈も一緒にたらい回しにされてきた)。

 

 

「出撃の時に密集した戦闘ができないのは不便だけど、それも陣形次第でいくらでもやりようはあるのさ。

ボクと三隈が本隊と離れて戦うようにしたおかげで、なんとか出撃できるようになったんだよ」

 

「おー、大進歩じゃないですか。

俺が居たころは、ほぼほぼ非戦闘要員で農家さんみたいな感じだったのに」

 

「あのままじゃボク、ただのカワイイ農業ガールだったからね。

艦娘としてはちょっとマズいかと思って頑張ったんだよ。だよねー、三隈」

 

「ふふっ、そうですの。

あとモガミンはいい加減わたくしのことをくまりんこと呼ぶべきですわ」

 

「三隈さんのセンスは相変わらずっすね」

 

 

 

・・・

 

 

 

 三鷹少佐のところでは、割かし明るいふたりとの会話に癒された鯉住君。とはいえまだまだメンバーは残っている。

 彼女たちの次に話しかけてきたのは、以前大本営に突撃してきた山城だった。

 

 

「……久しぶりね、龍太さん」

 

「ああ、久しぶりですね。……なんで辛気臭い顔してるんですか?」

 

「なんで久しぶりに会ったビジネスパートナーに開口一番そんなヒドイこと言えるの?

ホント前からそういう……そういうとこよホントに……」

 

「まあまあ。山城さん相手だと気苦労が少ないんで、そこはご容赦ください」

 

「ご容赦するわけないじゃないの……ハァ……

私がテンション低いのは、扶桑姉さまが今回来られなかったからよ……」

 

「……あ、ホントだ。扶桑さん居ませんね。いったいどうしたんですか?」

 

「提督がガングートの部下たちのお目付け役を募集したんだけど、それに志願したのよ……

姉さまは提督のことが大好きだから……ハァ……」

 

「あー……薄々気づいてたけど、扶桑さんって三鷹さん好きなんですね……」

 

「そうなのよ……なんで姉さまのような完全完璧非の打ち所がない大和撫子代表が、提督みたいな『伏ろわぬ神々』の人間体みたいな人に惚れなきゃならないのよ……

まるでヤマタノオロチの生け贄に捧げられるクシナダヒメのようだわ……

あぁ、姉さま……おいたわしや……」

 

「いやいやいや、三鷹さんはそんなヒドイ人じゃないですから……恐ろしい人ではありますけど。それに扶桑さんからアプローチかけてるみたいだし、生け贄とは違うでしょう。

三鷹さんは艦娘に対して偏見がない稀有な人だし、素直に扶桑さんの恋を応援してあげればいいのに……」

 

「イヤよ! 扶桑姉さまが誰かのものになるなんて、想像したくもないわ!!

それに、もしそうなったとしたら……提督が私のお義兄さんになっちゃうじゃない……!」

 

「イイじゃないですか別に……」

 

「いいワケないでしょ!?

もし龍太さんのお兄さんが提督だとしたら、平穏な生活が送れると思うの!?

私あの人怖いのよ! 尊敬してるけど怖いものは怖いのよ! 畏れてるのよ!!」

 

「気持ちはすごい分かります。

三鷹さんがお兄さんとか絶対に無理ですね。そもそも身内に三鷹さんが居るとか絶対に嫌です。怖すぎます。メンタルやられちゃいます」

 

「ほらみなさい! どーして自分が嫌だと思うことを平気で勧められるワケ!?

どーいう神経してるのよ貴方はっ!!」

 

「いやだって……山城さんだって三鷹さんのこと嫌いじゃないですよね?」

 

「……それはまぁ、そうよ。

提督には虐げられていた私を救ってもらった恩があるし、とてもいい待遇を受けられているし、いくら私が不幸体質でも見捨てられないし……返しきれない恩を感じているわ」

 

「でしょう? だったら別に三鷹さんがお義兄さんでもいいじゃないですか」

 

「それはそれ、これはこれでしょう……!?

それだったら提督の代わりに龍太さんが家族になった方が、ずっとずっとマシってものよ……!!」

 

「またそんな無茶なこと言って……あ、三鷹さん、どうしたんですか?」

 

「ハヒッ!? て、提督、こ、これは違うの!!

今まで話していたことは、全部冗談で……! って、居ない……?」

 

「すいません、ウソです。話が纏まらなさそうだったので」

 

「貴方って人はー!!」

 

 

 鯉住君と山城が中身のない会話を繰り広げていると、業を煮やしたと思われる大鳳が乱入してきた。

 

 

「ちょっと山城さん! いつまで話してるんですか!? 私が挨拶できないじゃないですか!」

 

「大鳳はちょっと黙ってなさい!!」

 

「いーえ! そうはいきません!!

龍太さんは昔みたいに研修生じゃなくて、大佐という立派な立場に出世されましたし、今回、私達を受け入れてくれるホストですし!

いくら顔を知ってる相手とはいえ、すぐに挨拶しないなんて失礼すぎます!」

 

「そんなのどうだっていいでしょう!?

このデリカシー無し男に常識ってものを叩きこんでやらないといけないじゃない!!」

 

「それは山城さんが変な絡み方するからでしょう!?

龍太さんは普通に接していれば、すごく紳士的な方です! とにかくもう代わってください!!」

 

「イヤよ!」

 

「代わってください!」

 

 

 目の前で口喧嘩が勃発し、どうしたものかと頬を掻く鯉住君。

 大鳳の主張は尤もだし、早く挨拶をすまさせてやりたいとは思うが、なんだかんだ山城を若干ながらからかっていた自覚はある。

 ということで、どちらかに肩入れするわけにもいかずに居ると……

 

 

「コラ、やめなさい! 大戦艦パンチ!」

 

 

 

 げ ん こ つ !!

 

 

 

「「 ふぎゃっ!! 」」

 

 

 秘書艦ズとのやり取りを終えた陸奥が、ふたりの頭に鉄拳を喰らわせた。

 ビッグセブンの鉄拳。ふたりとも頭を抱えてうずくまり、すっごい痛そうである。

 

 

「な、なにするのぉ……! 陸奥ぅ……!」

 

「山城アナタいい大人でしょう!? 変なことでゴネたらダメでしょ!」

 

「陸奥さぁん……なんで私までぇ……」

 

「大鳳も! 龍太君の目の前で喧嘩して迷惑かけたのは一緒でしょう!?

礼儀正しく挨拶したいなら、龍太君の心の広さに甘えないでシャンとしなさい!」

 

 

「「 うう…… 」」

 

 

 まるでオカンのような陸奥に怒られ、涙目になってしまっているふたり。

 鯉住君は自分も悪かった自覚があるので、ストップを入れることにした。

 

 

「む、陸奥さん、俺も山城さんをからかってしまって悪かったですから、その辺りで……」

 

「ハァ、全くアナタは甘いわよねぇ……

そもそもアナタは大佐なのよ? いくら良く知る仲と言っても、佐官の艦娘が振り回してもいい立場じゃないんだから」

 

「いえいえ、元々ただのメンテ技師なんで、畏まられると逆に落ち着かないっていうか……」

 

「私達にはそれでもいいけど、公の場に出たらその調子じゃダメよ。

アナタたちもそう思うでしょ?」

 

「そうね。然るべき場でしっかりした立ち居振る舞いができないようじゃ、提督どころか社会人失格よね」

 

「大らかなのは提督のいいところですが、時間と場所を考えてもらうのは必要ですね」

 

「叢雲に古鷹まで……」

 

 

 いつの間にか陸奥と打ち解けていたらしい秘書艦ズにまでたしなめられる鯉住君。

 彼が身代わりになったおかげで山城と大鳳への追及はなくなったのだが、やっぱり鯉住君は損する形になってしまった。かわいそうである。

 

 

 

・・・

 

 

 

 陸奥の登場で場がリセットされたこともあり、大鳳が改めて話しかけてきた。

 

 

「あの……先ほどはすみませんでした……グスッ……」

 

「あ、ああ、気にしないでください、大鳳さん。ほら、このハンカチで涙拭いてください」

 

「泣いてないです……うう……ズビーッ! ……ありがとうございます。お返しします……」

 

「鼻を……まぁ、いいか……

……しかしそんなに丁寧にしていただかなくてもいいんですよ?

いくら私がいつの間にやら大佐になってしまったと言っても、皆さんにとってはまだまだ私は研修生でしょうし」

 

「しかし、陸奥さんも言ったように、それではケジメが……」

 

「それは公式の場だけで十分ですよ。変に気を遣われると、こちらも気が気じゃないですし」

 

「そ、そうですか……それでは前と同じように接することにしますね」

 

「それでお願いします」

 

「では改めて……この度は私達トラック第5泊地の面々を受け入れていただき、ありがとうございます。

色々と勉強させてもらうこともあるでしょうから、これからしばらくよろしくお願いします」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

「ええと、それで……」

 

「ん? まだ何かあるんですか?」

 

「その……いいんでしょうか? ウチの山風が……」

 

「……ああ。山風ちゃんですか」

 

 

 そう。現在進行形で鯉住君の背中には山風がくっついている。

 もっと言うと、彼女がタクシーから降りてきた時から、一時も離れずくっつき続けていた。

 

 彼に対する態度がどうとかで揉めていたが、そもそも背中に駆逐艦をくっつけた状態でのやり取りだったので、そんなこと話し合う前にするべきことがあったんじゃ? といったところである。

 

 

「大丈夫ですよ。2か月間ずっとこんな感じでしたし、俺も慣れてますから」

 

「でもやっぱり邪魔になってるんじゃ……ホラ、山風も離れてしっかり挨拶なさい」

 

「……やめて……構わないで……」

 

「もう、この子は聞きわけがないんだから……」

 

「まぁ、山風ちゃんについては仕方ない面もあるので、好きにさせてあげましょうよ」

 

「龍太さんはちっちゃい子に甘いですよねぇ」

 

「山風ちゃんに関してはしょうがないですよ。

常人には見えないホラー系な何かが常に見えてるんですから……」

 

「それはまぁ……

いつも誰かと一緒に居るようにしてますし、承知はしてるんですけどね」

 

 

 この山風、普通なら見えるはずがないものが見えてしまうという特徴を持つ。

 霊感があるとかそういうレベルではなく、そこに幽霊や思念体的なものが『はっきりといる』ものとして把握できてしまうのだ。

 

 そのせいで常にビクビクした振る舞いになってしまい、勇猛果敢を是とする一般的な鎮守府では彼女は受け入れられなかった。

 結果として何度も左遷を繰り返され、心が随分と消耗していたところを三鷹少佐に救われたという経歴があったりする。

 

 三鷹少佐のところでは、その特徴からくる消極的な性格を咎められずに比較的伸び伸び暮らして居た。

 そして鯉住君とくっついている間は何故か『そういった存在』を感じ取れないことが判明し、研修中は彼に物理的にベッタリだったのだ。

 

 

「まぁ、とにかく皆さんと久しぶりに会えたのは、俺も嬉しいんです。

まだ1年くらいしか経ってませんけど、皆さんと過ごすのは懐かしい感じがしますから」

 

「そう言ってもらえると、お世話になる身としてもありがたいです。

……迷惑かけてしまうことがあったら、遠慮なく指摘してください」

 

「正直言って、三鷹さんよりも厄介な人たちが目白押しなので、多分大丈夫です」

 

「そ、そうなんですか……?」

 

「そうなんです」

 

 

 なんだかんだ色々とやり取りがあったが、ガングートの一件以上には厄介ごとを抱えているわけではないようだ。

 色々と癖が強い面々だが、他の人たちに比べれば薄味なものだと自身を納得させる鯉住君なのであった。

 

 




 三鷹少佐のところのお留守番艦娘・理由一覧



・扶桑改二

 ガングートの部下(深海棲艦)による近海警備を行うにあたって、不慮の事故があったときのための予備兵力。
 三鷹少佐が好きなので、彼が応募をかけた際に立候補した。


・翔鶴改

 昔居た鎮守府でひどい扱いを受けていたせいで対人恐怖症なところがあるので、人が大勢集まる会議への参加は断念。
 鯉住君とは研修中に仲良くしていたこともあり、彼に会えないことをかなり残念に思っている。


・阿賀野改(転化体)

 外出中はフルーツを食べ続けられないので参加を断念。今もトラック第5泊地の鎮守府食堂でフルーツを食べ続けている。
 最近はお腹の肉が気になり始めており、焦りを感じている。でも食べるのはやめない。


・電改

 三鷹少佐の初期艦として、彼のいない鎮守府を切り盛りするために残った。
 鯉住君とは話が合う(深海棲艦に対する接し方について)ので、本当は久しぶりに会って話をしたいと考えているが、鎮守府のお仕事を放りだすことはできないと判断。泣く泣く居残り組に。


・狭霧

 原因不明の体調不良を抱えているので、長期的な外出ができない。よって居残り。
 鯉住君とは研修中は『病弱な入院中の妹と、それを気遣って毎日見舞いに行く優しい兄』みたいな感じの関係だったうえ、彼の艤装メンテで体調がよくなっていたこともあり、ものすごく彼に対する好感度が高い。
 ということですごく会いたいのに会いに行けず、枕を濡らしながら遠征不参加を表明した。


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