艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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 前書き・現在の日本海軍ができるまでの流れ

 文字タワーっぽくなってる上に小難しいので、読みたい方だけどうぞ。



・・・



 深海棲艦出現。当時の自衛隊でこれに対応
(米軍は本国の危機を受け日本から早々に撤退)



 海上自衛隊、陸上自衛隊、航空自衛隊、警察隊で協力し、深海棲艦の直接被害と副次的被害を抑える。相当数の優秀な人材が命を落とすも、民衆を命の危機から遠ざけることに成功。
(それでも人口の3割は失うことになった)



 艦娘出現。それと同時に混迷の状況の中、衆議院議員であった鰐淵鯨太郎がクーデターを起こす。
 当時の国会議員の過半数を物理的に国会から追放し、国家首席となる。そして、よく言えば果断、悪く言えば独裁といった動きで、日本国のライフラインを復活させる。
(深海棲艦出現当初、国民が飢えと犯罪で地獄を見ていた中、議員はいつも通り喧々囂々の形だけのパフォーマンスに興じていた。その背景もあり、このクーデターを非難する国民は少数派だった)
(このクーデターの際に私兵として活躍したのが、加二倉中佐の古巣の組織。この時加二倉中佐本人も情報統制で圧倒的な結果を出した)



 鰐淵首相は、いの一番に憲法改正に着手。
 各国の諜報員を拿捕するための対スパイ法案をわずか三日で成立させる。それと同時に工作員の粛清を開始。彼の私兵部隊により、わずかひと月で国内の工作員の8割が無力化される。
 それと並行して、戦後初となる憲法改正をゴリ押しで行う。
 『軍を持ってはいけない』という文面を『軍を持つが侵略してはいけない』と書き換え。
 これにより『海上自衛隊』を『日本海軍』と改めることで、大東亜戦争時の軍艦の特徴を色濃く受け継ぐ艦娘を、スムーズに軍に配備することに成功。前世と同じ組織体系であったため、艦娘側からの戸惑いは無かった。



 そして『自衛隊』でなく『軍』になったことで海外進出が可能に。
 海外進出の目的は侵略というよりは救済。瀕死の東南アジア諸国に対して駐軍許可条約を結ばせ、迅速に艦娘部隊を展開した。
 もちろん将来的に日本を盟主とする共栄圏を創り出すという狙いはあったし、公言までしていたので、この動きは善意だけというわけではない。
 とはいえ被支配におけるデメリットがほぼなく、そもそもそのままでは国家消滅、国民全滅が視野に入るような状況だったため、諸国は一も二もなく日本海軍を受け入れた。



・・・



 こんな感じです。

 現在東南アジア全域を日本海軍が防衛しているのは、こんな流れがあったからですね。
 当然見返りとして生活物資や資源の非課税供給なんかを取り決めてたりしますが、深海棲艦出現以前から見ても良心的な範囲なので、不満はほとんど出ていないようです。大東亜共栄圏成れり、といったところですね。

 ちなみに鰐淵首相は色々落ち着いたタイミングで辞任しました。
「本来、武力で権力の中枢に食い込むことは、人道にもとる行為である」という辞任の際に残した言葉は有名だとか。
 とはいえ後釜として鮫島由基(現首相)という怪物を首相に据えていった辺り、完全な民主制度を許すつもりはないみたいですけどね。

 あと補足として、鼎大将とリンガ第1泊地の船越大将、そしてラバウル第1基地の白蓮大将は、元海上自衛隊の隊員です。
 しかも艦娘が出現する前から前線で深海棲艦とやりあってた、生き地獄を経験した猛者でもあります。





第139話

 

 

 大本営一行の案内を叢雲に任せ、残りのメンバーの応対をすることにした鯉住君と古鷹。

 目の前のバスに残っているのは、一ノ瀬中佐率いる横須賀第3鎮守府ご一行と、鼎大将率いる呉第1鎮守府ご一行。そして、新たに鯉住君の部下となる予定の非戦闘艦の皆さんのはず。

 

 大本営ご一行と挨拶している間に、バスからぞろぞろと降りてきてもよさそうなものだが、どうやら区切りがつくまで車内で待機してくれるようだ。

 コチラの人数の関係で一気に案内することはできないし、挨拶をすることもできないので、そこら辺に配慮して鎮守府別で降車してきてくれているのだろう。ありがたいことである。

 

 とはいえそもそも今回の会議はそんな大したことない議題(甘味工場建設について)であり、少人数で来てくれればそんな配慮する必要もなかった。相変わらず変なところにばかり気が回る人たちである。

 

 鯉住君がそんなことを考えながら、バスの乗降口をなんとなく眺めていると、第2陣がワイワイと賑やかにしながら降車してきた。

 

 真っ先に地に足をついたのは、鯉住君の先輩であり研修を請け負ってくれたひとりでもある一ノ瀬中佐。そして後に続くのは、霧島、鳥海、香取といった、確かな戦闘力と煌めく知性を有する面々。

 その顔触れを見るに、どうやら第2陣は横須賀第3鎮守府のようだ。

 

 

「提督、降りてきている皆さんはどの鎮守府の方々なんですか?

先頭の軍服を着ていらっしゃる女性が提督だとしたら……」

 

「ああ、古鷹は会ったことないもんな。

あの美人さんが一ノ瀬中佐。俺を鍛えてくれた人だよ」

 

「やっぱりそうでしたか。

それにしても……提督がおっしゃる通り、すごい美人ですね。

長門さんの精悍さと陸奥さんの大人びた雰囲気を兼ね備えているといいますか……」

 

「いや、ホントにそうだよねぇ。

それでいて性格は子供っぽいから、ギャップがすごいんだよなぁ」

 

「そうなんですか。モデルさんもビックリな見た目なのにその性格なんて、なかなか信じられませんね」

 

「だよね。なんかアレなんだよ。残念美人って言葉が結構似合うというか……」

 

「その表現はちょっと失礼すぎません……?」

 

 

 目の前に本人が居るというのに好き勝手話しているふたりであったが、ここではたとひとつの違和感に気づいた。

 

 

「……ところで古鷹」

 

「はい」

 

「なんか多くない?」

 

「……奇遇ですね。私も同じこと考えてました。

もしかして呉第1鎮守府の人たちとか、私たちの仲間になる艦娘が混じってます?」

 

「いやー……」

 

 

 そう。ふたりが言いたい放題言っている間にも、バスから降りてくるメンバーが途絶えないのだ。

 そして別にそれは他の鎮守府のメンバーが混ざっているから、というわけではない。間違いなく全員、横須賀第3鎮守府所属の艦娘である。

 

 つまり……

 

 

「これは……そう、あれだな……横須賀第3鎮守府、全員集合だな……」

 

「うわぁ……ざっと数えても20人くらいいますよ……?」

 

「居ないのは……工廠担当の明石さんくらいかなぁ……」

 

「それ大丈夫なんです? 鎮守府の守りは一体……?」

 

「一ノ瀬さんだから大丈夫なんだろうけど、メチャクチャするよなぁ……」

 

 

 なんか全員で来た様子。

 部屋数の都合とかあるんだから、そういうことは本気でやめてほしい。

 今回の会議(バカンス)への参加権を賭けた将棋バトルを繰り広げたとのことだったが、全員で来るんならそんなことする意味無かったんじゃないだろうか?

 鯉住君の中で、『ただ将棋大会するこじつけが欲しかっただけ』説が浮上した。多分あってる。

 

 

「はー……もうなるようになれですわ……

来ちゃったものはしょうがないから、あまり深く考えずに対応しよう」

 

「それしかありませんね……ハァ……」

 

「ま、気持ち切り替えて。

古鷹は一ノ瀬さんに会うの初めてなんだし、話してみるといいよ。変わった人なのは間違いないけど、いい人だし面白い人でもあるから」

 

「うーん……そうですね。個人的にも本土大襲撃をしのぎ切った立役者と話せる機会、無駄にはしたくありません」

 

「そうそう。ま、あの美貌の割にはすっごくフランクに接してくれるから、気負いしないでよ。

廊下で朝一番にあった時に『やっほー』とか『おっはー』とか声掛けしてくるくらいだしさ、すごく面白い人なんだよ」

 

「そうなんですか。それなら緊張せずにすみそうです」

 

「ほら、全員バスから降りてこっちに向かってきてるから、俺の方から挨拶してみるよ。

きっとフランクに返してくれるだろうからさ。見てて」

 

「はい。わかりました」

 

 

 全員の用意ができたらしく、一ノ瀬中佐を先頭にこちらに向かってくる面々。

 そこに鯉住君の方から、大き目の声を掛ける。

 

 

「お久しぶりです! 皆さん! 一ノ瀬さん! お待ちしてましたよ!」

 

 

 

 

 

「あ、あら、お久しぶりね。ご、ごきげんようございますことよ……」

 

 

 

「「 ……へ? 」」

 

 

 

・・・

 

 

 

「……いや、あの……え……?

い、一ノ瀬さん……その言葉遣い、どうしたんですか……?」

 

「な、何を言っていらっしゃるのかしら? 鯉住君?

わたくしはいつも、このようなしゃべり方であそばされていらっしゃいますわ……」

 

「いやいやいや! どう見ても無理してるでしょ!?

なんですか!? なんかのドッキリですか!? また俺にヒドイことするつもりですか!?」

 

「お、おほほほ……なにをおっしゃっているのか理解できかねますで候ですことよ……」

 

 

 何やらとってもぎこちない笑顔を浮かべながら、日本語再翻訳もビックリな謎言語を引っ提げて登場した一ノ瀬中佐。

 どう考えても怪しい。違和感の塊もいいところである。鯉住君が動揺するのも無理ないこと。

 

 ……そんなふたりの様子を見かねて、横須賀第3鎮守府でもエース格である、重巡洋艦・鳥海改二(転化体でもある)が、ひそひそと耳打ちし始めた。

 

 

「(……聡美司令。あまりにもお粗末です。もっと自然に)」

 

「(……そ、そんなこと言ったって、上品に話せとか言われても急にできるわけないでしょ……!)」

 

「(鯉住さんに良い印象を与えるには、大和撫子のような立ち居振る舞いが必要なのです。散々練習してきたでしょう? なぜその程度のことが出来ないのですか?)」

 

「(練習ってアンタが無理やりやらせただけでしょうが……! 『執務の時は上品に話さないと食事抜き』とか言ってきて……!)」

 

「(ハァ……言い訳は聞きたくありません。そんなことでは足柄の足元にも及びませんよ?

いいんですか? 一緒に妻として暮らすんですよ? 足柄に家事をすべて任せるつもりですか? 家庭内ヒエラルキーの最底辺に甘んじるつもりですか?)」

 

「(だから私は別に鯉住君と一緒になるつもりはないって言ってるでしょ……!? 何度も何度も……!)」

 

「(何を今さら……ご自身が今、御年いくつかわからないわけではないでしょう?

30ですよ? 30。アラサーどころではありません。ジャストサーティですよ? とうが立ちすぎているとは思わないんですか?)」

 

「(ふぐうっ……!!)」

 

「(今まで男性とお付き合いした経験はゼロ。有象無象の提督如きを捕まえるなど私が許しませんので、ここからの出会いもゼロ。ファンクラブの実力者のお眼鏡に敵う殿方が現れる可能性も限りなくゼロ。

なんですか? 聡美司令には可能性というものがないんですか? それで今30歳。未来は何色ですか?)」

 

「(おごぉっ……!)」

 

「(わかりましたか? 聡美司令には選択肢がないんですよ。少しでも『この人イイな』と思った殿方に食らいつかずしてどうするのですか?

今のアナタは人生の中で最も輝いている時です。逆に言えばこれからは衰える一方ですよ? 我々艦娘とは違って。

その美貌も、はつらつとした笑顔も、シミひとつない肌も、10年後、いや、5年後にはどうなっているでしょうね? 我々艦娘と違って、タイムリミットが刻一刻と近づいているのですから、それを自覚してください)」

 

「(こいつッ……自分たちが年を取らないからって……ッ!!)」

 

「(聡美司令の周りにいる殿方は、例外なく艦娘とのつながりがありますよ? 比較対象、つまり敵を意識せずしてどうするのですか? 孫氏の兵法をご存知ですか?

聡美司令が我々艦娘と勝負できているうちに動かないといけないことは分かりますよね? 小学生でもわかることでしょうからね。

あぁ、失礼しました。小学生では未来が明るすぎてわからないかもしれませんね。時間がまだまだ有り余っていますからね。独身で社会人経験が長い干物のような生活を送るOL辺りに聞いてみればわかってくれますかね?)」

 

「(うわぁぁぁ……!!)」

 

 

 

 

 

「「 …… 」」

 

 

 一ノ瀬中佐は圧倒的な言葉の暴力を受けたことで膝から崩れ落ち、orzみたいな感じになってしまった。

 それを見て、ひたすらにいたたまれない気持ちが湧いてくる鯉住君と古鷹。

 

 目と鼻の先でひそひそ話されて内容が聞こえないわけがない。当然ふたりにもさっきの会話は全部筒抜けだった。

 鯉住君が言ってた『面白い人だから』という言葉の根拠が、なんとも言えない形で示されてしまった。憐みと切なさで胸いっぱいになる古鷹である。

 

 そんな感じで呆気にとられるふたりに対して、自身の提督をK.O.してご満悦な鳥海が声を掛けてきた。

 

 

「……と、そういうことです、鯉住さん。女性としての老い先が短い聡美司令を貰ってやってください。

あ、挨拶がまだでしたね。お久しぶりです。大本営以来でしょうか? 壮健そうでなによりです」

 

「あー、えー……お久しぶりです……

あの、さっきの会話、わざと聞こえるようにしてたんですか……?」

 

「その方が聡美司令の現状がよくわかると思いまして」

 

「無慈悲が過ぎる……気の毒な一ノ瀬さん……」

 

「自分に正直にならないから、こんな無様を晒すことになるのです」

 

 

 提督のことを大切に思っているのは本当なのだろうが、目的のためには手段を選ばない性格とサディスティックな性癖が混じったせいで、あんな感じになってしまったようだ。

 研修中に色々やられてきた鯉住君でも、地面に崩れ落ちている先輩の姿に同情を禁じ得ない思いである。

 

 

「それで、お返事は?」

 

「あー、一ノ瀬さんと結婚するつもりはありませんので……」

 

「どちらが無慈悲ですか」

 

 

 

・・・

 

 

 

 衝撃的な再会ではあったが、衝撃からボーっとしているわけにはいかない。

 なにせ目の前には、横須賀第3鎮守府のメンバーが総員待機しているのだ(明石除く)。順々に挨拶をしていかなければならない。

 例え目の前で崩れ落ちている先輩がいたとしても、構っている暇はないのだ。優先順位的に無視する形になるのは仕方ない。冷血漢と言うなかれ。

 

 なんてことを考えていると、向こうの方から挨拶してきた。先手を譲った形となる。

 

 

「大佐への昇進、誠におめでとうございます。

指導した相手が活躍してくれるほど、練習巡洋艦として嬉しいことはありません」

 

「功績、戦果、任務成功率、どれをとっても非の打ちどころがありません。

香取も言いましたが、私、霧島も鯉住さんを鍛え上げることができて光栄です」

 

「香取さんに霧島さん。

おふたりのようなすごい人に、そう言っていただけて光栄です。

……とはいえ実際は部下におんぶにだっこで、自分が何か大きなことを成し遂げることなんてできていないんですが」

 

「まぁ、ご謙遜を。

実力に見合った成果が出ているから実感がないというだけで、貴方の努力が実を結んでいるのは確実ですよ。すごいことをされているのです。もっと自信をもって」

 

「それに部下のおかげとは言いますが、部下が実力を発揮できる環境づくりも提督の重要な仕事ですよ。誇ってください。

それと、金剛お姉さまと榛名お姉さまがお世話になっているとか。姉妹として礼を言わせていただきますわ」

 

「な、なんか照れちゃいますね……

それと、金剛さんと榛名さんのおふたりは、元々教えることがないほどの実力者でしたので、こちらが教えるというより逆に教えられることも多く……」

 

「うふふ。相変わらず謙虚な御方。

とにかくも、暫くお邪魔させていただきますので、よろしくお願いいたします。

なにか人手が入用な場合は、遠慮なくお声かけください」

 

「私達のことを無理してゲスト扱いしていただかなくても構いませんよ。

よく知る仲ですし、協力できる部分では協力させていただきますので」

 

「そう言ってもらえると気が楽です。ありがとうございます」

 

 

 そんな感じで香取と霧島との挨拶が終わると、他の艦娘もワッと話しかけてきた。どうやらふたりがキッカケになったらしい。

 

 昔話に花を咲かせながら(大体は将棋の話題だったが)挨拶を済ませていく鯉住君。

 そんなこんなでゲストを捌いていると、不穏な空気を醸し出す影が……

 

 

 

 

 

「どもどもー! お久しぶりですね! 鯉住さんっ!!

いやー、立派な鎮守府! 激写激写! うーん、青葉感激ですぅ!」

 

「ちわーっす! ご存知秋雲でーっす!!

いやー、すごいっすねぇ! 畑! 生け簀! 旅館! 意味わかんない! フフッ!」

 

「バカンスッ! 南の島で、水着の美女がくんずほぐれつ……キタコレェッ!

鯉住さーん! 綾波型9番艦・漣だよ! 水着持ってきたからガン見してもいいヨ!」

 

 

 

 

 

「帰ってください」

 

 

「「「 ヒドッ!? 」」」

 

 





 あとがき・横須賀第3鎮守府での悲劇



 漣、秋雲、青葉の3名が鯉住君から雑な扱いを受けている理由は、研修中に彼に対して好き勝手してたからです。間接的にではありますが。


 流れとしては以下の通り
(注:知らなくてもいい汚い話なので、興味ある方限定でどうぞ。前書きとは違った方向性で高密度です)


・・・


研修中、一ノ瀬中佐からのまさかの混浴対局提案(入浴中の時間を無駄にしないため)。
鯉住君は度重なる頭脳の酷使で知能が低下していたため、どうにでもなれと受け入れてしまう。



将棋初心者なのに湯に浸かりつつ目隠し対局とかいう難易度エクストリームモードだったので、性欲が湧く暇もなく必死で事に当たる。
そのせいで何度も何度も鼻血を吹きながらぶっ倒れる。



その度に対局中の相手(艦娘)に脱衣場まで運ばれて寝かされ、介抱される。
本人に既に意識はなく、荒い息遣いでハァハァと青息吐息している状態。
ちなみに鯉住君はタオル腰巻スタイル、対局相手はカラダにタオル巻くスタイルのことが多かった。気にしない子(酒匂ちゃんとか)の場合全裸だったりもしたので、非常にアレな介抱の光景となる。
余計なこと言うと、鯉住君は血流が非常によくなっているうえに意識がとんでいたので、カラダが元気な反応をしてしまっていることが多かった。
鯉住君の龍太君はなかなかの龍太君なので、人間相手だと完全にアウトな光景(艦娘は一応性欲が薄めなのと、人命救助を優先するのでギリセーフ)。



その様子を偶然見てしまった青葉女史。何かに目覚めてしまう。
それ以降その光景が展開されるたびに、カメラを抱えてダッシュしてきては激写するという流れが出来上がる。



その写真を見てしまった漣女史、秋雲女史のふたり。
グラップラー刃牙・最凶死刑囚編ばりの同時覚醒を見せ、それ以降青葉女史と共に現場にダッシュで赴くことになる。
秋雲女史は高速スケッチ、漣女史は動画撮影で役割を分担する。
これにより変態3人衆の手元には、本人が見たら気絶するレベルの一次資料が大量にストックされる。



その大量の一次資料だけでは満足できず、3人は2次的な作品をドンドンと創り出す。
それぞれ画像加工、イラスト作製、動画編集で大規模作戦さなかのような息の合った連携を見せる。



ある日それらのアンダーグラウンドで行われていた活動が大淀女史にバレる。
3人はこってりと絞られた後、大淀女史との取引を経て釈放。彼女の検閲を通したものだけ残しても良いということになる。
(取引内容は、創作活動を認める代わりに任務を今までより10%上乗せすること。一応お客さんである鯉住君をフリー素材化したことに対する罰。
ちなみにその際接収された作品群と検閲で弾かれた過激な作品は、大淀女史が個人的に保管している。通称『大淀アーカイブ』)



大淀女史の検閲を通過したものは公開することを許される。
これにより、過激な作品が残ることがなくなった代わりに、3人の創作物が鎮守府に蔓延ることになる。パンデミック。
鯉住君はこの時に初めて、手の付けられない大惨事が起こってしまっていたのだと知る。
初めて自分が主役の作品を目にした時は、あまりのショックで白目剥いて気絶した(もちろんその様子も、どこかから現れた3人にバッチリ資料化された)。



鯉住君の必死の訴えにもかかわらず、創作物の流通は止まらなかった。
彼も学生時代には、そういった目的の創作物や映像作品にある程度はお世話になっていたのだが、まさか自分が出演者になるとは思ってもみなかった。
そしてその扱いはかなりキツいものだったらしく、けっこうな期間反対活動をしていた。もちろん孤軍奮闘であり無駄だったのだが。
ちなみにその反対活動の時の必死な様子も3人に資料として活用されていた。あまりにも無慈悲。



・・・



 そういった経緯で鯉住君は、変態3人衆を徹底的に避けています。
 おもちゃにされたといってもよい扱いなのに、ブチギレたり強硬手段に移ったりしない辺りは、鯉住君ならではですね。

 ちなみに横須賀第3鎮守府で蔓延っている創作作品で人気があるジャンルは、人気がある順に
『将棋で負けて言いなりにされる』『なんやかんやで性格が逆転』『一ノ瀬中佐との純愛もの』『艦娘ハーレム系』『BGM付き環境映像』『元帥との絡み』です。
 全部主人公は鯉住君です。

 最近の一番のヒットは『同僚として働いていた夕張と結ばれて子供を作るハッピーエンド』作品です(本来は人間と艦娘では子供はできません)。
 例の事件の影響をモロに受けており、『作中の臨場感が違う』と好評を博しているとか。

 あまりにも業が深すぎますね。他所の鎮守府に飛び火してないのが不幸中の幸い。


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