随分お待たせして申し訳ございませんm(__)m
ツイッターで遊ぶものじゃないですね……アレは時間泥棒です。
現行中の晩秋イベントでは、相当数の新規艦と邂逅することができました!
春風・松風・旗風・初月・天城・秋霜・デロイターですね!
完全勝利Sです!
……なお最終海域は夜戦マスがおっくうで、友軍到着まで放置している模様
精神的に大変自由な横須賀第3鎮守府の面々ではあったが、なんとか話をつけることに成功した鯉住君。
変態3人衆に厳重な見張り制度を導入することで、非常に厄介な知識と文化が鎮守府でパンデミックすることを防ぐこと。
まさかの艦娘→深海棲艦という、聞いたこともない状況にあるイタリア駆逐艦艦娘「マエストラーレ(姿・船渠棲姫)」を保護することにしたこと。
大きなこの2つの案件をなんとかし、先輩でもある一ノ瀬中佐とも改めて挨拶をし(鳥海に心折られていたのだが、驚きの早さで立ち直っていた)、なんとか話をまとめるのに成功したといったところだ。
ちなみに第3鎮守府の面々の案内は、古鷹にお任せした。総勢20名を超える面々なので、流石に口頭説明だけで放置するわけにはいかないのだ。
そんなこんなで心労を重ねつつ、鯉住君は次の来襲に心を構えることにした。
次の来襲とは当然、今まさにバスからぞろぞろと降りてきている面々のことである。
「さて、今日予定されてるお客さんは……鼎大将のところと、新しくウチに配属されることになった新入りの皆さんになるけれど……」
・・・
目の前でバスから降りてきている顔ぶれを見ると、どうやら鼎大将率いる呉第1鎮守府組と、新入り組の全員のようだ。
艤装メンテ技師としてバリバリ働いてきた時代に顔合わせしたことがあるメンバーが揃っている。鯉住君としては非常に懐かしい顔ぶれだ。
……と、思いのほかメンバー人数が少なかったことに安堵しながら懐かしさに思いを馳せていると、集団の中からひとり、タタタッと小走りでこちらに近づいてきた。
その姿を見た鯉住君。表情は一気に固くなり、その鍛えられた体には緊張が走る。
「……あー、えー、お、お久しぶりですね……伊良湖さん……」
「ハイッ!! ようやく……ようやく上司と部下の関係としてお会いできましたねっ!!!」
「あ、アハハ……そうですね……」
そう。
猛烈なアプローチ(転属願い)をスカされたことにめげず、面識ある足柄を通じて外堀を埋めるのに失敗したことにもめげず、最終手段として今回の『甘味工場建設』計画を立案、実行することで、日本海軍全体を巻き込みながら、無理やり自身の転属をキメてきた、あの伊良湖だった。
元来恋愛事に対しては、草食系を通り越してもはや草と表現するレベルの鯉住君である。
押しが強すぎる彼女に対してはすでに、えもいわれぬ苦手意識を持っていた。
「これからはずっと一緒ですね! 鯉住大佐!
あ、スミマセン! もう『提督』とお呼びした方がいいですよね!
鯉住大佐はもう、私、伊良湖の提督……ウフフ……!!」
「そ、そっすね……それでいいんじゃないでしょうか……」
あまりの嬉しさで若干暴走気味になっている伊良湖に、ドン引きする鯉住君。
気持ちが溢れて押せ押せどんどんになっている彼女の言動は、彼にとっては避けるべきものとなってしまっている。悲しいすれ違いである。
とはいえどうせこの男は勢いに押し切られるはずなので、このアプローチが正解なんじゃないかと一部では噂されているのだが。
「ええと……それで、そうおっしゃるということは、もう正式に辞令が出ているということですかね……?
その、伊良湖さんはもう異動が確定したっていう……」
「フフッ! まだですよ! でもほとんど確定してますから、安心してください!」
「安心できないんだよなぁ……」
「え? 何かおっしゃいましたか?」
「なんでもないっす……」
「そうですか! それじゃ、私が知らない色んな事、教えてください!
南方で任務に就くなんて、私、初めてなので!!」
「は、はい……」
・・・
ニッコニコの伊良湖からの質問攻めに鯉住君がタジタジしていると、その光景を見てニヤニヤしながら鼎大将御一行が近づいてきた。
「ほっほっほ! お熱い、お熱いのう! 若いっていいのう、なぁ日向君?」
「まったくその通りだな。不老不死だろう我々に年齢の概念はないが、初々しいという感情は湧いてくるな」
「いやー、若い若い。とはいえもうちょいで30だというのに、青々しいったらありゃしないのう。
嫁を何人もとっているっちゅうのに、なんでこんなに童貞くさいのかのう?」
「あはは。そりゃー鯉住君、実際に童貞だからじゃない?」
「こら伊勢。提督は男性だからいいが、女性である私達がそのようなはしたない言葉を使うんじゃない」
「なに言ってんのさ日向~。艦年齢で考えたら私達って熟女もいいとこじゃん?
そんな細かいこと気にする必要ないって!」
「そうそう。そもそもキミたち人間じゃないしの。
わざわざ人間のめんどくさいルールに縛られず、好きに生きればええよ」
「まったく……もっと真面目になれ……」
必死な鯉住君を肴に楽しくおしゃべりをする鼎大将御一行。
さすがにその傍若無人な振る舞いを見かねたのか、伊良湖に攻められている隙を縫って鯉住君は抗議を始めた。
「アンタら! 全部聞こえてますからね!?
久しぶりに会ったと思ったら、人の事童貞だのなんだの好き勝手言い放題言って!!」
「え!? ど、どうてい……!? 鯉住大佐、じゃなくて提督!
結婚相手がいるのにまだなんですか!?」
「ほっといてください伊良湖さん! それタブー扱いにしてるんだから!!」
「そ、そんな……! それじゃ私が初めての……!?」
「何言ってんの!? 正気に戻って!?」
「いや~、青春じゃのう! ほっほ!」
「なんか鯉住君アレだよね、日向。ラノベの主人公みたいだよね」
「ら……のべ……? 伊勢がいつも暇つぶしに読んでいる小説か?」
「そうそう! 主人公が鯉住君みたいな感じなんだよね~。
本人はその気がないって言いつつ、無意識に周りの美少女を攻略してくんだよ!」
「なんなんだそれは……そんな都合のいい展開あるわけ……
……いや、鯉住殿は実際そのような体質だったか。伊勢も一時期……」
「わ~!! 日向、ストップストップ!!
そのことは忘れてって言ったじゃん!?」
「そういえばそうだったな」
「ほっほっほ! 愉快愉快!」
「アンタらは俺の事なんだと思ってんの!? 特にこのクソ提督は!!
なんで俺の周りの大人は、こんなんばっかなんだ!!」
「提督……伊良湖は、その、いつでも、その……キャッ!」
「ストップ、そこまで! それ以上言わせませんからね!? 伊良湖さん!!
ハイハイハイ! 本題に入りましょう本題にィ!!!」
・・・
軌道修正中
・・・
「ハァ……ハァ……!!
そ、それで、お久しぶりですね、皆さん……ふぅ……」
「必死じゃのう、鯉住君」
「相変わらずレスポンスいいよね~。そんなだから明石に気に入られるんだよ?」
「久しぶり」
「もうツッコみませんからね!?
……それで、呉第1の皆さんは何人で来たんですか? 伊勢さんと日向さんだけですか?」
「いやいや、他にもおるぞい?
航巡の鈴谷君、熊野君と、軽巡の五十鈴君、由良君、そして今回の件(甘味工場)発案者の間宮君が来とる。全員で出てくると場がとっ散らかるから、バスで待機してもらっておるがのう」
「ああ、そうでしたか」
「熊野と五十鈴は、研修で面倒見てた叢雲ちゃんと古鷹ちゃんの成長を確かめたいってことでね。
鈴谷はバカンス楽しみたいからで、由良は夕張ちゃんに会ってみたいからそうだよ?」
「なるほど。……若葉さんと初霜さんはいないんですか?」
「ほほう? 鯉住君や。初春君と子日君だけでは飽き足らず、その妹たちも嫁にしたいと……ロリコンの鑑だのう!!」
「うるさいよクソ提督!! そんなワケないでしょ!?
……初春さんはそこまで気にしてないけど、子日さんがたまーに寂しそうにしてるんですよ! こないだも面談した時に、久しぶりに会いたいってこぼしてたし!」
「ははぁ~ん。つまり、愛する少女を喜ばせてあげたい、と。
やっぱり鯉住君ロリコンなんじゃない」
「何言ってんですか伊勢さんは!? 人聞きの悪い!
ただ俺は、子日さんの保護者として出来る限りのことをしてやりたいだけです!!」
「保護者でなく上司だろうに。やはり少女趣味があるのだな」
「日向さんは真顔でロクでもない事言わないで!」
「提督……そこまで部下のことを想って……やっぱり私の想像通りのお方……!!」
「伊良湖さんはこんなしょうもない話で目をキラキラさせんといて!!」
・・・
丁寧なツッコミが災いして、どうあがいてもいじられてしまう鯉住君。
結局この後何事もなく話は進み、呉第1鎮守府のゲストたちを鎮守府棟まで誘導した(五十鈴は勝手に秘書艦ズを捕まえて案内させると言っていた。鯉住君は心の中で合掌した)。
そして呉第1のゲストが去った後、他の異動してきた補助艦艇艦娘との顔合わせとなった。
「えー、皆さん。まだ私は皆さんの仮の提督という立場ですが、長い付き合いになるのは間違いないと思います。ということで、自己紹介をお願いします」
「「「 は、はい…… 」」」
鯉住君が呼びかけるも、どうにもまごまごとして話し始めない新顔の皆さんたち。
原因は間違いなく先ほど繰り広げられていた漫才で、それに圧倒されてしまっているせいである。
とはいえ一通り嵐が過ぎ去って安心している鯉住君が、そのことに気づくことはない。悲しいギャップである。
そんな理由から戸惑っている面々に、これまた別ベクトルで変なテンションになっている伊良湖が声をかける。
「皆さん! 不安にならなくても大丈夫です!
鯉住大佐は私達非戦闘艦でも、戦闘艦と同じ、もしくはそれ以上によくしてくれる稀有なお方です!」
「「「 ざわ……ざわ…… 」」」
「皆さんも読んだでしょう? 提督が執筆された書籍を!
私達、補助艦艇にこれほどスポットを当ててくれた方は提督以外にはいませんでした!」
「「「 ざわ……! ざわ……! 」」」
「そういうわけで、ここでは今までみたいにコソコソと肩身の狭い思いをしなくても大丈夫なのです!」
「い、伊良湖さん……? なんかキャラ変わってません……?」
伊良湖のちょっと高めなテンションに中てられたのか、ちょっとヒいている鯉住君を尻目に、新メンバーたちは自己紹介を始めた。
「あ、あの、その……! 私、速吸って言います!
これからよろしくお願いします! 提督さん!」
「給油艦・神威です。今までは活躍しようにも活躍の機会を得ることができませんでした。ぜひとも私達のこの能力、存分にお使いください」
「同じく補助艦艇の大鯨です。こちらには潜水艦の皆さんがいらっしゃらないと聞いているので、お役に立てるかはわかりませんが……よろしくお願いしますね」
「あ、あぁ、ええと……よろしくお願いします。
あのー、そんなに期待のこもった眼で見つめられると、胃がキリキリするというか……」
伊良湖の言葉を聞いて、これからの生活に希望を持ったらしい面々。
実は彼女たちは今までかなり冷遇されてきたので、今回の異動で何かが変わることを、心の中では信じ切れていなかったという背景があったりする。
そんな疲れ果てた心に伊良湖の魂がこもった説得はとてもよく染み渡ったのだろう。
もちろん鯉住君にはそんな情報ロクに知らされていないので(普通は異動者の経歴が知らされないなどありえない)、この熱量の理由がまるで理解できていないのだが。
そんな感じでキラキラした目に囲まれてアタフタしていると、彼の後ろから声をかける者が。
「ふふっ。大人気ですね。鯉住さん」
「うおっ!? ……ビックリした。
って、間宮さんじゃないですか。いらっしゃってたんですね」
「うふふ。そんな失礼なこと言ってると怒っちゃいますよ?」
「ヒエッ……すいません!」
声をかけてきたのは、呉第1から来た間宮だった。
今回の甘味工場建設計画は、実質的には伊良湖が執念をもってプロデュースしたのだが、対外的には彼女が発案者ということになっている。
呉第1における怒らせてはいけない人No.2である(No.1は鳳翔)。
「一応今回は間宮さんは主役のひとりですので、お手柔らかにお願いしますね……」
「あら。別にそこはどうでもいいんですよ」
「いやいや、どうでもいいことないでしょう!? 今回のメインの話題ですよ!?」
「だってその件については、すでにほとんど決まってますもの。
だから別に話し合うことなんかなくて、やることなんて合意確認くらいです」
「うわぁ……じゃあなんで皆さんわざわざ集まって……あぁ、バカンスでしたね……」
「そういう方が大半とは聞いてますね。提督もそのようなことをおっしゃってましたし。
でも、私は別の用事があるので足を運ばせてもらったんですよ?」
「別の用事?」
「ええ。伊良湖についてなんですが……彼女は私の妹のようなものです。
だからちゃんと夫となる鯉住さんに、改めてご挨拶をしなければ、と」
「……ん? 夫……?」
「間宮さん! ありがとうございます! 私、伊良湖は幸せになります!」
「い、いやいや……!」
「うふふ。鯉住さんなら大丈夫よ。安心して頼りなさい」
「ちょ、ちょっと待って!」
「はい!!」
「はいじゃないが!!」
こうしてすったもんだしながらも、第2陣の到着は完了した。
鯉住君がこの訪問で多大なダメージを受けたことで、胃薬をかっ込んだのちに3日ほど自室に引きこもったのは、仕方ない事だったのかもしれない。
投稿遅くなってすいませんでした(2回目)
年内にあと1話は投稿する予定です。