艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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今回の会議の議題一覧


 済・本題……呉第1鎮守府・間宮とラバウル第10基地・伊良湖による艦娘用甘味の生産工場建設と運用について

 

 済・副題1……加二倉中佐による欧州遠征の結果報告(非公開情報)

 済・副題2……一ノ瀬中佐、加二倉中佐、三鷹少佐のそれぞれが上げた功績に伴う昇進について

 済・副題3……白蓮大将による鉄底海峡の不可侵領域攻略作戦と大規模侵攻の兆候について

 済・副題4……鼎大将による沖縄沖からフィリピン海にかけての大規模侵攻の兆候について

 済・副題5……三鷹少佐による北方水姫の迎撃作戦の結果と彼女の転化について

 済・副題6……一ノ瀬中佐による各地大規模侵攻に対する人員再配置案について

 副題7……伊郷元帥と鼎大将による深海棲艦の正体予想について


 今回は副題7です。ようやく終わるぞ~




第154話 議題7 会議終了

 三鷹少佐と一ノ瀬中佐(ふたりとも本日をもって昇進したので、本当は少将だが)の

議題があっさりと終わり、長かった会議も最後の議題となった。

 

 最後の議題は『伊郷元帥と鼎大将による深海棲艦の正体予想について』。

 世間だけでなく海軍内でも色々な憶測が飛び交う話題ではあるが、こうやって立場ある将官から公式に触れられることは初めて。

 未知な存在であり、自分たちの敵でもある相手。興味がわかない者など居るはずもない。否応なしに会場には緊張が走る。

 

 マイクを渡された伊郷元帥はすくっと立ち上がり、いつも通りな様子で話し始めた。

 

 

「さて、今回の会議では様々な重要案件が飛び交った。皆、精神的に疲れているだろうが、次の議題で最後である。今しばらく付き合ってもらいたい」

 

 

 非常に重要な話を始めようとしているのだが、やっぱり元帥は平常心で感情の起伏が微塵も見えない。

 周りの参加者は、気を取り直したり姿勢を正したりで集中力を増しているのだが、それに動じている様子もない。流石の鋼メンタルである。

 

 

「今から話していく内容は、深海棲艦の正体予測である。

私と鼎君、そして大勢の協力者の元、ある程度確信をもって伝えられるところまで来たので、情報開示することとした。

尚、知っての通りここから話す内容は初出、そして他言無用。重要機密扱いとする」

 

 

 重要機密扱いという言葉でざわつくオーディエンスたち。

 どうやら今から始まる話が日本海軍データベースに載ることはしばらく無いようだ。

 

 そんな重要な場に同席できるとあって、緊張感がさらに高まる。

 

 

「そこまで緊張するほどの話でもない。落ち着いて聞くように。君たちが予想している内容のどれかには当てはまるだろう話だ。突拍子もない、ということでもない。

……では、そうだな……鯉住大佐」

 

「……ハイ!?」

 

 

 なんか急に話を振られ、変な声を出してしまう鯉住君。

 

 

「一方的に説明するだけだと、皆の理解が深まらない可能性がある。そこで会話形式で話を進めようと思うのだが」

 

「あー、えーですね……それは構いませんが、なんで私なんです……?」

 

「大佐がこの中で最も、深海棲艦と艦娘について造詣が深いと考えている」

 

「なんでぇ……? そんなことないと思うんですが……

まぁ、聞き役になるのは一向に構いませんけども……」

 

「ふむ。助かる」

 

 

 いつもの謎の信頼。納得いかない鯉住君である。

 断るのも失礼に当たるので、半ば諦めつつ提案を飲むことにした。

 

 

「では、話を始めようと思う。まずは、そうだな……大佐、このような諺(ことわざ)を知っているか。

『幽霊の 正体見たり 枯れ尾花』」

 

「え? あ、ああ、知ってますよ。

恐怖心があると、ただの草木でも幽霊に見えるって話ですよね。ネガティブな姿勢でいると、悪い方に考えちゃうっていう。

……でも、いきなりなんでそんなことを?」

 

「この諺は真実ではない」

 

「……んん? と、言いますと……?」

 

「幽霊はいる」

 

「……んんん?????」

 

 

 なんか突拍子もない言葉が元帥の口から出てきた。これには鯉住君も困惑。

 会場からもちらほらとどよめきが聞こえる。

 

 

「正確に言うと『思念エネルギー』と名付けられた、人類科学が到達していない領域の新エネルギー。それが高濃度となり人の形をとった存在が幽霊で、高濃度で溢れている場を霊場と呼ぶ。

このエネルギーを発見、有効利用しようとしていたのが、元『筑波最先端技術研究所』所属、玉神 希(たまがみ のぞみ)女史である」

 

 

 なんかとんでもない話が出てきた。鯉住君は理解しきれず、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。

 

 

「えー……そういうものがあるっていうのは、元帥がおっしゃっている以上嘘ではないんでしょうが……

なんだか、こう、いきなりすぎて飲み込めないというか……」

 

「実際この話については国家機密とされているし、そのエネルギーの研究についても深海棲艦出現以前に凍結されている。

思念エネルギーの存在を知る者は、国内では百名も居ないはずだ。

当人の玉神女史は現在消息を絶っているし、『筑波最先端技術研究所』自体も今は存在していない。色々あって更地となっている」

 

「消息を絶ったとか更地になったとか、なんか穏やかじゃないんですけど……」

 

「まあ、そうだ。完全新規、なおかつ石油やガスよりも可能性のあるエネルギーだ。

裏の社会で大きな国際問題となったので、謎の爆発が起こったということにして全ては闇に葬られ、無かったことにされた」

 

「やっぱりそういうやつじゃないですか……」

 

「その事故というか、揉み消しからの研究凍結ののちも、玉神女史は個人で研究を続けていた。

その研究結果は彼女の蒸発ののちも部下に引き継がれ、現在は建造炉と羅針盤の技術に利用されている」

 

「あー、えー……理解できなさ過ぎて、一周回って冷静になってきたんですけど……

つまり、こういうことですか? 深海棲艦や艦娘、それとその周りのよく分からない色々は、その『思念エネルギー』ってやつが船に憑りつくか何かした存在……?」

 

「うむ。概ねその通り。ただ、実際に物理的に憑りついているわけではない。

軍艦と共に沈んでしまった何十人もの英霊の思念エネルギー、それを核として産まれた霊的存在が、艦娘と深海棲艦である。

思念エネルギーには他のエネルギーと違い、指向性がある。正の思念エネルギーが核となって産まれたのが艦娘。その逆が深海棲艦だ」

 

「あー……」

 

 

 新情報ラッシュでどんな顔していいのかわからない鯉住君。思考回路がショートしている。なんて言っていいのか言葉が見つからない。

 周りの艦娘たちも、一部を除いてものすごく動揺している。自分たちが何者なのかという話なのだ。そうもなろうというもの。

 

 

「そういうことで、艦娘と深海棲艦の正体というのは、『高エネルギー生命体』だ。

幽霊や付喪神、妖怪、精霊、神。そういった表現でも構わない」

 

「そうなんすか……すごいっすね……」

 

「まぁ、だからと言ってやることは変わらないのだが」

 

「そうなんすか……すごいっすね……」

 

「補足すると、世界で見て日本海軍の深海棲艦に対する戦績が非常に高いのも、ここに原因があると考える。

相手も味方も霊的存在であるため、祀る(まつる)という思想が非常に重要なのだ。日本文化の中で日本人にはその精神が培われており、それが偶然にも功を奏したという予測だ。

欧州には、おそらく米国にも、このような東洋的な思想の土台がほとんど無い。それが大きな明暗を分けたと私は考えている」

 

「そうなんすか……すごいっすね……」

 

「ちなみに先ほどの鼎君の話で『近々日本海軍領海でも、二つ名個体級の深海棲艦が誕生する』という予測も、この仮説を前提にしている。そうだな、鼎君」

 

「そうですのう。ワシもむかーし希ちゃんと一緒に研究してたからわかるんじゃけども、思念エネルギーって伝播するんじゃよ。良くも悪くも。

鯉住君だって、周りで誰かが笑ってたら楽しい気分になるし、怒ってたらイやな気分になるじゃろ? それと一緒じゃよ」

 

「そうなんすか……すごいっすね……」

 

「そういうことで、どこかでそういう凄いのが出てきたら、その周りでも同じようなことになるんじゃないか、っちゅう話じゃよ」

 

「そうなんすか……すごいっすね……」

 

「なんじゃ、頭がパンクしちゃってるのう……もっといい反応してくれてもいいと思うんじゃが……

あ、ちなみに希ちゃんってワシのワイフね?」

 

「そうなんすか……すご……ファッ!? 奥さん!?」

 

「あとキミの恩師の柳ちゃんは、希ちゃんの助手やってたからね?

希ちゃんがいなくなっちゃってから研究引き継いだの、柳ちゃんだからね?」

 

「んんんんんんんん???????????????」

 

 

 すごいっすねbotと化していた鯉住君だが、鼎大将がなんか変なこと喋りだしたせいで現実に引き戻された。

 そんなとんでもない重要人物との接点があっただけでも驚きなのに、まさかの結婚相手だったとは……

 

 

「い、いやいや、だって玉神さんって言って……苗字違うじゃないっすか!」

 

「そこはホラ、希ちゃんが気を利かせてくれたんじゃよ。別姓にして事実婚の方がお互い動きやすいでしょ、って言っての。いやー、ワシにはもったいない妻の鑑じゃの!!」

 

「そこで惚気られてもどうしていいかわかんないんですけどぉ!?」

 

「柳ちゃんはそういった縁で日本海軍の将官としてスカウトしたんじゃよ。そもそもそんな国家機密のド真ん中に関わってる人間をほっとくワケにもいかんしのう」

 

「先生にそんなバックグラウンドが!?

先生があっさりと俺に内定くれるほど権力もってたの、そういうことだったのか……!!」

 

「思念エネルギーを物質に留める技術を発展させたのも柳ちゃんでのう。

建造炉と羅針盤の基礎構成は彼女の発案じゃよ」

 

「先生凄いな!? 頭が上がらないよ……!!」

 

「と言うわけで、重要なことなんじゃが……

あー、この場に居る全員は今から言う内容を理解しておくように。これからの行動のキモになってくるからのう」

 

 

 混乱してお目目ぐるぐるになっている鯉住君を放置して、鼎大将はぐるっと周りに呼び掛ける。

 周りのオーディエンスたちも、鯉住君ほどではないが、現状が理解できていない状態だが、鼎大将のちょっとだけ真剣なトーンに耳を傾ける。

 

 

「キミたち艦娘も本質的には同じじゃが、深海棲艦は『負のエネルギーの集合体』じゃ。んで、負のエネルギーは世界中に溢れている……というか現在進行形で増え続けておる。人間から発せられる思念エネルギーは他生物の比ではないからのう。

と、いうワケで、人間が全滅することがない限り、深海棲艦は産まれ続ける」

 

 

 会場がどよめく。鼎大将は明確に口にした。『戦いは終わらない』と。

 

 

「そういうことじゃ。皆、それを努々忘れることが無いように。いのちだいじに、じゃよ。

それで、鯉住君は今の話聞いてどう思ったかの?」

 

「……今度先生に菓子折りでも持っていこうかな……」

 

「おーい? 聞いとる?」

 

「……ハッ!? な、なんすか提督!?」

 

「落ち着きなさいよ。提督って、呼び方がウチで働いてた時に戻っとるよ?」

 

「いやだって……情報が多すぎるんすよ!!」

 

「まあまあ、それで、鯉住君はどう思うかの?

深海棲艦は人間の負の感情から産まれるから、人間がいる限り産まれ続けるよ?」

 

 

 心ここにあらずで話聞いてなかった鯉住君に、鼎大将はもう一度説明する。

 それを聞いた鯉住君は……

 

 

「あー……やっぱりそういうやつですか」

 

「なんじゃ、つまらん。他のみんなみたいにもっと驚きなさいよ」

 

「そう言われましても……そういう可能性はあるかなって思ってましたので」

 

「ほほう? そしたら君はどう動くかね?」

 

「どうと言われましても、そう変わりませんよ。

まあ、アレですかね。艦娘のみんなが職にあぶれることがなくなってちょっと安心したというくらいですかね。

鎮守府でしか活動したことがなく、戦闘しかしてこなかった彼女たちに、人間社会に溶け込めなんてあんまりですから」

 

「すんごい強い深海棲艦が出てくるかもしれんよ? そしたら命の危険も出てくるじゃろ」

 

「だから毎日訓練してるんじゃないですか。ウチのメンバーはみんなそのつもりで日々精進してます。

ていうか、ヒドイことにならないように、なんかうまいことやってくださいよ。今以上のことなんて俺には難しいっす」

 

「丸投げとかヒドイのう」

 

「ちょっと! そういうのブーメラン発言って言うんですよ!

知ってるでしょ!? 俺が色々ブン投げられてるの!!」

 

「えー。出来る人に出来ること任せてるだけじゃって」

 

「えー、じゃないっすよ! えー、じゃ!」

 

 

 鯉住君的には別にオッケーだった模様。特に衝撃を受けるでもなく、鼎大将と漫才を始めてしまった。

 

 それを見ていた周りの艦娘たちも、雰囲気につられて表情から固さを抜いていた。

 確かにやることは変わらない。未来に備え、負けないよう準備し、考え、護る。今までずっとやってきたことだ。

 

 そんな感じで場が落ち着いてきたのを見計らい、伊郷元帥が話を引き継ぐ。

 

 

「うむ。皆、流石は実力者である。平静を取り戻したようだな。

先述した通り、今話した内容は他言無用。情報開示するメリットもなければ、必要もないことであるからな。現段階では、ということではあるが」

 

 

 その言葉を聞いた全員が、うんうんと首を縦に振っている。元帥の言葉に納得したようだ。

 

 

「よし。それではこの議題は終了とする。皆、正しい心を持ち、日々励むように。

……それでは議長の間宮君、締めを頼む」

 

「は、はい。承知しました」

 

 

 間宮は元帥からマイクを受け取り、閉幕の挨拶をする。

 

 

「それでは皆さん、えーとですね……色々と衝撃的な話も多かったですし、よそでは話せないことも多かったですが、これから過ごしていくのに良い刺激になったのではないかと思います。

この場に参加できたことを誇りに思い、過ごしていくようにしましょう。

それでは、これにて『艦娘用甘味の生産工場建設と運用について』会議を閉会といたします。

長時間のお付き合い、ありがとうございました。お疲れさまでした」

 

 

 間宮の挨拶が終わり、パチパチパチと会場全体から拍手が起こる。

 ラーメン特盛アブラマシマシヤサイカラメ全部乗せみたいなボリュームだったが、その分得るものも多かった。

 そして、全員漏れなくこんな感想を抱いたとか。

 

 

 そういえばこの会議、甘味工場建設についての会議だったなぁ……と。

 




ぬわあぁぁぁんつかれたもぉぉぉん!!!

これにて会議終了!以上!閉廷!みんな解散!!


あ、すいません、解散しないでください。会議は終わりですが、お話は続きますので……
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