しかも必要資材も妖精さん任せなので、ランダム性が滅茶苦茶高く、ドラム缶が欲しかったのに戦艦が建造される、なんて可能性も。
ただ以前書いたように、艦娘の建造が頭打ちになってる世界ですので、基本的には何らかの艤装が出てきます。
何ができるかはホントに運次第。かなり恐ろしいですね。
そのストレスは大型建造の比じゃないです。
「さて叢雲さん、早速仕事しようか」
「ハァ……そうね、気持ちを切り替えていきましょうか」
2人ともそれぞれ自室に荷物を運びこみ、居間(執務室)に集合した。
部屋の中央にはこたつ机が鎮座しており、座椅子が2つセットされている。もしかしなくてもこれが執務机なのだろう。
ご丁寧にテーブルの真ん中には籠に入った飴ちゃんまで置いてある。
一応部屋の中にはタンスや筆記用具、複合機も置いてあるので執務には支障ない。光ケーブルも通っているようで、パソコンでWi-Fi通信もできる。
最初に2人で鎮守府を探索した時は、ここが娯楽室かと思っていた。
しかしもっと娯楽室っぽい茶の間があったため、ここが執務室だと判明した。
鯉住君は親戚の家がこのような作りだからか、違和感を飲み込んでしまったが、
叢雲は真面目な性格が災いして、この鎮守府っぽくない鎮守府に納得しかねている状態だ。
とはいえ2人して仲良く座椅子に腰かけているあたり、すでに馴染んでしまっているとも言える。
「新任地でまず最初にやることって言ったら、チュートリアルよね。
それじゃ『提督任務一覧書式』ダウンロードするわよ?」
「ああ、頼んだよ」
秘書艦の叢雲は、備品のパソコンを起動し、Wi-Fiにつなぐ。
提督たちは通常業務として、大本営から送られる任務をこなしていく。
その任務の受領から提出までの流れはこうだ。
・・・
まず大本営の内部向けHPから、『提督任務一覧書式』ファイルと、『任務一覧表』PDFをダウンロード。後者は先に印刷しておく。
ついでにこの時日替わり連絡掲示板にも目を通す。
『提督任務一覧書式』ファイルの中は、チュートリアル、デイリー任務、ウィークリー任務、マンスリー任務、クオータリー任務と枝が分かれている。
それぞれの項目をさらに見ると、建造任務だったり戦闘任務だったり、書類がPDFファイルとして入っているので、必要な分をプリントアウト。
行った任務内容を必要な部分にアナログで書き入れる。
例えば戦闘任務の書類だったら、各鎮守府に合わせた地図が添付されているので、その中に経路、時間、戦闘内容を書き入れる。それ以外の情報は備考欄へ記載。
書類には必ず日付と提督直筆のサインを入れる。
もし提督が所用で不在なら、秘書官のサインでもよい。
書類が一式揃ったら、大本営と所属基地の第1鎮守府にFAXを送る。
原本は日付ごとに分けて保管する。防諜の関係上、データとして保管することは禁止。
この時に印刷した『任務一覧表』に、達成した証のチェックをつけるのを忘れないこと。
『任務一覧表』は2種類あり、『単発任務表』と『継続任務表』に分かれている。
『単発任務表』は一枚のみだが、『継続任務表』はひと月で一枚であり、チェックマスはデイリー用に31マス、ウィークリー用に5マス、マンスリーとクオータリー用に1マス用意されている。
もしFAXではやり取りできないような内容なら、各大将への個別回線で直接連絡を取る。
ちなみに大規模作戦中は特別ページから、『特別任務一覧書式』というファイルがダウンロードできるため、こちらを利用することになる。
達成した任務に応じて、大本営から報酬として資材が提供される。
基地の場所にもよるが、国内なら陸運で、国外なら定期連絡船で、資材はまとめて運ばれることとなる。その際にも、提督もしくは秘書艦の受領サインが必要となる。
・・・
以上のようになっている。
大量の任務をこなしたときは、フリースタイルの様式書類があるので、それを利用することもできる。
なんだかんだお固い海軍といえど、結構融通が利くのだ。
「ええと……チュートリアル任務は、と。それじゃ一通り印刷しちゃうわね」
「はいはい」
・・・
印刷中
・・・
「『はじめての編成』『はじめての出撃』『はじめての演習』『はじめての遠征』……色々あるわね」
「一通り鎮守府でできることを実際やってみろってことか……ていうか、なんかノリが軽くない?」
「私に言われてもどうしようもないわよ。それより何から手を付けるの?」
「うーん……そうだな。まずはこれやってみよう」
鯉住君は一枚の書類を手にする。
「ん?なんなのそれ……
えーと、『はじめての建造炉稼働』ね。まあいいんじゃないの?」
「叢雲さんに出撃してもらってもいいと思ったけど、先に建造炉で良い艤装が出せれば楽になるしね」
「私としてはさっさと出撃したいけど、確かにいい装備があるなら、それに越したことはないわね」
「でしょ? もしかして艦娘が建造できて、戦闘が楽になるかもしれないし」
「いやいや、何言ってんのよアンタ。あるわけないでしょ。
私が一番最近建造された艦娘だけど、それまで1年間どこも建造に成功しなかったのよ?」
「まあ、ね。もしかしたらって話だよ」
「あまり期待してるとがっかりするわよ?
期待するなら「いい艤装でないかな」くらいにしときなさい」
「夢がないなぁ……」
「しっかり現実見なさいよ」
・・・
叢雲にたしなめられながら、2人は倉庫(工廠)まで移動する。
外見は倉庫だが、中身はちゃんと工廠っぽくはなっていた。
とはいえ呉第1鎮守府の工廠とは比べ物にならないほど小規模で、町工場といった感じだが。
その工廠の中央には、高さ2.5mほどのカプセルが置かれている。
これが建造炉。妖精さんたちの謎技術で造られた一品である。
「さて、記念すべき建造炉の初稼働。叢雲さん、何か欲しいものある?」
「出てくるものなんて完全にランダムなんだから、そんなこと聞いても意味ないでしょ?」
「まあそう言わないで。言うだけならタダなんだから」
「アンタねぇ……まあいいわ。
欲しいって言ったらやっぱり主砲か魚雷よね。今の艤装は主砲1門だけだし、心許ないわ」
「あー、そういえばどこの鎮守府でも主砲は2門つけてたな……
やっぱり1門と2門じゃ使い勝手違うの?」
「当然でしょ。両手で主砲を扱うことになるし、段違いの威力になるわ」
「そっか。それじゃ是非とも出撃前には用意しないとな」
「まあそれも運次第よね。結果なんて待ってても変わらないし、早く稼働させましょ」
「オーケー。それじゃ……?」
いつも鯉住君についてきている妖精さんたちが、何か訴えている。
(わたしたちにまかせて)
(やってみたいです)
(うでがなるぜー)
あれ?お前ら建造炉動かせるの?艤装メンテ以外にもそんなこと出来んの?
(とうぜん)
(われらえりーとようせい)
(あさめしまえです)
マジかよ。
お前らがエリートとか言われても微塵も信じられないけど、できるんなら頼もうかな。
ま、初めての仕事だし気楽にやりなさいな。
(((かしこまりー)))
「? どうしたのよ。妖精さんと見つめあっちゃって」
「ああ、なんかこいつらが建造炉動かしてみたいって言うからさ。
やってみていいって伝えてたんだよ」
「へえ。妖精さんと会話できるって言ってたけど、ホントだったのね」
「なんだよ。疑ってたのか?」
「そんな話初めて聞いたもの。はいそーですか、なんてあっさり信じられないわよ」
「ま、それもそうか。それじゃ稼働させるよ。ポチッとな」
ポチッ
ウィーン……
建造炉の前面にあるボタンを押すと、稼働音が聞こえ始めた。
それと同時に、いつも鯉住君にくっついている妖精さんたちが建造炉で働きだす。
物珍しさに2人が見つめていると、目の前の建造炉は青く光りだした。
どんな艤装が出てくるんだろう? と内心ワクワクする2人。
プシュー……
建造炉の扉が開く。
「はーい、お待たせ? 兵装実験軽巡、夕張、到着いたしました!」
「「……」」
目の前の光景に固まる2人。
「あ、あれ?もしかして私、歓迎されてない?」
(いいしごとした)
(これがわれらのじつりょく)
(ごほうびにおやつをよこすです)
「「う、うそぉ……」」
まさかの建造成功によって、見事なフラグ回収を成し遂げた2人であった。
本当に彼女たちはエリート妖精だったようです。
ちなみにこの世界では、建造も開発と同じでノータイムです。
よって稼働開始から完成までの数十秒は、完全闇鍋状態の中、待機することになります。
建造炉稼働ボタンを押すときには、ワクワクで指が震えますね!(白目