三川戦隊の5-1任務が終わってないせいで、6-4未クリアなのがしんどいですね……
青葉が改二になって水戦積めるようになってくれないかなぁ……
叢雲による吹雪ボコボコ事件から一晩明け、時刻は午前10時。昨日取り決めておいた演習開始時間となった。
明らかに地力で上をいく相手に戦いを挑むとあって、第1艦隊メンバーは意気軒高な様子。
実際に叢雲の動きを見ていない五十鈴、蒼龍、祥鳳、比叡については、半信半疑なところもあるようだが。
……結局鯉住君が提案した実力差を埋める案というのは『ラバウル第9メンバーの艤装メンテナンスを自身が行う』というものだった。
鯉住君の部下の実力の高さは、ぶっちぎりで世界一の練度を誇る第10基地メンテ班によるところも大きい。
ということで、その艤装バフをひっくり返そう、という提案である。
具体的には、第10のみんなの艤装を貸せるものは第9に貸し、代わりとして第9にある在庫から適当に見繕ってもらう。
それでもカバーできない第9の艦載機や戦艦主砲などは、鯉住君が一晩で気合で再メンテする、ということである。
那智、衣笠に対しては艦として性質が近い足柄、古鷹の艤装をそのまま貸し与えた。五十鈴に対しては大井が装備していた魚雷を貸与。
しかし残りの蒼龍、祥鳳、比叡に対しては、対応する艤装が無かったため、鯉住君が徹夜でメンテする、という感じ。
ちなみに速吸に関しては、彼女の練度からして慣れない艤装で戦闘できるほどではないため、元々の装備で臨んでもらうことになっている。
全部まとめると、今は下記のような状況。
・・・
・ラバウル第10基地サイド(鯉住君の方)
『叢雲改二』
(4連装酸素魚雷×3)
『足柄改二』
(20.3㎝主砲×3・零式水偵・32号水上電探改二(眼鏡型)☆10(増設部分))
『古鷹改二』
(20.3㎝主砲×2・22号水上電探・4連装酸素魚雷)
『天龍改二』
(14㎝連装砲×2・タービン+新型缶☆10・10㎝連装高角砲+機銃☆10(増設部分))
『大井改二』
(4連装酸素魚雷×3)
『速吸改』
(流星改☆10×2・強風改☆10)
※☆10になってるのが普段使いの装備。全部☆10なのはメンテ班と明石の装備改修の賜物。
天龍の主砲以外のエグイ装備は鯉住君の特製品(第108話参照)。足柄の電探も同様(第143話参照)。
・ラバウル第9基地サイド(鈴木大佐の方)
『那智改』
(20.3㎝(3号)砲☆10×2・33号水上電探☆6・零式水偵11乙熟練☆10)
『比叡改』
(試製35.6cm三連装砲☆6×2・九一徹甲弾☆6・零式水観☆6)
『衣笠改』
(20.3㎝(3号)砲☆10×2・32号水上電探改☆10・零式水偵11乙熟練☆10)
『蒼龍改』
(流星改☆6×2・彗星二二甲☆6・紫電改二☆6)
『祥鳳改』
(流星改☆6×2・彗星二二甲☆6・紫電改二☆6)
『五十鈴改二』
(5連装酸素魚雷☆10×3)
※☆10なのが鯉住君の艦隊から貸し出している装備。☆6なのが一晩かけて鯉住君がメンテした装備。
流石にメンテ量が多すぎたため、彼基準で及第点くらいの出来に仕上がった。よって☆6バフ。本気出すと☆9くらいにはなる。
ちなみに艦娘の基本艤装部分(イラストで装備してる部分)はノータッチ。
理由は単純に時間が足りないことと、初見の艦娘のクセに合わせたメンテをするにはひとり(+妖精さん)では諸条件が厳しいため。
この部分にこそメンテナンスの差が出るのだが、鯉住くんをもってしても不可能な仕事量になるため断念した。
あと、ラバウル第9のメンテ班は通常業務で手いっぱいで協力が得られなかった。突発的な話だったので当然といえば当然。
・・・
「さて、これから演習に入るわけだが……
皆、どうだ? 鯉住大佐がメンテナンスした艤装は普段と違うか?」
「まだ実際に戦闘していないからハッキリとはいえんが、明らかに違うな。普段使いの艤装とは、なんというか……何もかもが違う。なんだこれは、本当に3号砲なのか、これ?」
「私は古鷹に艤装貸してもらった時にちょっとだけ動かしてみたけどさ、すごいよこれ。試しに的撃ちしてみたけど、威力と命中率が全然違ってた」
実際に叢雲の実力の高さを見ていた那智と衣笠は、概ね肯定的な意見。
衣笠については試射を済ませていることもあり、早く戦いたくてうずうずしている様子である。
「むー……! 金剛お姉さまと榛名にひどいことしてるらしい鯉住大佐の補佐を受けることになるなんて……!! やっぱり納得しかねます、提督!!」
「だが比叡、なんだかんだ彼のメンテナンスした艤装、気に入っているようにみえるが」
「それは、そのぅ……」
「それにメンテ中の鯉住大佐と友好的に話していたではないか」
「み、見てたんですか!?」
「うむ。すでに比叡が考えているような人物ではないと分かっているだろうに。そう見栄を張るものではないぞ」
「……だってだって!! 鯉住大佐の悪事を暴いてやろうと話してみたら、すごいいい人だったんですよ!? 面食らっちゃいましたよ!! あれだけ悪く言っておいて、今さら引っ込みつかないんです!!」
「別に本人に伝わっていないのだから、意見を変えてもいいだろうに。というか彼は客人でもあるのだから、意固地にならずに友好的な姿勢で接するように」
「ひえぇ~……戦う前から負けた気分ですぅ……」
比叡については今までの自身の態度から、色々と思うところがあるようだ。頭を抱えながらうずくまってしまった。
鯉住君と実際に話してみて、金剛と榛名を虐待している疑惑は勘違いだったとわかったのだが(なお訓練内容は虐待に近い)、あれだけ啖呵きっておいて今さら掌返しするのに抵抗があるらしい。
その辺吹雪であれば誤解とわかった瞬間ノータイムで謝罪するので、比叡は彼女と似ているようで違うタイプだったりする。
「ちょっと祥鳳! 艦載機なんかキラキラ光ってない!? これすごくない!?」
「そうですね蒼龍さん。正直言うとメンテナンスひとつでそこまで変わるか疑問だったのですが……想像以上かもしれないですね」
「五十鈴も驚いてるわ。私が借りたのは5連装酸素魚雷なんだけど、なんていうか凄みを感じるのよね。きちんと手入れされてるだけじゃないっていうか」
「私さ、吹雪ちゃんがボコボコにされたって聞いて半信半疑だったんだけど、ちょっとだけ納得できたかも。艤装に差があり過ぎるもん」
「ウチの整備班の実力が足りないとは思えないですから、あちらさんが規格外なのでしょうね」
「……なんでこれだけすごいメンテナンスが出来るのに、鯉住大佐は提督やってるのかしら? 頼れる相手が増えてこちらとしてはありがたいけれど、五十鈴としては不思議でしょうがないわ」
「元々は呉第1で整備技師やってたらしいじゃない。整備もすごくて提督としてもやり手なんて、すごい才能だよね~」
羞恥心で悶えている比叡はさておき、実際に叢雲の戦闘を見ていなかった蒼龍、祥鳳、五十鈴の3名であったが、出来上がった艤装を手にしたことである程度納得がいったようだ。『確かにこれだけ凄いのを使ってれば、吹雪に圧勝したのもわかる』という具合に。
このようにラバウル第9組は、質の良い艤装を試してみたい気持ちも相まって高い士気を保っている。
対してラバウル第10の方はというと……
・・・
「眠いです……」
「アハハ……提督、徹夜でのメンテナンスお疲れさまでした」
「うん、労ってくれてありがとね古鷹……」
だいぶリラックスしていた。というより提督が死にかけていた。
急な徹夜作業でグロッキーになっている模様。他所の鎮守府という慣れない環境で作業しっぱなしだったので、だいぶストレスが溜まってしまったようだ。
「なによアンタ、呉第1に居たときは大規模作戦での徹夜なんて日常茶飯事だったんでしょ? それと比べるとそこまでじゃないように思えるけど、そんなにキツいの?」
「いやあのな叢雲……そりゃそうなんだけど、徹夜での作業には事前の心の準備が必要なんだよ……この年になると『今日は徹夜しよ!』みたいなノリで出来るもんじゃないんだよ……」
「まぁその、アンタが無理する事になったのは私が悪かった面も多々あるから、それについては謝っておくわ……悪かったわよ」
「いいよいいよ。結局実力の擦り合わせはどこかしらでしなきゃいけなかったんだし。ただ吹雪さんには一言謝罪入れておいてもらって……」
「あの頭イノシシな長女にはそんなもの必要ないわ」
「さいですか……」
一晩明けて頭が冷え、叢雲は色々と反省したようだ。
しかし吹雪のデリカシーのなさについては許すつもりはない模様。相当お冠である。
「悪りぃな提督。もっといい代案がありゃあ俺たちが協力できることもあったかもしれねぇんだけどな。メンテについては最低限しか分かんねぇからよ。
だがお陰様でいい勝負ができる……かもしれないようになったぜ」
「そうね。これで来る大規模作戦の時に実働してくれる部隊の戦力把握ができるわ。
私たちが後方支援に徹するのはいいけど、前線部隊の実力がわからないんじゃ上手く支援できないでしょうから。
それと帰りの運転はこっちの基地の自動車免許持ってる人がしてくれるよう手配しておいたから、帰りはゆっくり休んで」
「ありがとうふたりとも、心遣いがマジで嬉しい……
……そういえば天龍も足柄さんも、俺が渡した艤装はそのままなんだね」
「俺の場合は、これ着けてる時と着けてないときで動きが別物になるんだよ。まだまだ動作制御が完璧じゃねぇから、少しでも場数踏んどきたくてな」
「渡した本人が言うのもなんだけど、それかなりトンデモ性能だからね」
「おう。なんつーか、原付がスポーツカーになるような感覚っつーか……
地獄の研修の日々が無かったら、確実に使いこなせてねーだろな、これ」
「運転したことないのにその例えが出るの謎だけど、そんな違うのか……くれぐれも無理しないでくれよ」
「分かってるって」
「私の方は、そこまで戦局に影響なさそうだからそのままでいいって判断かしら。
あくまで電探だから直接火力には影響ないし。まぁ命中率は変わるけど、相手の練度を考えると誤差の範囲ね」
「あー、そういうことだったら納得かな。眼鏡型だから一回外すと増設部分との接続が大変だしね」
「そうなのよね。ていうかどういう技術で増設部分と眼鏡をオフライン接続してるの?
未だに私仕組みがよく分かんないんだけど」
「妖精さんによる情熱の結晶と言いますか……」
「貴方にもよく分かんないのね……よくそれでメンテナンス出来るわね」
「経験と勘でなんとか……」
「やっぱり貴方おかしいわよ」
特別な艤装については相手方に貸し出すのはやめたようだ。
というか鯉住くんのプレゼントでもあるそれらは、他の艦娘が装備しようとしても艤装についている妖精さんが拒否するので、当人たち専用だったりする。
ふたりからすると、提督がわざわざ自分にプレゼントしてくれた特別な艤装を外したくないという思いが強いので、そういった事が無くても貸し出しはしなかっただろうが。
「しかしこれで実力差をある程度埋めることができます。ありがとうございます提督。
私たちとしては他鎮守府の戦力把握、相手方としては格上に対する戦いの経験を得ることができます」
「お互いに得られるものがあれば、頑張った甲斐があるってもんだよ。
……そういえば、俺がメンテしてる間に演習前の擦り合わせを大井がしてくれたらしいけど、どんな反応だった?」
「お互いの演習目的については好意的に受け入れていただきました。
こちらの方が実力がある前提で話していたのですが、嫌な顔ひとつせずに真剣に話を聞いてくれましたよ」
「うーん……流石は鈴木大佐だぁ。イキった後輩と見られてもおかしくないのに、冷静な判断力……懐が深い……憧れちゃう……」
「貴方も同じ大佐なのですから、もう少し憧れられるように振舞ってください。
それは置いておいて、追加として『二つ名もちの姫級率いる艦隊と同じくらいの実力』と伝えてあります」
「それはまぁ……本物の姫級なアークロイヤルと天城はいないけど、このメンツなら艦隊単位でそれくらいの実力にはなるか」
「そういうことです。お相手もそのつもりで全力で挑むと言ってくださいましたので、こちらとしても無様を晒すわけにはいかなくなりました。
まぁ、普段通りを心がけていれば大丈夫でしょう」
「わかった。それじゃそろそろ開始の時間だし、みんな頑張って……」
「ちょ、ちょっと待ってくださぁい!!」
鯉住くんが話を〆ようとしたところで待ったが入った。新人の速吸である。
「どしたの速吸? 何かわからないことでもあった?」
「ありますよそれはもう!!
今の話を聞いてると、私まで二つ名個体と同じ実力があるように思われてると思うんですけど!!」
「大丈夫だよ、実戦経験が無くて不安だと思うけど、みんなフォローしてくれるから」
「それは心配してないですが、空母2隻相手に航空戦しないといけない身なんで、そんなにハードル上げられるとやりづらいと言いますか……!!」
「大丈夫だって。制空権については出来るだけ頑張ってもらえばいいから。みんなフォローしてくれるから」
「そ、それはそうですけどぉ! 気持ち的にぃ……!!」
「大丈夫大丈夫。こういう格上ばっかりの修羅場でも必死でやればどうにかなるって、みんな経験で知ってるから。俺もみんなもそういう場所で研修受けたから。
速吸はまだ経験してないから心配だろうけど、死ぬことはないし大丈夫だから」
「今修羅場っていった! やっぱり自覚あるんじゃないですか!!」
「大丈夫大丈夫。それじゃみんな、勝利以上に演習の目的が達成できるよう、頑張ろうね」
「「「 ハイ!! 」」」
「まだ話し終わってないのにぃ!!」
だいたいの練度比較
ラバウル第10……みんな90前後。天龍は170くらい。速吸ちゃんは50くらい。
ラバウル第9……みんな70前後。一般的に見るとかなり高いレベルでバランスがとれた精強艦隊。
練度が20も違えば、艦種差はほとんどなくなる感じ。相手に艤装バフがかかってますし、いかに速吸ちゃんにハードな環境かわかりますね。
まぁもっとハードなエクストリーム環境(鬼ヶ島だったり将棋の国だったり日本海軍の準トップ鎮守府だったり)で研修を受けてきた人たちには、その気持ちは伝わるけど加味してはもらえないんですが(無情)