A.タッフィーくんの主人(現ガンビア・ベイ)が鯉住くんにもらった飴ちゃんを配ったせい。敵対勢力を色眼鏡かけず見られる相手と期待した。あと日本のお菓子が美味しかった。
「いやー、結局みんな集まってきちゃったな! 参った参った!」
「そりゃ鯉住くんが館内放送で『みんな起きてるか!? 技術班はプールに全員集合!! 護衛として天龍龍田も!! それ以外でもいろいろ気になる奴は野次馬しにきてもいいぞ!!』なんて言うから」
「だって除け者にされたら嫌だろ? 昨日からお客さんいるって話だし、みんな気になってしょうがないと思ってな!」
「キミのそういうところ好きだけど、これだけ集まっちゃうと収集つかなくない?」
「……まぁなんとかなるだろ!!!」
「……それもそっか!」
鯉住くんのアナウンスにより技術班が全員集まったのはいいのだが、別に来たい人は来てもいいという言葉通りに、それ以外のメンバーも全員集まってしまった。
全員というのは本当に全員である。ラバウル第10メンバーだけでなく、普段は何処かに隠れている妖精さんたちや、研修でしごかれている4名もである。
寝ていた者は仲のいい同僚に起こされて、仕事中だった者はキリの良いところで切り上げて、自室でダラダラしていた者は急いで着替えて集まってきた。
任務で海に出ている者がちょうどいなかったので、全員集合と相成った。いくら異常事態に慣れているとはいっても、クッソ強そうな姫級が何体も昨日から滞在しているのだ。ほとんどのメンバーにとっては気になってしょうがない状況なのである。
「よーし、良く集まってきたなみんな!!
それじゃ技術班はこっちに集まって明石から色々聞いてくれ!! それ以外の野次馬たちについては俺から色々説明する!! 何か質問ある人!!」
「はい」
「ハイ叢雲!!」
「ツッコミどころしかない状況には慣れてきたけど……とりあえずひとつ。なんでアンタまたそんなテンションになってんのよ……」
「せっかくの珍しいお客さんだから、気合入れてもてなさないとだからな!!」
「ああダメねこれは……絶妙に会話が成立しないわ……」
「なんだかしらんがよさそうだな! ハイ次の人!!」
「あの……」
「ハイ研修生の葛城さん!!」
「えーーーーーーーと……なんて言ったらいいかその……常識的に考えて、そこで遊んでる姫級たちって、撃退とかしなくていいんでしょうか……?」
「戦力的に100%負けるのでケンカは売れない!! だからその線はナシ!! そうじゃなくても艤装メンテを頼みに来たお客さんだから、戦闘しないでもてなすけどな!!!」
「えっと、あの、そう、ですか……いいのかなホントに……?」
「それじゃ次の人!!」
「なぁ提督」
「ハイ天龍!!」
「一応俺と龍田は護衛って放送で言ってたけどよ、アイツら相手じゃ正直キツイぜ?」
「そこは問題ない!! ガチ戦闘はお互い望むところじゃないから、あくまで突発的な事故対応だと思ってくれ!! 俺は人間で脆いから、あちらさんがチカラ加減を間違えて挽き肉にされる、なんてこともあるかもだからな!!」
「あー、あっちが本気じゃなきゃいけるか」
「そういうこと! ハイ次!!」
(しつもんがありまーす)
「ハイ英国妖精シスターズの長女さん!!」
(あちらの ぎそうのみなさん とってもたのしそうでーす!! わたしたちも まざってきていいですかー?)
「おっ、いいぞいいぞ!! みんなで仲良く遊んでおいで!!」
(やったでーす!!)
「うんうん、元気が一番!! それじゃ次!!」
「いいかしら」
「ハイ、アークロイヤル!!」
「見知った顔はまぁいいとして、頭の弱そうな蛮族が何体かいるようだけど。admiralに狼藉を働くようなら私は許さないわよ?」
「気持ちが嬉しい!! でも護衛は天龍龍田に任せるから安心してくれ!!」
「……天龍なら心配要らなさそうね。ま、いざとなったら私と天城でケジメをつけさせてやろうか」
「ハハハッ、頼もしいよアークロイヤル!! では次!!」
「ねぇちょっと……」
「ハイ研修生の瑞鶴さん!!」
「ここで拷も……すごいキツイ研修受けたからなんとなく分かるようになったけど、あの姫級たちってどいつもこいつもヤバくない……? アークロイヤル並の怖気を感じる奴がちらほらいるんだけど……」
「いい目利きじゃないか! 研修頑張った成果が出てていいと思います!!
アークロイヤル、天城と同じくらいなのが3人。そこから一段落ちてふたり。もう一段落ちてふたりってとこかな!! ちなみに瑞鶴さんはあの中に混じると一番下か下から二番目の実力だから、もうちょっと努力しましょう!!」
「なんか腹立つんだけど……ていうかなんでそんなの大佐がわかるのさ」
「勘としか言いようがない!!」
「なにそれ……堂々と言うセリフじゃないんだけど……? 今日の大佐、頭のネジが全部吹っ飛んでない……?」
まさに快刀乱麻。一問一答形式で部下たちの質問に答えていく鯉住くんは、活力が溢れまくっていてオーラが見えるレベルである。回答内容についてはアレだったが。
「うーん、強すぎ。精神力お化け過ぎて人間とは思えないね」
「アラ、チョット目ヲ離シタ隙ニ『ソッチ』ノ姿ニナッテルナンテ。わっあーゆーはぷん(どうしちゃったの)?」
「あのadmiralさんが、名前ないと不便だって言うからさ」
「ソレダケデ? 人間ニ媚ビルミタイデ気乗リシナイッテ言ッテタジャナイ。ソレニ疲レルシ」
「なんていうかさ、別にいいかなって思っちゃったんだよね。それにこっちの姿で居るのに全然疲れないし」
「りありぃ(ホントに)? ジャア私モ試シテミヨウカシラ」
「いいんじゃない? なんか色々こっちの姿の方が都合よさそうな予感もするし」
「アナタガソウ言ウッテコトハ、あ りとる(ちょっとだけ)期待出来ルワネ!!
ソレジャ、めたもるふぉーぜっ(変身)!! ……ふぅ」
「へー、そっちの姿の貴女ってそんな感じなんだね。そのスカート短すぎない? おっぱいこぼれそうだけど大丈夫?」
「ナァイスバディでしょっ!! こっちの私はア・イ・オ・ワよ!! 自慢の黒髪が金髪になっちゃったけど、これはこれで!!」
「そこはどうでもいいけど。で、クジラのご主人様、貴女はどうするのさ?」
「admiralニ嫌ワレタクナイカラ、私モ艦娘ニナロウカシラ!」
「別にあの人その辺気にしないと思うけどね。でもいいんじゃない? 貴女美味しいもの食べたいって言ってたし、艦娘姿の方が食事に向いてるだろうから。それに貴女がお熱なあの人と距離感縮めるにも都合よさそうだし」
「ソレモソウネ!! コッチノ姿ジャ温度ガヨク分カンナイモノネ!! 食事モ熱イきっすモ文字通リ味気ナクナッチャウワ!! トイウコトデ……これでどうかしらっ!?」
「おー、初めてにしてはお上手。ていうか貴女もスカート短いね。痴女?」
「今の私はコロラドと呼んで頂戴。栄光のビッグ7よ! とは言っても別に人類に思い入れとかないから、栄光とかどうでもいいけどね。
……ていうかガンビア・ベイ、貴女だって横から見たらパンツ丸見えじゃない。痴女はどっちだって話よ。前垂れみたいな布はね、スカートとは言わないのよ?」
「好きでこんな姿してるわけじゃないんだよ。ほっといて」
「フン。だったら人の容姿を貶すんじゃないわよ。ま、admiralを脳殺するためには、少しセクシュアルなこの服装も有りよりの有りよね!!」
「私は何言われても別にノープロブレム(気にしないわ)!! 心もカラダも太平洋のようにでっかい女だから!! フフン!」
なんだかんだ鯉住くんが部下たちを振り回している間に、お客さんたちの中で色々話がまとまって、約半数が艦娘姿になっていた。
ちなみに変身する時にめっちゃ光っていたので、この場の全員が目を奪われていたりする。いや、鯉住くんと彼につられてハイテンションになってる明石は気づいてるけど全然気にしてないので、目を奪われてるのは厳密には全員ではないが。
……実はという話だが、深海棲艦から艦娘の姿になる(転化する)のは、けっこう覚悟がいることだったりする。
アークロイヤルと天城(あとコマンダン・テストも)はアッサリ転化してたし、今回のお客さんの転化した3名もアッサリしたものだったが、それは彼女たちがバグめいた実力を持つからであり、自我がハッキリしているからである。
転化してしまうと普通は艦娘側に自我が引っ張られる。その結果、元々持っていた人類に対する憎しみと新たに芽生えた庇護欲がバチボコに反発し合うことで、最悪アイデンティティが崩壊する。
実際そうなった個体はいないが、本能レベルでそれを感じ取ることで『不快感』『嫌悪感』『忌避感』という形で無意識レベルでのアウトプットが為されるのだ。
もちろんガンビア・ベイ、アイオワ、コロラドの3名にも、このような嫌悪感は少なからずあるはずだった。現に前回来たときはふたりとも転化を『なんとなく嫌だな』と思って拒否した。
今回そのような忌避感が彼女たちになかったのは---誰にも知られないことだが---鯉住くんがコツコツ計画を立てて、コソコソと業者に協力してもらって造り上げ、毎朝日課として手を合わせて冥福を祈っている、鎮守府の隅にある慰霊碑が大きく影響していたりする。
バタフライエフェクトという言葉があるが、何の気なしに建てた慰霊碑が大きな役割を果たすこともある。何がどう転ぶかなんて誰にも分らないものなのだ。
「……ネェ榛名」
「……はい、金剛お姉さま」
「なんか姫級が艦娘に変身したヨ。ナニコレ?」
「榛名達は夢でも見てるんですかね……?」
「夢ならばどれほどよかったデショウ……」
「榛名もうわかんないです……」
「お姉ちゃんもよくわかんないデース……」
・・・
技術班サイド
・・・
鯉住くんに説明を任された明石によって、深海棲艦(姫級)の艤装をメンテする事が発表された技術班メンバー。大概の無茶ぶりはいつも通りではあるが、このレベルはなかなか無いようで、みんなして現状把握に務めていた。
ちなみにメンバーは明石、夕張を筆頭に、秋津洲、北上、最近自分に出来ることを探して夕張にメンテを教えてもらってるマエストラーレ(姿は船渠棲姫)である。
「……というわけで、私たちであちらさんの艤装をメンテしていきましょう!」
「ねえ明石さん。私と明石さんは前にもメンテしたからなんとなくやり方わかるけど、他のみんなはちょっと厳しくない?」
「む、夕張に出来るなら秋津洲にも出来るかも!!」
「だって秋津洲、最近は食堂ばっかりで工廠に全然来れてないじゃない」
「むー! だからってそんなに簡単にやり方忘れないもん! 艦載機の扱いだったら夕張より上かも!!」
「普通の艦娘用艤装ならそうかもしれないけど、今回は深海棲艦艤装なのよ?」
「まぁまぁふたりとも! 秋津洲ちゃんにもちゃんと期待させてもらってますからね!! それはそうと、北上さんはどうです?」
話を振られた北上は、たははーと頬をかきながら苦笑いしている。その理由は当然ながら、この状況の異質さに完全適応していないからだ。
「んー、アタシじゃちょっと荷が重いよねー。そもそもだけどさ、そこで遊んでる海産物を艤装って言い張ってる状況を飲み込めない程度には常識捨ててないんだよねー」
「え? やですよぉ北上さん。どう見ても艤装じゃないですか。ね、夕張ちゃん?」
「そうですよ、見てくださいあのマッチョマンの肩にくっついた立派な砲塔。どう見ても艤装じゃないですか。ね、秋津洲?」
「そうかも! あのイカちゃんの触腕よーく見てみるかも。ちゃんと関節部分がジョイントになってるからちゃんとした艤装でしょ!」
「そっかぁ」
ああ、これは何言っても噛み合わないな、と察して、これ以上の深掘りを避けることにした北上。彼女は受け流すことが得意なのだ。流れる水のごとしである。
「みんなして提督に毒されて立派な変人になっちゃってまぁ。
ま、あのシーフード達が本当に艤装って言っていいかどうかはおいとくとして、アタシはこれまでどーりサポート役で立ち回らせてもらうよ」
「わかりました! それはそれで大事な役目ですからね。頼みましたよ!」
「オッケー。で、この駆逐どうする?」
北上の視線の先には、頭を抱えてうずくまっている、深海棲艦の姿をしたひとりの駆逐艦娘が。
「深海棲艦コワイ……姫級コワイ……」
「ウチに来た事情というか、深海棲艦の姿になっちゃった事情が事情なので、トラウマが蘇っちゃってますねこれは!」
「だよねー。普段面倒見てくれてる、はっちゃん(初春)とねのっぴー(子日)に任せちゃおっか? そんで自室かどっかでおとなしくしててもらう?」
「いえいえ! 相手は深海棲艦ではなく、その艤装ですので大丈夫でしょう!!」
「うーん、本当にそうかなー?」
「大丈夫ですよ! 私、夕張が指導役として保証します!
まだまだ師匠から独り立ちできてない私が言うのもなんですが、マエストラーレちゃんはすごく筋がいいんです!! 深海棲艦の艤装でもすぐに慣れちゃいますよ!」
「うーん、そういう問題なのかなー?」
「北上、よく見て! あの艤装達すごく楽しく遊んでるから、絶対いい子たちかも!! マエストラーレでも手に負える範疇かも!!」
「うーん、艤装ってそういうもんだっけかなー?」
変態メンテ集団と化した同僚からの猛プッシュを受けた北上は、色々めんどくさくなった。そして思った。『諦めも肝心だよね』と。
「……まーいっか。一緒に頑張ろーな駆逐ー」
「全然ヨクナイヨゥ……助ケテ、北上サン助ケテェ……!」
「だいじょーぶだいじょーぶ。世の中なんとかなるようにできてるからさー」
「ウエェェェン!!!」
出てこなかった皆さんの心中
大井「北上さんは尊いなぁ(現実逃避)」
足柄「なんだか料理振舞うことになりそうね。団体さん向けに大量仕入れしてた分がはけてちょうどいいかも」
初春「妾の旦那様は頼もしいのう!」
子日「鯉住さん大丈夫かなぁ。前にこうなった時は倒れちゃったから心配だなぁ」
龍田「天龍ちゃんと一緒に護衛がんばろ~」
天城「ねむいです……あと服が窮屈……」
コマンダン・テスト「なんか変なのがいっぱいいるぅ!? コワイ! でも提督がいつもよりも頼もしそうだから、私のこと護ってくれるわよね……!? 信じてるから、裏切らないでよ!!」
速吸・龍鳳・神威「(フリーズ中)」