艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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投稿が4か月以上空いてしまいクオータリー任務と化してしまい、これはもう申し開きできないやつですね。申し訳ございません……
仕事が変わって生活リズムが変わったりしてなかなか書く方に手が回らず……

落ち着いてきたので、これからはもうちょっとペース戻せればなぁなんて思っています。


第174話 地獄の盆踊り

湿った空気を吹き飛ばすようにドォンドォンと大太鼓の爆音が轟くラバウルの空。

二つ名個体級の姫級が多数襲来した(お供の健康診断に来た)ラバウル第10基地は、現在お祭り騒ぎとなっていた。実際お祭りを開催していた。

 

 

「ハーッハッハッハッ!! みんな踊れー!!」

 

 

 鎮守府前の広場の中心に備え付けられた櫓。その上で妖精さんが用意した大太鼓をドンガドンガ叩いているのは、この鎮守府の提督であり現在絶賛はっちゃけ中の鯉住くん。階級はこんなでも大佐。 服装はサラシに法被、下は半股引(はんだこ・股引のハーフパンツバージョン)という完全お祭り男スタイルでノリノリである。

 

 ちなみに彼のすぐ傍では初春、子日、マエストラーレ(姿は船渠棲姫)が、三人官女よろしく十二単を着ながら横笛を吹いている。十二単は妖精さん特製の常夏ラバウルでも熱くない空冷仕様。謎技術を無駄なところに存分に使い尽くした逸品である。

 

 そして、その櫓を囲むように他のメンバーが浴衣を着ながら盆踊りを楽しんでいる。そこにはお客さんである姫級たちもしっかり混ざっており、ジャパニーズオリエンタルスタイルOMATSURIを大いに楽しんでいる。

 また、ずらりと並んだ出店では給糧艦たちが焼きそばやら焼きトウモロコシやらイカ焼きやらを出しており、盆踊りの輪に参加していないメンバーたちはそっちで楽しんでいる。

 

 みんな楽しそうではあるが、控えめに言って鎮守府でやることじゃない。

 

 

「提督ノリノリだよねぇ。大井っちは踊んないの?」

 

「あの百鬼夜行に混ざるのはちょっと……そういうキャラクターでもありませんので」

 

「だよねー。ていうかアタシ達が着てるこの着物ってどっから出てきたの?」

 

「何やら英国妖精たちの建造炉?製鉄所?から出てきたとかなんとか……」

 

「あー、あれね。それじゃこの着物って艤装の資材からできてんの?」

 

「意味が分からないですがそういうことかと。本当に意味が分からないですが」

 

「どう見てもこれ西陣織とかそんな感じなのにね。提督やっぱおかしいわ」

 

「それには完全に同意ですね」

 

「まぁ楽しいからいいよねー。あまぎんのおかげで近場に敵がいないのハッキリしてるし、気楽なもんだよ。みんなして近海哨戒もせず祭りしてるのなんてウチだけじゃない?」

 

「祭りを鎮守府でやってる時点で正気じゃないです」

 

「まぁねえ。楽しいからいいけどー。イカ焼きうめー」

 

「ハァ……あの人にはもっとしっかりしてもらいたいんですけど……」

 

 

 普通の鎮守府であれば、どんなに戦闘が少ない地方でも警備に人員は割くものである。それはまぁ当然のことだ。

 しかしここでは転化体の天城がチート索敵を行っているため、その必要がない。よって全員で気を抜きまくって祭りを楽しんでいるというわけだ。そもそも敵のボス級がいっぱい参加してるじゃんとかいう意見は棚上げしておく。

 

 

「ハイハイ! みなさんご飯できましたよー! よく一晩のメンテ頑張りましたね!!」

 

「秋津洲が捌いたお魚さんたちかも! マグロやカレイ、淡水魚ではウチで育てたイワナもあるかも!」

 

「はいみんな並んでねー。いっぱいあるからねー」

 

 

 祭りを楽しんでいるのは艦娘や姫級だけでなく、深海艤装のみんなもである。

 工廠でメンテが終わって一息ついた後はご褒美タイムということで、明石、秋津洲、夕張の3名によるごちそうが振舞われていた。

 出店から持ってきた屋台グルメと秋津洲がちゃちゃっと用意した大量の刺身である。この鎮守府で作った醤油とワサビも添えてある。

 普段であれば食卓に並ぶ側であるエビ、カニ、イカ、貝なんかがおいしそうにごちそうをつついている光景はなかなかにショッキングであった。

 

 

「こっちでは利き紅茶やってますヨー。どしどし参加するデース」

 

「盆踊りがわからない方には榛名が手本を見せますので、こちらまでどうぞー」

 

「はぁっ!? ちょっと、なんで私だけ浴衣じゃなくてこんなにゴツい陣羽織なのよ、妖精さんたち! あ、ちょ、背中押さないでってば! 今から着替えてくるから!!」

 

「うーん、もう少し櫓のデザインを豪奢にしてもよかったかな? 妖精さんたちがこんなに自由自在に宮大工顔負けの仕事してくれるって分かってたら、妥協しなかったのになぁ……!!」

 

 

 研修中の4名もなんだかんだ現実を受け入れることができているようで、場に馴染んでいる。

 金剛は屋台で呼び込みしてるし、榛名は半ばヤケクソ気味に深海勢に盆踊りの振り付けを教えてるし、瑞鶴はひとりだけ特別な着物に着替えさせられてるし、葛城は自分がデザインした櫓だの神輿だのを見てうんうんうなっている。

 彼女たちも数か月はここに居るだけあって、このような異常空間にも免疫ができているようだ。なによりである。

 

 

「オイ、陰気ちびすけ!! コレガ私ノ渾身ノ一発! 名付けて『あとみっく・たいふーん』ダ!! テメエノショボクレタ花火ナンザ、消し飛バシテヤルゼェ!!」

 

「ハァ、野蛮極マリナイコト……コノ私ノ『あとらんてぃっくおーしゃんノ夕暮レ』ニ勝ル花火ナド無イトイウノニ、現実ヲ見ズニ喚イテ騒イデ……マルデ道化ネ」

 

「はぁ!? ンダトてめぇ!! 冗談ハソノ貧相ナ見タ目ダケニシタラドウダ、あぁん!?」

 

「アァ五月蠅イ五月蠅イ。ソウイウトコロガ野蛮ダト言ウノヨ」

 

 

 今回初顔見せのお客さんの中でも、やたらとヤンキーっぽい姫級と小柄な姫級は自作の花火を自慢し合いつつ罵り合っている。

 やたらとケンカ腰なのに一触即発という空気がないので、提督の護衛を担う天龍龍田姉妹や鎮守府周りの防衛レーダーも務める天城もこれを放置しているようだ。このふたりなりのコミュニケーションということなのだろう。

 

 

「ぎゃははははは!! オイあんたハドンナ花火作ッタンダ!? 私ハ艤装達ノ姿ヲ模シタノヲ作ッタゾ!! ソノ名モ『いかチャンすぺしゃる』ゥゥ!!!」

 

「アラマァ、わたくしト同ジ発想デスカ。心外デスネ。賢イ賢イわたくしガアナタノヨウナ頭はっぴート一緒ナンテ。マ、芸術ト知能ハ連動シナイモノ。イイデショウ。許シテ差シ上ゲテモ」

 

「ハーーーーー!? 言イタイ放題ジャナイカ、変ナ服着トイテ偉ソウニ! ソコマデ言ウあんたハドンナノ作ッタッテンダヨ!!」

 

「『黄金比長方形無限回転体貝殻』デスヨ」

 

「ナンダソノ頭悪イ名前!?」

 

「ワカリマセンヨネ、コノせんすノ良サ。知性ガ欠如スル生命体デハ」

 

「ぎゃははははは!! 一周回ッテすげー阿呆ダゼあんた!!」

 

 

 こっちはこっちでメチャクチャ煽り合っている。護衛メンバーが動いてないところを見るに、こちらもじゃれ合い判定なのだろう。

 ちなみによく笑っている姫級が鳥海にすごく似ている方で、インテリっぽい雰囲気の方が妖精さんが夏を刺激するような水着を着ている方である。

 

 

「アイオワはハルナに盆踊りを教わりに行ったけど、アンタは行かなくていいの? 踊り方わかんないと参加できないよ」

 

「ハムッ!! ハグッ!! いいのよ、そんなの後で!! モグモグ……幸せッ!!」

 

「あーあーそんな両手いっぱいに食べ物持って。何食べてんの? 焼きイカ、焼きトウモロコシ、焼き鳥、焼き魚、焼き餅……よくそんなに食べられるね。食い意地張り過ぎ」

 

「ムシャムシャ……そっちの姿だとガンビア・ベイなんでしょ? 軽空母なんだから食欲も少ないアンタにゴチャゴチャ言われたくないわ!! ん~、美味しい!!」

 

「ハイハイ、天下のビッグ7、コロラド様には余計な口出しだったね。ま、私もりんご飴食べてるから人のこと言えないけどさ」

 

「モチャモチャ……アンタそのシニカルな物言い直した方がいいわよ。あの素敵なアドミラルの爪の垢でも少しもらったら?

とにかく、私はここに美味しいもの食べさせてもらいに来たの!! だから食べたいモノ食べさせてもらうのが大正解なのよ!!」

 

「別に他からどういわれようが気にしないから、そういうのどーでもいいけどさ。やっぱ戦艦級ってよく食べるよね」

 

「今でも大満足だけど、食後のデザートも欲しいところね!! そのあとはアドミラルと素敵な夜を過ごすのよ!! ディナーを一緒に過ごした男性と一夜を共にする、完璧なプランね!!」

 

「全然一緒に過ごしてないように見えるけど。それにあのアドミラルさん、頭おかしいけどそういうところはお堅そうだから、そんなうまくいかないと思うけど」

 

「同じ空間に居るんだから誤差よ!! それに私の魅力をもってすれば男なんてイチコロ!!」

 

「イチコロねぇ。コロラドだけに?」

 

 

 こっちはお客さんの中でも転化してくれたメンバー。アイオワは榛名のところでニコニコしながら盆踊りを教わっており、残りのふたりであるガンビア・ベイとコロラドは隅っこの方でおとなしく屋台でもらってきたあれやこれやをモグモグしている。

 転化してない組と比べると随分と落ち着いたものなので、周りの鎮守府メンバーも放置している状態だったりする。

 

 

 

 全体を見ると、お祭り会場で楽しんでいる面々、花火の出来で言い争っている深海棲艦姫級軍団、自分たち向けに用意されたごちそうに舌鼓を打つ深海艤装軍団(海鮮)、櫓の上で熱いパッションを奏でる提督とお供の駆逐とかいう、人外魔境感が半端ない事になっている。普通じゃないと名高い鯉住くんの鎮守府基準でもだいぶカオスな空間である。

 

 そんな謎空間の中心にいる鎮守府の主、鯉住くん。太鼓をボンゴボンゴしつつ何を思いついたのか、近くにいた明石に大声で話しかける。

 

 

「あぁかしぃー--!!!!」

 

「どしたのー---???」

 

「俺たちだけ楽しんでたらバチがあたるよなぁあ!? ということで、楽しい空間をおすそ分けだ!! 動画配信しよう!!」

 

「いいねぇ!! 軍紀とか常識とかが邪魔して普通じゃ考えついても口にできないアナーキーな発想!! さすがは鯉住くん!!!」

 

「ハハハハハ!! だろぉ!?」

 

「妖精さんに出来るか聞いてみるからね!! どう!?」

 

 

(これだから こいずみさんは たまらないんですよねぇ!!!)

 

(すてき! だいて!!)

 

(わたしたちでも できるかびみょうだけど…… やるしかない!!)

 

(のるしかない この びっぐうぇーぶに!!)

 

(ものども しゅつげきじゃあ!!)

 

(40びょうで したくしな!!)

 

((( いえっさー!!! )))

 

 

「妖精さんたち何言ってるかわからないけど、ノリノリで工廠に向かってったよ!! 多分配信できると思う!!」

 

「うはははー--!!! 楽しむならみんなで!! テンション上がってきたぜー--!!」

 

「艤装メンテの疲れも吹っ飛ぶよねぇ!!」

 

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