艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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お待たせしました。
他の作品を書きたいけど今のも進めないとなと思ってモヤモヤしていたり。


第179話 大規模作戦の準備

 日本海軍全体で行われる今までにないほどの大規模作戦。その準備として戦力としてのメンテ技師受け入れをしてからだいたい1週間経った。

 時間というのはだいたいの問題を解決してくれるもので、新入り達も何とかこの鎮守府に慣れることができた。

 ここに来た当初はおもてなしされている感が強すぎて所在なさげにしていた面々も、今では美味しい料理に気晴らしの農作業を楽しんだり、生け簀や波止場での釣りや水族館で優雅なひと時を楽しんだりと、いい感じに肩のチカラが抜けてきている。

 このままここに馴染みすぎると元の鎮守府に戻った時が大変なのだが……その時がきたら娯楽施設のない普通の鎮守府生活を頑張っていただきたいところ。

 

 とにもかくにも、新入り達が馴染んできたおかげでこの鎮守府もだいぶ安定した運営ができるようになってきた。

 そんなタイミングでラバウル第1基地の白蓮大将から連絡があったのだ。

 

『金剛と榛名がアホみたいに戦力になってるから、そっちに高雄よこすわ』

 

 とのこと。

 自分たちが鍛えた相手が活躍できてるようで、教導担当だった叢雲と古鷹は満足げだった。それはそれとしていつもの投げやり連絡に呆れ顔でもあったが。

 まぁテキトーなのはいつもの白蓮大将なので置いておくとして、日本海軍有数の大規模鎮守府で筆頭秘書艦として色々と仕切ってきた高雄が来てくれたのは鬼に金棒だ。内輪だけで鎮守府運営するならなんとかなっても、他の鎮守府からのメンバーがゴチャゴチャな状態で運営するというのは勝手が違うからだ。

 そういうところで容赦なく頼らせてもらおうと考える鯉住くんである。

 

 そんな重要人物でもある高雄だが、現在執務室のこたつ机の一角でラバウル第10基地首脳陣と一緒にくつろいでいる。それでもって自身の提督のいつも通りさに呆れ、ため息を吐いている。

 

 

「ハァ……いつもすいません鯉住大佐。私からもキツく言っているのですが、暖簾に腕押しで……」

 

「いえいえいえ、高雄さんはまったく悪くないですよ。あの自由人が全部悪いんですから。それにしても本当に留守にしてきてよかったんです? ラバウル第1に高雄さんがいないのってけっこう心配というか……」

 

「それについては問題ありませんわ。ウチに対しては最悪ここから私が指示を出しますので」

 

「……? ええと、それはどういう……?」

 

「秘書艦のひとりである能代に対応マニュアルを渡しておきましたので、それの通り行動すればどうにかなる体制をとっています。それでもわからないことがあった時や、方針に迷った時は私に連絡するように伝えてありますので、どうとでもなりますわ」

 

「おお……すごい用意周到!」

 

「まぁそのマニュアルの半分ほどが、提督の暴走をコントロールする方法についてなのですが……」

 

「ホントあのオッサンは……」

 

 

 どうやら高雄は自分がいなくても現場が回る環境を整えてからやってきたようだ。出来る女は違うなぁとしみじみ尊敬する鯉住くん。

 そして自身の秘書艦としての最初の先生でもある高雄のすごいところが見られて、ドヤ顔で鼻高々になっている叢雲。

 そしてそしてそんな3人を見ながらウフフと微笑んでいる古鷹。

 

 日本海軍最大の危機の渦中だというのに、なんとも締まりがない空間となっている。

 

 

「いやでもホントに高雄さんが来てくれてよかったですよ。実際に受け入れる他鎮守府の方って出撃する艦娘の皆さんだけらしいので、そちらの提督さんの指揮を頼ることができないとのことなので……正直不安なところが大きく」

 

「それは仕方ない事ですわ。そもそもいつもの場合では『各鎮守府に割り当てられた海域を期限までに解放』ということで個別主義な面も強かったのですが、今回初めての『総督府に戦力を集めての統括指揮』という体制になったんですもの。前例がなく不安に駆られるのも無理なきことです」

 

「今までの大規模作戦と違って敵部隊の出現位置がハッキリしてない……というか出現箇所が多すぎて柔軟性が求められるってことだもの。高雄の言う通り仕方ないわ」

 

「そう言っても叢雲、それぞれ方針がちょっとずつ違う鎮守府の艦娘さんたちを俺がまとめなきゃいけないんだよ? 後方支援に関しては任せてくれって大見得切ったけど、戦略面、戦術面は荷が重くてなぁ……」

 

「そこは安心してください提督。そのために私達がいるんですから。それに高雄さんまでついてくれています。心配な気持ちは分かりますが、提督の思う通りになさってください」

 

「ありがとう古鷹……大天使……やっぱり最後に帰るところは古鷹なんだよなぁ」

 

「そ、それってどういうことですか提督!?」

 

「……ハァ」

 

 

 古鷹に穏やかな目でほほ笑む提督、その視線を受け顔を赤くしてアタフタする古鷹、そんな空間を眺めてじっとりした目をする叢雲。この鎮守府ではいつもの光景だが、かなり甘ったるい空気なのは間違いない。

 そんな面々を眺めて高雄は苦笑いである。日本海軍始まって何度目かの大きな危機だというのに肝が太いというか、戦術核レベルの深海棲艦と日常的に触れ合ってるだけあって特殊な環境に慣れているというか……半ば呆れ、半ば安心という心象具合だ。

 

 とはいえ彼らの艦隊に救援を受けて命を救われてから、そんなこと今さら言うまでもないことでもある。彼らには何度も頭を抱えさせられたものの、人類と深海棲艦の関わりに大きな進展を見せてくれた時代の牽引者達でもあるのだ。

 多少のことは受け流しつつこの一大事を共に乗り切ろうと、こっそり気合を入れる高雄。この難局を乗り切るための話し合いは肝要であるので、話をそっちに持って行こうと話題の舵を取る。

 

 

「……コホン、そういうわけで今回の作戦は前例がないわけです。本格的に稼働する前にどうやって総督府として運営していくのか話を詰めてしまいましょう」

 

「あ、ああ、そうですね。一応こちらでも考えていた方針というか方策というかがありますので、確認お願いしてもいいです? 叢雲、あれだして」

 

「ええ、今の話にあったものを纏めたのがこれよ。読んでみてもらえるかしら?」

 

「あら、しっかりしたレジュメまで作ってあるなんて用意がいいわね。秘書艦業務を教えた身としては嬉しくなるわ」

 

「フフン、私もコイツの面倒見なきゃいけないから成長したのよ」

 

「叢雲には頼らせてもらってますよ、高雄さん」

 

「自覚あるんならもっとしゃんとしなさい」

 

「……精進します」

 

「ふふ、それではこの資料拝見しますね。どれどれ……」

 

 

 叢雲がまとめたと思われる総督府運営に関する資料は、なかなか隙が無くしっかりしたものであった。

 危険度が低そうな、もしくは撤退が簡単に行えるであろう海域から偵察を兼ねて攻略。その結果により無理をせず安全圏を確保しながら包囲するように海域解放を進め、最後は敵のボス個体がいると予想される海域に無補給で出撃できるところまで持って行く。これを各艦隊の実力を考慮しながら割り当てる、というもの。

 情報が整っていないのでハッキリした作戦は立案できないし、羅針盤の結果も関わってくるのであやふやなところも多いのだが、方針としては十分であった。

 

 

「……ええ、これなら問題なさそうね。あとはやってくる艦隊の実力次第と言ったところかしら。そこはどうやって確認するつもり?」

 

「いくつか質疑応答をして大枠をとらえた後に、大井による研修での適正チェック。そして最後に天龍の『怖いかセンサー』を頼ろうと思います」

 

「え、『怖いかセンサー』……?」

 

「はい」

 

 

 なんかよくわかんない単語が飛び出した。なんだそれ。

 

 

「天龍はなんとなく強さが感覚でわかるんですよ。数字で表せるとかじゃないんですけど、ふたりいたらどっちが強いかはわかるし、自分と相手のどっちが強いかもわかるみたいです」

 

「ええ……? そんなオカルトじみたことが???」

 

「まぁ彼女もだいぶ極限状態に追い込まれ続けていましたので、そういった感覚が鋭くなったのかと」

 

「相変わらず頭が痛くなりますわね……」

 

 

 なんかおかしなことを言いだした鯉住くんだが、本人の表情を見るとすごく普通にしてるし、なんなら秘書艦ふたりも普通にしている。常識が違うってこわい。

 これから先もこんな場面にたくさん遭遇するんだろうなぁ……とゆるい覚悟を決めつつも、慣れていくしかないのであまり考えないようにする高雄である。

 

 

「……わかりました。それでは確認するところも確認できたので、あとは各鎮守府からやってくる艦娘待ちですね。他になにか気になるところはあります?」

 

「あー……えっとですね」

 

「あら、鯉住大佐、何か思いつきましたか?」

 

「大変申し上げづらいのですが……」

 

「???」

 

 

 なんか急に申し訳なさそうにする鯉住くんを見て、高雄は首をかしげる。どんな無茶ぶりを受けてもげんなりするだけの彼がそんな反応をするのは初めて見る。言い出しにくい事って何なんだろうか……?

 ちなみに横の秘書艦たちに目を向けると、提督に対してしょーもないものを見る目を向けている。本当になんなんだろうか?

 

 

「あのですね、実はですね……」

 

「実は?」

 

 

 

 

 

「高雄さんの制服艤装が目の毒というかなんというかなので、普段は用意したジャージを着てほしいと言いますか……」

 

「……」

 

 

 高雄は『何言ってんだこの人』と思ってしまった。普段はなんだかんだ彼に対してはかなり良い印象を持っている高雄なのだが、何言ってんだと思ってしまった。

 

 

「……」

 

「何か言ってもらえると嬉しいんですが……」

 

「秘書艦のおふたりは制服では?」

 

「言っても……誰も着て……くれないんですっ!! サイズに合わせたものを支給までしたのにっ!!」

 

「はぁ……」

 

 

 高雄はすごく馬鹿めと言って差し上げたかった。よもや自分の提督以外の相手に馬鹿めと言って差し上げたくなる日がこようとは思いもしなかった。

 

 

「ちなみにその、デザインとかは?」

 

「中学生が着るような単色ジャージです。一番セクシャルを感じないのでッ!!」

 

「……他の目がある中で、しかも鯉住大佐という異性の目がある中で、何の柄もない単色のジャージを着て一日中過ごせと……?」

 

「ジャージ楽でいいじゃないですか! すぐに着替えられて急な出撃でも安心だし、何がいけないんですか!? みんな着てくれないのは何故ッ!?」

 

「……」

 

 

 もう馬鹿めと言って差し上げてもいいんじゃないか? 命の恩人ではあるがそれはそれこれはこれで全然いいんじゃないか? そんなお気持ちである。

 秘書艦のふたりを見てみると目が合った。そしてすごく冷めた目でうなづいていた。女子3名の心がひとつになった瞬間である。

 

 

「馬鹿めと言って差し上げますわ」

 

「なんでっ!?」

 

 

 馬鹿めと言って差し上げることにした。

 

 結局鯉住くんの希望は叶わず、高雄は普通に制服艤装を着た状態で過ごすことになった。鯉住くんの性欲に耐える日々は未だ終わりそうにない。

 




ちなみに大井が執務室に居ないのは、彼女の担当が戦闘関連のみということになってるからです。普段は他のメンバーと同じように過ごしてますね。
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