艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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鯉住くんのところで運動会してる裏で起こってた話です。
鯉住くんが関わらないせいでシリアスになってるのでおまけ的な話。読まなくても全然大丈夫ですので、とばしたい人はそのようにして下さいな。


第182話 アイアンボトムサウンド決戦

 ラバウル第10基地主導のスムーズかつ圧倒的な早さでの索敵任務完了により、海域ボスまでの最短道程は明らかになっていた。

 

 これを機と見たラバウル第1基地の精鋭は、編成を組んで海域に突撃。

 

第1艦隊・金剛改二、長門改二、隼鷹改、飛鷹改、赤城改、雲龍改

第2艦隊・榛名改二、阿武隈改二、長良改、名取改、能代改、照月改

 

 これに無理を通して着いてきた白蓮提督(直接指揮のため。提督が的になる危険さえ除けば連携は格段に良くなる)を加えた必殺の布陣だった。

 

 運航は順調。敵泊地の奥深くまで突撃する。

 しかし順調にいっていると思いきや、大規模な戦力で後方から突然の奇襲を受ける。

 

 奇しくも過去に比叡、霧島を喪った時と同じ状況となる。妖精技術を駆使した電探技術でそれに気づくが、時すでに遅し。

 そこで深海日棲姫が登場。日本古代の巫女を連想させる服装に、即身仏のような肉体。深海棲艦の中でも異形の姫級。

 彼女の存在がアイアンボトム・サウンド特有の強力な磁場と一体化しているため、ジャマーの効果を発揮し、彼女の出現と同時に通信不能に。

 

 

『儂ノ目的ハ全テノ人間ヲ救ウ事ジャ』

『ソノ飛行機雲ノヨウニ儚イ儚イ命、不浄ナル肉体ヨリ解キ放チテ、永劫不滅ノ魂トスルコトデノゥ!』

 

『アノ美シキ瑞穂国。ソコニ生キヅク全テノ生命。ヒトツ残ラズ肉体ヨリ昇華サセ、国ヒトツ丸々全テヲ、人類最後ニシテ最大ノ霊廟トスルノジャア!』

 

『ソコニハ喜ビモ悲シミモナク、只々『在ル』事ガデキル!

完全ナル自由! 完全ナル平等! 彼岸コソガ人類ノ思ヒ描ク理想郷! 人類トイウ業ノ深ヒ生命体ノ、唯一ニシテ至高ノ到達点ハ、ソコニシカ無ヒ!』

 

 

 冷や汗すら凍るほどの圧倒的な威圧感を持つボスに加え、50を越える深海棲艦からの挟み撃ちを受け、さらに通信不能という四面楚歌の状況。未だ小破者すら居らずとも、艦隊は絶体絶命だった。

 

 動揺する艦隊の中で初めに声を上げたのは、誰から見ても無理して作った笑顔を貼り付けた金剛であった。

 

 

「……ここは私が引き受けマス! テートクとみんなは、後方から迫る敵部隊の対処を! このまま挟み撃ちされれば、どう足掻いても全滅しマス!」

 

「そんなっ! ダメ……ダメです!! 金剛お姉さまひとりであの怪物の相手なんて、無謀すぎます! それならば、せめて私も一緒にっ……!」

 

「ノープロブレム! 心配ないヨー! 榛名、電探からの情報を感じ取ったデショウ? 後方からの敵の数は、おそらく50を越えていマス。テートクを護りながらその数を相手するんデスヨ。頭数がいくつあったって足らないネ!」

 

「そう、ですけど……!!」

 

 

 榛名との会話中も、目の前の強敵への集中を途切れさせない金剛。

 誰よりも榛名には金剛の気持ちがわかった。あの時、比叡と霧島も同じことをしたからだ。

 

 

「……オイ、金剛!」

 

「ワッツ? どうしましたか? テートクー」

 

「死ぬことは許さねぇ。これは厳命だ」

 

「そ、そんな、提督! 金剛お姉さまをひとり残していくのですか!?」

 

「黙ってろ榛名。それで返事は?」

 

「……ウフフ。愛するテートクにそこまで言われたら、勝つしかありませんネ! オフコース! 負けるつもりなど端からありマセン!」

 

「良し! 帰ったら何でもひとつ言うこと聞いてやる!

……艦隊転回! 後方より迫る深海棲艦の群れの掃討に入る! 鬼姫級がわんさか居るぞ! 気を抜くな!」

 

 

「「「 ……応ッッ!! 」」」

 

 

 

「提督! 私は……!!」

 

「黙ってろ、榛名! これしかねぇんだからこうするしかねぇだろうが!! それに金剛に死ぬ気なんて微塵もねぇ! お前と一緒に鍛えてきたアイツを信じろ!」

 

「うぅ……金剛お姉さま……どうか、どうかご無事でっ……!!」

 

 

 半泣きになってしまっている榛名を引き連れ、白蓮大将と艦隊メンバーは後方へと退却(前進)する。

 その様子を見る金剛は優しい目をしていた。

 

 

「ふぅ……行ってくれましたカ。ゴメンよ榛名、辛い思いをさせて。……それで、なんでアナタは今の隙に攻撃してこなかったのデスカー?」

 

『隙? ドノクチガホザクンジャア。隙ナドヒトツモ作ットランカッタジャロウ』

 

「まぁ、そのくらいわかる実力はありますヨネ」

 

『ソレニジャ。ドウアッテモ同ジ事ジャカラノウ。逃ゲヨッタ連中モ、殿トシテ残ッタ我ェモ、一刻モスレバ等シク塵ト化ス』

 

『それを、させるとデモ?』

 

『儂ガソウ言ウタラ、ソウナルジャロウガ。……サァ、仲良シコヨシモ此処マデヨ。儂ニハヤル事ガ沢山デ忙シヒ。サッサト我ヲ沈メテ救ッテヤルケェ』

 

「忙しいはこちらのセリフですヨ。アナタをさっさと片付けて、榛名たちを援護に行かないとですカラ!」

 

 

 お互いが放つ闘気が豪と膨れ上がる。空気の密度が一気に高まる。そして……

 

 

『儂ノ救世ノ旅路、ソノ魁トシテヤルケン……往生セイヤァァァッッッ!!』

 

「比叡、霧島……私に皆を護るチカラを下サイ……!

……ここから先には通しマセンッ! かかってきナサァイッッ!!」

 

 

 血戦の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

・・・

 

 

 

 あの時妹たちがそうしたように、金剛は自らが殿となって提督や榛名たちを逃がすことに決めた。しかしそこにあったのは犠牲の精神などではない。

 

 そこに在ったのは、必ず勝って、生きて戻るという覚悟。

 華々しく散ることなど良しとせず、地を這い、泥に塗れてでも、意地汚くても、なんとしても命だけは残そうとする決心である。

 

それを感じ取ったからこそ白蓮大将は、彼女がひとり残ることを許したのだ。当然それがわからない榛名ではないが、とめどなく押し寄せる感情の波に、理性を保てないでいた。

 

 

 

「金剛お姉さま……うっ、ううっ……」

 

「榛名ァ! 泣いてんじゃねぇ!」

 

「だって……これじゃ、あの時と同じ……」

 

「この馬鹿が! 全然違うだろうが! お前らはあの時より何倍も強くなった! だろうが、長門ォ!!」

 

「当然だ! 榛名、泣いている暇があったら一秒でも早く敵を殲滅し、金剛の援護に向かうぞ!」

 

「な、長門さん……」

 

「私とて……伊達でラバウル第1基地の主力を務めてきたわけではない!! 金剛を見捨てるなどあってよいものかっ!! そうだな皆ッ!!!」

 

「「「 応ッ!!! 」」」

 

 

 意気を吐く長門とそれに呼応する艦隊は、これまでで一番の連携を見せていた。

 しかし敵の数は思うように減らない。ここに居る50、雑兵などではないからだ。半分以上が鬼級、姫級の精鋭部隊。この戦場に未熟者は存在しなかった。

 

 しかしそれでも、その中でも、輝く星がひとつ。

 

 

「あなた達に、私達はやられはしません!! 金剛お姉さまが戦っている相手に比べたら、あなた達など……!!」

 

 

 榛名もその戦場で、己の能力を余すところなく発揮していた。研修で培った危機を感じる第6感を鋭敏に、死角からの攻撃をすべて回避し、お返しとばかりにカウンターを叩き込む。

 正確無比で無駄のない動きは、まるで舞っているかのようで……

 

 

「ハハッ……榛名だけにいい格好をさせるなっ!! ラバウル第1基地精鋭部隊の底力、今こそ見せる時!! 実力を十二分に発揮せよっ!!」

 

 

 相手の数が自分たちの5倍近くとも、負けてやる道理など彼女たちには存在しなかった。

 ある者は敵艦を撃滅し、ある者は制空権を確保し、ある者は空からの攻撃を見事に防ぎ続けた。それはたった十数分の出来事であったが、されども永遠にも感じられる十数分だった。

 

 そして敵の数がゼロとなった時、こちらに欠けている人員は見当たらなかった。

 死中に活。窮鼠猫を噛む。数も質も状況も上回る相手に、見事な勝利を収めたのだ。

 

 ただし、それは彼女、金剛の活躍あってこそだった。

 

 

「増援は……いないか!! 皆の者、見事だった!! よくこの難局を乗り切ったな!!」

 

「長門さん! 安心するのはまだですっ!! 金剛お姉さまはっ!?」

 

 

 

・・・

 

 

 

 後顧の憂いを絶った榛名達は、金剛の元へ急いだ。全速前進。一刻を争う。

 しかし現実は思うままとはいかないもの。彼女たちの目に飛び込んできたのは、受け入れられない光景だった。

 

 

 

 轟音

 

 

 そびえ立つ水柱

 

 

 水中に消えていく、見慣れた手

 

 

 

 一歩。本当に一歩だけ遅かった。

 惜しかったのだ。あと1分でも早く敵を撃滅せしめていれば、こうはならなかった。

 

 しかし、そんな『もしも』は何の意味もない。

 

 

「あぁ……あああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!!」

 

「待て榛名!! 飛び込むなっ!!!」

 

 

 頭より先にカラダが反応していた。あの状態はもう『手遅れ』だ。いくら手を伸ばしても、もう彼女の手には届かない。

 ならばどうするか。何故こんなことになっているのだ。

 

 

 ……お前さえいなければ、こうはならなかった。こうはならなかった!!!

 

 

『はぁ、はぁ、思ッタヨリヤリヨッタノゥ……

……ン? ナンジャア、我ェ、猪ノヨウニ突ッコンデキテカラニ……』

 

「お前が! お前がぁぁ!!!」

 

『フン、猪トハコウ使ウモンジャ。ヤレ……』

 

「ッ!? ぐっ、がぁっ!」

 

「榛名!」

 

 

 冷静さを欠いた艦娘など、自我を持つ姫級からしたらただの的。馬力の違いは残酷なまでの出力の差として現れる。

 姫級の使役する猪型艤装は榛名の砲撃を自慢の牙でいなし、そのまま榛名へ突撃。榛名はその突撃での致命傷は避けたものの、限界ギリギリで戦ってきた彼女を大破させるには十分な威力だった。

 

 

『哀レ。言ウタジャロウ、全員始末シテ瑞穂国ニ魂ヲぶち込ンジャルト。冷静サヲ欠ヒテ儂ニ突ッカカッテキタトコロデ……ナンノ意味モナヒ』

 

「かッ……コフッ……」

 

「クソッ、榛名、しっかりしろ!! 金剛に続いて貴様まで喪うなど、この長門耐えられん!! 奴は我らで必ず撃滅するから、提督の元で休んでおけっ!!」

 

「こ、金剛お姉さま……うぅ……」

 

『はっはっは、無駄無駄無駄!! 先程沈ンダ艦娘ニハチィトバカリ手ヲ焼ヒタガ、貴様等カラハソコマデノ勢ヒハ感ジナヒ。予定通リ、貴様等纏メテ海ノ藻屑ジャア!!』

 

 

 長門を筆頭に、誰もが中破、酷い者は大破の状態。まともに戦えるものはいないだろう。

 このまま戦えば最悪全滅、良くても半数以上は海の藻屑と消えるだろう。姫級が口にしたように。

 

 しかし、誰もが恐れていない。あの金剛が命を張って戦い、強大な敵を追い詰めていたのだ。

 彼女の願いはこのまま揃って撤退し、これ以上の人的損失を避けることなのだろうが……その選択ができる者はここには居なかった。心に灯る闘志が、敵を討てと叫んでいる。

 

 お互いににらみ合い、どちらが先に引き金を引くかという状況。緊張感は高まり、一触即発の空気が張り詰める。

 

 

 

 

 

 その時

 

 

 

 水柱が上がった

 

 

 

 

 

『グ、オオオッ!?』

 

 

 

 姫級の足元から。これは、魚雷の着弾だ!

 

 

 

「な、なんだ、いったい何が!?」

 

「ヘーイ長門、私は撤退しろって言ったんですヨ!! なーにケンカ売ってるんですカ!!」

 

「こ、金剛!? 沈んだはずでは……それに、その姿!!」

 

「どうやら大佐に助けられちゃったみたいデスネ! 今の私は一味違いますヨ……FIRE!!!」

 

『ナ、何故ッ……グオオッ!?』

 

「今の私は金剛改二『丙』とでも言いましょうかネ!! 手数が増えた高速戦艦、その真価を見せてあげまショウ!!」

 

 

 言うや否や、新たな衣装を身にまとった金剛は姫級への猛攻を始める。

 敵の動きを予測した偏差砲撃。それだけでも絶技と呼ぶにふさわしいもので、実際に先ほどは相手を撃沈手前まで追い詰めていた。

 

 しかし今の彼女はそれだけではない。新たに手にしたチカラは魚雷。高速戦艦という火力と機動力を武器に戦う金剛にとって、決め手となる更なる一手。雷撃による砲撃との連携。

 高火力砲撃がウリの戦艦には本来不必要だった雷装が、艦娘の姿では必殺の一手へと昇華される。

 

 今まで雷撃など扱ったことのない金剛だが、慣れていないなどという言い訳など彼女には必要ない。

 研修で受けてきた無数の決定的な雷撃、考える前にカラダが動くように高められた練度が、雷撃を扱う側となった今でも十二分に活きている。

 そしてそれよりも何よりも……いいように蹂躙されてきた、それでも自分のために戦おうとしてくれた仲間の想いを、妹の想いを、日和って台無しにするようなテンションはしていない!!

 

 

『ソンナ馬鹿ナ……!! ソンナ事ハ許サレン、アッテハナランノジャアアアアッ!!!』

 

「喧しいヨっ!! カワイイ妹をいじめてくれた落とし前、つけさせてもらいマスッ!!」

 

『オオオアアアアッ!!!!』

 

「ここで負けるものデスカッ!!」

 

 

 

・・・

 

 

 

 他の仲間が手を出せないほどの激闘を制し、最後まで立っていたのは金剛だった。

 先ほどとは違った結末。場を支配していた威圧感は霧散し、通信機能は回復。空は澄み渡るほどの高さを取り戻した。

 

 見事にラバウル第1基地の精鋭部隊は、ひとりの欠員もなく大規模作戦の決定打を決めることに成功したのだ。

 

 

「金剛……よく戻ってきてくれた。私はまた、戦友を喪ってしまったのかと……」

 

「ンー、気持ちは嬉しいですシ、色々伝えたいこともありマスガ……先ずは揃って帰投しまショウ」

 

「あ、ああ、そうだな。確かに今の戦力で強敵に出会ったらまずい」

 

「そういうことデス。長門が冷静で助かりましたヨ。ところでテートク……」

 

「なんだ」

 

「約束通り、生きて帰ってきマシタ。なんでもひとつ言うこと聞いてくれるんでしたよネ?」

 

「……ハハハハハ!! お前ってやつは!!

いいぜ、良く生きて戻ってきた。お前は俺の誇りだよ。ひとつと言わずいくらでも聞いてやるからな」

 

「オーウ! テートクったら太っ腹デスネー!!」

 

 

 こうしてラバウルにおける大規模作戦は、大勝利の3文字と共に幕を下ろした。

 

 この激闘を越えた死闘は伝説の作戦として語り継がれ、ラバウル第1基地の精鋭の強さは日本海軍全体に広まっていくことになる。

 

 




Q.なんで金剛は復活したの?
A.鯉住くんが研修終了の餞別として応急修理女神妖精さんを艤装に仕込んでたから。
榛名から比叡と霧島が沈んだ話を聞いてたので、いざという時は今回みたいな展開もあり得ると考えてたので。もちろん榛名の艤装にも仕込んである。金剛が丙に覚醒したのは彼女の覚悟が要因なので鯉住くんは関係ない。

Q.安全な方角を示す羅針盤はどうしたの?
A.もちろん羅針盤からゴーサインは出てなかった。しかしこれ以上の状況の好転は見込めなかったので博打に出た。羅針盤がゴーサイン出してなくても、必ず作戦が失敗するわけではない。安全が保障されないだけ。

Q.高雄はこれ知ってたの?
A.知らなかった。提督主導で半ば暴走っぽく出撃したせいでそちらに頭を回す余裕がなかった感じ。もちろん事後報告して高雄にしこたま怒られた。

Q.今回のボスってどれくらい強いの?
A.深海日棲姫(二つ名:【天戸隠 トガクシ】)。実力としては実は結構弱め。天龍龍田姉妹が神通に戦わされた『レディ・ツェペシュ(水母水姫。イスラエル壊滅の原因)』と同じくらい。ただし指揮官タイプなので総合力としては中の中。
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