艦これ がんばれ鯉住くん   作:tamino

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第190話 始まる前の下準備

 本日もラバウル第10基地は日本晴れで良い天気だ。南国特有のさわやかな海風が建物の間を通り抜けていく。

 いつもであれば演習をする艦娘や畑作業をする艦娘で騒がしいのだが、本日はぽつぽつと妖精さんが仕事をこなしているだけで静かなものである。

 

 提督も艦娘も旅支度に忙しくて本日の艦隊運営はお休みなのだ。つい先日発令された大規模作戦に参加するため、各々が必要と思われる準備をしている。

 大本営から届いた電報によると、作戦詳報は作戦本部となるトラック第1泊地で配るとのこと。基本的な必要人員、物品だけが書かれていた。

 それによると『各位、己の鎮守府に求められていると考える行動を十二分に発揮できる用意をしてくるように』とのことだった。ひどく抽象的な指示だったが、参加するメンツがメンツだけにこれで十分に伝わるだろうという考えなのだろう。

 

 そこで鯉住くん率いるラバウル第10基地は、全員参加を選んだ。

 第10基地首脳陣(鯉住くん、叢雲、古鷹、大井)の総意として、自分たちの強みは『後方支援』だという結論になった。後方支援というのは物資的な意味でも工廠能力的な意味でもあり『何かあったときになんとかできる余力』という意味でもある。

 今回の作戦に参加するメンバーは錚々たる面々であり、その中で自分たちの強みを活かそうと思ったら、自然とそういう結論になった。参加メンバーの半数はクセの塊みたいな人たちなので、そこを抑えられる自分たちがなんとかしないとということなのだ。

 

 ちなみに参加する提督たちは以下の面々。

 鼎大将派閥で自分の先輩でもある一ノ瀬提督、加二倉提督、三鷹提督。大本営率いる横須賀鎮守府から伊郷元帥、及川提督。そして発起人である鼎大将と、同じ呉鎮守府の古参であり鯉住くんの恩師でもある柳提督。

 このメンバー表を見て、ラバウル第10基地の首脳陣は悟った。『これは自分たちがしっかりしないといけない』と。この中でまともと言える鎮守府は鼎大将の呉第1と柳提督の呉第2、伊郷元帥の横須賀第1と及川提督の横須賀第2である。

 さらにその中であのヤバい3人にブレーキを掛けられるのは柳提督と及川提督のみ。伊郷元帥と鼎大将については、申し訳ないがあの3人の暴走を止めてくれるビジョンが一切浮かばない。そしてそんなヤバい人たちのブレーキ役を、恩師とまともな人に丸投げするのは言語道断。

 

 そういった理由から、鯉住くんたちは作戦参加メンバー全員のバランス調整役を担当しようと考えた。もちろんそんなエネルギーが必要な役割に就こうというのだから、生半可な用意では状況に追いつけない。そのための全員参加、全力参加なのだ。

 

 ちなみに、全員参加と言っても鎮守府を空にしてしまうのは流石にマズいということで、大規模作戦の間の鎮守府の手入れについてはラバウル第1基地に任せることとした。

 実は全員参加とする前は別案として、参加に乗り気でない艦娘は留守番という案もあった。しかしそうなると高確率で転化体の天城やコマンダン・テストが残留組になり、特にコマンダン・テストは鯉住くんから離すととんでもない事態を引き起こすことが予想されたので、その案は没になった。

 

「これだけ準備しておけば大丈夫かな……お前ら、なんか足りないものありそう?」

 

(ばっちぐーですよ、こいずみさん!)

(おみやげのじゅんびもばっちり! こうかんどもきゅうじょうしょう!)

(おやつのよういもいいですよー! すこんぶのじゅんびもよしっ!)

 

 「よさそうだな。それにしてもトラック泊地は結構近場だから準備に時間がかけられてよかった。おかげで移動用簡易工廠の用意ができたからな」

 

(ことしでいちばん、はりきりましたよ!!)

(せいのう20%だうんとひきかえに、じゅうりょうとたいせきは70%おふ!)

(いいしごとしましたねー!)

 

「本当にお前ら何でもありだよな」

 

 ラバウル第10基地からトラック泊地まではそこまで離れていない。ということで時間の余裕はだいぶあったのだが……なんとこの男、妖精さんたちを総動員して、少し大きめな連絡船に積めるレベルのコンパクト工廠を用意したのだ。

 これには大概常識がぶっ壊れている工廠班もドン引きした。明石は『流石にちょっと技術革新しすぎじゃない?』と苦笑いしていたし、夕張は『コンテナほどのサイズに詰め込める工廠とは……?』と宇宙猫顔になっていた。ちなみに秋津洲は無邪気に提督すごいとキャッキャしていたし、マエストラーレちゃんは未だに現状が理解できていない。

 鯉住くん的には、別に工廠に必要な設備をコンテナサイズに詰め込んでるだけで、展開するとそれなりのスペースになるんだからそこまで便利にはできてないし……とか考えている。目標が『ぼくのかんがえたさいきょうのこうしょう』レベルの夢と理想マシマシな代物だっただけで、今回出来上がった代物ですら当然ながら数世代先の技術マシマシのオーパーツである。

 

「どうかしら、アンタも準備できた?」

「叢雲じゃないか。こっちはOK。みんなの準備はどう?」

「天城が布団何組も持ってこうとしたり、アークロイヤルがハワイの魚類研究セットとか言ってすごい量の薬品とか水槽とか用意しようとしてたりしたけど、それはなんとか止めさせたわ。他のみんなはもう準備できてるから出発できるわよ」

「あのふたりはいつも通りだねぇ……。準備ができたならもう出発しちゃおうか。どうやらトラック第1泊地の尼子中将によると、早めに到着しても対応してくれるみたいだし」

「ウチでも大人数の受け入れはしてたから、どのくらい大変なのかはわかるのよね。いくら重要な大規模作戦とはいえ、受け入れ態勢を万全に整えてくれてるのは素直に感心するわ」

 

 ちなみに叢雲の言う通りトラック第1泊地は大人数の受け入れ態勢を整えているが、鯉住くんのところと違ってトラック泊地全体の人員を動員しての準備態勢なので、厳密にはマンパワーの面でかなり違ったりする。鯉住くんのところみたいに、食堂の調理担当を2人で回すなどという拷問一歩手前なシフト回しはしていないので安心なのだ。

 

「それじゃ早速出発しようか。みんなにも通達よろしく。13:30出発ということで」

「了解よ。じゃあいってくるから」

 

 ついに始まる最終決戦(予定)。

 緊張半分意気込み半分で白蓮大将に貸してもらった中型船に乗り込んでいく鯉住くんなのであった。

 

 

・・・

 

 

「……ナニ? モウ一度言ッテミナヨ」

「デスカラ、『思イ思イニ蹂躙セヨ』ト」

「ぼすハ本当ニソンナコト言ッテタノ? 全然きゃらジャナイヨ」

「ソウ言ワレマシテモ、実際ソノ通リナノデスカラ」

「フーン……」

「トニカク私ハ伝エマシタノデ。ソレデハ」

 

 伝えることだけ伝えて、小柄な駆逐艦姫級は去っていった。

 その背にいぶかしげな視線を投げるのは、大口からうなり声をあげる犬型艤装を携える空母姫級と、双頭巨人艤装を従える黒髪の姫級、そしてシロナガスクジラを模した巨大艤装を従える長槍を携えた姫級の3体だった。鯉住くんのところにちょいちょい来てる3名であり、転化体となった際にはそれぞれガンビア・ベイ、アイオワ、コロラドに変化する。

 

「わっつはぷん(何が起こったのよ)? ぼすガソンナコト言ウ訳ナイジャナイ」

「オ付キノアノ子ガ嘘ツク理由モ無イカラ、本当ニ言ッタトハ思ウンダケドネ」

「ハァ……気ガ乗ラナイワネ。別ニ人間ヲ始末スルノハイインダケド、ヨクワカラナイ指示ニ従ウノハ面白クナイワ。私ハ降リルカラ」

「みーとぅー(私も)ヨ! ヤル気ガ起キナイワ!」

「アノサァ、一応私タチノぼすカラノ指示ナンダヨ? 無視ハ駄目デショ」

「別ニ無視シヨウナンテ言ッテナイデショ。指示ハ『思イ思イニ蹂躙セヨ』ナンダカラ、私達ノ思イ思イニスレバイイジャナイ。期限モ決マッテナイシ、有名無実ミタイナ認識デイクワ」

「私モソレデイイワ! あんどれ君(マッチョ艤装のこと)モ『ソウダソウダ』ト言ッテイルシ」

「アンタ達ハサァ……。マァイイカ。強チ言ッテル事モ間違イジャ無サソウダシ」

「ナニヨ、アンタモヤル気無インジャナイ」

 

 うーんと首をひねる空母姫級。どうやら今回の指示には納得できない部分が多々ある様子だ。

 

「私ダッテ面倒臭イノハソウダシ。ソレニぼすノ指示ニシテハ違和感アリスギルデショ。モシカシタラダケド、ぼすモヤル気ナインダト思ウ」

「いっだずんふぃーぉらい(しっくりこないわね)。コウナッタラ直接ぼすニ確カメニイク?」

「ウーン……ぼすハ情緒不安定ナ事ガ多イカラ、今ハ何聞イテモ駄目カモネ。……コウナッタラ」

「コウナッタラ?」

 

 さっきまでの悩んでいた様子から雰囲気が変わり、空母姫級はなんでもないことのようにしれっと提案する。

 

「イツモミタイニ提督サンニ丸投ゲシテミヨッカ。アノ人一応人類ダシ、今回ノ事モ関係シテルカライイデショ」

「ぐっどあいでぃあ(いい案)ダワ! あどみらる(提督)ナラぼすノ事モ、キットナントカシテクレルワ!」

「アノ人ウチノぼすト面識スラ無イケドネ。来テッテ言ッタラ来テクレソウダシ、ぼすノコト落チ着カセテクレルヨウニ頼ンデミヨウカ」

「チョット! まいだーりんノ所ニ行クンナラ私モ当然行クワヨ! 私ニ先ンジテ有益情報ヲ教エルコトデ、まいだーりんノ好感度ヲ稼ゴウナンテ考エナイコトネ!」

「別ニソンナコト考エテナイカラ。アンタホド提督サンニオ熱ジャナイカラ。ッテイウカ、アンタガ提督サンニソコマデ執着スル理由ッテナンナノ?」

「ハァ……ワカッテナイワネェ。私達ノ存在ニ理解ガアッテ、艤装達カラモ懐カレテテ、優シテクテ料理ガ上手デ恰好ヨクテせくしーナ男性ナノヨ!? 世界中ドコヲ探シタラソンナ生命体ガ他ニ居ルッテイウノヨ! 私達深海棲艦ノ唯一ニシテ最高ノ伴侶ガ彼ナノ!! ソンナコトモ言ワレナイトワカラナイノカシラ!?」

「ウワ、ウザッ。煽ッテコナイデヨネ。聞クンジャナカッタヨモウ……」

「サァ、ソウト決マレバ出発スルワヨ!!」

「れっつごー(行くわよー)!!」

「出発前カラダルイ、ハァ……。たっふぃー君(犬型艤装のこと)、艦載機飛バシテ提督サンノトコマデ案内シテ」

「ワンワンッ!」

 

 こうして各サイドで事態が進行していきつつ、大戦力の激突に向けて着々と時計の針は進んでいくのだった。

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