日本海軍の現状や鼎大将組の正体が、チラ見えするつくりとなっております。
長くなっちゃってるので、もし読むのが大変でしたら読み飛ばしてください。
読み飛ばしても問題ありませんので。
戦艦『大和』は考える。
ラバウル第1基地の秘書艦にして、自身の妹分ともいえる高雄。
彼女から連絡があった内容について、いくつか思うところがあるのだ。
その内容とは、とんでもないもの。
ここ何年も確認されていなかった新艦娘に初邂逅したという。
しかもそれは『未知の海域開放の際にドロップ』という前例とはまるで違う方法。
『建造炉からの建造』というものだった。
建造成功というだけでも異例中の異例なのに、それ以上の異例に埋め尽くされている。
最早自分の知る常識こそが間違いで、高雄からの連絡内容こそが新たな常識なのでは、なんて思うくらいには信じられない話だ。
しかしその異常事態を引き起こしたのが誰かを聞いて、変に納得してしまった。
そう。「また」ラバウル第10基地の鯉住少佐だった。
「流石というかなんというか……
鼎大将のお弟子さんというだけで、納得してしまう自分がいるわ」
大和は実に優秀な艦娘だ。
それは戦闘面から見てもそうだし、組織運営面から見てもそうである。
史実からか、若干箱入り娘っぽいところがあるものの、それを補って余りあるほど各能力が高い。
そんな大和である。
各海域統括鎮守府からの報告は、たとえ些細なものでも十分に精査するように心がけている。
・・・
今回のような場合は特にであるが、
普通に提督養成学校を卒業して鎮守府運営している者からこのような報告を受ければ、何か裏があるのではないか、と疑うことから始める。
陰で悪だくみをしているのでは?とか、その者がどこの派閥に属する者か?とかを、気にしなければならない。
……如何に海軍が選び抜かれた精鋭の集まりと言っても、人間3人寄れば派閥ができる、という言葉もある。
本来は味方同士である者同士でいがみ合い、足を引っ張りあい、相手の出世の邪魔をする。
自身の出世のために権力ある提督に媚び、簿外でわいろを贈る。
上司であり模範となるべき者も、それを受け取るのを当然とし、出世のためと言って、さらなるわいろを要求する。
組織が大きくなればなるほど、本来の役割は意識から薄れ、このような行いが蔓延るようになる。
ある意味人間が人間である以上避けられないことだ。
当然海軍もこの例に漏れない。
というか海軍のそういった意味での腐敗は、かなりひどいものがある。
長年にわたる戦線の膠着による厭戦ムード、5年前を最後に大きな侵攻がないことからの気のゆるみ、国外へまで進出するほどの組織の規模、それに追従して広がる目の届かない範囲……
組織が腐敗していくのに、これ以上ない条件が海軍には整っている。
そして実際それは起こってしまっており、中枢である大本営にすらも、腐敗の魔の手が伸びている状態だ。
海軍の中でも元帥の次に権力を持つ大将ですら、いくつかの派閥に分かれてしまっている。
…元来心根がプラスの方向へ向かっている艦娘からすると、これは頭の痛い問題である。
自分たちの守るべき人間、しかも自分たちを指揮する上司。
そういった者たちが、私利私欲のために動いていることを知ってしまうのは、決して良いことではない。
実際にそれで転属願を出す艦娘も後を絶たず、大本営の艦娘専用お悩みダイアルは常に鳴りっぱなしだ。
そんな状況でも提督の多くは優秀であり、艦隊指揮、書類仕事共に高いレベルで平均値はまとまっている。
だから汚職があるような鎮守府でも、問題なく運営できてしまい、実績を上げる結果となる。
実績が伴う以上、不満がある艦娘も、大本営も、折り合いをつけざるを得ない。
今はまだ艦娘は人類に協力的であるが、水面下では疑心や不満が渦巻いている状況と言える。
……この数年間の仮初の平和の裏では、恐ろしい事態が進行しているのだ。
・・・
そんな現状に頭を悩ませる大和であるが、鼎大将一派に対しては、それとは少し違った意味で、よくないイメージを抱いている。
彼らも非常に厄介な問題を持ち込んでくるのだが、厄介のベクトルが色々とおかしいのだ。
・・・
鼎大将の一番弟子である、横須賀第3鎮守府の一ノ瀬中佐からは以前、こんな嘆願が来た。
『艦娘の指揮能力を高めるために、全鎮守府に将棋盤の配給をお願いします』
これを見た大和は「なんでやねん!」と、某軽空母のようなツッコミを入れてしまった。
将棋をたしなむ艦娘がそもそも少ないし、大本営がそんな素っ頓狂な方策を取り入れるはずがない。第一艦娘は指揮を執る立場ではないではないか。
確かに一ノ瀬中佐は、元棋士であることを活かした艦隊指揮で、無類の強さを誇ってはいる。正直大本営第1艦隊でも、彼女の指揮する第1艦隊には敵わない。
しかし「だから将棋盤配って」というのはおかしいではないか。
ここで普通の提督相手なら、にべもなく要求を突っぱねる。当たり前だ。
しかし彼女は普通の提督ではない。
彼女は元棋士であり、今でも暇を見つけてはネット将棋で活躍している。
そして部下の艦娘にも『将棋強い=戦闘強い』説を浸透させつつ、将棋を叩きこんでいる。
さらに趣味である将棋普及のために、持ち前のアクティブさを活かして「横須賀第3鎮守府・公開将棋大会」なるものを、隔月で自主開催している。
艦娘に負けず劣らずの美人であるアマ最強の彼女と、頭脳も美貌もかなりのものである部下艦娘とのガチバトル。
将棋を少しでも嗜む者であれば、絶対に生で見たい!と思う魅力があるらしい。
観戦チケットは毎回販売開始5分で売り切れる。
また彼女たちには大規模な非公式ファンクラブがついており、会員数はなんと1万人を超えているそうだ。
将棋の月刊誌にも毎度コラムを載せており、掲載写真と合わせて一番の人気コーナーである模様。
……しかしこれだけなら、まだいい。
いや、すでに色々とツッコミどころが満載だが、大本営、ひいては秘書艦の大和にとって致命的ではない。
最も大きな問題は、彼女たちのファンクラブに、日本を動かせるほどの大物たちが参加していることだ。
具体的には、内閣の大臣、官僚の重鎮、経団連の幹部、やんごとなき血を引く御方、市長県知事、etc……
実力と美しさを兼ね備えた将棋アイドルの前では、いつもお堅く威圧感ガンガンの面々も、唯のひとりのファンになってしまうらしい。悲しいかな、男のサガ。
……いつか一ノ瀬中佐は、何の気なしに大和にある名刺を見せたことがある。
本人曰く「ファンクラブの管理人さんからもらったんですよ~」とのことだったが、それを見た大和は腰を抜かすことになった。
名刺の表には、時の総理大臣の名前。
裏には達筆で「いつも応援しております!何かございましたら何なりとお申し付けください!」という、熱いメッセージ。
そしてさりげなく主張する「第3よこちん将棋会ファンクラブ 会員番号1」の文字。
つまりこういうことになる。
『彼女に不都合な決定を大本営が下した場合、それがもしバレれば、日本海軍は不条理かつ無慈悲な報復にさらされかねない』
彼女の要望が、的を得たものであろうが、素っ頓狂なものであろうが、可能な限り大本営は飲むしかないのだ。
そしてその要求を飲んだという事実に、それっぽい理屈をつけるのは、筆頭秘書艦である大和のお仕事である。
……一体どうやって『将棋盤の配布』なんて阿呆みたいな行動に、正当性をこじつければいいのだろうか?
これには大和も苦笑いするしかなかった。
・・・
別の日には、鼎大将の二番弟子である、佐世保第4鎮守府の加二倉中佐から、このような電報が来た。
『自覚無き国賊を誅する』
これを見た大和は「ひえぇ……」と、某戦艦のような震え声を出してしまった。
そもそもの問題として、このようなとんでもない内容に関わらず、意見具申でなく事実報告である。
大本営がなんと言おうと、やると言ったらやる、という意思がガンガンに感じられた。
実際その報告があった日の夜間に、以前から色々と問題があった鎮守府が3カ所襲撃され、陥落することになった。
ただの小規模鎮守府が、中規模鎮守府3カ所を同時に壊滅させたのだ。意味が分からない。
さらに衝撃的な出来事として、その次の日、大本営の門前に、襲撃された3鎮守府の提督が簀巻きにされて転がされていた。
3人の顔には「不届き者」と書かれた紙が貼られ、首周りには赤インクでぐるっと線が引かれていた。
つまり殺しはしなかったが、いつでも首を刎ねられるんだぞ、というメッセージなのだろう。怖い。怖すぎる。
……元憲兵という唯一無二の出自を持っている加二倉中佐であるが、彼の真に恐ろしいところは、大本営の指令よりも自分の意思を優先する性格である。制御が効かないのだ。
そんなこと普通の提督であれば許されない。当たり前だ。
しかし彼は普通の提督ではない。
彼は独自の価値観によって鎮守府を運営しており、そこにはその価値観を認めた艦娘たちが在籍している。
そして彼女たちは、常軌を逸したトレーニングにより、例外なく異次元の強さを身につけている。
以前大和には、彼の鎮守府所属の『ある軽巡洋艦』と手合わせする機会があった。
大本営の最大戦力である戦艦大和に対するは、地方のいち小規模鎮守府の軽巡洋艦。
誰の目にも結果はわかりきったものであった。
……しかし結果は大和の完全敗北。
一発も掠らせることができずに大破させられることになった。
油断があったわけではない。慢心もしていなかった。
この情報は公開されていないが、相手は5年前の本土大襲撃の際、たった6隻で駿河湾と相模湾を守り切った規格外のうちの1隻である。
油断できる相手では断じてない。大和は姫級を相手取る気持ちで戦った。
しかし、大和の全力をもってしても、傷一つ付けられなかった。
戦闘後に彼女が放った一言は、今でも大和のトラウマとなっている。
「
その時にため息とともに彼女から向けられた、蔑むような視線は、永遠に忘れることができないだろう。
つまりこういうことになる。
『加二倉中佐率いる佐世保第4鎮守府の機嫌を損ねた場合、大本営だろうがなんだろうが、物理的に壊滅させられることになる』
いくら海軍規範をガン無視した行いであっても、同僚の提督を私刑に処したと言っても、見過ごすしかないのだ。
そして彼の行いを正当化し、各方面を説得して回るのは、筆頭秘書艦である大和のお仕事である。
……一体どうやって『提督による提督の粛清』なんて戦国時代のような行動に、正当性をこじつければいいのだろうか?
これには大和もひきつった笑いしかでなかった。
・・・
また別の日には、鼎大将の三番弟子である、トラック第5泊地の三鷹少佐から、以下のような提案があった。
『トラック泊地に養魚場を作るので、魚肉加工工場建設の許可を下さい』
これを見た大和は「これ以上、私にどうしろというのですか……」と、某重巡洋艦のようなリアクションをとってしまった。
海軍ではややこしい事態を避けるため、副業は許可制となっている。
しかし当然それには色々と制限が掛かっており、艦娘が直接その事業に関わってはならない、とか、経営帳簿を月一で提出するように、とか、なかなか労力に見合わないほど制約が多い。
できてせいぜい、輸送任務ついでに骨とう品を少量輸入するとか、その程度だ。
だから工場の建設なんて論外だ。普通の提督にそのような許可など出せるはずもない。当たり前だ。
しかし彼は普通の提督ではない。
なんと事もあろうに、彼は第1次産業、エネルギー産業の両方面に特化した会社を、多数経営している。
現在彼が運営している会社は以下の通り。
「三鷹酪農(株)」「三鷹水産(株)」「三鷹青果(株)」「三鷹電力(株)」「三鷹銘水(株)」
人呼んで「三鷹グループ」。
深海棲艦襲撃前の世界でも、ここまで事業を多方面展開している個人はいなかったのではないか?
あまりの敏腕ぶりに、彼は人から「ひとり財閥」と呼ばれたりもしている。
しかもこれで提督業はしっかりこなしているというのだから驚きだ。
今現在、東南アジアとオセアニアでの食料供給、エネルギー供給については、三鷹グループのシェアが約7割となっている。
県や国でなく、世界の地域単位でこのシェアである。お化け企業グループと言っても過言ではない。
……深海棲艦登場以降、先進国以外の、未だ発展途上とも呼べる国々は、多大な経済的損失を受けた。
食料や鉱物の輸出に頼っていたところ、艦娘の庇護無くして海上輸送ができなくなってしまったからだ。
そしてそういった国々には、ほぼ艦娘が現れなかったのも大きい。
このためそういった国々は自給自足を余儀なくされ、何世代か遡ったような生活を余儀なくされていた。
そこに登場したのが三鷹グループである。
彼は破棄された工場を再生させ、妖精さん達のチカラも借り、発電施設へと生まれ変わらせた。
現地でとれる生鮮品の加工工場を作り、輸出業を復活させた。
部下の艦娘の演習中に漁船を出すことで安全に漁をし、食糧不足を解決した。
それに加えて、石油や天然ガスの掘削、それに頼らない自然エネルギーの同時開発……
彼の企業グループが行ってきた再生案は、すべて大成功。
現地の人々の就職率は、三鷹グループ進出前と比べて、およそ5倍となった。
インドネシアのバリ島を例に挙げると、変化が分かりやすい。
深海棲艦出現前は、観光がほぼすべての産業だったのだが、深海棲艦出現によってその産業は完全に廃れてしまった。
そのせいで交易もままならず、完全に自給自足のような生活を余儀なくされることになった。
町は荒れ、犯罪は常態化し、食糧不足は加速し、飢えで人々は命を落とし、埋葬する者もいない遺体は、その気候により腐敗し、疫病が蔓延した。
もうそこには希望はなく、ただただ全滅を待つのみ、という状況だった。
それを見かねたインドネシア政府は日本海軍へ助けを求めるも、このような状態では援助は送れない、と絶望的な答えを出されてしまった。日本にも余裕がなかったのだ。
そんな滅びゆく島に現れた三鷹少佐は、自身の社員を引き連れて衛生管理と食料供給を徹底。
そして人々に余裕が生まれ始めたころに、農作物の量産に着手。
それが軌道に乗ってきたら加工工場の併設。
そのような具合に地域再生を行った。
もちろん島民はどんどん正社員として雇い入れ、ホワイトな環境で労働させた。
全てに絶望していた島民からすれば、彼は神の使いにでも見えたことだろう。
その証拠に三鷹少佐は現在、バリ島で幅広く信仰されているガルーダ(神の鳥)と同じ程に信仰されている。
日光東照宮の家康公もビックリだ。
つまりこういうことになる。
『三鷹少佐をトップにした三鷹グループの活動の邪魔をすると、東南アジア、オセアニアからの激しいバッシングを受け、その地域での日本の交易が立ち行かなくなる』
副業という名のもとに、一大企業群を築いている彼である。
大本営とはいえ邪険に扱うことはできない。それっぽい理由を取り付けて、無茶な提案でも受け入れる他に道はない。
そして彼の特別扱いを正当化し、副業の規制緩和を求める一団を抑え込むのは、筆頭秘書艦である大和のお仕事である。
……一体どうやってこれほどまで堂々とした特別扱いに、正当性をこじつければいいのだろうか?
これには大和もヤケになって笑うしかなかった。
・・・
更に別の日には、厄介者の元締めともいえる鼎提督から、このような連絡が来た。
『多重ケッコンカッコカリを基本路線にしてみない?』
それを聞いた大和は「バカめと言って差し上げますわ!」と、自身の妹分でもある某重巡洋艦のようなセリフを叫ぶことになった。
大将いわく、ケッコンカッコカリを艦娘に受け入れられるような提督は、他の部下の艦娘からも人気がある場合が多い。
だったらいっそのこと全員とケッコンカッコカリしちゃえばいいじゃん!との事らしい。
いいじゃん、じゃない。
艦娘は人間とは違うとはいえ、その心は大体にして乙女なのだ。
そんな発表をしたらいくら何でも暴動が起きかねない。
もちろん本人たちの合意があれば、重婚的な状況になってもかまわない。
しかしそれはあくまで個人間の問題であり、他人が口出ししていいことではないだろう。
鼎大将はその辺がものすごく適当であり、しょっちゅうこんな感じの連絡を取ってくる。
そしてそれの相手をするのは、いつも大和である。
これには大和もあきらめの笑いを口からこぼす他なかった。
・・・
こんな調子であるので、大和は鼎大将一派のことを、非常に持て余している。
というか、はっきり言って恐れている。
一ノ瀬中佐に対しては政治的に、加二倉中佐に対しては物理的に、三鷹少佐に対しては経済的に、鼎大将に対しては総合的に、日本海軍はとんでもない爆弾を抱えている。
彼らから何かしらコンタクトがあった際には、大和は爆弾処理班のような心持ちで対応しなければならないことになる。
彼らの案件と比べたら、金銭欲と出世欲に塗れた提督からの意見具申の、何とかわいらしいことか。
提案者の派閥、出自、日ごろの行動。それを洗うだけで本心が見えてくるのだ。
「たったのそれだけ」で済むのだ。
鼎大将一派のように、政界、経済界の動向を全力で調べあげたり、不正を行っている可能性のある提督全員に勧告状を発し、反省文と改善文を提出させたり、国内大手企業に三鷹グループの動向を報告して周ったりしなくてもよいのだ。
それらと比べたら、私利私欲の何と単純で火消しも容易なことか。
……そんな胃薬を常備するような状況だったので、新たに鼎大将一派に新入りが加わったと聞いた時は、大和は人目もはばからず、その場で膝を折ってしまった。
今までの無茶ぶりが、ひとり追加で加速すると思ったのだ。
これ以上胃薬の量を増やしては、いくら艦娘と言えど健康に支障をきたしかねない。
しかしその予想は嬉しいことに、外れることとなった。
新入りの鯉住少佐は、例の3人のような恐ろしい爆弾ではなかったのだ。
高雄の所属するラバウル基地に、彼の配属が決まった時は、内心大和は非常に心配していた。
彼女まで胃薬を常備するような事態になるのではないか、と。
しかし高雄からの報告を聞くに、鯉住少佐は非常に礼儀正しい好青年であり、艦娘からの評価も軒並み高く、信用できる人物であるということ。
そして提督にしては珍しく穏やかな性格をしていて、これまた珍しく後方支援希望であるということ。
これには大和も、もろ手を挙げて大喜び。
自身の負担はこれ以上増えないであろうこと、高雄の負担が想定よりも軽そうなこと、鯉住少佐の性質が穏やかであったこと。
これらの事実は大和にとって本当にありがたいことだった。
……この際鯉住少佐が色々とやらかした事など些細な話だ。
1年ぶりの建造成功?3年ぶりのドロップ確認?妖精さん印の溶鉱炉?新艦娘に邂逅?
今はそんなことどうでもいいのだ。重要なことじゃない。
一番重要なことは、海軍全体を崩壊させるほどの爆弾を抱えているかどうかなのだ。
確かに高雄からの報告を聞いた時はいちいち驚いたし、各方面への通達はどうしようかと、頭を抱えることにもなった。
しかしそれは全部嬉しい悲鳴であり、考えていて楽しくなるような出来事であった。
決して他の鼎大将一派のように、爆弾を処理するような神経の張りつめる仕事ではなかった。
……それに大和は個人的にも鯉住少佐にシンパシーを感じている。
高雄の報告からチラチラ見える、鯉住少佐の苦労人気質。
彼とはおいしくお酒が飲めるような気がするのだ。
そんな彼と初めて直接話ができる。
大和は楽しみで、鯉住少佐からの連絡があるのを待ちきれず、自分から連絡を取ることにした。
「鼎大将のお弟子さんってだけで、ちょっと怖い気もするけど……
高雄からの報告通りなら仲良くできそうだわ。フフ、楽しみね」
プルルルル……
ガチャッ
『も、もしもし。こちらラバウル第10基地提督、鯉住です』
「もしもし。海軍大本営所属・秘書艦『大和』です」
『……』
大和の秘書艦能力は、元から高かったわけではありません。
その能力の大部分は鼎大将一派の爆弾処理で磨き上げられ、鍛えられたものです。
おかげで今の彼女は、不正や汚職程度なら寝ながら解決できるほどのレベルに達しています。
慣れってすごいですね。